学童保育の国の補助金、常勤職員2人分に改善見込みは喜ばしいですが、常勤の年収310万円程度ではダメ!
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。
国は、学童保育(この場合は、放課後児童健全育成事業)に対して補助金を出しています。補助金がなければ成り立たちません。補助金は主に人件費を想定して算定されていますが、その補助金が安すぎるので、学童保育で働く人の給料も低くなっています。これを改善しなければなりません。
来年度(2024年度、令和6年度)における補助金は、いくらか改善されるようです。報道もされています。ただ、まだ正式決定とはなっていません。まさに今頃が、来年度の予算案を決める国の役所同士のせめぎあいの季節ですから、どうなることか、かたずをのんで見守っている状況です。
いま、国の補助金による学童保育の人件費は、1つの単位について、常勤職員1人分の賃金プラス非常勤職員2人分の賃金で構成されているとされています。「日本の学童ほいく」誌2024年1月号の「協議会だより」に、説明されています。それを引用しますと、2017年度以降、年収310万円程度の常勤1人+年収181万円程度の非常勤職員2人分、となっています。
来年度から期待される補助金の改善では、これが年収310万円程度の常勤2人分+年収181万円程度の非常勤職員1人分を目指して、こども家庭庁は予算を請求しているようです。ぜひこれは、当然のごとく、実現されることを望みます。なお、この常勤2人分の補助金が適用されるためには、当然ながら、実際に常勤2人が配置されていなければなりません。常勤1人のクラブでは適用外となります。つまり、いまだに常勤1人が多い学童保育の世界において、常勤2人配置を促すための補助金引き上げ案ともいえるのです。
しかし、当たり前のことですが、「年収310万円程度」では、育成支援の専門職であり、公的な資格をもって任に当たっている職員の報酬には、全く不十分です。そもそも、この310万円程度の年収設定が、極めて不合理です。310万円程度の年収は、手取りにすると250万円前後になるでしょう。私は310万円程度の年収では、まさにワーキングプアであると考えます。なお、一般的にワーキングプアとは年収200万円台、生活保護を受けられるレベルとされていますが、たとえ社会保険料として現在または将来の所得保障や疾病又は負傷に対する補償があるとしても、日々の最低限度の生活に困るような所得状況は、ワーキングプアであると私は考えます。しかも、国が決めている賃金水準に基づくものですから、まさに「官製ワーキングプア」だと私は考えています。
国が、どうして310万程度が学童保育の常勤職員の報酬として妥当と考えているのか、その根拠は私には分かりません。それを説明している資料は特に公表されていないようです。福祉職俸給表は公開されていますが、なぜ学童保育の常勤職員が310万円程度となるのか、合理的な説明が必要です。おそらくそれはできないでしょう。「学童保育の職員の仕事は、子どもの面倒をみることだから、2級1号棒でいいだろう(19万円)」程度の考えなのでしょうか。
この額をもっと引き上げることが絶対に必要です。学童保育の世界が抱える最大の難問は、人手不足です。働いてくれる職員がなかなか雇用できない、あるいは雇用してもすぐに辞めてしまうことです。これはひとえに、賃金水準が労働内容に見合っていないからです。これを改善すれば人手不足問題は解消しますし、質の高い人材を雇用できることで育成支援の質も当然、上がります。
年収310万円程度ではなく、国の医療職俸給表による看護師等の平均年収である550万円程度にまで引き上げるべきです。もちろんそれは、しっかりと、放課後児童支援員資格を有する常勤職員を2人配置し、放課後児童クラブ運営指針に準拠している育成支援を提供し、国民が望む児童福祉サービスをしっかり提供できている施設に対してのみ認めればいいだけです。そうではない施設にまで、税金からなる補助金を多額に交付する必要はありません。常勤職員も1日6時間以上かつ月20日以上という最低限度ではなく、1日8時間の所定労働時間で良いでしょう。
基本的な国の補助金が充実すれば、現行の、放課後児童支援員等処遇改善等事業の、補助金の上乗せ補助金のような制度は不要となります。処遇改善等補助金は、本来の賃金が低すぎるための、あくまでその場しのぎの措置です。しかも全国でその制度を活用している市区町村は2~3割にとどまっているといいます。市区町村が恣意的に運用するあやふやな制度よりも、基礎的な補助金(運営費のこと)をもっと充実させることが必要です。
先日、介護の世界では賃金引き上げにつながる改定案が出たようです。介護の世界もまた、危機的な人手不足にあります。その対応としての介護報酬改定とされています。学童保育の世界も同じです。いや、もう危機的状況を通り越して崩壊しつつあります。この国が、この地域社会が、子どもの育ち、子育て世帯の生活を本気で懸念し、成長と生活を後押ししたいなら、当たり前の事を政策として実施してください。それは、賃金の引上げ、しかありません。
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放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されます。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。1,900円(税込みでは2,000円程度)になる予定です。注文は出版社「寿郎社」さんへ直接メールで、または書店、ネット、または萩原まで直接お寄せください。アマゾンでは予約注文が可能になりました!お近くに書店がない方は、アマゾンが便利です。寿郎社さんへメールで注文の方は「萩原から勧められた」とメールにぜひご記載ください。出版社さんが驚くぐらいの注文があればと、かすかに期待しています。どうぞよろしくお願いいたします。
育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。
育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!
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