社会のニーズに応じることは重要。困難があっても実行しなくてはなりません。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 4月21日午後に、NHK「おはよう日本」の番組サイトに、「学童保育アンケート」と題した特集記事が公開されました。翌22日と23日には、番組で学童保育に関する特集も放送されました。NHKという巨大なメディアが、学童保育の問題点を継続して報じることは、学童保育と言う制度の理解と問題点の社会的共有の面で、とても有益なことで、高く評価します。

 「学童保育アンケート」には、いくつかの課題点が指摘されています。

 その中で気になったのは「小1の壁」についてです。もともと小1の壁とは、保護者において子どもが小学校に入学した際に生じる問題であって、「学童保育所に入れず、保護者が仕事を辞めざるを得なかった、あるいは勤務時間が短い仕事(たいてい非正規職)に変えざるを得なかった。よって収入が減った」という待機児童問題が中心でした。最近ではさらに、「学童保育所を利用できる時間帯が短く、フルタイムでの就業が難しい。よって職を変えざるを得なかった」という、学童保育所の利用に関しての問題がよりクローズアップされています。この利用に関しては、「学童保育所に持参するお弁当作りが大変(長期休業期間中など)」や、「子どもが学童保育所になじめない。学童保育所で、いじめに遭って登所を拒む」ということがあり、いずれも保護者の職業生活と学童保育所の利用が難しいという問題もあります。

 これらの問題で、最近特に各メディアで報じられているのが、学童保育所の開所時間の短さについてです。具体的には、朝の出勤時に、まだ小学校の登校時間前に保護者が出勤する必要があるとき、子どもの安全な居場所がない、つまり、自宅で、鍵を持たせて子どもを1人にしておくことが不安という問題があります。保育所は午前7時から開所しているところが多く、就学前は大丈夫だったが小学校入学後に困る、ということです。

 小学校の登所時間は地域によって差があり、午前7時30分前後に登校する児童も多いので、特にこれまで重要な問題として認識されていなかったと私は感じています。ただ、最近は学校の教員の「働き方改革」で、小学校の教職員の出勤時間が遅くなりつつあることも影響していると想像できます。お迎えの時間帯にかかる問題、つまり学童保育所が閉所する時刻が早いという問題は、以前から取りざたされていたことで、次第に多くの学童保育所は午後6時以降の開所を行っている施設が増えてきてはいますが、午後6時以降は別料金徴収など、保護者に負担を伴うケースは多くの地域で残っています。

 学童保育所、とりわけ児童福祉法に規定される放課後児童健全育成事業においては、「保護者が就労等で不在の時間」の子どもの居場所として機能することが要件となっています。ということは、それが朝の時間帯であっても、保護者が出勤のため家庭に不在となる時間帯が生じるのであれば、法の求める利用の要件を満たすことになり、学童保育所はそのニーズに対応するべきという理屈になります。

 もちろん現実的には極めて難しい事情があります。朝の学童保育所開所にかかる費用に対して補助金はありません。利用する保護者の受益者負担だけで必要な費用を補うとしたら相当な金額が予想されます。その時間帯に従事する職員を確保することも困難です。高い賃金を用意できれば働いてくれる人が見つかるでしょうが、その費用の確保の問題がついてまわります。

 なにより重要なことは、朝の開所の時間帯も学童保育所の開所とするならば、法令が求める放課後児童支援員の配置が必要となり、配置をしない時間帯であれば補助金の交付が可能としても極めて低額となること、有資格者不在で、子どもを安全安心に受け入れられるのか、という難問があります。

 学童保育所の利用時間帯に関する「小1の壁」には、3つの対応策があるでしょう。
1つ目は、学童保育所が朝の開所を行い、夜も保護者の就業を妨げない時間帯まで開所すること。
2つ目は、その他の子どもの居場所を提供するサービスを充実すること。具体的には「ファミリーサポートセンター」の拡充で、早朝や学童保育所閉所後に子どもを安全に見守ることができる制度を充実させることです。その他、民間事業者の活用も考えられます。
3つ目は、育児中の保護者が無理なく職業生活と育児を両立できるような社会的なシステムの確立です。時短勤務制度を充実させ、朝は子どもが登校する時間帯を過ぎて出勤ができ、夕は学童保育所が開所している時間帯に迎えに行ける、という働き方を可能とするものです。

 学童保育所、特に実際に子どもの支援に従事する側とすれば、3つ目の方策を支持するでしょう。しかしこれは一朝一夕にできるものではないので、実現するとしても相当な年月が必要でしょう。私はこの3つ目の方策について実現に導くのが「子ども家庭庁の役割」と考えていますが、労働法規はもちろん社会活動全体に影響することですから、すぐにはできません。

 2つ目の、学童保育所以外の子育て支援制度の充実も抜本的な解決策にはなりがたいと考えます。「ファミリーサポートセンター」は従事者が常に不足していること、個別の支援であって、地域に多くの需要が生じる場合は対応ができないことが要因です。

 となると、学童保育所の利用時間を拡大することが一番現実的なのです。

 学童保育所の利用時間拡大は、まず「費用の出どころをどうするか」という問題があります。仮に、それが解決すれば、学童保育所側は、法で定められた要件を満たす以上は子どもの受け入れに積極的になることが必要です。社会のニーズを受け止めて、保護者の就労を(時短制度などが満足に整備されるまでの間だけでも)確保するために、社会にとって必要な公共の児童福祉サービスとして、国民のために利益を提供するべきなのです。

 学童保育所は、必要とする人がいる限り、子どもにとって安全安心な居場所として機能するべきであり、かつ、そこで過ごす子どもの育成支援を行うべき存在です。もちろん現状では、費用面から困難であっても、行政がその費用について対応するというのであれば、積極的に朝の受け入れも、夜の受け入れも、時間帯を拡大するべきであると、私は考えます。

 学童保育所は、社会(働いている保護者)が必要する限りは、そのニーズをしっかりと受け止めるべきなのです。「子どもは、家にいればいい」というのは、極論で言えば、放課後児童支援員の役割を自分自身で否定しているようなものであると、私は言いたい。支援を必要としている人に支援を行うことが、福祉の仕事です。

 そしていずれ、育児と職業生活の両立が無理なくできる時代が到来することを待つのです。

 学童保育の「小1の壁」問題は、まず、国や行政から必要な資金が準備されることを大前提に、学童保育側も、積極的に子どもたちの受け入れに動くべきです。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育組織運営に豊富な経験を持つ代表が、学童保育所の制度の在り方に関して提言していきます。運営に際しては、子どもたちと職員を守るための具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 学童保育の運営者の方、そして行政の学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る学童保育所の発展のために、一緒に考えていきましょう。職員育成はもちろん、どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく学童保育です。学童保育の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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