収益が望める産業としての放課後児童クラブ(学童保育所)はさらに栄えるだろう。それに手を貸すのは誰だ?

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 台風6号による大雨、放課後児童クラブでは被害や影響はなかったでしょうか。これからが台風シーズンですからね。今回の対応を検証して、より改善できるところがあればぜひ取り組んでください。さて本日(2026年6月4日)のブログは悩みました。2026年6月3日に厚生労働省が公表した人口動態統計で出生数が過去最少になったことを取り上げたいと思いつつ、放課後児童クラブの指定管理者に選定されたという企業からのリリースは運営支援としては真っ先に考えるべきであろうという結論になりました。出生数のブログ投稿はあす以降として、本日は産業化まっしぐらの児童クラブの現状を憂います。当ブログは投稿数が1,400を超えましたが、まだまだ書き足りないことばかりです。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

※わたくし萩原が寄稿した記事が「ウェッジオンライン」で2026年5月29日に公開されました。「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665

<プレスリリース>
 さてお願いですが、本日のブログを読んでくださる方で、すぐ上に記した「ウェッジオンライン」にわたくし萩原が寄せた記事「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」をまだ読んでおられない方はぜひとも先にウェッジオンラインの記事を読んでいただけるとありがたいです。言わずもがなですが「Wedge」は各分野において第一線で活動している方々、いわゆるパワーエリートをターゲットにしたビジネス誌です。同誌編集部は、子育てしながらバリバリ活躍している人たちが直面する児童クラブについてとても関心を持ってくださっていて、それでわたくしに声をかけてくれたということです。児童クラブの事業の質の向上を考えたいということだけでなく、児童クラブが今後の企業の事業展開を支える鍵にもなるという視点をお持ちのようです。

 そして何度も表明していますが、わたくしは、児童クラブの運営を「企業」に任せることに反対はしません。児童クラブの運営を収益事業として考える企業や組織が児童クラブの運営を引き受けることに反対しません。わたくしの考えは、株式会社であろうがNPO法人であろうが保護者会運営だろうが公営クラブであろうが、「児童クラブで働く職員が、職責に見合った収入と休日休暇が保障され、生活の不安を抱くことなく生涯の仕事として続けられるような雇用労働環境を提供している事業者に、児童クラブを運営してほしい」というものです(なお事業運営の責任の所在が不明瞭な保護者運営はすぐにでも取りやめるべきだというのもわたくし萩原の持論です)。当たり前ですが児童クラブである以上、そこに児童の健全育成の理念ー非認知能力をはぐくむ育成支援ーが事業内容に含まれていること、そして従事する職員に対してこどもの育ちを支える仕事を全力で向き合える職場環境が備わっていることは、言うまでもありません。
 そのうえで、事業を行った結果、年度末になって手元に予算が使いきれず残ったならばそれはどうぞ収益、利益としてお納めくださって結構です、というものです。むしろ手元に残らなければ困りますね。児童クラブは基本的に公の事業であって単年度での予算ですから年度末になって1つの支援の単位でせめて1~2か月分の人件費分ぐらいの剰余金、損益差額が手元に残らなければ、運営側にとって不安でしかありませんからね。100万円程度はせめて残っていいでしょう。

 という前提のもと、プレスリリースを紹介します。株式会社QLSホールディングスが2026年6月3日に公表した、同社100パーセント子会社の株式会社クオリスに関するリリースです。(余談ですがいちいち西暦を付しているのは、後日、ネット検索でこの記事が表示されたときに時系列を明確にしたいからです。昨日とか一昨日という表記では正確な年月日がすぐにわからないですからね)
 内容をリリースから引用して紹介します。
「当社100%子会社である株式会社クオリスは、本日、朝霞市(埼玉県)放課後児童クラブ(以下、学童保育)の指定管理者候補に選定され、2027年4月1日から2032年3月31日まで運営することが決定しましたので、お知らせいたします。」
「当社グループは、保育所の待機児童数が減少する中、『小1の壁』と言われる学童保育の待機児童問題に取り組むべく、学童保育公募の新規獲得を保育事業拡大の主要な戦略として位置付けております。 学童保育の運営受託は自治体との契約期間が定められており、期間毎に新規獲得の機会があるため、今後も全国の自治体からの募集に対し積極的に応募していく所存です。 全国に1万6千人存在する学童保育の待機児童解消に向け、社会に貢献するとともに、企業価値の最大化を目指してまいります。」

