誤飲誤食は致命的な結果を招きかねない。放課後児童クラブ(学童保育所)は徹底防止を心がけよう。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!

 放課後児童クラブでは、とんでもない事故、アクシデントが起こりがちです。不定期に、児童クラブで起こりやすい、とんでもない事故や悪神殿とを取り上げてその防止を呼び掛けていきます。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

※わたくし萩原が寄稿した記事が「ウェッジオンライン」で2026年5月29日に公開されました。「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665

<報道より>
 まず冒頭、台風6号とそれに伴い活動が活発化すると予報されている前線による風雨には、児童クラブの皆様は厳重に警戒してください。

 さてとても気になる報道がありました。児童クラブではないですが、とても恐ろしい事故、ミスです。読売新聞オンラインが2026年5月30日12時に配信した、「町内会で殺虫剤をペットボトルに小分けし配布、誤飲した高齢男性が死亡…別の地区で幼児も救急搬送」との見出しの記事です。一部引用します。
「宮城県石巻市で昨年6月、害虫駆除のため町内会がペットボトルに小分けして配布した殺虫剤を、市内で一人暮らしをする高齢男性が飲んで死亡する事故が起きていたことが、市への取材で分かった。殺虫剤は市が町内会に配布したもので、翌月には同様に幼児が誤飲し、一時入院する事故も起きていた。」(引用ここまで)

 つまり、ペットボトルに殺虫剤を入れて配布したところ、それを飲んでしまった人が亡くなった。さらに幼児が誤飲して一時入院した、ということです。なんと恐ろしい。こんなことが児童クラブで起こったらと思ってぞっとしました。「殺虫剤なんて児童クラブで取り扱わないから、こんなひどいミスは起こらない」と思った児童クラブ関係者さん、甘いです。現実は、平時に想像しなかったことが起こるものです。そしてこの事案と構図が似ている事故をわたくしは身をもって経験しているのです。恥を忍んで最後に紹介します。

<児童クラブに誤飲誤食は起きやすい環境がある>
 先の報道の事故は人が亡くなったという取り返しのつかない結果を招きました。どうしてそんなことが起きたのか。それは「通常は飲料、食用にしても大丈夫な調味料」が入っているのがペットボトルである、という理解が人間側にあるからです。人間の意識には「ペットボトル=食べても大丈夫なものが入っている=液体=飲んでしまおう」という図式が瞬時に無意識に成立しやすからです。正常性バイアス、とでも呼ぶのでしょうか。

 「ペットボトルがある。液体が入っている。その液体は何か?」と1つ1つの局面でその現象に疑問を持つ、問いかけをするという人は、なかなか少ないでしょう。ペットボトルの中の液体は飲んでも食べても大丈夫、なぜならペットボトルには飲用食用のものが「通常は、入っているから」という意識のすりこみが、人間側にあるからですね。

 ましてペットボトルのラベルが「麦茶」とか「ミネラルウォーター」というような、中身が飲用食用のものであると表示するペットボトルに、毒物が入っていたらそれはもう、人間側の安全性の思い込みとあいまって、体内に容易に毒物が入ってしまいがちです。ことに「ミネラルウォーター」系のラベルは危険ですね。ペットボトルに入っている液体が透明だった場合、見分けはつきません。これがミネラルウォーターのラベルなのに、白いドロドロした液体が入っていたら「ん? こりゃなんだ?」となるでしょうし、臭いも嗅ぐと「ああ、これあかんやつや」となる可能性もあります。
 これは情報の共有や伝達の問題です。ラベルによる情報の発信が正確であるかどうか、それはペットボトルの中身とラベルによる中身の表示が一致しているかどうかの伝達の問題であり、ペットボトルの中に詰め替えた物質がどういう物質であるかを供給側と受け取り側が情報共有しているかどうかの問題です。

 ここまで書いたことに児童クラブの職場環境等において、この誤飲誤食事故が起きやすい要素があることを気付いていただきたいのです。
「少人数であわただしい業務が続く時間帯が多い児童クラブでは、職員間の信頼に基づいて、1つ1つの事象に対する判断を『正・善』としがちである。こどもにとって害のあることを為すことはありえないだろうという正常性バイアスが働きやすい環境にある」
 その結果、次のような事態を招きがちであるとわたくし萩原は考えるのです。
「客観的な事実を確認して判断する行動、例えば表示を確認する、という行為をさほど重視しない。軽視はしないが重視しないという行動形態が結果的に表示の持つ重要性の理解を不十分にさせる。その帰結が、表示をするという行動を選択することを少なくしてしまう」
「職員間の連携こそ児童クラブでの仕事で重要、ということを理解していることが行き過ぎると、職員同士で直接の言語のやり取りによる確認に偏った情報共有、情報交換や情報伝達になりがちである。ところが児童クラブの環境ーこどもの声がにぎやかで職員の会話の声が聞き取りにくいという環境が当たり前ーでは、言語によるコミュニケーションは時折、それに適した環境になりにくいのが児童クラブ。そのため、必要で誤った内容の情報伝達や共有が許されない情報について、聞き漏らしたり誤って聞き取ったりという失敗を招きやすい環境にある」
「人手不足に悩む児童クラブで働く人の中には、人が話したことを何故か違った内容で理解してしまう程度の、情報処理能力に疑問符がつかざるを得ない人もいる」

