大学経営に大逆風。行政と連携して放課後児童クラブ(学童保育所)「就業プログラム」を構築しては?
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
少子化のため大学経営に大逆風が吹き荒れています。とりわけ少子化による市場の縮小が懸念されているのか保育系の大学や学部の閉鎖のニュースが相次いでいます。このままでは新卒保育士がかなり減ってしまうのではないでしょうか。一方で放課後児童クラブは、地域差はありますがまだまだ右肩上がりのニーズ増で、放課後児童支援員という公的資格を得た人材を求める傾向はさらに強まるでしょう。そこで、大学経営に放課後児童クラブコースを設けてみては、という意見です。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<国は大学を減らすのか>
少子化による定員割れの大学が相次いでいるとか。先日、財務省は大学の数を今後減らしていく意向であるという報道がありました。読売新聞オンラインが2026年4月30日5時に配信した「私立大学250校削減案、財務省が2040年目標…文科相「機械的判断ではなく分野や地域バランスが重要」の見出しの記事を一部引用します。
「少子化で私大の約半数が定員割れに陥っているためで、財務省は今月、2040年までに少なくとも250校、学部定員にして14万人程度を減らす必要があると、初めて数値目標を公表した。文部科学省も規模の適正化は不可避との考えを示しており、今後は分野や地域別の私大規模見直しが焦点となる。」
「国立社会保障・人口問題研究所の推計では、18歳人口は35年に100万人を割り込み、40年には74万人まで減る。」
(引用ここまで)
私立大学の約半数が定員割れというのは驚きです。特に地方の私大が苦境なのでしょう。テレビ報道でも北陸地方にある、法学部を設置している大学の閉鎖が伝えられていました。法律こそ社会人として活躍するには最も学んでおきたい分野なのにと、法学部卒としてはちょっと残念です。
保育士や幼稚園教諭を輩出する大学等の減少も深刻なようです。こども家庭庁のホームページにある「保育人材の確保のための総合的な対策」(基礎資料(人材確保).pdf)には、「待機児童は大幅に減少してきているが、保育士の有効求人倍率は2.42倍(令和6年4月)と全職種平均(1.18倍)と比べても高い水準となっている中で、配置基準の改善や「こども誰でも通園制度」の制度化に伴い、今後も保育士の確保は必要となる
※令和7年10月実績:保育士の有効求人倍率3.10倍(全職種平均1.20倍)」
「【新規資格取得支援】
○若年人口が減少していく中で、保育士養成課程を置く大学、短大、専門学校への入学者数が減少傾向にある。学生の保育職への就職率の維持・向上も課題」
と記載されています。
放課後児童クラブはもとより慢性的な人手不足(=労働力不足)かつ人材不足(=すぐれた資質の職員確保が困難)です。放課後児童支援員は、放課後児童クラブに配置が必要とされる公的資格ですが、最新(令和7年)の実施状況調査によると、保育士の資格を持つ者が基礎資格としては22.7パーセントで2番目に多く、教員免許は21.1パーセントで3番目に多いのです。保育士、教員の資格や免許を持つ人が減ると、じわじわと放課後児童クラブでの働き手も減っていくことになりかねません。なお放課後児童支援員の基礎資格の最多は厚生労働省令設備運営基準第10条第3項三号の「「高等学校卒業者等」という。)であって、高校卒業以上で二年以上児童福祉事業に従事したものの、36.3パーセントです。
保育や教育の現場で、資格がある人が就業しないのは少子化の影響よりも、雇用や待遇の面で魅力ある就職先、就業先として考えられていない面のほうがより重大な要因だとわたくし萩原は思うのですがね。ただ児童クラブは「最初の就職先」よりも「保育所や幼稚園、学校での勤務や自身の子育てを経てその次の転職先」として選ばれることが多いという感触をわたくしは持っています。(それは児童クラブ事業者は小規模や零細規模が多いので学生が就活先としてリサーチする対象になかなか児童クラブ事業者が含まれないということです)
いずれにせよ、保育士や教員免許を得ようという人が減り続けるなら、いずれ児童クラブにも影響は及ぶでしょう。そうならない今のうちに手を打ちましょう。
<大学と行政が連携した取り組みを>
学生の最大の関心事は「ちゃんとした就職先が見つかるか」でしょう。よほどの難関大学で目指すのは特別な職種、ということでもなければ、大学や短大の卒業よりも「仕事が見つかるか」のほうがより重大なことです。
