どうにもならない人手不足の学童保育業界。高年齢職員の戦力化は避けて通れない。運営者が覚悟して取り組もう。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等をご検討ください。

 福祉の世界を苦しめている人手不足。けさ(9月15日)、NHKでは訪問介護の分野の深刻すぎる人手不足を取り上げていました。学童保育も同様な人手不足です。しかも学童保育がこの社会に誕生してから現在に至るまで、ずっと人手不足に苦しんでいます。このような状況なので、応募してきた人をとりあえず採用するしかない、という厳しい局面もまた続いています。

 学童保育の求人に応募してくる高齢者は相当数いらっしゃいます。日本は超高齢化社会で、65歳以上の人口が増えるにつれ、仕事を求める高年齢求職者の人数が増えるのは当然です。よって、高齢者の求職者を学童保育の現場でどう活用できるか、真正面から取り組まなければならないということです。学童保育所の人手不足の問題の解消は、高齢者職員の採用と活用にこそ、解決の糸口があるのです。

 もちろん、高齢者雇用においては多くの問題があります。どうしても体力、瞬発力等、体を動かす仕事において必要な能力において低下していくのは避けようがありません。いざというときの注意力も、やはり低下してしまいます。高年齢ドライバーの引き起こす交通事故は毎日のように報じられていますが、種々の局面で何らかの事故の当事者になる可能性もまた、決して低くはないでしょう。

 私の住んでいる近所の介護施設で9月13日、75歳の職員が運転する送迎用の車が暴走して3人をはね、うち2人が亡くなるといういたましい事故がありました。原因は警察が調べていますが、ドライバーが75歳という年齢から、福祉の世界では元気な高齢者の活躍で支えられる一方、何らかの事故の発生リスクはやはりある、ということを踏まえた対策、労働衛生上の対策が必要であると、感じた次第です。

 厚生労働省は「エイジフレンドリーガイドライン」(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)を策定、公表しています。これは、高齢者の雇用に際して、「体力に自信がない人や仕事に慣れていない人を含めすべての働く人の労働災害防止を図るためにも、職場環境改善の取組が重要です。」と、事業者に呼びかけているものです。

 このガイドラインでは、事業者に対して、以下の1~5の事項について、取り組みを呼び掛けています。

1 安全衛生管理体制の確立
2 職場環境の改善
3 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
4 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
5 安全衛生教育

 この中の「1」において、国は「経営トップによる方針表明と体制整備」を真っ先に掲げています。これは3点からなっています。
・企業の経営トップが高齢者労働災害防止対策に取り組む方針を表明します
・対策の担当者や組織を指定して体制を明確化します
・対策について労働者の意見を聴く機会や、労使で話し合う機会を設けます
 この3点を、運営責任者は率先して行うべきだというのです。

 私も、とても大事だと思いました。というのも、現状の学童保育の世界では、高齢者が新たに職員として加わることを嫌がる風潮が大変根強い。体を動かして遊ぶことが重要な仕事になっているので、動けない高齢者は不要、という考え方です。他にも、年下の職員の指示に従わない、業務の手順をなかなか覚えられない、短気な人が多く子どもへの対応に不安がある、という声をよく耳にします。現場の職員や、あるいは組織そのものが、高齢者の雇用に対して消極的である現状において、それでも人手不足で事業そのものの運営継続が立ち行かなくなるギリギリの局面であれば、子どもの居場所と保護者の生活の支えのためには、なんとしても事業の継続を最優先するしかありません。

 そこで、組織のトップが「高齢者を雇用し、しっかりと局面に応じて職務を果たせるように職場環境や作業手順を見直し、高齢者が働きやすい環境を作り上げる」と、強い決意で宣言することが絶対に必要であると、私は思うのです。トップが決意をして、他の職員の不安の解消に全力で取り組む姿勢を見せることが、大事なのです。

 このガイドラインには、様々な提言が掲載されています。ぜひ検索して見ていただきたいのです。その中でも、
・高年齢労働者の身体機能の低下等による労働災害発生リスクについて、災害事例やヒヤリハット事例から洗い出 し、対策の優先順位を検討

・敏捷性や持久性、筋力の低下等の高年齢労働者の特性を考慮して、作業内容等の見直しを検討し、実施

・高年齢労働者の労働災害を防止する観点から、事業者、高年齢労働者双方が体力の状況を客観的に把握し、事業者はその体力にあった作業に従事させるとともに、高年齢労働者が自らの身体機能の維持向上に取り組めるよう、主に高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に行うよう努めます

・健康や体力の状況は高齢になるほど個人差が拡大するとされており、個々の労働者の状況に応じ、安全と健康の点で適合する業務をマッチングさせるよう努めます

 これらは、高齢職員の戦力化において必須なだけではなく、20代から50代の職員であっても、個々の能力や体力に違いがあることを考えると、業務の効率化において役に立つことです。

 また、一概に、高齢者だから体を使う外遊びは不安、できそうにないと決めつける考えは変えたほうが良いでしょう。確かに10代の学生の補助員のように、子どもたちと長時間、サッカーに興じたり鬼ごっこで走り回ったり、持続的に体力を使うあそびは無理があるでしょう。しかし、遊びはたくさんの種類があるので、高齢者でも20分ほどなら体を動かせる外遊びを新たに取り入れるという工夫も必要です。

 要は、「どうせできない」「無理に決まっている」ではなく、「どうしたら、子どもたちと楽しく遊びで関わることができるか」、前向きに活用方法を考えることです。
 例えば、採用してまだ間もないころは、担当させる具体的な業務をあまり広げない。賃金も、それに見合った設定にする。私が勧める「非常勤職員におけるジョブ型雇用」です。これは、担当となる具体的な職務に応じた賃金の設定方法です。最初は限定された職務範囲であっても、知識と経験を積めば担当できる職務が徐々に広がります。そうすればいずれ必ず、高齢者も必要な職員に成長するのです。

 このガイドラインは、働く側、つまり高年齢労働者にも一定の配慮を求めています。
「一人ひとりの労働者は、事業者が実施する取り組みに協力するとともに、自己の健康を守るための努力の重要性を理解し、自らの健康づくりに積極的に取り組むことが必要」

 事業者は、高齢者を採用したなら、しっかりと丁寧に、かつ繰り返し、学童保育で高齢者が働くことにおいて求められる重要事項を、教え続けて理解させることが必要です。育成支援の理念、組織内での立ち振る舞い方、業務内容とその意味。つまり、研修と教育ですね。これは絶対に欠かせません。
 この時、どうしても組織の方針を理解しようとしない、受け入れようとしない人であるなら、それは無理に雇い続ける必要はありません。高齢者の求人は相当多いので、どうにもならない場合は無理に採用せず、少しでも自助努力が見込める、子どもに対する育成支援の根本的な理念を理解できる、そういう人を採用すればいいのです。

 「また高齢者の応募だよ」とがっかりするようでは、いつまでたっても人手不足。日本はもう超高齢化社会。その現実を受け入れ、高齢者の戦力化に前向きに取り組む事業者が、この先、安定した事業運営ができるのです。そのためにも弊会は高齢者職員の教育、研修も請け負います。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の現場における事業運営の安定性について提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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