 ざっくりと申せば、「人手不足で忙しい時間帯がある児童クラブでは、職員同士の声掛けや言語による情報共有によって重大なことも伝えられやすい環境にある中で、正確にきっちりと情報が伝わっていく環境であると言い難い環境の児童クラブがある」ということです。

 とりわけ、「思い込みで動く職員が目立つクラブ」や「自分勝手ともいえる自分だけの判断で行動しがちな職員がいるクラブ」や「職員間の関係性が悪い、つまり最低限の会話以外のコミュニケーションをとろうとしないほど険悪な仲の児童クラブでは職員同士による情報共有、情報伝達に難があるので重大な情報が伝わりにくい」ということがあるのです。そして職員間の仲があまりよろしくない児童クラブはあちらこちらにあって不思議ではないのです。また残念ですが、情報共有の大切さそのものの理解が及ばない程度の知識や見解しか持ちえない程度の資質の職員すら、働いていることがあります。

 児童クラブで、誤飲や誤食が起こる可能性は決してゼロではありません。わたくしは実務上の経験から、「誤飲誤食」のトラブルは児童クラブでわりと珍しくないとすら言い切ります。数字上のデータはありませんのであてずっぽうな推測にはなりますが、児童クラブの「性質」からして、ほとんど起こりえないトラブル、事故事案であるとは思えないのです。

<誤飲誤食防止で児童クラブで心がけたいこと>
 では児童クラブでの誤飲誤食を防ぐための心得を、わたくしの視点で紹介しましょう。
1 消毒は必ず「消毒」と書いたシールや札を用意したりボードに「消毒中」と書くこと。
 →児童クラブでは、やかんで麦茶を作ることがあります。そのやかんを消毒する際に消毒剤を使うことがあります。こどもは当然、職員も、「やかんに液体が入っている! きっと麦茶だ!」と早合点ーこれこそ、やかんに入っているのは飲料というバイアスーして口に入れてしまいがちです。消毒中の場合は必ず消毒中であることを大きく明示する表示をしましょう。そもそもこどもだけで台所やキッチン、調理場所に立ち入らないような生活習慣をこどもたちに身に着けさせることです。

2 飲料や食料が入っていたペットボトルや容器に、毒物は絶対に入れないこと。まして食用に使える状態のラベルを残したままでは絶対に絶対に毒物を入れておかないこと。
 →とかく物を大切にする児童クラブです。お金が足りないので容器などこどもが直接使うものではない物品の購入は後回しになりがちで、おのずと、容器は再利用しがちです。それは良いのですが、表示やラベルをはがさずに使うと混乱、誤飲誤食の要因となります。これは本当に危険です。最後に実例を紹介します。こどもたちが勝手に冷蔵庫や流しにあるペットボトルや紙パックから飲料を飲んでしまいがちな児童クラブでは、まず「こどもたちが勝手にクラブに置いてある入れ物から飲まない食べない」ことを徹底しつつ、「職員間で、再利用する容器は再利用とわかる表示をする」ことも徹底してください。

3 最強の誤飲誤食リスク防止策は「持ち込まない」こと。
 →冒頭の報道例のような殺虫剤は当然、こどもや職員が誤飲誤食して健康被害を招くものは、そもそも児童クラブ内に持ち込むべきではありません。こどもの体重は大人に比べて当然に軽いので、体内に入ったときに健康被害を及ぼす量もまた格段に少量です。おとなではさして重篤な症状が起きにくくてもこどもの少ない体重では深刻な健康被害を招きかねない毒物もあります。どうしても工作や娯楽で必要であって、体内に入れてはならない物質を児童クラブにて保管する場合は、こどもは当然、事情を知らない職員ー週や月に数日しか勤務しない非常勤職員などーに十分説明することを徹底しましょう。できる限り、そうした危険物を扱わないでも済む遊びや工作を考えて実施してください。毒物、危険物を必要とする行為は、それが児童クラブにてどうしてもやむを得ず必要である場合に限り、そうではない場合は、他の工作や遊びに替えましょう。そうして危険物をクラブに持ち込まないことこそ、最強の誤飲誤食リスクコントロールです。