 そして、2027年度から5年間、指定管理者として「泉水放課後児童クラブ」「本町放課後児童クラブ」「栄町放課後児童クラブ」の3施設(放課後こども教室併設)を運営するとしています。

<朝霞市の状況は>
 わたくしは「市区町村データーベース」という作業をやっております。朝霞市は2巡目の確認が終えた地域です。どういう状況なのかここに転載します。
 34 (2025/10/11全面改訂)埼玉県朝霞市は「放課後児童クラブ」と表記しています。公設クラブは「~放課後児童クラブ」の命名です。市のHPや「放課後児童クラブのご案内」には公設クラブの指定管理者と、民設クラブの設置主体、運営主体が明記されており、丁寧です。民設クラブの運営種別(業務委託か、事業補助か)の記載があると完璧でしょう。全体的にきめ細やかな情報提供がされています。利用料は公設も民設も同額で7,500円におやつ代2,500円の10,000円です。公設は午後7時まで(土曜日は午後6時)、朝は午前8時から。連続して5日以上、クラブを休むと、おやつ代の還付請求ができます。
 施設数24、支援の単位数不明、定員表記あり。日割りなし、減免制度あり。昼食提供なし、おやつ提供。長期休業期間中受入制度は不明。8:00~19:00(土曜日18:00)、待機児童対象に「児童館ランドセル来館事業」(2年生以上)あり。(運営支援公開ランクA)
 広域展開事業者:(特非)三楽(さいたま市中区)=民設民営4施設6クラス。
 運営主体(判明分):公設民営:(社福)朝霞市社会福祉協議会(膝折放課後児童クラブ、岡、浜崎、幸町、泉水、本町、朝志ヶ丘、栄町、根岸台、溝沼)/民設民営:(特非)三楽(キッズクラブさいか本町、キッズクラブさいか本町あおぞら・つばさ・はばたき、キッズクラブさいか本町けやき、キッズクラブあさか浜崎)、(社福)あさか杏樹会(あさかだいアンジュクラブ、本町アンジュクラブ)、(社福)よつばゆりかご会(西弁財ぞうさん放課後児童クラブ、東弁財ぞうさん放課後児童クラブ)、(株)SHUHARI(GENKIKIDS CANVAS(元気キッズ キャンバス))、(株)さつき(さつき放課後児童クラブ)、(合)みんなのいばしょでしょ(たまみずきっず溝沼、たまみずきっず栄町)

 市区町村データーベースでは、2027年度からクオリス社が運営することになる3施設は朝霞市社会福祉協議会が運営しているようです。指定管理者選定の公募でクオリス社が選ばれた、ということなのでしょう。
 朝霞市においては非営利法人である三楽がすでにクラブを運営しています。三楽は全国各地で児童クラブ運営をしている非営利法人の広域展開事業者です。児童クラブを運営する事業者=運営主体を考えるとき、よく「児童クラブの企業運営は許せない」「企業が児童クラブを運営するのはこどものために良くない」という反対の意見を耳にします。この手のことを言う人たちの頭の中には「株式会社」しか想像していないのでしょうか。非営利法人であっても児童クラブを全国のあちこちで運営している法人は珍しくありません。児童クラブの企業運営を歓迎しない立場の人は、ならば非営利法人の運営であれば歓迎するのでしょうか。わたくしが遭遇した人の中には、実際に「株式会社でなければよい」と言い切る人もいました。
 何が産業化であるかもよく考えずに短絡的に「企業=株式会社が児童クラブを運営するのは儲け主義なので良くない」という人たちが多いようでは、事の本質を見抜けないままですからね、ますます児童クラブの産業化は進むでしょう。実は本日のブログでいいたいことはまさにそのことなのです。(むしろ、非営利法人である看板を使ってせっせと児童クラブ運営数を拡大して利益確保に夢中な法人組織こそ、わたくしはとても感心できません。だったらはっきり金儲けするんだよという営利法人に衣替えしていただきたい。非営利法人の本質として得られた収益を事業に投資するなら良いのですが、そうそうそのような光景は見えてきません。非営利法人の広域展開事業者の児童クラブ職員の賃金はどうですか? かなり低水準ではありませんか? どこに予算が行きついているのですか?)

