「育成支援倫理綱領」を制定して支援の質を上げよう。組織の一体化を進めて離職を防ごう。

(代表萩原のブログ・オピニオン)学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」萩原和也です。「学童で働いた、こどもをあきらめた」の悲劇が起きないように全力で訴え続けます。学童保育(育成支援型)の世界をずっと悩ませているのが、劣悪な雇用労働条件です。それが原因となって雇用した支援員(職員)の退職、離職が頻繁にあるという現状になっています。その状態を少しでも改善するための提案です。

 もちろん、決定的な解決策はたった1つです。育成支援型の学童保育で働いている放課後児童支援員の職務が高度に専門的なコミュニケーション労働であり高い賃金を得るにふさわしい職業であるという社会的な理解が確立し、補助金や受益者負担(保護者負担金)もそれなりの高い水準となること、これしかありません。雇用した職員の退職、離職を防ぐという観点においては、それ以外の策はあくまで補助的な策となります。その補助的な策の1つですが、同時に、支援員の職務執行にも重要な役割を果たすのが「育成支援倫理綱領」に基づく育成支援の実施であると、わたくしは考えています。

 すでに学童保育の団体から同様の趣旨の倫理綱領が公開されていますし、それぞれの運営組織において倫理綱領を制定している組織もきっと多いでしょう。でも、改めて全国の学童保育関連団体のみなさまに問います。その倫理綱領、本当に活用していますか?(某公共放送局の番組になってしまいましたが)

 昨今、相次いで保育現場での不祥事が報道されています。もちろん、実際に児童虐待なり法令違反となった行為そのものを犯した者が責任を負うべきなのですが、事案のすべてを不祥事を起こした直接の当事者だけの責任で終わりにしてはいけません。例えば、恒常的な人手不足によるストレスも現場従事者を追い詰める原因の1つです。構造的な要因(低賃金長時間重労働、人手不足)は早急に改善を訴え続けることが必要として、それ以外の部分で、組織運営者がしっかりと心がけ、かつ、現場の支援員さんたちも認識しておくことで悲惨な児童虐待(またはそれに近い不祥事)を防ぐ効果が期待できるのが、「倫理綱領に基づいた業務の執行」なのです。

 仏作って魂入れず、ではだめです。育成支援に関わる人は、常に倫理綱領を一番の基礎として、そこから育成支援の業務執行項目を組み立てるべきです。運営組織は、倫理綱領に基づいて自分たちの組織において必要な育成支援の業務執行項目を組み立て、同時に、現場で育成支援に従事する職員たちに、育成支援討議をしっかりと行っていただくことが必要です。繰り返します。組織運営者は、倫理綱領に基づいた育成支援が適切に遂行されているかどうかを常に心がけてください。
 そして実際に支援の業務を遂行する方たちは、倫理綱領を常に意識して、それぞれの現場で、育成支援に関する話し合いを同僚とたくさん交わしてください。同僚たちとの討議では、細部で意見が異なることもあるでしょう。でも、議論の結果、属する組織が制定した倫理綱領に最終的はまとまることになります。これを繰り返していくことで、組織全体の育成支援に関する意思統一が図られていきます。そのことはすなわち、組織における育成支援の仕様の平準化、統一という形に集約していきます。組織に対する信頼感、求心力がこうして生まれていくのです。
 それは結果として、学童保育の現場にありがちな「さっきの会議でこうしようと決めたのに、あの先輩はまた自分流でやっている。もう、この職場は無理。辞めよう」という形での退職をある程度、防止する効果を持つことになります。少人数職場でチームワークがうまくいかなかったので退職、離職というのは学童保育の世界では珍しいことではありません。その原因のかなりのところは、「保育観の違いによる業務執行の不統一」にあります。それを、倫理綱領をベースにした、その組織での統一した育成支援業務執行項目を確立することで、ある程度、防ぐことができるでしょう。(さらに付言すると、現場のチームでも主任または施設長を中心とした指揮命令系統を確立しておくことも重要です。話し合いで決まったことが確実に実行されているかどうか、現場のチーム責任者がしっかりと把握することが必要であるからです)

 育成支援の倫理綱領は、それぞれの組織が目指す理想の支援の形を取り入れた倫理綱領になるはずです。まだ倫理綱領を制定していないところは、組織運営者と現場の支援員の共同作業で制定しましょう。すでに制定している組織においては、その活用と見直しをすぐにでも行いましょう。もちろん、いうまでもなく、その倫理綱領を常に最も意識して実践、行動しなければならないのは、組織運営者であり、組織の運営責任を背負っている立場の人です。

 児童の権利侵害をもたらす不祥事は絶対に起こしてはいけません。そのために、倫理綱領をすべての組織構成者が理解することが絶対に必要です。そして、組織内で育成支援に関する方向性を倫理綱領をもとに統一することで働く人に違和感を感じさせることがないようにして組織への求心力を高めれば、退職や離職をある程度、防ぐ効果が期待できるのです。倫理綱領の制定と活用を、組織運営者の方は絶対に心がけてください。

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