<運営支援ブログミニ38>夏休み期間の「こどもの居場所」に学校などを開放とのこと。評判が悪いですね。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。
今回はミニ版。文部科学省が、夏休みの間に学校や公民館などを開放して、こどもの居場所に活用できるようにと全国の自治体に要請するようです。報道記事についてSNSではほぼほぼ批判の嵐でした。評判が悪いですね。運営支援は当面の策として賛成ですが、そもそも論である「もっと放課後児童クラブや児童館、こどもの居場所事業の拡充に予算を投じればよい」と何度でも訴えます。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<報道から>
ヤフーニュースに2026年7月3日15時30分に配信された、毎日新聞の「夏休みの学校など一部開放、文科省が全国に要請へ 居場所を確保」の記事を一部引用します。
「夏休み期間中の子どもの居場所を確保するため、文部科学省は学校の一部開放などを全国に要請する。松本洋平文科相が3日の閣議後記者会見で明らかにした。同日中に事務連絡を全国に出す。」
「学校のほか、公民館や図書館、スポーツ施設や文化施設などを念頭に、空調設備が整った施設の開放を求める。」(引用ここまで)
ではその通知を確認しましょう。文部科学省のHPにあります。
長期休業期間中等の学び・体験の充実について(要請)
その内容に、「5月15日には、こども家庭庁をはじめとする関係省庁とともに連名で、「 夏季休業期間中の酷暑対策及び食支援に係る各施策の活用について」(以下、「関係省庁連名事務連絡」という。)を発出いたしました。」とあります。こども家庭庁のウェブサイトを検索すると見つかりました。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f12e4ec2-4172-40ce-92bd-18cebd0e7216/89ee3ee1/20260514_policies_kodomonohinkon_natsu-ibasyo-syoku_01.pdf
この事務連絡の一部を引用します。それを読むと、今回の学校の開放に期待することが見えてきます。
「近年、気候変動の影響等により、記録的な猛暑が頻発しており、特に経済的に困難な状況にある家庭においては、住環境や冷房設備の制約等から、熱中症等の健康被害のリスクが高まっています。また、物価高騰等を背景とした生活困窮の深刻化により、夏季休業期間中におけるこどもの健康や生活環境の悪化、食事機会の確保に対する懸念が一層高まっております。
特に、基本的に登校の機会がなくなる夏季休業期間中は、
・酷暑下で安心して過ごせる居場所の不足
・栄養のある食事を十分に確保できないこどもの存在
・支援が必要であるにもかかわらず、表面化しにくい家庭の孤立
といった課題が顕在化しやすい時期でもあります。
この度、4月 27 日(月)に超党派「子どもの貧困対策推進議員連盟」(会長:田村憲久衆議院議員)より、黄川田仁志内閣府特命担当大臣(こども政策)に対して、各自治体において「夏休みこども緊急セーフティネット構築プラン」(別紙1)の活用が進むよう、関係省庁で連携していただきたいとの要請があったところです。
各自治体におかれましては、関係省庁の既存施策を有機的に組み合わせて活用いただき、夏季休業期間中のこどもを切れ目なく支える取組(以下、「本取組」という。)を、地域の実情を踏まえて積極的に御検討・御推進いただきたく、下記のとおり御連絡申し上げます。
なお、夏季休業中に限らず、冬季休業や春季休業といった長期休業中にも、こうした取組の積極的な実施をお願いいたします。」
ちなみにこの通知は、こ家庁、文科省に加えて農林水産省、消費者庁、環境省も発出元になっています。
<ちゃんと書いてあるやん>
この5月15日に出された事務連絡にはさらにこんな記載があります。
「本取組は、「こどもが安心して涼しく過ごせる居場所の確保」と「食支援」を一体的に実施し、さらに拠点に行くことが難しいこどもに対してはアウトリーチで支援することにより、夏季休業期間中におけるこどもの孤立や健康リスク等を防ぐことを目的としています。
その際、学校施設、児童館、放課後児童クラブ等の既存施設を最大限活用し、あわせてフードバンク等の民間団体との連携を深めることで、地域の実情に応じた柔軟な支援体制の構築をお願いいたします。」
