学童保育も、労働生産性の向上に取り組もう。その3

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 学童保育所の世界は、「低賃金」「長時間労働」「重労働」であり、それらは「働き手不足」の原因であり結果であるという、構造的に非常に困難な状態です。その厳しい状況は、学童保育に対する社会的評価の向上とそれに伴う補助金等の増額で、長期的に見て解消されることを私は期待しています。
 しかし、それとは別に、今この時点で、学童保育の業界が取り組まねばならないことがあります。それが、質の高い学童保育事業の実施であり、そのために必要なのが「労働生産性の向上」なのです。なぜなら、労働生産性の向上は、結果として質の高い職場環境の実現を同時にもたらすものであり、個々の労働者にとって納得のできる雇用労働環境を実現できる可能性が高いから、なのです。

 3回目は、業務改善について提言します。なお、これからご紹介する内容は、厚生労働省が公表している、「介護サービス事業(施設サービス分)における生産性向上に資するガイドライン」を参考としています。

 業務の改善を実行するにおいて私が重要と考えているのは、「スタイル」と「人の資質」です。業務の改善の形式(スタイル)だけを取り入れても、「なぜ、業務の改善が必要なのか。そのスタイルはなぜ必要な形式なのか」を理解できない程度の資質の職員であっては、せっかくの業務改善行動も、絵に描いた餅に終わってしまいます。そこは忘れてはなりません。「人の資質」については教育研修の分野ですので、また改めて取り扱います。

 具体的に学童保育での業務における改善とはどういうことでしょう。分かりやすい例を示します。
 「午前の学習時間が終わったら、子どもたち全員での外遊びタイム。さあ、その時刻が迫ってきた。おや、職員たちがどうやらそのことを忘れているのか、それぞれに違うことをやり始めた。でも子どもたちは何より遊びの時間を楽しみにしていたので、外遊びタイムが近づいたらウキウキソワソワ。でも、職員がバタバタしている。外遊びに必要と用意していたはずの道具が見つからないようだ。指示を出すはずのリーダー的な職員は、何か急に発生した事案の対応に追われている。子どもたちは、せっかくの外遊びタイムがなかなか始まらず、ついにイライラしてあちこちで子ども同士のいざこざが発生。それにここに対応する職員たち。どんどんと、外遊びタイムが短くなっていきますー」

 なんだか、ありがちな光景ですが、これはまったくもって、業務手順がしっかりと確立されていないことから起こることであり、その結果、子どもたちの集団がまとまらなくなり、学童保育所における育成支援が台無しになってしまっています。

 こういうことをすっきりと解決する、いや、こういうことが「起きないようにする」のが、業務改善行動なのです。

 上記の例でいうなら、
1「外遊びに必要な道具は、すぐに取り出せるようにしっかりと整理整頓しておく」
2「どこに、何を置いてあるのか、職員全員で情報共有しておく」
3「リーダー役の職員が急に他の業務に取り組むことになった場合、リーダー役の職員は代わりに指示をする職員を指名し、業務を遂行させる」
4「他の職員も、リーダー役の職員の様子を把握し、自分でできることについて上司や同僚とすぐ打ち合わせをして次のタスク(この場合は、外遊び)に取り掛かれるようにする」
と、職員集団、職員のチームで、常に、どういう状況になっても対応できるように備えをし、かつ、イレギュラーな行動が必要となった場合に対応できるようにしておくことなのです。それが、業務の質の向上であり、それを実現するのが業務改善行動、なのです。

 業務改善行動として学童保育職員は、最低でも次の2つは徹底的に実施しましょう。
 その1つが「整理整頓」です。なんだ、単純なことではないかと思われるでしょうが、その単純なことがしっかりできていないから、日々の業務で「時間のロス。ムダ」が生まれるのです。
 また、整理整頓は、道具や物品の整理整頓だけに限られません。「情報の」整理整頓も必要です。先の例でいうなら、リーダー役が何か別のタスクに取り掛かり始めたとき、リーダー役の職員は「私の代わりに誰が、何を行うべきか」を瞬時に考えの整理を行い、明確な形で他の職員に指示、伝達する。他の職員は、リーダー役の職員がイレギュラーな対応にかかりはじめたら、即座に今後の展開をしっかりと予測し、自分が何を引き受ければよいかの思考を整理すること。つまり、「現在の情報をしっかりと整理分析し、将来に必要な行動の予測を立てる」ことが、大事なのです。

 2つめが「職員それぞれの担当業務・担当分野の明確化」です。
 上記の例でいうと、外遊びタイムが近づいたら、それぞれの職員が事前に打ち合わせて決めたタスクに取り掛かることです。「なんだ、それも当たり前のことだ」と思われるでしょうが、繰り返しますが、その当たり前がなかなかできないから、学童保育所の現場はいつもガヤガヤしているのです。
 注意するべきは、この業務の明確化は「固定化」ではないということです。ここが学童保育業界に多いのですが、「自分はこのことをすると事前打ち合わせで確認した。だから、それをやるだけだ」として、状況の変化に対応しない、あるいは対応できない職員が実に多いのです。担当業務や分野の明確化には、平常時だけでなく、「何か、突発的に他の事案が起きた時に行う担当業務や担当分野を明確化する」ということも含むのです。すなわち、臨機応変に対応するにあたって、誰が、どのような立ち位置に代わりに入るのか、ということを個々の職員がしっかりと理解しておくことが、必要なのです。
 そしてその際、リーダー役の職員(管理職)は、常に、的確な指示を出すことを心掛けなければなりません。リーダーがあやふやなら、他の職員が全員、あやふやになります。「私はこの対応に専念しなければならないので、次の外遊びの時間については全て〇〇先生に任せます」でも構いません。それも明確な指示です。このような指示を受けた者が、しっかりと集団を取りまとめる行動をすればよいだけですから。

 他にも、業務改善行動については取り入れたいことがありますが、この2点を確実に実行できるようになるだけで、学童保育の業務については目に見えてスムーズに動くようになるでしょう。基本的に、職員と子どもの2つの要素で動く世界ですから、シンプルな業務改善行動で、劇的な効果が期待できるはずです。

 業務がスムーズに進行するようになると、子どもはもちろん、職員にも、ムダなストレスが減ります。学童保育所の雰囲気が良い状況で保たれるようになります。遊びの時間の切り替えだけでなく、お弁当、おやつ、掃除、学習、いろいろな場面での切り替えの時に、スムーズに事が運ぶようにする。これを極めて重要なこととして心がけることです。日々のルーティーンだけでなく、月間でしたら提出が必要な書類の作成、年間でしたら職員異動に伴う引継ぎ、切り替えも、同様です。

 次回は、引き続き業務改善行動を取り上げる予定です。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の業務構造の質的改善について、積極的に発信をしていきます。また、育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供できます。学童保育業界が抱える種々の問題や課題について、具体的な提案を行っています。学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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