<運営支援ブログミニ43>国の骨太方針、放課後児童クラブ(学童保育所)はノータッチ。それでいいの?

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。(ぜひグーグルのAIで「萩原和也 放課後児童クラブ」と検索してみてください!)
 国は2026年7月21日に「経済財政運営と改革の基本方針 2026 「責任ある積極財政」元年
〜日本の挑戦を起動する!〜」を公表しました。いわゆる「骨太の方針」です。政府が取り組む重要課題や来年度の予算編成の方針を示すものです。ここで放課後児童クラブについて全く触れられていないことが残念です。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<放課後児童に関して>
 骨太の方針では財政面ばかり注目されますが、高市早苗総理の目指す国家経営を如実に示すという点で、少子化対策やこどもに関する政策、さらに最低賃金引上げや非正規雇用に関する諸問題にどう取り組むのか、児童クラブの職員の雇用労働問題に取り組んでいるわたくし萩原にはとても興味関心があるところでした。結局のところ、児童クラブに関して何ら現状を変える取り組みは見られず、その点は残念です。

 放課後児童に関しては、高市政権になって導入された施策についてさらりと触れられています。引用しますと「企業等の活力も活かした放課後の居場所や病児保育などの充実」(32ページ)にあるだけです。

 これは2026年度から始まった「企業等の活力を活かした小学生の預かり機能構築モデル事業」を指しているのでしょう。放課後児童クラブの量的整備がなかなかはかどらない中で依然として万を超える待機児童数を招いている中で、児童の健全育成ではない、「預かり機能」を、民間活力つまり民間の投資によって整備し、放課後児童の居場所を確保するというものです。 

 わたくし萩原は、待機児童問題の速やかな解決と、こどもの居場所は何も放課後児童クラブだけが背負って解決することもないという理解、さらにこどもにとっても「放課後を過ごす場所の選択肢」が増えることは望ましいと考えるので、このモデル事業の整備進展は歓迎です。小学生になったこどもが、学童を選ぶか、預かり機能の居場所を選ぶか、自分で選べる選択肢が増えることは単純に良いことです。

<ですが>
 モデル事業はそれでも苦肉の策、であるはずです。国がしっかり予算措置を講じ、基礎自治体が財政面の不安を覚えることなく、放課後児童の居場所整備に予算を組めることができているなら、児童クラブの整備は進んでいるはず。それをしないから、自治体は少子化の進展をにらんで児童クラブ整備に後ろ向きになってしまう。その結果が待機児童の発生であり、施設の量的整備が進まないゆえに生じるギュウギュウ詰め児童クラブいわゆる大規模児童クラブの発生です。

 児童クラブの整備に、国がしっかり取り組んでいれば、苦肉の策のモデル事業を用意せざるを得ない事情はだいぶ緩和したことでしょう。

 骨太の方針で、児童クラブの整備で放課後児童の居場所を拡大充実させる、という表記が見られなかったのは残念です。「放課後児童クラブの整備を進め、民間活力による放課後児童の居場所の充実を図る」という表記が理想でした。こども家庭庁を担当する大臣は高市総理の側近で知られる政治家さんですが、こども家庭庁の内部の意向をしっかりと聞き取って骨太方針に反映させる努力をどこまでしたのか、いささか残念です。

<児童クラブ職員の処遇>
 骨太の方針では最低賃金引き上げのペースが緩まるとかねて報道されていました。結局、その通りになっています。引用します。
「最低賃金については、2020年代に全国平均1,500円という高い目標(骨太方針202543)の達成に向け、官民でたゆまぬ努力を継続し、労働生産性の継続的な向上を図ることで、遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成する。」(11ページ)
 確かにこの数年来の、最低賃金の引き上げ額は、中小零細規模が多い児童クラブ運営事業者にとっては、正直、困難な局面だったでしょう。最賃の引き上げによる単純な経費増は、よほどの大人数を雇用している事業者でなければ、せいぜい数十万円でしょう。しかしその数十万円をねん出することが厳しいのが、中小零細規模が多い児童クラブの世界です。

 しかし、児童クラブで働く人は最低賃金とほぼ同額水準の賃金で雇用されている人が多いので、最低賃金の引き上げはそのまま収入増に直結します。よって、このたびの骨太の方針で、最低賃金引上げペースが緩まったことは、児童クラブ職員の雇用労働条件改善を目指して活動している運営支援にとっては、非常に残念です。

 児童クラブだけではありませんが福祉の世界は労働集約型ですし、賃金もおしなべて低い水準です。よってなかなか労働力を確保できません。最低賃金がそれでも上がれば、児童クラブの仕事は「こどもの成長を支えたい、こどもを応援したい」という、とてもありがたい動機を持つ方々が求人に応募しやすくなるのです。その最賃上昇ペースが緩やかになるのは、やはり労働力確保の点で不安が増大します。

 人が大事な柱である児童クラブの産業です。良い人が集まりにくくなる政策は結局、児童クラブの業務内容の質の改善にはマイナスに作用します。それはとどのつまり、こどもの最適な居場所を社会が用意するにあたってマイナスになる、ということです。民間活力を生かした預かり機能事業モデルを構築したところで、その事業の中身が相変わらず最低賃金水準での労働力に期待するのであれば、児童クラブの二の舞になります。

 少子化対策は国の重要な取り組みです。その少子化対策を現場で支える人、労働者を大事にしなければ、少子化対策の取組は決して質が高くならないでしょう。現状、国が推し進める少子化対策で出生数が増加に転じるかどうかの検証も必要でしょうが、働きながらでないと所得の少なさから子育てができない世帯が増えているのは事実。児童クラブは働きながら子育てする世帯に必要不可欠な社会インフラであり、子育て支援の事業なのですから、国はもっと本気でこの事業の内部を強化する視点を持ち、施策を打ち出さねばなりませんよ。
  
 (お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」。第4回が2026年6月30日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらすこどもの被害申告に適切に対応できるか」をテーマに関して丁寧に説明しています。 まずは動画をぜひご覧ください。わたくしの著書「知られざる<学童保育>の世界」も紹介されています。
https://youtube.com/live/9q8xzkgs7wo?si=dr06eChxK1Jgov5T
 第5回は7月19日(日曜日)15時から、すでに施行されている「児童生徒性暴力防止法」における調査の解説です。話し手:飛田桂弁護士、聴き手:嶋崎量弁護士、鈴木愛子弁護士、野田隼人弁護士、三輪記子弁護士。
 第3回(2026年6月11日)は、鈴木愛子弁護士がメインスピーカーとして「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
 第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
 第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s

 わたくし萩原が寄稿した記事が「ウェッジオンライン」で2026年5月29日に公開されました。「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665

 こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
 「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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萩原和也