ところで児童クラブはほとんどの場合、いつでも求人応募大歓迎です。実際には新卒者より圧倒的に中途採用、それも20代半ばから50、60代までと幅広い年代で、「生活費の足しに」「資格を活用して」「子育て経験を生かせるなら」ということで求人に応募することが多いでしょう。中途採用が多いのはとにかく人手が足りないから、新卒者の採用で児童クラブ業界が蚊帳の外なのは新卒者を定期的に採用する事業者があまりないこと、新卒者を採用しても教育研修して育成するプログラムに割ける事業者のパワー、リソースが足りないからです。クラブの現場では圧倒的に新卒者=未経験者よりも、子育て経験を含んだ経験者が歓迎されます。
事業者側にも「新卒を採用して長く育てるよりも経験者を相次いで採用したほうが楽。給与体系も長期雇用を前提としてない」という事情が見え隠れします。「仕事の質の評価」をとかく嫌う児童クラブの世界ですから給与はおしなべて年齢給、30年も働けば育成支援の理解が足りなくても基本給30万円以上。そういう職員は雇う側からすれば困るのです。
人手が足りないのになかなか求人応募が少ない児童クラブ。この状況を改善するには、「新卒者を放課後児童クラブの有資格者とする」「毎年、大学側から有資格者を送り込む」「受け入れる側も教育研修プログラムを確立させ、最初の仕事として学生に納得させられるよう仕事の魅力を高める努力をする」、この3つを同時並行的に進めることが良いと、わたくしは考えます。
つまりこういうことです。
「大学側は放課後児童支援員の基礎資格となる学部学科で学生をしっかり教育する」
「大学の最終在籍年次に放課後児童支援員認定資格研修を受講させる」
「学生のうちは大学と提携している児童クラブ事業者にてアルバイトをし、児童クラブの世界に触れる。実務に少しでも触れておく」
「児童クラブ事業者側は、雇用労働条件をしっかりと整える。給与の額をなるべく頑張って引き上げるのは当然として、新卒者が何より重視する休日休暇を充実させる。採用初年度の4月1日に年次有給休暇を5日でもいいので付与するなど、ワークライフバランスを重視した労務管理に徹する」
わたくしはこれを「放課後児童クラブ就業プログラム」と名付けます。
放課後児童支援員の資格は、厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」第10条第3項5号において、「学校教育法の規定による大学において、社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学若しくは体育学を専修する学科又はこれらに相当する課程を修めて卒業した者」(一部省略あり)が受講できますが、こども家庭庁のQ&Aには「大学等で一定程度学修した者で、研修実施主体(都道府県、指定都市又は中核市。以下、「都道府県等」という。)が適当と判断した場合に可能となる。例えば、大学等の最終学年の在籍や資格取得が見込まれる状況が考えられる。」と、大学の最終学年で受講が可能であることを示しています。これは、基礎資格の中でもいわゆる「学部要件」とされる学部学科を卒業と同時に放課後児童支援員の資格が得られることを示しています。
わたくしはかねて、保育士と同様、大学等の養成校システムを放課後児童支援員の資格にも当てはめ、卒業と同時に放課後児童支援員の資格が得られる仕組みを早急に設けるべきだと訴えてきていますが、大学の講義ではなく認定資格研修を受ければ卒業と同時に放課後児童支援員の資格が得られる仕組みにはなっています。物足りないですが活用しない手はありません。
できれば学部要件の学部学科にとどまらず保育士や各種教員免許を取得できる学部学科に在籍している学生に、保育士や教員免許の取得をさせながら放課後児童支援員の資格も認定資格研修を受講することで得てほしいと考えます。
この仕組みは大学等学校側だけではだめで、認定資格研修を催す都道府県や指定市等、児童クラブ事業者そして事業者がある市区町村の、広域自治体ー基礎自治体ー大学等学校ー児童クラブ事業者の4つの立場が連携提携して実施することで、効果が出るものと私は考えます。
都道府県は認定資格研修において学生の受講に配慮する、オンラインも活用する。
市区町村は地域にある大学や短大に働きかける。地域内の児童クラブ事業者の事業内容の質の向上に留意する。
大学等は学部学科のコースに放課後児童クラブを対象とするコースを新設する、あるいは放課後児童クラブを学ぶ講義を設ける。地域の児童クラブに学生がアルバイトすることを推奨する。
児童クラブ事業者は学生のアルバイトを積極的に受け入れるとともに、優れた人材を講師として大学等に派遣する。採用した人材が長く働き続けたいと思えるような魅力的な教育研修プログラムの用意、給与や手当の準備、休日休暇の整備を行う。
