改めて、すべての活動に関して事前調査&行動計画&配置計画を立て、常に最新の状況を把握することを心がけよ。
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。
7月26日に、大変いたましい事案の報道がありました。滋賀県内の学童保育に在籍している小学1年生の児童が、プールで溺れて亡くなったということです。ご家族、ご関係者の皆様には心よりご冥福をお祈り申し上げます。報道で知る限りですのでこの事案に関して論評はできませんし、今後、関係機関による調査、捜査が進むでしょう。わたくしが気になったのが、26日午後6時11分配信の朝日新聞記事で報じられた「子ども45人を職員4人で引率し、26日午後1時ごろから施設の25メートルプールに入った。職員のうち2人がプールサイドで監視し、残り2人は水中で子どもと遊んでいた」という内容。また、毎日放送の同日午後8時24分配信の記事では、「1年生なので、的確に泳げるかどうかは把握していなかった」と学童保育側が記者会見で話したコメントも、非常に気になりました。
今後、関係機関によって、職員の監視体制が適切だったのか、プール活動を行うにあたっての事前準備が適切だったのか、綿密な調査が行われることを望みます。
学童保育所の施設外で行われる、いわゆる「所外活動」については、わたくしは夏季休業中に行われる所外活動については、子どもたちの楽しみであり、日常とは異なる体験ができることによる経験値の増加が子どもたちの成長を支える要素であることから、できる範囲において行っていただきたいと考えています。しかし当然ながら、学童保育所は、子どもの安全安心が絶対的に確保される場所でなければならず、それは至上命題です。子どもの安全安心が確保できない状況での所外保育は当然、行うべきではないのです。そこは大前提として、考えておかねばなりません。言い換えれば、「リスクマネジメントが十分ではない所外活動は、行ってはならない」ということです。
その上で、事故に対して(さらに明白かつ具体的な危険性があるわけではないですが、事件に対しても)その発生リスクを極限まで低下させることを絶対的な厳守事項として所外活動に関する計画を立て、その計画に基づいて実行することであれば、それがたとえ水遊びや山歩き、キャンプといった、学校の校庭や施設内の室内遊びと比べてはるかに事故等の発生リスクが高まる活動であっても、実施することをすべて忌避する必要はないと、わたくしは考えます。
その計画をどうやって立てるのか。わたくしの経験値からは次のことが必要です。
その1 下見(事前の確認)は必ず行うこと。キャンプならキャンプ場、川遊びならその川、映画鑑賞なら映画館、またいずれも、その場所までの往復ルートを、必ず引率の職員が複数名で確認し、ただ漫然と目視するだけでなく、留意点を記録すること。キャンプ場のような管理されている場所であっても、実際に足を運んで目視し、管理人にも話を聞き、そこに何があるのかを確認することは大事です。子どもたちが乗るバス停の場所、どのようなバスが運行されて何人乗れるのか、時刻表からどの程度まで遅れることがあるのかなど、活動スケジュールに影響がありうる事項についてはすべからく確認することは当然、必要です。そして持ち帰った、もしくは収集した情報は計画立案の際に当然、活用します。
その2 参加者(子どもだけでなく職員、また参加する保護者も)に関する情報を常に収集すること。屋外活動であれば、その活動に密接に関連する身体的能力や運動能力、その活動に関する興味関心の度合い、また健康面、体調に関する情報は、常に最新の情報を収集します。あまり水泳が得意ではないという子どもがいるなら、それに応じて必要な物品を用意する、またそういう状況の子どもが過ごす、遊ぶ場を確保することなど、得られた情報によって対応したり限定したりするべき活動の範囲が見えてくるのです。
また、体調や体力面に比べて、心理面に関することは見過ごされがちですが、心理状況というのは人間の活動に影響します。「あまり楽しそうではない、乗り気でない」という子どもがいたとして、その心理状況を知っているのと知らないのでは、実際に所外活動中での対応も異なるでしょう。