ちゃんと児童館と放課後児童クラブが代表的な既存施設として挙げられています。ほら、児童クラブの活用も、一応は念頭にあるのですね。冒頭の報道で紹介したものは文科省なので学校施設の活用の依頼が中心になっただけの話ですね。学校でいえば、教職員の働き方改革が非常に関心を集めているので、夏休み期間に学校に来るこどもたちの応対に教職員が駆り出されることによる不安、反発がSNSで噴出したのでしょう。中には「学校だけにこどもの面倒を押し付けるのか」という勘違い? もあるようでそのような投稿も見受けられました。
国全体として、夏休みなど学校の長期休業期間中のこどもの居場所について用意しなきゃ、という考えがあること自体は評価できることだとわたくし萩原は考えます。問題は、「こういう対応を考えたから問題は解決!」と、国が早とちりしないことです。5月15日の複数省庁による通知にある、
・酷暑下で安心して過ごせる居場所の不足
・栄養のある食事を十分に確保できないこどもの存在
・支援が必要であるにもかかわらず、表面化しにくい家庭の孤立
は、この社会全体が抱えている重大な欠点です。こどもと子育て世帯の保護者を困らせ、悩ませる社会の問題です。文科省や先の複数省庁の通知は、この3つーもちろんこの3つだけではないですがーの問題に対する「取り急ぎの対応」に過ぎないということを、国も自治体もメディアもこの社会全部が認識してほしい、とわたくし萩原は考えます。
<結局のところ、居場所をどうする?>
学校を開放してこどもの居場所にするのは悪くないアイデアです。「誰が」責任を持つ事業なのか、「誰が」こどもの対応など事業に従事するのか、この2点があいまいで、学校現場に丸投げではないかという強い懸念がSNSでの反発をわき起こしているのだとわたくしは考えます。そりゃそうですよ。
100人のこどもがいるなら100通りのこどもの居場所があることが望ましい。理想です。100人のこどもの世帯すべてで保護者が在宅なら、100通りの居場所があることになるでしょう。現実はそんなことは不可能なので、なるべく多くの様々な内容の、パターンの居場所を社会が用意できれば良い。
かつて、わたくしがこども時代の1970年代まではおそらく都心の繁華街を除けば、まだまだ地域のおじいちゃん、おばあちゃん、おじちゃん、おばちゃんによる地域コミュニティがあり、ドラえもんの世界で描かれる「放課後のこども同士の遊びの仲間と時間と遊び場所」が存在していたので、こどもの居場所に対するニーズはさほど高くはなかった。もちろんその時代でも共働き、ひとり親世帯はあったので、児童館が活用されていましたし、保護者同士が手を取り合って学童保育を立ち上げた時代です。それから半世紀が過ぎ、地域社会が担っていた「みんなで子育て」がほぼ消滅し、いまや政治と行政がしっかり予算を投じて、仕組みを講じて、こどもの居場所を用意しなければならない時代となった、というだけの話です。
児童クラブは当時と比べてはるかに拡充しました。そしてまだまだ拡充できる可能性がある事業です。問題は「カネがない」ことです。カネがない事業だから、良い人材を多数雇える予算を確保できない、カネがないからこどもがゆったり過ごせる広さの施設を確保できない、カネがないから活動内容もなかなかバラエティー豊かにならない。問題はとても簡単で、カネさえあれば、かなりの問題は解決します。なぜカネが用意されないのか。それは、こどもの居場所、こどもの発達成長段階にしっかり予算をかけることの必要性に対する理解が弱いこと。「こどもなんて、放っておいても育つものだ」というバカげた偏見がまだまだあることです。こどもの育ちを支える事業に予算を投じることの重要性への理解が足りないからです。
<国は、こどもの育ちに関わる時間に投資をしましょう>
もちろん、こどもの居場所は児童クラブだけに限る必然性はありません。どうしたって集団生活の児童クラブでは一定のスケジュール、時間割で活動する時間帯が多い。それが嫌なこどもだっています。もっと自分のペースで過ごせる児童館や、小規模のこどもの居場所、またはファミリー・サポートセンター事業のテコ入れで、自宅にて、大人の監護のもとで自分の好きなことをして過ごせることが選択できるように、国はもっと「こどもの育ちに関わる事業」に、予算を投じるべきです。児童クラブも、もっと予算措置が講じられれば、より豊かな時間を提供できる可能性があります。ただ職員の指示のもとに活動することしか許されない児童クラブではなくて、こどもたちが主役の活動の時間を確保している児童クラブに進化できる可能性があります。それには、良い人材と、広くて使い勝手の良い施設があることが必要ですね。
