怒りの緊急告発!車いすの子どもの受け入れを不当に拒む放課後児童クラブ事業者と自治体がある。人権侵害だ!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 2月25日夜、旧ツイッター(X)を経由して私へ相談が寄せられました。ブログのタイトルに示したように、2024年4月に新1年生となるお子さんが、車いすであることを理由に放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の入所を断られて途方に暮れているという内容です。詳細をおうかがいしましたが、本当にひどい。相談主は放課後児童クラブ事業者と自治体に不当にひどい扱いを受けていることがよく分かりました。明確に各種法令の趣旨に反しています。
 なお、この件については私は相談主の方から、お名前や、お住まいの自治体、放課後児童クラブ事業者名や、関係先との交渉経緯についてすべて教えていただきました。その上で、今回のブログを記しています。私は、明らかに自治体と放課後児童クラブ事業者から差別的対応を受けていると確信できたので、相談主の方には、直ちに報道機関に情報提供することを勧めました。相談主もそのようにするということです。実名を出して社会に訴えることも構わないというスタンスです。メディア、報道機関の方は弊会にお問い合わせいただければ、相談主の方へお取次ぎいたします。

 簡潔に概要を示せば、病気のため車いすを使用しているお子さんが小学校に入学するにあたり、学校と隣接している(事実上、一体として整備されている)公設民営の放課後児童クラブに入所を申請したものの、事業者から入所を断られた。その理由は「人が足りない」「忙しくなるから」「車いすの子どもは他の(入所)児童から、いじめられるから」と、まったく合理的なやむを得ない理由とは判断できない内容でした。そのため相談主は自治体に連絡し対応を求めたところ、自治体からは「障害者差別解消法は、放課後児童クラブは対象外である」「令和6年度の予算はもう組んであるから今から対応はできません」という趣旨の回答があり、放課後児童クラブに入所できない代わりに依頼もしていないのに放課後等デイサービス事業所について案内をしてきた、というものです。

 厚生労働省が公表している障害者差別解消法の資料には、合理的配慮をすることが求められる事業者として、社会福祉法第2条に規定される事業者が挙げられています。放課後児童健全育成事業も同条に規定する第2種社会福祉事業ですから、自治体が相談主に対して「障害者差別解消法の合理的配慮をする必要がない」というのは誤った解釈であるのではないでしょうか。たしかに、「民間事業者」は合理的配慮が義務的対応となっていませんが、それもちょうどこの4月から義務化となります。であれば、4月に入所する相談主のお子さんに対しては、差別的対応を解消するための合理的配慮を行う義務が生じるのではないでしょうか。
 もとより、この法律が適用される、されないにかかわらず、車いすを使っているという理由だけをもって、児童福祉法に規定されている児童福祉の重要なサービスである放課後児童クラブを利用させないことは、絶対に許されないことです。「人が足りない」というなら雇えばいいのです。人を用意して対応することが求められます。
(なお、相談主さんから提供された関係資料には、この事業者が決して人が足りないという状況ではないことも示されています。職員同士が業務中に談笑して子どもをほったらかしにしているとの証言が含まれているのです)

 忙しくなるから受け入れない、という拒否理由に至っては、あきれ果てます。近い将来、この自治体の名前と事業者名は明らかになるでしょうが、この事業者は全国各地で放課後児童クラブの運営を委ねられている事業者です。そんな事業者を高く評価して運営を委ねている市区町村は、はっきりいって、「子どもの幸せをまったく考えてない、最低レベルの市区町村」であると私は断言します。
 しかもその事業者と同調して「今更、職員を増やす状況になっても、うちは対応しません」とにべもなく断る自治体です。この自治体の隣接自治体では、放課後児童クラブにおいて車いすの子どもを受け入れていることを相談主は自治体に知らせていますが、それでも対応は変わらなかったということです。
 さらにいえば、都道府県の担当者にも相談主は連絡をしたようですが、都道府県の担当者は、市区町村の担当者に回答させます、だけで終わりです。基礎自治体がまるで積極的に児童福祉に取り組む姿勢がない上に、広域自治体もまた、まったく無気力な対応です。