<プレスリリースで最も肝心なところ>
 先のプレスリリースで、わたくし萩原が「これだよこれ」と思った箇所があります。「学童保育の運営受託は自治体との契約期間が定められており、期間毎に新規獲得の機会があるため、今後も全国の自治体からの募集に対し積極的に応募していく」という部分です。

 どうして大事なのか。重要なのか。ここに、児童クラブの産業化が端的に示されているからです。
 期間ごとに新規獲得の機会=市場を拡大できるチャンス=があるということは重要です。それは選定の場、競争の機会を攻勢、攻略の機会として考えれば、つまり競合相手に勝てれば児童クラブ運営の立場に就けるということです。ではどうすれば勝てるのか。それはもう、どんな業界にもある「競争」つまりよりすぐれた事業内容、コンテンツを用意してアピールして、審査する自治体側(建前は選定委員会や指名委員会ですが実際は、というやつですね)の好感を得られればいいのです。
 そもそも選定や競争の場がなければ市場獲得の機会すらありません。スタート地点が用意もされなければレースに出場できないことと同じです。日本は自由主義経済ですから、原則として市場は開放、競争の上に成り立っているのです。競争では市場が成り立たない一部の分野は国や自治体から市場を用意されてそこでお金を国や自治体からもらって事業をするということです。児童クラブは、わたくし個人は決して競争の場にあることは望ましくないという立場ですが、同じ事業者が競争もなく延々と事業を独占することには懐疑的です。それは腐敗、堕落を招くだけですから。競争がない世界において質の高い事業者が事業を続けることは世の中が聖人君子の経営者しかいないのならともかく、そんなことはありえません。競争の緊張があってこそ、より良い事業運営を目指そうという意識が働きます。
 児童クラブの公募で問題なのは、選定する基準であり過程です。単にデカい企業や法人が選ばれがちな選定の審査の内容こそ問題です。規模がでかいというだけで信頼性を感じる選定委員の見識が問題です。まっとうに児童クラブ運営をしている事業者がすんなり選ばれる審査基準、選定基準であって、児童クラブの運営の重要性を理解している者が選定の委員の多くを占めれば公募や競争を恐れることはないはずです。

<公募による児童クラブ選定は構造としてある以上、今後も続く>
 現実に地方自治体の公の事業には指定管理者制度が存在していてそれが活用されています。「指定管理者制度はおかしい! 児童クラブにふさわしくない!」というのは気持ちとしては分かりますが、そのスローガンを叫んでいるだけでは、自治体が指定管理者制度の適用をやめようか、とはなりません。制度としてある、そして現状多くの自治体が当たり前に使っている制度である以上、「いま使われている制度でどうやって勝つか」を考えなければ、単なる遠吠え、いや雑音にすぎません。
 複数年度におよぶ業務委託も同様です。準委任と代行と、それぞれ根拠となる法律は異なりますが、1つの事業者が決まった期間、クラブを運営するということにおいては差がありません。ただ自治体側が児童クラブを紹介するときに民間に委託しているとHPに書いてあるのに実は指定管理者制度によって運営を任せている、ということはやめてほしいですが。