今回の文科省の措置も、その前に出た5月15日の通知も、わたくしには「現場の工夫で頑張って」としか見えないのです。予算はもうそれなりに手当しているからあとは自治体の皆さん、事業者と連携して工夫してね、ということを求める国のお願いだと。それこそ、まさにあの戦争時の「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」を令和の時代でもまだやっているのか、という思いが萩原には浮かんでなりません。
もっといえば、こどもの育ちに関する学校や児童館や保育所や児童クラブ、放課後デイなどへの予算だけではなくて、この国の国民の多くがなかなか苦しい生活を余儀なくされているということなのでしょう。それは単に世帯年収の額うんぬんではなくて、世帯年収1000万円でも300万円でも「生活が苦しい」世帯が増えているのでしょう。先の通知で挙げられていた問題の3点は、「暑さをしのげる場所」「ちゃんとした食事の提供」「誰にも困りごとを相談できず悩みを抱える世帯」ですが、水光熱費の値上げ、食材費の値上がり、働かないと生活が成り立たないが時給単価が低いので長時間の仕事が必要となりそれが結果として他者とのコミュニケーションの機会を奪ってしまい孤立化を深めざるを得ない暮らしぶりという、この国の子育て世帯を徐々に追い詰めている要因そのものです。結局のところ、多くの一般的な国民の生活、暮らしぶりをこの国の政治はどれだけ軽視してきたのか、ということに行きつくのでしょう。「学童で働いた、こどもをあきらめた」はこの運営支援の活動を決意させた原点の1つですが、そんな暮らしぶりがまかり通る世界になってしまった、そのゆがみに1つ1つ対処療法的に対応しているのが、いまの子育て支援の政策なのだろうとわたくしは残念に感じます。
岸田政権が打ち出した「次元を超えた少子化対策」は、このような子育て世帯を覆ってうごかないどんよりした状況を吹き飛ばす可能性があるとわたくしは期待していたのですが、結果が出る前にうやむやになってしまったのが、とても残念です。
国は、対処療法だけで「やった感」を出すのではなくて、こどもの育ちを支える事業で従事する者の待遇改善、ずばり所得増を中心として、もっと投資をしてください。学校や学童や保育所で働く人の給料が増えれば、やがてこの世間のカネの流れが元気になりますよ。施設を建て替える、増やす、エアコンをうんとふやす、ということも業者にカネが流れて経済活動の活発化に寄与するでしょう。外の場所でも自宅でも、こどもと保護者が過ごしたい過ごし方が実現できる社会になれば、社会の基盤である家庭の安定が確立し、それは社会に還元されるでしょう。
ぜひ、こどもの育ちに関わる事業産業に国は予算をドンと投資してください。大事なことは「児童クラブを営む事業者だけが潤う」投資ではだめだということ。まず、従事する人と施設にカネが反映されることです。簡単なことですよ。あとは決断だけです。国と自治体にはぜひよろしくお願いします。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」。第4回が2026年6月30日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらすこどもの被害申告に適切に対応できるか」をテーマに関して丁寧に説明しています。 まずは動画をぜひご覧ください。わたくしの著書「知られざる<学童保育>の世界」も紹介されています。
https://youtube.com/live/9q8xzkgs7wo?si=dr06eChxK1Jgov5T
第5回は7月19日(日曜日)15時から、すでに施行されている「児童生徒性暴力防止法」における調査の解説です。話し手:飛田桂弁護士、聴き手:嶋崎量弁護士、鈴木愛子弁護士、野田隼人弁護士、三輪記子弁護士。
第3回(2026年6月11日)は、鈴木愛子弁護士がメインスピーカーとして「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s
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わたくし萩原が寄稿した記事が「ウェッジオンライン」で2026年5月29日に公開されました。「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665
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こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
