学童保育の運営に、改めて重要視してほしい「協働」。市区町村も、事業者も「協働」こそ最重点にすべきです

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 今回は、学童保育(この場合は、放課後児童健全育成事業)に「協働」こそ最優先にしてほしいことを訴えます。放課後児童クラブを運営する事業者と、放課後児童健全育成事業を提供する市区町村のそれぞれに必要な姿勢だからです。

 まず、「協働」という言葉について辞書で見てみましょう。
協働=「同じ目的のために、対等の立場で協力して共に働くこと。」(デジタル大辞泉)。
 似た言葉の「共同」と「協同」も、確認しましょう。
共同=「複数の人や団体が、同じ目的のために一緒に事を行ったり、同じ条件・資格でかかわったりすること。協同と同じ」(同じくデジタル大辞泉)
協同=「複数の人または団体が、力を合わせて物事を行うこと。共同。」「住民が—して地域の振興に努める」(同じくデジタル大辞泉)

 協働には、別々の組織が対等の立場で、同じ目的を目指して一緒に活動する、というイメージが込められています。これ、まさに、学童保育、学童保育所の運営に、あてはまると思いませんか? 地域の子どもの健全な育成と子育てする保護者の生活を支えるため、施設の運営事業者は実際の役務提供を行い、市区町村は、そんな事業者を支えるために補助金を交付していますが、事業者と市区町村は、私は本来、同じ目的=子どもの健全育成と保護者の就労等支援などを通じた子育て支援のために、将来の展望や現在の問題、課題について、常に情報を交換、共有し、共に知恵を出し合って事業が安定かつ継続的に行われるように共に務めることが、学童保育にとって必要であり、まさに協働こそ、必要不可欠な姿勢だと考えています。

 その点において、構造的に指定管理者制度は、事業者と市区町村が対等な立場で事業に取り組むことができにくいことが、問題の1つだと私は考えます。指定管理者は事業全般に責任をもって取り組むことは取り組むのですが、公募プロポーザル方式である限り、指定管理者候補を選ぶのは選定委員会だというのは建前であって、結局は市区町村が期待している応募事業者が選ばれるのですから、事業者としては市区町村の意向にどうしても服従、追従することになります。そこに、対等の関係性は決定的に生じにくいでしょう。
 むろん、事業委託は(準)委任契約という法的にも対等な立場であっても結局は委任者、受任者の関係で、受任者となる事業者は委任者が望むことを当然、実施しなければならないのですからそこには結果的に上下の関係は生じます。まして受任者を選ぶ際に公募であっては指定管理者制度による公募と同じ状態になります。しかし、それでも契約上は対等の立場であり、自治体による「処分」と位置付けられる指定管理者の選定に比べれば、本質的には上下関係は決定的に位置づけられているものではありません。

 重要なことは、何を目的として、指定管理だったり事業委託だったり、形態はどうあれ、事業を行うのか、という当たり前の事を常に最優先とすることです。それは、何度も言いますが健全育成であり子育て世帯の支援です。その目的を達するために、市区町村と事業者は共に手を携えて事業に取り組むべきなのです。

 市区町村は、事業者と常に連携し、「言った通りのことさえやってくれればいい」ではなくて、一緒に考えて問題や課題に取り組むべきです。「子どもの受け入れさえできていれば、特に事故やけががなければ、それでいいから」ではなくて、児童福祉法や放課後児童クラブ運営指針が示す育成支援の内容が実現できるよう事業者と協働で取り組まねばなりません。決して、楽をしたいがために事業者をろくに管理監督もせずにほったらかしではダメです。また、その逆に、事業者側の意見や要望に対して聞く耳を持たず、市区町村の言い分に忠実に従うだけの事業者が最良の事業者である、という考えを持ってはいけません。市区町村は独善に陥ってはいけません。

 事業者は、施設の運営を任された以上、責任と使命感をもって、必要なことは堂々と市区町村に働きかけ、協議や相談を申し込んで、事業の完遂のために尽くすべきです。市区町村の機嫌を損ねることを恐れるあまり、完全なるイエスマン的な存在になってはなりません。この点、事業者側には注意が必要です。往々にして、オーソドックスな学童保育の世界観には「子どもの育ちこそ絶対的」という、大事なことではありますが、それを絶対的な錦の御旗として、一切合切の合理的かつ柔軟な姿勢変更を拒む風潮があります。子どもの最善の利益を追求するのが学童保育ですが、同時に保護者の就労等支援を支えることでの子育て支援も目的です。市区町村の児童福祉サービスの一翼を担うことも目的です。よって、保護者側や市区町村側からの要望や依頼、期待について、「いやそれは子どもの最善の利益に照らして、ありえません」とにべもなく断ることは、「社会が必要としているからこそ存在している、社会資源、社会インフラとしての学童保育所」の存在意義を自ら壊していくことになります。保護者や市区町村からのニーズは「社会が必要としている」ということそのものです。それをすべて「子どものためにならない」として却下し続ければ、「社会が必要としていることを実施しない存在」として、いずれ排除されて当然です。

 場合によっては一時的に妥協、あるいは今までと同じ水準の支援、援助ができなくなることがあっても、必要最小限の期間や状態で再び高水準の支援、援助ができる状態に戻れるのにそれすら絶対的に拒むことは、私は学童事業者側も、独善に陥っている状態と考えます。協働の考え方にも、そぐいません。課題や問題の解決のために共に知恵を出し合ってなんとか解決の道を見出す努力をするべきなのです。

 現状は、市区町村の「丸投げ」と「こちらの指示を忠実に聞く、従う手下のような事業者。しかも安上がり」な業者をこぞって選ぶ残念な姿勢と、事業者の「問題さえ起きなければいい。がっちり利益を確保するため」の補助金ビジネスしか念頭にない姿勢と、その対極の「子どもの最善の利益を守るためには、それを邪魔するものは一切許さない」という凝り固まった姿勢、それらが合わさって、てんでんばらばらなカオス状態となっているのが、今の学童保育の市区町村と事業者の関係だと私は見ています。

 これを一つの形態に固定化することは不可能でしょうが、「対等に事業を行う」理念を何らかの形で固定化することはあってもいいでしょう。こどもまんなか社会は、児童福祉サービスの今後の発展の在り方として、民間と公の協働が欠かせないはずですから、協働の考え方をしっかり打ち出してほしいものです。 

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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