<どうして公募か>
 まず、市区町村の役所、役場は実に世間、社会からの評価評判を気にします。公の業務は規則、ルールを厳格に適用した上で計画され承認され構築されます。その規則やルールに実は「前例」というものが往々にして含まれるところが厄介なのですが。それはともかく、指定管理者ならしっかりと地方自治法にあって法令通りに適応すれば、「それは気に食わない」という単なる(役所にとって)罵詈雑言は無視すればいいだけです。ところが、公募をせずにつまり随意契約で、決め打ちで事業を任せる事業者を決めた場合、時には「密室で決めた」「何か隠しているんじゃないの?」と、痛くもない腹を探られることになりがちです。それが役所、役場は非常に嫌なのです。
「だったら公募で決めりゃいいんだね。そうするよ」となって当然です。公募で、しかもそれなりに知識見識を持っている人をいったん立ててその人たちに選んでもらう構図は、役所役場本体に批判が届かない制度です。指定管理者であればさらに議会ー有権者たちの代表による議員による審議、判断ーという、「言い訳ができる装置」を用意できます。最終的には予算案としてこれまた議会で審議されるのですからね。「市民の代表である議員が認めた」というのは最強の建前となります。この点、議員にはしっかりと児童クラブの現状と問題点を理解していただきたい。
 とかく、役所や政府は、人々からの批判の対象となりがち。批判を浴びそうになる点をなるべく減らしたいなら、公募で選びました、ということが最も重要な盾となります。
 なお、さらに本音は経費削減があります。指定管理者にしろ、公募型プロポーザルにしろ、「経費が最も安い事業者を絶対に選ぶ」とはなってはいませんが、経費が高い業者より経費が安い業者が選ばれます。本質的には、経費というのは単に指定管理料や委託料の総額でのみ比べるのではなくて、公募に参加した事業者が提案している事業内容と費用との兼ね合い、つまり費用対効果を比べてほしいのですが、残念ながら児童クラブの公募には、(あえて言いますが)わたくしのような考え方の人はまず存在せず、児童クラブのことは知らないか、あるいは児童クラブのことだけは経験者なので知っているが事業経営のことはよくわからない、あるいは士業でその分野の専門家ではあるが児童クラブも企業経営実務もあまりよくわからない、という人が選定委員や審査委員に選ばれがちです。ひどい場合は、公募で事業者を選ぶ委員が全員、役所役場の職員であるということもあります。それはもう、役所役場の意向がストレートに選定結果に反映されますね。

 児童クラブは任意事業のわりに、多くの市民ことに子育て世帯の生活に直結している重要な社会インフラです。保護者つまり有権者の興味関心を掻き立てやすい制度です。ですからそれなりに丁寧な対応が必要な市町村事業です。しかもしょっちゅう制度が変わる。交付金(補助金)が分かりにくく交付申請も面倒くさい。
 一方で役所役場は数年で担当者が替わります。その結果、児童クラブの業務に関することは常に引き継ぎ引き継ぎで、担当となった行政パーソンにとってはようやく児童クラブ行政が分かりかけたころに異動、となりがちです。
 そういう分野ですからね、おのずと、事業者側の実務能力に頼りがちになります。交付金の申請書類にミスがないとか、こども家庭庁の通知通達を事業者側がしっかりと理解しているとか、役所役場の担当者の業務負担を軽減させる気配りとそれができる知識を備えた事業者が歓迎されるのです。これはもう、各地でたくさんの児童クラブを運営している事業者に一日の長があります。

 そして公の事業として最も求められる「事業の継続性、安定性」です。これは予算規模、人的資源を多く抱えている事業者が絶対的に有利です。「わたしたちの法人は利益を目的としていません。こどもと職員を大事にしています」といくら公募に参加した事業者が訴えても、予算は常に赤字ギリギリで単年度の剰余金はほんのわずかで、それを問われると「お金が余りそうなら、こどもたちに使っています。1人でも多くの職員を雇っています」と訴えても、「仮に何かあって急に資金が必要となったら対応できないよね。事業が破綻するよね。それでは困るよね」と児童クラブを任せる自治体が事業の存続継続を不安に思ったら、もうそれでゲームオーバーです。競争に負けるのです。「うちは配置基準ぎりぎりで運営していますが、他の地域からヘルプで職員を呼び寄せられますし、なんといっても事業者全体の予算は数百億円規模ですから資金ショートなどはありえませんよ」とアピールする事業者が競争に参加したなら、自然に「事業破綻が絶対にないなら、大いに魅力だね」ということになるのです。
 公の事業である以上、児童クラブが継続的に安定して運営されてこそ「高い質」なのです。こどもとの関わり方、こどもの育ちの満足度は、二の次です。そこには「どんな事業者でもこどもへの対応は、それほど極端な差がないだろう」という思い込みもあるでしょう。それは「こどもには、この程度でいい」という、こどもまんなかの思想がまるで浸透していない大人だけの立場での判断ということがあるでしょう。自治体や選定委員は、児童クラブの本当の実態をなかなか知ることがありませんし、知っていたとしても「数時間のことだし、児童クラブを利用するのはせいぜい2~3年だし、多くのこどもが利用するといっても入所率は3~4割だしな」ということで、「それぐらいのことは目をつむる」ということになりがちな意識を、わたくしは目の当たりにしてきました。

