学童保育の指定管理者選定に関して新潟市の議会委員会が冷静な判断。二元代表制が機能した好例。片や津島市は?

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 学童保育所(この場合は、放課後児童クラブ)の指定管理者制度による指定管理者選考において、新潟市と愛知県津島市では、対照的な結果が導かれました。今回はその紹介と、本質的に見逃せない部分について私の意見を紹介します。

 まず新潟市です。令和6年度から放課後児童クラブを運営する事業者を指定管理者として選定するにあたり、市側の選定委員会は、市内の19クラブを東京都内の企業に選定しました。この企業を指定管理者候補として市が議会に提案した議案が、市議会委員会で否決された、というものです。新潟日報が12月20日11:00にインターネットに公開した記事を一部引用します。
「新潟市議会12月定例会は12月19日、市民厚生常任委員会を開き、東京の企業が放課後児童クラブの指定管理者候補となった議案を賛成少数で否決した。これまで運営してきた地元企業から変更となる公募の選定結果に対し、市議から「中小企業振興基本条例の理念を踏まえた選定なのか疑念が残る」などと意見が出た。」(引用ここまで)
 記事によると、行政執行部提案議案が否決されたのは1975年以来とのこと。滅多に起きないことが起きたわけです。

 片や、同じく指定管理者の変更が議案となっていた愛知県津島市です。中日新聞が12月20日12:30に最終更新したインターネット上の記事を一部引用します。
「津島市の小学校区で開かれている放課後児童クラブの指定管理者を決める条例案が19日、市議会定例会の最終日に賛成多数で可決され、新しい指定管理者は同クラブを全国で運営する明日葉(東京)に決まった。
 放課後児童クラブを巡っては、現在、市内9カ所で運営する地元のNPO法人「放課後のおうち」の運営継続などを求め、5千人余りの署名が集まるなど反対運動が起こっていた。」(引用ここまで)

 新潟市も津島市も、地元の企業、法人ではない企業が来年度からの指定管理者候補となっていましたが、新潟市は委員会で否決され、津島市は本会議で可決されました。どちらも、市民から、市の方針に異議を唱える署名が提出されていました。特に津島市の場合は、署名総数はおよそ5000筆という多数でしたが、その民意は議員に、理解されなかったようです。

 新潟市では、地元企業の振興を目指す条例の趣旨に反する懸念が委員会での否決理由になったとされています。ただ、今回、候補者として否決された企業は、すでに新潟市内で放課後児童クラブや児童館の運営を行っています。まったく初めて運営することではありません。ですので、単に、地元企業や地元の組織の活躍の場が縮小されることの危機感だけで委員会が行政執行部提案を否決したのではないだろうと私は考えています。報道では伝えられない部分において、例えば、すでに運営しているクラブでの運営状況なども、採決に望んだ議員は情報としてつかんでいたのではないかと、私は推測しています。

 いずれにせよ、行政執行部の提案に対して、同じく有権者から選ばれた議員が、行政執行部と対等の立場の矜持をもって、市民からの付託を受けている責任感をもって、冷静かつ客観的に、物事の本質を見極めたうえで、提案の採決に望んでいたかどうか、津島市の件では私は大いに議員の資質を疑います。二元代表制は実態としてほとんど機能していないと言われるところではありますが、新潟市は曲がりなりにも振興条例をベースに是か非かを議員がしっかり考えた結果であり、二元代表制が機能したと言えるでしょう。片や津島市の場合は、現在のNPO運営による学童保育の運営にその利用者の大多数が賛意を示している中での無理やりな現状変更を議員が認めたということは、議員は市側にくっついて動いているだけの存在でしかないのかな、と思わざるを得ない事案となりました。

 最後に私の指定管理者選定について思うところを書きつづっておきます。私は、保護者由来の組織だろうが、他地域に拠点がある営利企業であろうが、「育成支援を充実させ、職員の雇用安定に留意している」事業者であれば、どの組織でも事業者として歓迎します。非営利だろうが営利だろうが構わない。子どもの育ちを大事に考えることは育成支援の安定を最重視していることですし、職員の雇用安定に留意するということは当然、賃金も労働の対価として十分な額を保障するということです。ただ現状において、広範囲で事業を展開する補助金ビジネスの企業には、こうした私の求めるようなスタイルはおよそ実現する構えが見られないだけで、相対的に、非営利法人の事業者が優れていると考えているだけです。
 指定管理者を選ぶ際は、「地元の事業者だから」とか「学童の保護者が作った組織だから」優先的に選ばれるべきではない、ということです。「いかに、しっかりした育成支援を行っているか。職員の雇用安定に留意しているか」、つまり事業の質の善し悪しをもって、選定委員会も、議会も、判断をしてほしいということです。公募に応募した事業者が、現にどのような放課後児童健全育成事業を行っているか、他地域でどのような同事業を行っているか、提案している内容が本当に実現可能なものなのかを総合的に勘案して、候補者は選定されるべきです。

 国民の税金と、やむなく施設を利用するしかない子育て世帯が支払う利用料から運営される仕組みですから、無駄にお金が使われはいけません。いい加減な運営、ずさんな運営、投じた費用から必要以上に利益分を確保するような事業者は、選ばれてはいけません。二元代表制の下、議員はその点を理解して職務を果たしていただきたいと願います。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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