まさかの事件。放課後児童クラブ(学童保育所)に勤める者は改めて児童虐待への対応を確認しよう。自戒も。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 まさかの衝撃的な事案が2026年5月25日の夜に報じられました。現役のプロ野球チーム監督が逮捕、それも自身のこどもへの虐待による暴行での現行犯逮捕でした。すでに釈放され今後は任意の捜査になるとのこと。放課後児童クラブは、言わずもがな、こどもの人権を守る砦です。「こどもの人権の砦」として、このショッキングな事案をとっかかりに、児童虐待について改めてクラブ内、事業者内で考えてみてはどうでしょうか。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。) 

<まさかの報道>
 報道に接して目と耳を疑いました。それぐらい驚きでした。NHKのニュースサイトから記事を一部引用します。2026年5月26日4時36分に更新された「巨人の阿部慎之助監督を逮捕 18歳長女に暴行か その後釈放」の見出しの記事です。
「捜査関係者によりますと25日、東京 渋谷区の自宅で同居する18歳の長女に押し倒すなどの暴行を加えた疑いが持たれています。25日夜、都内の児童相談所から「娘が暴行を受けている」と110番通報があり発覚したということです。当時、長女と15歳の次女がけんかをしていて、止めに入った際に暴行したとみられるということで、調べに対し容疑を認めているということです。」(引用ここまで)

※追記(2026年5月26日11時54分):読売新聞オンラインが次のように報じました。「娘に対する暴行容疑で逮捕された読売巨人軍監督の阿部慎之助容疑者(47)は26日午前、山口寿一オーナーと面会し、監督を辞任すると申し入れ、受理された。阿部前監督は「伝統ある巨人軍の監督の名を汚した」と謝罪した。」(11時26分にヤフーニュースに配信の記事から一部引用)

 昭和世代に幼少期を過ごした者には多いのですが、物心ついたときから夜のテレビはほとんどプロ野球中継それも巨人戦でした。つまり半世紀、プロ野球をテレビ(ごくたまに東京ドームで)で見てきたわたくし萩原です。紳士であることが信条だったはずの読売巨人軍で、それも現役の監督が一時的だったとはいえ身柄を拘束されるとは、こんな驚き、そうそうないです。

<時代は変わった>
 この事案について身柄拘束するまでのことか、という投稿もX(旧ツイッター)で見かけました。その件の是非を判断できるだけの知見を持ち合わせておりませんが、この事案が確実に示したものがあります。それは、「著名人であっても、こどもへの暴力行為は、逮捕されることもあるという犯罪行為であることを世間に知らしめた」ということです。

 時代は変わりました。確かにわたくしがこどもだった昭和の終わりごろでもまだ、親がこどもを鉄拳制裁するということは「そのどこが悪いのか? しつけじゃないか」という意識が圧倒的でした。小学校でも教員が児童を普通に叩いていました。わたくし自身を振り返っても、小学そして中学と、さんざん教員に殴られました。なにせ、理屈屋で一言多い性格でしかも気取っている、ちょっとだけ成績が良い、というのはどうにも殴りたくなる存在なのでしょう。ただ断っておきたいのは、当時も今も「教師だからってこどもを殴るのは絶対に良くない。犯罪じゃないか」と思っていましたが、(これは法令的に問題でも個人の自由意志として)「やっちまったよ。周囲への悪影響そして自身への将来へのおごり高ぶりをなんとしても防ぎたい先生の厳しくも先を見据えた行為なのだ」とげんこつで殴られることを受け止めていた自分がいたのも確かです。
 ええ、絶対にそんなことはもうあってはなりません。殴る以外の方法で教え諭せばいいだけの話です。ただ当時、1970年代から1980年代の初めまでは、まだそんな時代遅れの風潮があったという思い出話です。ちなみにわたくしの感覚では、1980年代も半ばになると、学校で教員がこどもに暴力をふるうというのは絶対悪、という意識が社会に根付いたと感じます。とりわけ、1986年の「中野富士見中いじめ自殺事件」の衝撃は大きかった。あの悲劇が、学校現場における法秩序の徹底を社会が必要だと認識した、一大転機だったかと個人的には同時代が青春だったものとして強く感じます。

