人間関係で仕事を続けられない放課後児童クラブ(学童保育所)職員を助けるマッチングの仕組みが必要だ。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 前日(2026年6月11日)の運営支援ブログでは、放課後児童クラブに起こりがちな人間関係の不和(とりわけ、ひどい上司や先輩がいるために、児童クラブで働きたくてもそのひどい職員とは働きたくない状況)を取り上げました。慢性的な人手不足の児童クラブの世界で、せっかく働こうと思ってくれた人を他業界に流出させないために、児童クラブの業界は本気で児童クラブ職員のマッチングに取り組むべきだとわたくし萩原は訴えます。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<おさらい:人間関係がこじれやすい職場、そして提案>
 どの業界でも人間関係の悩みでせっかくの就職先を退職してしまうことはあるものですが、とりわけ放課後児童クラブは、他の業種とは異なる特色で、人間関係のこじれ、もつれが起きやすいとわたくしは実感してきました。起こりうる状態は次のようなものがあります。
1 児童クラブの上司、先任職員に問題があって後から配属される職員が相次いで辞めてしまう。上司、先任の独善的なふるまいや、事業者が求める業務内容を逸脱した業務執行に、新人がついていけない。
2 新たに配属された職員に問題がある。育成支援のことを理解しようとしない。最低限必要な法令についても守ろうとしない。業務上必要な運営事業者から出た指示を無視する、従わない。(なお、必要な指示に取り組んで失敗した、というのは含みません。それはたまたまの結果ですし、新人なら普通にありえることです。)
3 正規常勤職員ではない非常勤職員で、そのクラブにての勤務歴が長い職員が実質的に業務を差配している場合。正規常勤職員が事業者の求める業務を行うよう指示をしても、そのクラブの「ヌシ」である非常勤職員があからさまに抵抗する、従わないというもの。
4 保護者や運営本部の職員、また役員には愛想がよく、正論を常に述べて評価評判が良いが、クラブ内では同僚や部下に全く違った顔を見せる職員がいる。いわゆる「外面が良い」職員の存在。
5 人手不足ゆえに運営事業者側が採用してクラブに送り込んでくる人には、残念ながら資質的に対人ケア労働、コミュニケーション労働に適さない者がいて、その者が引き起こすトラブル対応に追われてしまい職場の人間関係も疲弊する。

 せっかく児童クラブにて働こうと思ってくれた人を、人間関係のこじれもつれでほかの業界に流出させてしまうのは業界全体でも損なことです。また、児童クラブの事業者はそれぞれ独自の理念や特色をもって児童クラブを運営しています。A社の児童クラブ運営方針には賛成できなくても、すぐ近くで別のクラブを運営しているB社の運営方針なら自身にもしっくりくる、ということがあるでしょう。児童クラブの世界にだって事業者ごとの社風、特色は当然にあります。

 運営支援は強く提案します。「児童クラブの世界で働きたいと思った人を、業界全体でしっかりと取り込むために、事業者の枠を超えて職員のマッチング、事業者への適性を見極める場を提供するべきだ」ということです。

<どうすればいい?>
 民間の児童クラブ事業者になりますが、ずばり「児童クラブ事業者同士での人材交流を盛んにするべし」です。
 →近隣の児童クラブ運営事業者同士が協定等を結んで、職員の交流を盛んとするべきです。それは単に会議を一緒にする、研修を一緒に受けることで済ませるのではなく、互いに運営している児童クラブにて、希望する職員を実際に数週間、勤務できる機会を設定することです。
 いわば交換実習です。通常の交換実習で違うのは、将来の転職機会の判断しても構わないことを明確にすることです。あくまで職員の希望で行うもので、「実際に相手先の事業者のクラブが自分に合っていると思ったら転職してもいいから、しっかり見ておいで」ということを隠さないことです。ここで変によそよそしく本当の目的を隠そうとすると、それはそれでまたギクシャクします。堂々と「うちのクラブで働いていても何か合わないことを感じているんだったら、別の会社のクラブを体験してごらん。そっちのクラブのほうが自分に合っていると思ったら、転職は大歓迎だよ」ということを堂々と打ち出すことです。
 「そんなことをしたら、次々に人材が他社に、他の組織に流出してしまうのでは?」と心配になる事業者があるとしたら、わたくしはこう言いたい。「そういう不安があるんだったら、もっと魅力的な職場になるよう改善に努めるのが事業者のやるべきことでしょう」と。
 転職先探しを目的とする現場実習ですが、決して無理強いしてはなりません。賃金保証は連携する事業者同士で相談して決めましょう。賃金はいわば出向元となる事業者が支払えば問題ないでしょう。通勤にかかる費用も当然に本来、雇用している事業者が支払うことになります。また、他のクラブに行ってしまった職員の「穴埋め」は当然、自分たちで用意する必要があります。
 いろいろ細かい修正は必要ですが、「児童クラブで働こうと思ってくれた人を大事にしよう」という意識を事業者たちが強く持つことが必要です。
 児童クラブの人手不足はずっとずっと昔から続いている問題ですが、これから先もさらに続くでしょうし、もっと深刻化してもおかしくありません。であれば、もう個々の事業者だけでの取り組みでは限界です。事業者同士が連携して取り組まねばなりません。

