津島市に続いて新潟市でも!学童保育所の指定管理者選定に関して疑問の声。地域に根差した学童保育はどこへ?

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 学童保育所の運営を指定管理者制度で営利法人に委ねる流れが加速しています。その件で大変気がかりな報道がありました。新潟日報が12月13日12:00にインターネットにアップした「放課後児童クラブの指定管理者「変えないで!」新潟市の変更方針に保護者が異議、継続求め要望書 市議会でも批判の声」という見出しの記事です。一部引用しますと、「新潟市がこれまでの地元企業から東京の企業へ変更するという方針を示している。これに対し、新潟市西区の保護者が異議を唱えている。」とのことです。

 新潟市が公表している資料では、2024年度から、19クラブについて東京都調布市の企業を指定管理者として選定したとしています。他、56クラブは社会福祉協議会、6クラブは新潟市内の法人で、非公募で選定したクラブもあるようです。先の新潟日報の記事では、19クラブの指定について保護者から異議の声が上がっているようです。確かに19クラブには新潟市西区のクラブが多く含まれていました。

 地域に根差した団体、法人ではなくて全国的にアウトソーシング事業を展開している企業が学童保育所の運営の指定管理者に選ばれる。当ブログでも何度か言及している愛知県津島市はまさにそのケースです。全体的にみて順調に運営している、地域に根差した法人であっても、いざ、事業規模の大きさが事業の安定と受け止められやすい全国規模の営利企業が指定管理者として選ばれてしまう。このことを、どう考えて整理すればいいのでしょうか。

・公の施設、なかんずく、継続的に安定した事業運営が必要な学童保育の施設を公募で選ぶ指定管理者制度に本質的な難点があるのは言うまでもないところ。
 指定管理者制度で利点と考えられることは、コストカットです。つまり経費削減です。これは大事なことです。運営経費に税金(子ども子育て拠出金も含む)由来の補助金が多く投入され、保護者の支払う利用料も必要に迫られて支払う、いわば税金のようなものですから、1円でも安く運営できることは高いポイントになります。納税者も、利用する保護者も、「少しでも安く済むなら」、安く運営する事業者を支持するでしょう。
 しかし、「コストカット」だけが絶対的な要素ではないはずです。特に、子どもの最善の権利が守られる場所である学童保育では、費用が安くても子どもが安全安心に過ごせる環境が整っていなければ、事業の目的を果たせているとは言えません。いくら費用が安くても、事業目的が離せなければ、全てが台無しです。コストカットのため職員雇用が安定せず、質の高い人材が雇用できず、育成支援の質が低下するという事態です。これは現実に多くの地域で起こっていることです。
 私は、質の高い事業目的の実施運営≧経費削減、と考えます。

・地域社会との関係をどう考えるか。
 津島市も新潟市も、地元に根差した団体ではない事業者が運営することの是非について疑問の声が上がっています。これはさらに難しい問題です。私自身は、地域社会、特に地方と呼ばれる地域においては、その地域における活性化を考えた時に、なるべく、地元、地域の活性化につながる施策を講じてほしいと考える思想を持っていますが、その一方で「1円でも安くサービスを提供する、モノを販売する事業者、企業」をよく利用しています。得てして、コスト的に魅力のある事業者や企業は、地域の外に拠点があります。普段の考え方に合致した行動だけを行うことはなかなか難しいのも事実です。
 それでも、学童保育においては、地域における子育てが子どもの育ちにとって良い効果をもたらすことを考えると、地域に根差した事業者、企業が、その運営を手掛けるメリットは大いにあると私は考えます。地域の人材が、地域の子どもの育ちに関わっていく機会や場が存在することは、地域社会の土台を支えることになります。それは、単に職員として雇用され働く人が地域にいる、ということではありません。学童保育を運営する方々が地域にいる、地域の方が運営に関与できる仕組みがある、ということの重要性です。別に地域の方を運営の一員にする、ということではありません。運営する方々に近い存在でいることが大事だと考えます。
 地域経済においても、地域に根差した事業者であることは大事です。他の地域にある大きな企業が指定管理者として、ある地域の学童保育所をいくつか運営することになった場合、その事業者が受け取る補助金や利用料は、どこに流れていくのか。多くは人件費として雇用している職員に支払われますが、事業者が利益として得られる金額は企業本体に流れるでしょう。13日の当ブログでは1クラブあたり約300万円であることを導いています。もちろん、事業者が、営業所をその地域に設ければ、地方税としての法人事業税は職員数で案分されて地方にも配分されますし、法人住民税の所得割は課税標準が分割されますが、地域に入る納税額が減ることは避けられません。ただし、法人住民税の均等割は本社がどこであっても、営業所さえその地域にあれば、地域に納めることになります。国税である法人税はその本社所在地に納められます。
 このことを考えると、地域経済を重視するのであれば、法人事業税や法人住民税所得割を少しでも地域にと考えると、地域の事業者が学童保育所の運営を担うことを市区町村が避けてもよいとする積極的な理由は見出しにくいと私は考えます。まして、運営する単位が10を超えるようになれば、予算は軽く億を超えてきます。地域経済に巡るお金の量、額として決して小さくない金額です。
 よって、仮に、やむを得ない理由、合理的な理由があって他地域に本社のある事業規模の大きな企業が、数十にもおよぶ単位の学童保育所を指定管理者として運営するのであれば、私なら、地域に「支社」を設立させてそこで企業活動を行うことを求めます。そうではないと、地域社会経済に寄与するメリットが減じられるからです。

 以上をまとめると、税金や利用料が使われて運営される以上、費用は1円でも安い方がいい。しかし、それによる育成支援への悪影響は事業目的そのものの達成を困難にします。そうであれば、そこに公金、利用料がつぎ込まれることは意味がありません。事業の質が悪い、しかし運営事業者はきっちりと利益を確保するのでは、それこそ社会正義に反した補助金ビジネスです。しかも、地域での子育ての理念が薄れ、地域社会経済への寄与も薄まる。

 市区町村は、改めて、「地域の外に拠点がある、事業規模の大きな事業者」に地域の子育て支援施設である学童保育所を任せることについて、冷静に判断していただきたいと私は思います。大きいからといって、研修体系が優れているとは限りません。人材配置がしっかりしているとは限りませんよ。(もちろん、地域に根差しているからといって、地域社会と密に交流しているとも限らないですし、運営に保護者の意見がしっかり反映されているとも限らない。事業者の質は、それぞれの観点で客観的に定められるべきなのは言うまでもありません)

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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