(追記(日時は前と同じ):虐待被害の当事者はAIに相談して、児童相談所に連絡することを勧められたので児相に連絡したという報道があります。またこれに関して、児相に連絡した監督のこどもを責める内容の意見のコメントがSNSにとても多く投稿されています。こどもが児相に連絡しなければ監督辞任までならなかった、というものです。これは危険な流れです。こどもが助けを求めて児相に連絡することは実に正しい行動です。非はありません。「こどもは軽々に児相に連絡するな」という意見には断じて反対です。虐待を受けたと感じたこどもは、これからはどんどん児相、警察に連絡してください。その先に判断するのは別の立場の者や組織です。連絡したこどもは何ら心配はいりません。なお、職を自ら去ることの判断は大人としての判断ですから、この事案で辞任は大げさだとする意見もわたくしは違うと考えます。)

<児童クラブも家ならば>
 こどもたちの第二の家とも称されることがある放課後児童クラブです。絶対にこどもへの虐待はあってはなりません。性的虐待もどんな虐待もダメです。いちおう、おさらいしておきましょうか。さいたま市のホームページより抜粋します。
「親や養育者が児童に危害を加えたり、不適切な育て方をすることを児童虐待と呼び、法律で禁止された行為です。児童虐待は、次の4つに分けられます。
身体的虐待
殴る、蹴る、やけどを負わせる、溺れさせる、家にいれない、など
心理的虐待
「死ね」などの暴言を浴びせる、兄弟間で明らかな差別をする、無視、夫婦間などの暴力を児童が見る、など
性的虐待
わいせつな行為をする、性器や性交を見せる、アダルトビデオなどのポルノを見せる、など
ネグレクト
食事を与えない、家を不衛生にする、世話をしない、学校に行かせない、夜間児童だけにする、など」
「通告は法律で定められた義務です。(児童福祉法第25条、児童虐待防止法第6条)
迷わず、児童相談所や各区役所こども家庭センター(支援課)などへ通告(連絡)してください。
危険が迫っているときは、すみやかに警察に通告(連絡)してください。
(注意)通告(連絡)は匿名で結構です。
通告をいただいた方の秘密は守られます。
確かな証拠がなく、間違っているかもしれない、といった状態でも、通告をしてください。
虐待の通告(連絡)は、児童を守り、ひいてはその親や家族を守ることになります。」
(引用ここまで)

 児童虐待の状態を公的機関に連絡する通告は一般市民の義務となっています。もちろん児童クラブ職員だって同じです。もっといえば虐待の早期発見に努力することが課せられています。放課後児童クラブ運営指針解説書のPDF64ページを抜粋します。太字はわたくしが行った修飾です。
「放課後児童クラブは、学校や地域の様々な社会資源との連携を図りながら、保護者と連携して育
成支援を行うとともに、その家庭の子育てを支援する役割を担っており、その取組は児童虐待の発
生予防、早期発見・早期対応にもつながる
ものと考えられます。
また、児童虐待防止法第5条では、「学校、児童福祉施設、病院(略)その他児童の福祉に業務
上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師(略)その他児童の福祉に職務上
関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めな
ければならない」とされ、更に同法第6条では、「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者
は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を
介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」と
定められています。したがって、放課後児童クラブについても、この児童虐待の早期発見の努力義
務と通告義務が適用されます
。児童虐待の相談は市町村が第一次的な窓口となりますが、児童相談
所に直接通告することも可能です。
なお、児童虐待防止法第6条第3項では、この通告に当たって児童虐待が疑われるこどもの個人
情報を児童相談所等に伝えることは、秘密漏えいや守秘義務違反に当たらないとされています。」(引用ここまで)

 大雑把にまとめれば、「こどもがあらゆる場面、環境で、虐待を受けていないかどうかを常に留意し把握に努めること」が児童クラブ職員の務めです。運営者も同様です。これは、「虐待を感知するレーダーアンテナの感度を著しく上げておこう」ということです。
 こどもの体にあざがある。明らかに食事をとっていない。服も何日も同じのを着ている。いろいろな場面があります。こどものその時々の状態や反応を見て、「あれっ? これは??」と疑問に思える感覚を持つことが児童クラブ職員にとって必要な業務上の技能です。