 児童クラブの産業化は、自治体が望む「事業の安定性、継続性」(そして低コスト化)をうまく料理することができる、「薄利多売で十分。安定して利益を望めるのであれば、あとは運営数を増やせばいいだけだから」という事業方針を確立した事業者にとって、実に望ましい傾向なのです。児童クラブ運営を事業の柱、または事業の柱の1つとしている広域展開事業者は、どんどん運営する支援の単位数を増やします。それが利益を増やすために必要だからです。
 先のプレスリリースでも「今後も積極的に応募」というのはまさに当然なのです。
 運営する支援の単位数を増やすことに難問はありません。しいていえば職員の確保ですが、これは時間をかければ解決できます。なにせ、求人を出す側にしてみれば「この条件で働きたいと応募してきた人」を待つだけの話。最低賃金の上昇はその姿勢を有利にします。最賃レベルの給与さえいただければ大丈夫という人は必ずいますから。

 このたびのプレスリリースにあるように、児童クラブの運営において競争の場が用意されている以上、安定して事業収益が見込める児童クラブ市場は、景気の波が激しく事業収益に不確実性が伴う他の業態よりもよっぽど魅力的です。なぜでしょう。
 たしかに1つ1つの支援の単位から何千万円もの利益が得られることはありません。どうしたって収入の天井はさほど高くないからです。入所児童数に応じた利用料と補助金以上の収入はありません。となれば、支出を厳格にコントロールして損益差額を1円でも多く増やすことです。これは事業者側にとって安心かつ確実な取り組みです。100万円の利益を出せ、との命題に対して、用意された商品が確実に100万円の利益を生み出す術はありません。世間の人々が買ってくれる、利用してくれることがなければ100万円は手に入りません。ところが支出を削る、つまり児童クラブでいえば支出の7~8割を占める人件費を削れば100万円の確保はできるのです。人件費400万円の常勤職員が1人と300万円の常勤職員が1人いれば、350万円の常勤職員1人と250万円の非常勤職員1人に置き換えれば、簡単に100万円が捻出できます。「そうだ、300万円で働きたいという人を常勤にして、100万円の非常勤を2人雇えば、もっと利益がでるぞ」というのが、児童クラブに置ける収益確保の基本的な構造です。これは事業者の判断一つでできる、つまりマーケットや第三者という見えない意志が介在することがなく事業者だけの取り組みで結果をもたらすことができるのですから、薄利多売であっても「支援の単位数が増えれば」、事業者としては児童クラブ運営事業で安定して継続的に確実に利益を手にできるのです。

 ここで児童クラブの「人手不足」と「人材不足」は区別して考えるべきです。優れた資質の職員が確保できない人材不足というのは、「しっかり育成支援を学んで研鑽を深めてくれる人」を選抜しようとしても用意できる雇用労働条件はなかなか良い人材には巡り合えない程度の待遇でしかないので育成支援を重視したい事業者が苦しむものです。頭数さえそろえればいいのであれば、それほど難しい話でありません。履歴書や職務経歴書に、書ききれないほどの勤務経験が書かれていても、応募してくれば採用、としていれば、その人が数か月後に離職したところでまたすぐ次の応募者を雇えばいいだけの話。そこで重要なのは「事業者が考える業務をやってくれればいい」というためのマニュアルの準備です。
 「育成支援? マニュアル通りにやってくれればいい。誰だってできる業務マニュアルを用意したから文字さえ読めれば大丈夫」というのが、あちこちで運営するクラブを増やしている事業者の強みです。つまり人材の質はマニュアル通りの業務でカバー。人数、頭数だけ確保できればいいんだ、という人材確保の方針を持った事業者であれば、人手不足時代でもさほど困難は感じません。「選ばなければ」求人応募はあるのですから。つまり大事なのは、外部から見て「なかなか、しっかりした運営ができそうですね」と思わせるような業務マニュアルを用意することであって、そんなのは児童クラブ運営を収益事業として手掛ける事業者には朝飯前のことです。

