学童保育の子どもたちが外遊び中に犬に襲われた事案。事故や事件にいつ巻き込まれるか分からない。ケアが大事!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 昨日(2月7日)の夜、びっくりのニュースがありました。私はネットのニュースサイトで、群馬県の公園で午後、小学生が犬にかまれたというニュースを見て、旧ツイッター(X)に投稿したところ、優しいフォロワーさんたちから「学童の子どもたちだったようです」と教えてもらいました。びっくりです。
 この事件を伝える記事を紹介します。朝日新聞デジタル(2024年2月7日 19時52分(2024年2月7日 20時38分更新))の記事です。
「群馬県伊勢崎市田中島町の西部中央公園付近で7日午後4時20分ごろ、学童保育の職員から「犬にかまれて負傷した」と119番通報があった。伊勢崎署によると、同公園と田尻公園付近にいた小学生らが次々と足などをかまれ、12人がけがをしたという。同署によると、7~10歳の小学生9人と児童施設の男性職員(63)、薬剤師の女性(44)が軽いけがをした。」(引用ここまで)
 また、日テレNEWS NNN (2024年2月8日 5時2分更新)の記事も引用します。
「閑静な住宅街で起きた、1頭の犬が相次いで人を襲うという事態。それは、児童クラブに通う子ども29人が、公園で遊んでいたときに起きました。(児童クラブの施設長)「犬は、子どもたちの周りをうろついていたんですけど、1名が逃げ出したとたんに、その子を追いかけていって、かみついた。3回、かみつきました。別のお子さんの足にもかみついて」(引用ここまで)

 事案の詳細について触れるのが本ブログの目的ではありません。運営支援ブログとして考えたいことは次のとおりです。
・学童保育所(放課後児童クラブを含む、すべての学童保育の施設)で過ごしている間には、どんな事故や事件に巻き込まれるか分からないことを認識しておくこと。特に外遊びでは、予想外の事態に直面することがある。
・事業者(運営主体)は、事故や事件に直面したときに、すぐに現場職員や運営本部職員が適切に対応できるようにマニュアルを整備して実践的に運用できるように訓練を重ねておくこと。
・事業者(運営主体)は、事故や事件に直面してしまった、不幸にも被害を受けてしまった児童(そして職員)に対して、できうる限りのケア、フォローを行うこと。
・事後の補償のために各種保険に加入すること。加入はほぼ義務付けに等しくなっているが、その内容は随時、確認して現状のフォローに十分かどうかも毎年、確認しておくこと。

 今回、大きな犬に襲われるというとても恐ろしい事態に多くのこどもたちが直面しました。まして、実際にかまれてけがをした子どもにとっては、そう簡単にぬぐえない心理的外傷にもなるでしょう。かまれた傷そのものはやがて治っても、心に受けたショック、心の傷はなかなか癒えません。事業者は、自分たちが受け入れている子どもたちなのですから、できる限り、心理面のケアに尽くすべきです。「いやそれは、事件や事故の原因において責任がある側がはっきりしてから、その者に費用負担を求められるようにしてから」と、すぐに「費用の出どころ」を気にする事業者は当然いるでしょうが、それは後日の交渉でなんとでもなりますし、現実的には、よほどの事案でない限り、事案が起きたことに責任のある立場からケアに関する費用を支払ってもらうことは困難でしょう。ですから、学童の事業者は、自己の費用であっても、積極的に子どもたち(と職員!)の心のケアに取り組むべきです。

 いざという事態に直面したとき、職員が適切な対応を取れるかどうかは、被害を最小に防ぐことができるかどうかの重要な要素です。例えば今回の事件であれば、現場の職員は次のことを優先順位をその時々で判断して行ったでしょうし、行うことになったはずです。
・事態の推移、状況を冷静に把握する
・子どもたちを安全な場所へ避難させる
・警察や救急への通報
・施設本部や運営本部への連絡
 施設に残っていた職員や運営本部の職員は、次のような対応を行ったでしょうし、行わねばなりません。
・事態の全体像の把握、必要な対応の指示
・保護者への連絡と相談対応
・関係機関(市区町村の担当部署、小学校)への連絡、報告
・搬送された、もしくは治療を受けた医療機関の把握
・その後の事態対応方針の検討と確立
・必要に応じて報道対応

 今回、先に紹介した日本テレビの報道で見ましたが、事態に直面した児童クラブの職員の方は、何が起こったのかしっかりと説明できる程度に、事案発生当時の状況を把握していました。それは実はなかなか難しいのです。気が動転してしまったり、あるいは子どもたちを助けなきゃ!との一心で子どもたちだけに焦点を当てて動いてしまい、「いま、全体的に、何が起こってどうなっているか」を冷静に観察する機会を逃してしまうことが、往々にしてあるのです。これは何度も訓練を繰り返して「体で覚える」ことになりますが、「冷静に、事態の細部はできる限り把握、確認するのは当然として、全体像もしっかりと把握することが必要」ということを理解して実行できるようにしておきましょう。何が起こったのかを説明することで、のちほどの警察の捜査や調べにとても役立ちます。

 今も昔も実は変わりありませんが、世の中、何があるか分からないのが実は当たり前です。いつも楽しく遊んでいる公園で、まさか大きな犬に襲われるなんて想像できなくて当然ですが、そのようなことが実際に起こると、「やっぱり、世の中には何があるか分からない」という冷徹な事実に直面するのです。これが犬ではなくて、確定的な殺意をもった人物であった場合は、どうしようもなく悲惨で残酷な事態になっていたのかも、しれません。そういうことが絶対に起こらないとは、残念ながら言えません。また、これも残念ながら、「絶対に防ぐ」ということも、できません。
 だからといって、「何があっても受け止めよ」と哲学的なことを申し上げたいのではありません。絶対に防げなくても、起こる可能性を極限まで減らす努力を発揮する態勢を、子どもを守るべき大人の社会は構築するべきです。例えば、学童保育の子どもたちだけでなく、地域の子どもたちもよく遊んでいる公園や場所があるとしたら、市区町村は、地域のボランティア団体や各種団体にぜひ声をかけてください。また警察も、定期的に見回りをするように子どもたちが多く集まる場所にパトロールを積極的にしてください。そうするように、ぜひ声をかけてほしいのです。そうやって、「子どもたちを見守っている」という、目に見える姿勢を社会に誇示することです。
 また、児童館が代表的ですが、子どもたちがより安全安心に過ごせる場所を、予算を投じて整備してほしいのです。もし、小学校の校庭が、放課後に使いにくい状況に制限されているなら、小学校側が考えを変えて、学童保育の子どもたちや地域の子どもたちが遊べるように積極的に受け入れを工夫してほしいのです。

 今回、犬にかまれてけがをして、怖い思いをした学童保育の子どもたち。その子たちの一日も早い回復を願うとともに、「こどもまんなか社会」を掲げ始めたこの国の社会が、「もっと、こどもたちが安全に、楽しく遊べて過ごせる社会をつくること」に、お金と知恵をつぎ込んでほしいと切に願います。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その策定のお手伝いをすることが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)