<本来なら>
 児童クラブの事業者は、市区町村や広域展開事業者、地域に根差した小さな規模の事業者などいろいろです。児童クラブの事業者が大きくなればそれだけ雇用労働条件は改善できる余地が生まれますし、事業者内での人事異動の可能性も高まりますから、Aクラブでの人間関係に悩んでいる職員でも、ちょっと離れた場所に立地して会議や研修でそうそう顔を合わせる機会が少ないBクラブがあればそこに異動してもらう、という対応の幅が広がります。
 そういう意味で、児童クラブの事業者そのものが大きくなることが、離職者を減らせる手段が増えます。児童クラブの事業者同士が一緒になる、合流合体合併することが、理想的な離職者減らしに直結します。

 しかし、人材の他業界への流出は今すぐにでも対応が必要ですから、事業者同士が連携して「マッチングの機会」を提供することが重要だと、わたくしは言いたいのです。こういった取り組みで連携してくれる事業者が増えればそれだけマッチングの精度も高まります。これも1つの人的交流ですから、この取り組みを通じて互いの事業者を知ることで将来的に事業者同士の連携、また合流等に進展するスタート地点になる可能性もふくんでいます。

<船頭が必要だ>
 こうした取り組みを呼び掛けるのは? わたくしはまず「業界団体」であり、そして「都道府県」が適任であると考えます。業界団体は言うに及ばずですが、ぜひとも広域自治体たる都道府県に旗振り役を期待したいと考えます。都道府県の後押しで基礎自治体が連携することになれば素晴らしいですね。

 広域自治体が児童クラブ業界の底上げに直接関与できることは、さほどありません。児童クラブ=放課後児童健全育成事業は市町村事業ですから。しかし児童クラブの運営を側面から支えることはいくらでもできるはずです。児童クラブの充実は市区町村の子育て施策の充実であり、ひいては都道府県にも利益があることです。
 さらにいえば、事業者同士が連携して行う人的交流=マッチングの機会構築は基本的にソフト面、ルールや仕組みを作るだけですからさほど費用が必要でもありません。それでいて、メディアから注目されることは必至の試みです。ぜひ広域自治体、また指定市が旗振り役となって行ってほしいものです。

 わたくしが考えるのは、都道府県や業界団体が旗振り役となって、「児童クラブ事業者」と「地域にある大学や短大、専門学校」そして市区町村が連携して、児童クラブで働いている人の交流を行う団体を作ることです。団体は児童クラブ事業者からの参加希望職員の情報を受けて加盟事業者に情報のみを伝える仲介役です。職員の待遇や勤務条件については事業者同士が相談して決めることにします。ここに大学など学校を入れるのは新規就職先としての児童クラブを選ぶ機会としても利用してもらうためです。
 法令面での問題が起きないようにしつつ、「児童クラブで働きたいと思った人を、児童クラブの世界でずっと頑張ってもらえる機会を提供する」という趣旨で行うことが大切です。
 さらに言えば、こういう仕組みを利用した職員からの聞き取りで、事業者ごとの問題点を把握してそれを事業者に伝えることで事業者自身の事業運営の質の向上に取り組む機運を増すことです。もちろん、こういう仕組みを利用したいと表明した職員、利用した職員への不利益な待遇はあってはなりません。そういうことを防止するにも自治体の関与があるとよいでしょう。

 本来は、職員がずっと働きたいと思える職場、組織風土を作るのは事業者の当然の使命であり責務です。しかしながら児童クラブでの仕事は、個人が常に個人の判断、考え方で個人が直接にこどもや保護者に相対することで個人の意思、価値観が業務に反映することがとても大きな要素となっている仕事です。その点で、流れ作業で「お刺身の上にタンポポを乗せる仕事」とはまったく違います。個人の価値観や思考は当然に100人いれば100通りですから、就職活動の際には「自分に合っている児童クラブかも」と思って実際に働き始めても、なんとなく違和感を覚えたり、事業者の掲げる理念や事業目標には共感しても現場で一緒に働く上司や先輩がどうしても受け入れられない、ということもあります。
 そういう場合、児童クラブで働きたいと思ってくれた人をみすみす他の業界に流れていくのをただ指をくわえて眺めているのは、児童クラブ業界にはあまりにも良心がない。「うちの会社では合わなかったかもしれないけれど、別のクラブではきっと頑張れるよ」という理解を児童クラブ業界に当たり前の感覚としてほしいと、わたくしは願います。
 
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネルが開設されました。チャンネル名は「こどもを守る弁護士チャンネル」です。 2026年6月11日に、放課後児童クラブに詳しい鈴木愛子弁護士がメインスピーカーを務める第3回配信が行われました。テーマは「こども性暴力防止法がもたらす 「人手不足の加速」とその構造的リスク」です。聞き手は野田隼人弁護士です。リンクは次の通り。https://www.youtube.com/live/ZVafKTKe204
 第2回(2026年5月30日)は、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルです。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
 第1回(2026年5月16日)の「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s

 放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf

(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf

わたくし萩原が寄稿した記事が 「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」で2026年5月29日に公開されました。「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665
 2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事も公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。こちらもぜひ読んでいただけるとうれしいです。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

投稿者プロフィール

萩原和也