<児童クラブ業界の産業化をみすみす見逃した、いや手助けしたのは>
 児童クラブの運営を企業や大手の事業者に任せてはならない! と訴える勢力は今や風前の灯火。いやかつては、十数年前まではそれなりに活気があって威勢の良い声を上げていました。今でもその「中の人」にとっては変わらぬ風景を眺めているのでしょうが、現実はもう変わりました。国の実施状況調査を見ればわかるでしょう。株式会社運営クラブの激増が何を意味しているのか。それは、児童クラブの産業化の構造がすっかりできあがって、あとは児童クラブ運営で確実に利益を得ようと考える事業者、企業経営者、組織運営者にとっては「いかにして参入して運営クラブをゲットするか」の市場にしかすぎません。
 その現実に「こどもを支える運営が利益を目指しちゃだめだ」と叫んでも何も変化は起こせません。自治体が期待する事業の安定性と継続性そして業務負担の軽減寄与が明白に提供できる確約を示さない限り、競争において負けることは確実です。

 そんなことが分かっていながら、それでもなお「企業運営は児童クラブにふさわしくない!」と叫び続ける業界があるとしたら、それはもう別の目的があるからだろうとしか、わたくしには言えません。「そういう構図があることで利益を得ているのだろう」ということです。それは児童クラブ産業化を憂う側にしてみれば利敵行為そのものです。その利敵行為の本質が特定政党への支持や政治家への投票行動呼びかけの原動力なのかどうかは知りませんが。
 児童クラブ運営をめぐる競争に「勝てる準備」をせずに、ただ「そんな競争はおかしい」と言っているだけでは、そもそも競争に参加しない以上、勝てる可能性はゼロです。そんな明白なことを前に「競争はおかしい」「企業運営はふさわしくない」と叫ぶことで、そのことに不満を持つ人たちを引き付けて一定の勢力とさせて誰かを応援させたいとしたら、それこそ、自滅への道をひそかに後押しすることにほかなりません。わたくしはゆでガエルに例えます。「ああ、あったかい。いいお湯だ。もっとあっためて。他のところにはいきたくない」というカエルは、お湯の温度が45度、50度になったころにはもう動けません。そのまま息絶えるだけです。児童クラブの「こどものため、しょくいんのために保護者が運営する児童クラブこそ大事だ」と訴えるのは、ゆでガエルを生むだけです。なぜならそのようなクラブは、圧倒的に整えられた組織である児童クラブ運営事業者が打ち出す継続性安定性そして財政基盤人的資源の前に、圧倒的に劣るだけだからです。「育成支援の理念なら負けない!」と言っても、運営する事業者を選ぶ側が「まあ、それはどの事業者も似たり寄ったりですからね。そもそもおたくさんの運営でも保護者からは時折、クレームが役所に来るんですよ」ということであれば、拠り所とする育成支援の質の高さにおいても役所役場にとってみれば大手事業者と五十歩百歩ということです。決定的な差はそこからは生じない、という現実がありがちなのです。

<3つの方策>
 運営支援は3つの方策を訴えてきました。
1 競争の場で勝てる児童クラブ事業者になること。職員の雇用労働条件を改善、向上させるには予算規模を大きくすることが欠かせない。つまり運営するクラブを増やすこと。そのためには、「こどもの育ちを大事にしたい。そのために職員を大事にしたい」という事業者ほど規模の拡大を目指すべきであること。それには単に予算規模を盤石にすることだけではなく、事業者として、組織としての運営を安定させる組織運営機能、つまり本部事務機能、事務局機能、バックオフィスの充実は必要不可欠です。もちろん最高責任者はじめ事業運営に責任を持つ役員は常駐が当然です。そして競争の場で、事業の継続性安定性、財政基盤の充実と人的資源の豊かさをアピールする。こどもの育ちと職員の雇用を大事にする事業者こそ、広域展開事業者に進化発展するべきです。