<通告は機械的に>
 児童クラブで働いたり運営に関わったりしたことがある人なら、虐待の最前線にいるという緊張感を感じた局面に身を置いたことがある人も多いでしょう。児童相談所や警察に連絡するかどうかを判断する際に、戸惑ったり躊躇したりしたことがある人も多いのではないでしょうか。迷わず即110番ができるのは経験を積まないとちょっと難しいのではないでしょうか。
 「この連絡で、事態が大きく変わる」ということが明白なだけに、「自分の判断に間違いはないか」と自問自答する場面にちゅうちょする、ということです。まして、明らかにこどもが虐待を訴えて安全地帯に逃げ込みたいと訴えているならそんな戸惑いはほとんどないにしても、「こどもは明確に言わない。でも明らかにこれは虐待を受けた証左だ」というときには、「でももしも?」と逡巡することは、それはあるものだとわたくしも考えます。

 ですが、「やらないで失敗するよりやって失敗」のほうがいいんです。特に人の命がかかっているときには。軽いたとえ話でしかも引用する人が人だけに恐縮ですが、阿部監督は「迷ったらど真ん中に投げろ」というのが口癖だったとか。思い切って正攻法でやるのがいいんです。

 市区町村の役所には児童相談所に対応するいわゆるカウンターパートの担当者がいるはずです。その方と児童クラブ組織としての連携を密にするよう日頃から心がけておきましょう。児童相談所はあまりにも多忙なので担当者を招いて情報共有や情報交換のルートを構築するのは至難の業ですが、市区町村の役所役場を通じて、そして学校側とも虐待に関する情報のルート構築をするのが、児童クラブ運営を担う立場にある者の仕事と理解して実践しましょう。
 児童虐待の事案に詳しい弁護士を招いて少なくとも年に1回は、研修を受けましょう。児童虐待の現実や、どのように解決されていくかを知ることはとても重要です。それには弁護士から学ぶのが良いでしょう。

 こうして児童クラブ運営組織を挙げて児童虐待許すまじ、絶対に見逃さないという意識が根付いていけば、万が一の事態のときには機械的につまり事前に決めた対応の方針に従って粛々と対応できるのです。「もしも空振りだったらどうしよう」と思う場面は減ります。

 わたくし自身、そう思えるようになるには多くの失敗がありました。その失敗1つ1つに、虐待から救えなかったこどもたちの涙があります。個々の例を挙げることは守秘の問題からしませんが、こどもが保護者からの暴力で大けがを負った事案もありました。そこに至るまでに立場上、関わることができたはずなのに判断の遅れや甘さから悲劇を招いてしまったことは今も痛恨の極みの1つです。

<まとめ>
 いかなる事由があろうと、こどもへの大人からの暴力、まして監護の責を負っている立場にいる者からの暴力、虐待は断じてあってはなりません。「自分が悪かったから仕方ないんだ」と、こどもに思わせてはならないのです。
 児童クラブは、こどもを守る人権の砦として、こどもへの虐待を早期に発見するために常時、集中してください。まして職員がこどもを虐待するなんてもってのほかです。児童クラブの運営者は、、こどもへの虐待を抑止する、早期発見する、どう対応する、といったいろいろな局面に対応できるように、ちゃんと予算を投じて弁護士など専門家から常に学んでください。

 冒頭に紹介した衝撃的な事案が、少しでもこの社会においてまだまだ残っている、「こどもに対して親が懲戒することはしつけであって必要悪だ」的な、あってはならない考えや意識を完全に払しょくするためのきっかけとなればとわたくしは考えます。本当に残念なことでしたが、この残念さを未来への進歩に変えていく知恵を人間は持っているはずです。

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
☆New!
 こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネルが開設されました。このほど、第1回の動画が公開されました。放課後児童クラブの関係者さん、とりわけ運営や就業で関わっている方には必見です。児童クラブに運営者としても関わってこられた鈴木愛子先生ももちろん参加されています。チャンネル名は「こどもを守る弁護士チャンネル」です。2026年5月16日に「こども性暴力防止法を考える」が配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s

 放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf

(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf

 「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」にて2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事が公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。わたくし萩原が編集部の依頼に応じて寄稿しました。ぜひご高覧ください。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

投稿者プロフィール

萩原和也