(緊急投稿)学童保育の補助金増額の報道。喜ばしいですが、2つの問題を解決しない限り、効果は半減します!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等の依頼をご検討ください。

 11月4日の法人設立記念日を前に、今週の当ブログでは「学童保育が抱える課題や問題を、改めて考えよう」としてシリーズ投稿を行っており、本日はその3回目の予定でしたが、1日朝のNHKニュースで、学童保育の補助金について報道された件を緊急に取り上げます。シリーズは明日以降再開します。

 その報道は、学童保育所で常勤職員を2人配置している際の補助金を引き上げるという内容です。NHKニュースサイトが1日午前6時33分にアップした記事を引用して紹介します。
「学童保育で働く職員の人手不足の解消につなげようと、こども家庭庁は、常勤の職員を1クラス当たり2人配置した施設には補助金を引き上げ、人材の確保や運営の安定化を後押ししていく方針を固めたことがわかりました。こども家庭庁は早ければ来年度の当初予算に関連する費用を盛り込むことにしています。
 放課後児童クラブ、いわゆる学童保育は自治体が事業所に委託するなどして運営していて、国は1クラスで受け入れる児童を40人以下としたうえで職員を2人配置することなどを、参照するべき基準として示しています。職員が常勤か非常勤かの規定はなく、2人を配置した場合には1クラス当たり年間およそ500万円が運営費の補助金として自治体を通じて交付されますが、低賃金や人手不足を背景に常勤の職員を確保することが難しいという声が上がっていました。このため、こども家庭庁は、1クラスに常勤職員を2人配置した場合については補助金の額を引き上げ、人材の確保を後押しする方針を固めたということです。」(引用ここまで)

 この記事で示されているポイントは、「1単位」で「常勤2人配置」の場合の補助金を引き上げる、ことです。

 つまり、放課後児童クラブにおける質の高い運営を念頭に常勤職員2人を配置している場合のみ、補助金の増額が適用となるということです。つまり、全国の放課後児童クラブでよくある「常勤1人、あとは非常勤職員でカバー」する職員配置形態のクラブは対象外ということを意味します。

 もっとも、非営利法人で運営されているクラブは常勤2人態勢で運営されている場合も多いので、そういう事業者にとってはまさに朗報です。また、特に営利企業が指定管理者となって運営している民営クラブでも、この補助金の増額をきっかけに、これまでの常勤1人プラス非常勤から、常勤2人態勢へ転換をする事業者も出てくる可能性があります。

 いずれにせよ、この報道内容が事実であれば、これまで、常勤2人態勢でクラブを運営していた事業者は、高いレベルでの育成支援の実施を念頭にしていたでしょうから、そういう事業者が補助金増額の恩恵を受けることになるのは、私は非常に喜ばしいことだと評価します。しかも、学童保育業界における人手不足の原因が低賃金にある、という当然の要因に、やっと向き合ってくれたという思いがあります。

 この補助金(運営費部分)は、常勤1人300万円と非常勤2人分(1人分約180万円)で計算されていましたから、新たな補助金は常勤2人600万円+非常勤1人分となる可能性があり、単純に120~180万円の増額が期待されます。もちろん、まだまだ足りません。はっきりいって倍増でもしないかぎり、質の高い人材の獲得が難しく、あるいは離職を防ぐ効果もまだまだ不十分です。こども家庭庁には、これを機に、補助金のさらなる増額に踏み込んでいただきたい。

 さて、この補助金アップですが、次の2点も同時に実施しないことでは、実際にクラブで働く職員が恩恵を受けられない可能性があります。喜びも、効果も半減してしまいます。2点とは次の通りです。
1 補助金単価を引き上げても、それに対応できない市区町村が出てくる可能性があるので、市区町村の補助金負担割合を引き下げるべきである。
2 営利企業を指定管理者としている形態では、補助金の増額分が事業者の利益として吸い上げられる、いわゆる「補助金チューチュー」になりかねず、市区町村がクラブで働く者の賃金水準を公契約条例で規定する必要がある。

 この上記2点に速やかに取り組まない限り、せっかく補助金を増額しても、クラブで働く職員に増額分がしっかり届かない可能性が残ったままです。
 学童保育業界の方なら承知のことでしょうが、学童保育の補助金は国、都道府県、市区町村が3分の1ずつ負担しています。ここで、市区町村が財政負担の重さを理由に学童保育への予算を抑制した場合、それに応じた補助金額の獲得に留まってしまいます。現実的に財政事情が厳しい市区町村が多いのですから、市区町村の補助金負担割合を6分の1(現在の半分)にでもしないと、補助金増額分を満額獲得しようとする市区町村が増えない可能性があるのです。こども家庭庁には、ぜひともこの補助金負担割合を見直していただきたいと、強く要望します。

 また、市区町村が補助金の増額分を満額獲得しても、それを指定管理者に増額分渡したとして、しっかりと職員の賃金水準引き上げに反映されているかどうかを確認する必要があります。「給与規程を変えていないから」といった理由で、従前の賃金水準のままでは、せっかくの増額分が現場で働くクラブ職員に届きません。ここはぜひとも、市区町村が、クラブで働く職員の賃金水準を確実に引き上げられるよう、指定管理者を指導監督し、公契約条例を制定して制度上でも職員の賃金水準引き上げが確実となるようにするべきです。

 こども家庭庁には、上記2点について取り組んでいただきたい。また、「運営本部の職員に対する補助金」の増額にも引き続き取り組んでいただきたいと合わせて要望します。学童保育の事業者についても、これを機に、常勤2人態勢を積極的に取り入れてほしいと弊会は要望します。

 余談ですが、このNHKニュースの記事を書いた方は、「放課後児童クラブ、いわゆる学童保育」と書いていることから想像できますが、学童保育の複雑な世界についても十分お詳しい方だと推測します。メディアの世界に、正しい知識を持った方が増えることは大変喜ばしいことです。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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