2 市区町村が児童クラブの運営の質を担保するルールを確立すること。これは競争がある以上、どの事業者が児童クラブを運営するかもわからない中では、どの事業者が競争に勝ってもその地域で行われる児童クラブ運営の質、育成支援の質を担保するためのルールを、競争の勝者に課すことです。そのためにはルールを曲げたり緩和したりすることは禁じ手。その点で、このたびの埼玉県富士見市の事例ー仕様書の配置基準が達成できないから条例基準まで緩和したーことは、許されないことでした。具体的な実務上、ルールを緩和せざるを得なくてもそれに見合ったペナルティは当然に課すべきです。予算の減額はもちろん、次の競争ではよほどのことがない限り勝てないよ、ということです。ルールには育成支援の質を支える事柄が盛り込まれるべきであって、例えば児童数に応じた職員数や、職員の給与賃金の水準も示すべきです。こどもが主体的に過ごせる時間の確保も必要です。月曜から土曜日まで、事業者が決めたスケジュールとプログラムだけを行う児童クラブは、単なる無罪刑務所です。そこにこどもの意思は反映させることができません。いまや刑務所のほうがもっと受刑者の判断で行動できる時間があるのではないのですか。
 このルールづくりは、こどもの育ちと職員の処遇をまじめに考え、かつ、事業規模の拡大に成功して競争に勝ち抜いた児童クラブ事業者になって率先して自治体に働きかけましょう。自治体だけで作れるルールではありません。議員の協力を得るもよし、保護者を巻き込んで官民協働の場でルールを作り上げるもよし。事業者が替わっても、その地域における児童クラブが掲げる、目指す、こどもの育ちの方針、育成支援の理念は安易に曲げられるべきものではありません。プラスアルファの部分で事業者が独自に色を付ける、独自の事業を実施するのはもちろん良いでしょう。そして重要なのは職員の雇用待遇が不利益変更になることがないようなルールづくりです。児童クラブの運営主体が替わるのは職員にとって不利しかない、という切り捨てを運営支援は好みません。ただ現状は切り捨てになる局面が多いので賛成しかねるのですが。市区町村の条例や要綱等で、児童クラブ職員の待遇について明確に規定すれば、事業者が替わっても引き続き児童クラブで勤務してくれる職員はいるでしょう。運営者、経営者が替わってもその場所や施設で働く職員、従業員をあてにすること自体は別段、珍しいことではありません。どんな業界でもありえるでしょう。わたくしは静岡勤務時代に、ヤオハンというスーパーがダイエーに買収される直前の状況を見聞きしていました。新幹線が開通すると地域の在来線が第三セクターなどになりますが、運営主体が替わることは自由主義経済ではありえることです。児童クラブだけが運営主体の変更許すまじ、とは理屈が通りません。何度も言いますが、児童クラブは地域に密接している職員や運営責任者が多い場合、公益を優先するより事業者や従事者の私益を優先してしまう誘惑が多いのです。保護者の利便性より、運営に従事する側の労働条件が楽であることを求める、というケースです。あるいは不祥事があっても内々で処理してしまうということ。そういった、負の面を隠匿、矮小化する動機が働きやすい局面は確実に防がねばなりません。競争による運営主体交代の可能性を完全に取り去ってしまうのは、惰性に流れる運営に、緊張感が欠如した運営になりかねないおそれがあるため運営支援は反対です。それは単年度の委託契約とて、実は同じことですが、そこは児童クラブ業界に意識されにくいのはわたくしには不思議です。「委託契約は継続を前提としている」としたり顔で解説する児童クラブの識者もいましたが、「何いってんだコイツ」としか、経営者であったわくたしには思えませんでしたが。
 どの事業者でもクラブ運営の質を確実に支える、守るルール作りは欠かせません。