その3 下見や参加者に関する情報を基に、職員全員で「所外活動計画」を立案する。その計画は、ただ単に、何月何日何時ごろ、これこれをする、という1~2枚の書式で収まるものではありません。全体的な時系列に加え、その時々に行う個別の活動に際しては、より詳細に、職員の配置、担当任務、順調に進行したときと突発的に何か起こった時の次善の備えなど、考えうる限りの変化を想定しての計画を立てることになります。もちろん、その内容は職員全員で共有し、また、活動協力で参加していただける保護者の間でも共有します。重要なのは、計画を1度立てたらおしまい、ではないのです。常に最新の情報を得て更新、アップデートすることです。例えば、キャンプの場合、大雨や台風でその場所の地形や川の状況が変化することがあります。そういう場合は、管理人に細かく情報を聞くこと、あるいは実際に再度、下見をすることで計画の再点検を行うことです。
なお、この計画はクラブの現場職員だけで共有するだけでは不完全です。当然、事業運営の責任者に報告し、その事業運営責任者も計画をあらゆる角度からチェックし、不備があるようなら報告を求めたり再調査、再立案を求めることです。すなわち、「運営組織全体で、所外活動の責任を負う」ということを明確にすることです。
その4 事前に机上で所外活動を想定した演習を行うこと。これは極めて大事です。所外活動に参加する職員全員が参加して、実際に所外活動を行っていると想定して、進行の様子を机上演習します。普段から様子を見ている子どもたちの行動のクセ、考え方のクセ、つまり職員ならでは知りえる情報も盛り込んで、想定演習することで、現実に所外活動を進行しているときに、何か突発事案に直面したときでも、比較的落ち着いた対応ができることでしょう。
その5 必要な物品については必ず状況を確認すること。特に屋外での活動は器具を使用することが多いものです。その器具、道具、物品について状況を確認することです。とりわけ、刃物類、火を使う物には、「去年、ちゃんと使えたから大丈夫」ではなく、実際に使ってみて不具合がないかどうかを確認することです。
その6 最悪の事態を必ず想定すること。これは心理的につらい作業ですが、人の命を背負っている事業であるならば、絶対に避けてはなりません。まして、通常の事業活動よりも事故等の発生事案リスクが高い活動であるならば、複数の展開で発生する最悪の事態を想定し、「では、その事態を防ぐためにこういう策を立てよう。万が一、そういう事態になったらこうやって対応しよう」というアプローチを行うべきです。例えば、川遊び中に〇〇くんの姿が見えなくなったとか、急に深みにはまっておぼれてしまったとか、考えたくもない事態を考えて、それへの備えを行うことです。これは本当に重要です。
その7 職員の「子どもの命を絶対に守る」意識を最大限に高める。計画立案段階から、実際に所外活動を終えて反省の振り返りをするまで、職員(および参加する大人、保護者)は、緊張感を欠いてはなりません。常に「何かトラブルは起きていないか、事態がうまく進行していない局面になっていないか」を確認、把握する姿勢を持つべきです。とりわけ、所外活動全体において指揮管理責任を負う者は、その意識を絶対に欠いてはなりません。学童保育の職員には、子どもと遊ぶことを通じて子どもとの関係性を深めていく事業上の特質がありますが、所外活動が楽しいからといって子どもとの遊びに没頭し、周囲で起こっていることに対する注意がおろそかになっては、絶対にいけません。
職員が常に緊張感を持ち、子どもと関わる、遊びながらも業務の執行を忘れずにいること、それはしんどいことです。ですが、多くの子どもたち、そして職員の命、人生を背負っているという責任を職員は忘れてはなりません。
上記のこと、つまりリスクをマネジメントする種々の過程が嫌だ、面倒くさいと思われるのなら、子ども(職員も、ですが)の命を守るために、所外活動はするべきではありません。あくまでも、人命>活動の経験値、だからです。命より大切なものは、ありません。
(今回は、業務改善行動に代えて所外活動について思うところを臨時にお伝えしました。生産性向上については次回以降、再び取り上げる予定です。)
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育におけるリスクマネジメントについて、積極的に発信をしていきます。子どもの命を守るために必要な思考、計画立案について研修、教育の機会を提供できます。学童保育業界が抱える種々の問題や課題について、具体的な提案を行っています。学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
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