都道府県が取りまとめ役になって、児童クラブの人材を現場に送り届けられる仕組みを構築するのです。それが結果的に、大学側の経営を支えることになります。すぐれた就職先に安定して人材を輩出できるのであれば、入学者も増えましょう。児童クラブは幸い、地域によって差はありますが、当分は成長産業として謳歌できます。何せ、小学生の4人に1人の利用ということは、もっともっと児童クラブが利用される潜在的可能性を残しているということです。そもそも待機児童が生じている地域は児童クラブそのものが足りないのですから。
仮にこの就業プログラムが実現するならば、国もこのプログラムに参加する大学に何らかの補助金を創設してほしいですね。
<ミスマッチ防止に効果的だ>
上記のことは、児童クラブの世界によくある「ミスマッチ」を避けるために極めて有効です。児童クラブの就業におけるミスマッチはとても多く、「事業者の理念は自分の目指す健全育成、育成支援に合致すると思ったけれど実際に採用されて働いてみると、微妙に何かが違う。クラブの雰囲気が自分に合わない」ということで、採用後ほどなくして離職してしまうことが、実に当たり前になってしまっています。3年続けば御の字の世界です。児童クラブはあちこちにあってそのあちこちで常に求人応募していますから、いわゆる雇用の流動性が極めて高い。放課後児童支援員の資格さえ有していれば、辞めた次の日に別の事業者で働き始めることが実に容易です。それがまた、「ここがダメならまた辞めて他に行こう」という、あえて厳しく言えば「我慢せずに次から次へと転職する」人を生み出してしまいます。
学生時代のアルバイトで児童クラブの実態に触れていれば、新人として正規採用されてから「そんなことだったの?」という戸惑いや驚きは相当減るでしょう。学生バイトといっても、こうした就業プログラムにてバイトしている者にはクラブ事業者も積極的により責任のある仕事を経験させることで、正規職員、常勤職員として採用されて初めて「児童クラブってそういう世界だったんだ」というギャップに襲われることが減るでしょう。
だいたい、数はそれほどないのも事実ですがちゃんとした児童クラブ事業者は初任給25万円台を実現しているところもあるんですよ。そういう魅力ある雇用労働条件の児童クラブ事業者が増えれば、安定した就職先として児童クラブが就活生の中で選択肢として選ばれる可能性が高まるのですから。
大学側には学生集めと安定した就職先の確保を、クラブ事業者には良質な人材かつ有資格者の定期的な確保を、行政自治体には公の事業の質的安定による地域の子育て支援の充実と地域発展の下支えに役立つのが「放課後児童クラブ就業プログラム」です。ぜひ、取り組んでほしいと運営支援は期待します。児童クラブ側も声を上げて求めていきましょう。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
☆New!
こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネルが開設されました。このほど、第1回の動画が公開されました。放課後児童クラブの関係者さん、とりわけ運営や就業で関わっている方には必見です。児童クラブに運営者としても関わってこられた鈴木愛子先生ももちろん参加されています。チャンネル名は「こどもを守る弁護士チャンネル」です。2026年5月16日に「こども性暴力防止法を考える」が配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s
☆
放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf
(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf
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「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」にて2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事が公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。わたくし萩原が編集部の依頼に応じて寄稿しました。ぜひご高覧ください。
なお、近く新記事掲載が予定されています。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)