3 保護者そして市民への理解向上。これはもう本当に重要です。しかし一朝一夕にはできません。「児童クラブ? 預かってくれればそれでいい。それ以上求めないから、こちらにも要求してこないで」という保護者に、「児童クラブで過ごす時間の質こそ、こどもの育ちに大事なのです」と真正面から話したところで「そっちの仕事なんだからうまくやって」と遮断されておしまいです。これは地道に地道に、日々のこどもとの関わり、保護者との関わりをもって、保護者が1人でも多く、児童クラブの運営、ことに児童クラブで営まれている育成支援の質に興味関心を向けてくれるような発信、巻き込みを児童クラブ側ーその最前線はなんといっても現場の職員ーが継続的に地道に行っていくことが欠かせません。そうして、「この事業者だからこういうクラブであり続けられるんだ」という意識を保護者に感じてもらうことが、競争の場における強い支持になります。競争がありました、今までの運営者は選ばれませんでした、という局面になってから「今までの事業者がよかったのに」と保護者が叫んでも、法令や手順通りに従って正当に選ばれた事業者を追い払うことは、そちらのほうが不当な行為となりかねないことを考えねばなりません。選定手続きに不備があるという場合は、選出された事業者に正当性があるかを問うことはできましょうが、それにはそもそも選定手続きや審査内容を合理的に判断できるだけの知識が必要ですし、それは最終的には法廷の場で白黒つけるということです。そんな後手後手に回る前に、「わたしたちの街のこどもの育ちは何を求めているのか。どういうこどもの放課後の時間を作りたいのか、その作りたい放課後の時間を実現させるためにわたしたち大人は、社会は、何を用意して提供するべきなのか」を、保護者有権者が考えることができてこそ、初めてその地域は「子育て支援を重視しているまち」と呼べるはずです。単に、児童クラブの待機児童がいないとか、児童クラブに全員入れますよだけではなくて、「うちの自治体では、こどもたちの育ちをこう考えている。保護者と児童クラブ事業者とも一緒に作っているんだ」と、こどもの放課後児童行政に関わっているすべての者が言えるだけの土壌を備えるために、児童クラブを運営する立場、支える立場の者は積極的に関わっていく必要があると、わたくしは考えます。
 ですからね、あちこちの自治体で「子育てするなら〇〇〇」とうたっていますが、児童クラブの運営事業者の面々を確認するとわたくしは「なんだ、小学生の児童については事業者に丸投げか。単なる看板だけか」と吐き捨てたくなる局面もあります。全国的に知られる子育て応援地域も「ああ、あの事業者さんにほとんどゆだねているのか。育ちの質なんてまるで無関心なのね、ふふん」ということです。もちろん事業の継続性安定性財政基盤そして人的資源のみに着目しているのでしょうが、「子育て応援〇〇」とうたうなら「質にも踏み込めよ」と、文句を言いたくなるのです。

<まとめ>
 児童クラブは事業として、都市部であればまだまだ事業拡大の余地がたっぷりあります。小学生4人に1人が利用するという平均値ですが、それは「あと3人、それは高望みでもあと1人利用して4人に2人の利用率になれば」ということは期待できます。それとて市場は倍に拡大するということです。
 そこには「収益を得られる可能性」があるということ。よってこれからも先のプレスリリースにあるように、児童クラブで事業をがっちりやっていく、という事業者は数も増えるでしょうし、既存の参入済事業者はさらに規模を拡大するでしょう。それが産業化に飲み込まれた児童クラブのリアルです。
 その現実にただただ「そんなんじゃだめだ」と叫ぶだけでは、何も変えられません。

 自分たちが望む児童クラブを、こどもの育ちの時間を、そして職員の雇用労働条件を改善するなら、自分たちが事業を継続して安定的に続けられるように進化発展するしか道がないことを理解せねばなりません。産業化に飲み込まれた児童クラブの世界の中で、こどもと職員そして保護者を考えた運営をしたいなら、そういう運営をしたい事業者がのし上がっていくことがまず必要。そのうえで、各方面に影響力を発揮できるようになって、ルール化や意識の向上にがっつり向き合えばよい。そういう戦略を持った児童クラブ事業者がどんどん増えることを期待してやみません。

 

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネルが開設されました。チャンネル名は「こどもを守る弁護士チャンネル」です。2026年5月30日に第2回の動画が公開、配信されました。こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルです。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
 なお第1回(2026年5月16日)の「こども性暴力防止法を考える」が配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s

 放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf

(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf

 「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」にて2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事が公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。わたくし萩原が編集部の依頼に応じて寄稿しました。ぜひご高覧ください。
 なお、近く新記事掲載が予定されています。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

投稿者プロフィール

萩原和也