<実例>
 とある児童クラブでスライムを作るため「硼砂(ホウ砂、ほうしゃ)」を使用することになり、職員がおやつ調理前、調理場所において硼砂の水溶液(無色透明)を作って準備をしました。職員は、できた水溶液をミネラルウォーターのペットボトルに入れて冷蔵庫に入れました。
 その日、そのクラブでのおやつは「そうめん」でした。おやつ調理担当は硼砂水溶液を作成していた時間帯の後に出勤してきた職員で、その日に硼砂水溶液が用意されていることも、スライムづくりをすることも知りませんでした。
 そうめんの「つけ汁」を大きなボウルに作ることになり、「冷えた水が良い。そうだ、ミネラルウォーターを冷やしておいたはず」と思い出したおやつ調理担当職員は冷蔵庫を開けると、そこに透明な液体ー当然、ミネラルウォーターと信じてしまいますーが入ったペットボトルが数個あるのに気が付きました。それを全部使って、そうめんのつけ汁を作りました。
 さておやつです。こどもたちと職員はみんなでそうめんを食べました。折しも台風が過ぎた後で蒸し暑かったのです。冷たいそうめんは食欲をそそりました。つけ汁を全部飲み干したこどもも数人いました。

 おやつの後は遊びの時間。この日、「肝試し」をすることになっていました。肝試しでスライムを使うことになっていました。それはこどもたちからのリクエスト。あの、ヒヤッとしてドロっとした感触が怖さを呼び込むからですね。そのスライムづくりもまたこどもたちと楽しむことにしていました。こどもたちとさあスライムを作ろうと、硼砂水溶液を作った職員は冷蔵庫のドアを開け、硼砂水溶液が入ったペットボトルを持ち出そうとしました。「あれ、ペットボトルが全部、無い??」
 職員があたりをみまわすと、空になったペットボトルが見つかりました。「あの、冷蔵庫に入れておいたペットボトル、誰か使いましたか?」と声を上げると、おやつ調理担当の職員が「そうめんのつけ汁を作りましたよ。ミネラルウォーターのペットボトルがあったので」と返事をしました。「それ、スライムづくりの硼砂の液なのよ」と、硼砂水溶液を作った職員は返事をしました。

 そのあとの展開は言うまでもなく、大混乱でした。わたくしは行政への報告及び医療機関との折衝、職員への各種対応の指示で深夜まで対応に従事しました。実はその日、前日の台風による大雨の影響で別のクラブが浸水被害となりほかのテナントにも影響を及ぼしたという非常に頭を抱えるトラブルがありその対応で保険会社や管理会社と胃の痛むようなやりとりを続けていた同じ日でした。十数年の児童クラブの従事歴でも5本の指に入る、きわめて困難な1日として記憶は鮮明です。

 この実例でおわかりでしょう。誤認させるラベルの入れ物に毒物を入れてはならないこと。職員同士のコミュニケーション、情報共有が綿密でないと致命的な結果を招きやすいこと。「スライム用の硼砂水溶液を作ってある」と情報共有さえできれば防げた可能性がある誤食事故でした。ミネラルウォーターのペットボトルに入れなければ防げた誤食事故でした。ペットボトルに入れたとしても、「どくいり危険」とでも書いたシールやラベルを張り付けておけば防げた事故でした。

 この事故でとても多くのことを学びました。不幸中の幸いとして明瞭な健康被害をもたらした結果にはなりませんでした。しかし児童クラブ運営及び職員に対する、保護者そして行政からの信頼感が揺らいだのは事実で、その除去には数年かかることになりました。

 こどもが安全安心に過ごして当然の児童クラブ。運営側のミスでこども(もちろん職員や保護者にも)に健康被害をもたらすことがないよう、誤飲誤食の防止について児童クラブ運営側は徹底的な注意をしなければなりません。それは当たり前の前の小さなことの積み重ねによって成り立つことを、わたくしは強く訴えます。

 (お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネルが開設されました。チャンネル名は「こどもを守る弁護士チャンネル」です。2026年5月30日に第2回の動画が公開、配信されました。こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルです。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
 なお第1回(2026年5月16日)の「こども性暴力防止法を考える」が配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s

 放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf

(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf

 「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」にて2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事が公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。わたくし萩原が編集部の依頼に応じて寄稿しました。ぜひご高覧ください。
 なお、近く新記事掲載が予定されています。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

投稿者プロフィール

萩原和也