学童保育の流動化。民間学童保育所が、民立(民設)民営学童保育所に転換するケースがあります。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 学童保育の世界は、何を基準にして区分するかによって、種々の区分が可能です。その中でも、「誰が設置して、誰が運営しているか」の区分方法は良く使われます。前日(12月13日)にも記しましたが、本日のテーマに関係するので改めて紹介します。
<誰が設置しているか>
・市区町村が設置している=公立(公設とも呼ぶ)
・民間事業者が設置している=民立(民設とも呼ぶ)
<誰が運営しているか>(別の言い方をすれば「補助金を交付される対象とみなされる組織は誰か」)
・市区町村が運営している=公営(いわゆる直営)
・民間事業者が運営している=民営
 さらっと民間事業者が登場していますが、学童保育(本稿では、放課後児童健全育成事業のこと)は市町村が行うことができる「事業」ですが、民間組織も行うことができます。というか、学童保育は、法令で規定されるはるか以前にすでに社会に存在していた仕組みであって、その仕組みを作ったのは民間組織ですから、民間が学童保育を手掛けられることは当然です。

 さて今回のテーマは、民間学童保育所です。民間がごく自然に手掛けられる学童保育所に、なんでわざわざ民間学童保育所と、屋上屋を架すような言い方をするのか不思議ですが、私も学童保育の世界に関わった時はすでに「民間学童保育所」という呼び方が普通に使われていたので、それにならっているだけです。
 そもそも「民間学童保育所」という呼び方に、根拠となる規定やルールは一切ありません。通称名です。
 この民間学童保育所は、「放課後児童健全育成事業」では、ありません。つまり児童福祉法や、子ども子育て支援法に規定されている事業とは異なります。というと、「学童保育ではない?」と思われますが、「広い意味(=広義)では、学童保育」として世間的に扱われています。この広義の学童保育は、「子どもを受け入れる施設のこと」という意味です。狭義の学童保育が「放課後児童健全育成事業」であり、放課後児童健全育成事業を行う場所が、放課後児童クラブです。
 なお、広義、狭義の区分は、私が独自に使用しているだけです。

 民間学童保育所は、放課後児童健全育成事業を行う施設ではありません。学習支援や各種アクティビティ、プログラミングやダンス、英語、漢字、食育といった幅広い活動内容を提供する施設です。私は「学習支援系子ども居場所事業」と勝手に区分しています。つまり、子どもの「育成支援」を行うことで国や地方公共団体から補助金を受け取る対象ではありません。補助金を交付されませんから、利用者(子どもを通わせている保護者)から毎月徴収する利用料を収入として運営しています。
 よって、毎月の利用料は月額5万円程度が通常であって、さらに利用日数や利用時間、利用するサービスが増えれば利用料はさらに高くなります。要は、学習塾の一つのスタイルであり、純然たる企業の営利活動である、ということです。それでも、子どもの居場所として機能していることで、世間的には「学童保育所」と受け止められているのです。

 こうした民間学童保育所は、人口の多い都市部を中心にその数を増やしています。保護者にとって、狭義の学童保育所に対する不満の1つである「学習面のフォローが弱い」という点を補える存在ですから、経済的に余裕のある世帯にとっては、魅力的な選択肢でしょう。とはいえ、毎月5万円以上に及ぶ利用料からすると、おいそれと選択はしにくい施設であるのも確かです。

 さて、東京都世田谷区内にある、こうした民間学童保育所が、2024年度から、区からの補助金を受けて、「民営の」学童保育所に転換する、とのことです。つまり、民間学童保育所が、民設民営の放課後児童クラブに転換する、ということです。詳しくは、今年8月29日午前11時に公表された「PR TIMES」で、「ベネッセの学童クラブ2拠点が、世田谷区初の「民設民営放課後児童クラブ」として2024年4月よりスタート ~より地域に役立つ学童クラブを目指して~」と題された報道リリースをご確認ください。このリリースでは「2016年4月に認可外学童クラブとして開所」とあります。認可外学童クラブという聞きなれない語句が出てきていますが、つまり民間学童保育所のことです。特に規定された呼び方はないので、認可外という呼び方もありえます。これは保育所にならったのでしょう。

 要は、今までは高額な利用料が必要だったけれども、来年度からは補助金が受けられるので利用料が下がりますよ、ということです。リリースによれば、1カ月あたり4万6000円が5000円になるとのことです。単純に、利用料が下がれば保護者には歓迎すべきことです。学童保育、正確に言えば放課後児童健全育成事業は、今や「あってあたりまえの公共の児童福祉サービス」ですから、多くの世帯が利用できる条件になることは、福祉サービスの拡大ですから、歓迎すべきことです。
 もちろん、もっと突っ込んで考えれば、公共の児童福祉サービスに多額の補助金=税金が投入されることの是非は、問題点としては存在しますし、重要な論点です。ただ公共事業で必要最小限の利益を得て事業を展開すること自体は、特に間違っていることはないと私は考えています。「もうけ過ぎ」は困りますが。

 小1の壁が存在している地域においては、小1の壁(この場合、学童保育所に入所できず待機児童になってしまう意味での「狭義の」小1の壁)は大問題ですから、例えば半年間の程度を決めた上で、民間学童保育所の一時的な利用で待機児童となることを回避するために民間学童保育所を利用せざるを得ない子育て世帯への、市区町村の財政的な補助、援助も検討されてはどうだろうか、とも私は考えています。

 最後にもう1点。上記の民間学童保育所から「民設民営の」学童保育所に転換する例ですが、利用料が4万6000円から5000円まで減るということは、減った分の収入が補助金で事業者に補填されるということです。これは、学童保育所の運営には多額の費用が必要であり、補助金が交付されない限り、とても毎月数千円程度の利用料では運営ができないということです。子育て支援には、かように多額の費用が必要です。それは税金による補助金で補うことになりますが、それはつまり、国民(=納税者)が、適切に補助金が使われているかどうかの監視、関心が必要ということです。多額の補助金を得て民間事業者が学童保育事業を運営することは良いとして、適切な放課後児童健全育成事業を行わずに民間事業者が必要以上の利益として確保してしまうことには、納税者たる国民、住民が、もっと厳しい視点を持つべきである、ということです。その逆に、適切な放課後児童健全育成事業を行っている民間事業者に、補助金が交付されていないケースも散見されます。そのようなことも、あってはなりません。
 市区町村は、学童保育を営む民間事業者に対して確実に管理監督、監視の務めを果たし、民間事業者が、まずは子ども、そして保護者の意見をしっかりと聞いて、その地域にしっかりと根付いた学童保育が営めるように、その責任を果たすべきです。その市区町村の行動を、納税者たる国民は、しっかりと監視、確認する必要があります。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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