時代から取り残された学童保育の世界。「子どものためでしょ」の言葉が与えたものは?

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 学童保育に関わる人(そのほとんどが、クラブの現場で実際に子どもと保護者の支援に携わっている人でしょう)がSNSで発信する内容には、時折、私にとって信じがたいことが含まれています。子どもや保護者について辛辣なことをつづっているのです。SNSは、どちらかというと、他者に知ってほしい、聞いてもらいたいということを発信することが多いので、いわゆる「毒を吐く」系の内容が多く、それが目立ってしまうという点は差し引いて考えても、です。

 また、台風が接近したときなどによく見られた発信内容は、「どうして開所するのか分からない。職員の安全は守られないの?」というものが目立ちました。そこには、運営側に対する不信感や、台風が接近したときも学童保育を使いたいと思う保護者への不満が込められているように感じました。そこには、「台風が来てもどうしても休めない仕事がある人」の立場になってみて考えてみるという視点が欠けています。すぐに「私たちの安全は?私たちはどうなってもいいの?」という、自分の身のよりどころを真っ先に考える思考が、透けて見えるのです。

 私は学童保育に、経営側、マネジメントする側の立場で関わってから、学童保育で働いている人、学童保育の職員が、本音で語ることばをたくさん聞いてきました。どうしたら、子どもや保護者のことを批判の対象ではなく「支援の対象」として受け止めることができるのだろうかと、長年、そして今も、考え続けています。
 今の時点で思い当たることは、「学童保育の職員が置かれている厳しい立場が、子どもや保護者への対応をすぐに批判的対象として転換してしまうのではないか」ということです。

 学童保育の世界に関して私が思うのは、「子どもの最善の利益を守ることが学童保育であり、それを行うのが職員(放課後児童支援員等)。だから職員は、常に子どものために全力を尽くしなさい」という考え方が、学童保育の仕事の現場はもちろん、学童保育所を運営する運営組織内部の風潮、考え方の主流になっているのではないか、ということです。つまり、「子どものためなら、ちょっとぐらい大変でも、頑張るのよ。子どものためでしょ」ということになります。もともと、子どもと関わるのが好き、子どもが大好きで学童保育の世界に入ってきた人が多い中で、この「子どものために頑張れるでしょ」という言葉は、職員がそれを受け入れたくないという気持ちを強制的に起こさせない強い「威力」を持っているのです。子どものためにならないよ、と言われれば、誰しも「えっ、ではやめなきゃ」となりますよね。子どもは「絶対的な善」という意識が根付いているからです。

 私は、その「子ども絶対主義」が、学童保育の仕事の現場を決定的に時代遅れにしたと考えています。子どもの人権を守るという意味での「子どもの最善の利益を守る」業務と、「子どものため」として働くことの雇用労働条件の内容や働き方そのものは、本来なら区分して考えなければならないはずです。しかしながら、子どもの最善の利益を守るための育成支援という絶対的に善と捉えられることを強制させる業務の性質が、雇用労働条件のあり方も支配して、「崇高な目的のために働いているのだから、働くことの条件に不平不満を持つのはおかしい。子どものためなら、何でもできるでしょう」というゆがんだ考え方を押し付けているのではないか、と私は疑問に感じているのです。

 さらに言えば、目ざとい運営側や、あるいは運営費に係るコストを抑制したい国や行政が、「学童保育で働く人は、子どもが好きだから、厳しい労働条件でも働ける。好きで働くんだから、雇用労働条件は、それなりでいいのだ」という都合の良い考え方がはびこる温床になっているのではないかとすら、私は思っているのです。「人件費を増やさなくても、子どものために働こうといえば、頑張って働いてくれるから、便利だよね」という考え方がはびこっているとしたら、です。「やりがい搾取」と言われるものにほかなりません。

 このことはもっと真剣に考えなければなりません。精神論が支配する仕事の環境は異常です。精神論ではなく、科学的に、「どうしたら、学童保育で働く人の意欲を向上させ、質の高い育成支援業務が継続的に実施することができるようになるのか」を、考えて実践しなければなりません。つまり、業務に対するモチベーションアップの問題です。それが「やりがい搾取」を追放することにつながるのです。

 次回以降は、学童保育で働く人の行動科学を考えていきます。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育という職場で行われる業務の質の向上、職員の生産性向上についての提案を発信しています。学童保育の運営に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った運営の方策についてその設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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