 これが、この国がめざすという「こどもまんなか社会」の実態です。

 こども家庭庁は、お仕着せの、何もかも準備が整った視察先を訪れて自己満足のコメントを出すことが仕事ではありません。本当に困っているこども、権利を侵害されているこどものために、本日のブログに示したような実態が実は日本のいたるところにある現実を理解して、問題のある現場を、予告なしで、抜き打ちに訪問し、実態を明らかにしてその改善に取り組むことこそ、こども家庭庁の仕事です。もちろん具体的な実務まで国の省庁がやることはなく、実態を明らかにして都道府県、市区町村に対して早急に取り組むように指示をすればいいのです。

 そういう姿勢がまったく見えないから、徐々に「こども家庭庁はいらない。その5兆円を子育て支援に使ったほうがまし」という批判の声すら上がるのです。私はこども家庭庁は必要だと思っていますが、その姿勢はとても児童福祉の現場にいる方々が安心できない、評価できないものであることは否定できません。それは、すべてが整った立派な現場しか訪問しない、ある特定の大きな勢力や団体とあまりにも密接な関係が見えすぎる等、特定の、こども福祉ビジネス事業者・団体の発展を国がお墨付きを与えるための芝居道具にしか見えなくなってきつつあるからです。

 そしてもう1点。相談主は弁護士にも相談したとのことです。ところが弁護士は、「法令違反じゃないから」「合理的配慮義務といったって、事業者がやれる範囲であることをやりました、と言ってきたらそれでおしまいだから」と、相談主の相談に真摯に対応したとはとても言えない反応だったということで、相談主は弁護士という存在に大いに幻滅したとのことです。弁護士ももちろんピンからキリまでですが、弁護士資格がある以上、相談主の利益になるために考えて助言するべきでしょう。まして人権侵害すら疑われる事案です。それなのに法令違反じゃないからと真摯に対応しないその姿勢は、許しがたい。法令違反かどうかを判断するのは裁判所です。弁護士が判断して相談主をさらに追い詰める姿勢はひどすぎる。日本弁護士連合会は、弁護士の人権擁護意識、差別解消に取り組む姿勢の意識について、厳正に調査確認し、留意するようよびかけるべきでしょう。少なくとも「弁護士は、必ずしも弱い立場の人の味方じゃない。カネにならないことは真面目に取り合わない弁護士もいるんだ」と思う国民が増えたことは間違いないのですから。

 障がいや難病に苦しむ子どもが放課後児童クラブを使いたいという状況はさほど珍しくはありません。私の子どもの同級生も極めて発症例が少ない重篤な難病でしたが放課後児童クラブの利用が必要な状況でした。もう十数年以上前の話です。保護者は自治体の「前例がない」という役所の壁に苦しみながらも対応の改善を訴え、結果として自治体側も一連の折衝を経ることで必要な対応や姿勢を学んだようで、最終的に素晴らしく満足がいく対応、施設の改修や人員体制の整備にも取り組んで結果を出してくれました。とても評価していますが、おそらくこれが普通でしょう。まして今は法令で合理的配慮が求められています。今回の「予算がないから」で検討すらしないで断ることは、あってはなりません。

 私は、放課後児童クラブは、社会的に弱い立場である子どもと、子育て世帯の保護者の生活を守るための重要な社会的インフラだと考えています。それなのに構造的に脆弱であり、従事する職員の待遇が劣悪であることの改善が直ちに必要だと考えています。その一方、残念ながら、決して少なくない事業者、職員が、人権やこどもの権利について理解に乏しく、質の低い、こどもと保護者への支援を行って平然としている実態があることも承知しています。
 相談主によれば、この事業者でも他地域では車いすのこどもを受けれいているとのこと。よって事業者の体質全てが問題ではなく、その地域を管轄する管理者、責任者の資質の問題となる可能性はあります。とはいえ、事業者全体として、人権意識に欠ける体質があることも大いに想像できます。多額の補助金を交付されて事業を運営するのであれば、公共の事業者であることの責任を第一に、国民の利益になるような事業展開をする必要があります。事業者が楽して儲けたいだけであるのであれば、放課後児童クラブ運営という公の事業から手を引くべきですし、社会は、そのような事業者が選択されないよう、しっかりと監視することが必要です。

 あまりにも残念なこの事案。早急に、すべて正しく解決されることが必要です。社会正義がこの国にあるのなら、その社会正義を見せてください。見せなければだめです。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)