日本は地震から逃れられない。学童保育の施設、建物は大丈夫か。地震とその後の火災の対応に厳格な基準が必要

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 2024年は改めて日本が地震の脅威と常に向き合っていることを突き付けられた年になりました。1月1日に起こった令和6年能登半島地震では、200人を超える犠牲者が出ています。今なお被害の全容はつかめていません。学童保育の施設にどれだけ被害が出たのかという報道も、私の知る限り伝えられていません。学校が全壊したという報道は目にしていませんが、被害を受けて避難所として機能していない場所がある、という報道はありました。

 能登半島地震では、地震動のあとに生じた火災で能登の朝市で有名な地区が焼失したということです。津波への対処もあって消火活動が満足に出来なかったという事情もあったようです。関東地震(関東大震災)や兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)、そして東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)でも地震動の後に生じた火災でさらに被害が増しました。犠牲者も出ています。地震動への対処と、その後に起きることが多い火災への対処、この2つの脅威への対処が、多くの子どもが過ごす学童保育所については、絶対に欠かせません。私は、「こどもまんなか社会」を政府が掲げる以上、次の2点を要望します。1つは、放課後児童クラブたる学童保育所(放課後デイも、保育所も児童館もそうですが)に対しては、建築基準法とは別の法令で、更なる地震動への対策を義務づける規制を行うこと。もう1つは、放課後児童クラブたる学童保育所に、保育所と同じ水準での(準)耐火建築物とする規制を行うこと、すなわち保育所と同じ地位、つまり児童福祉施設に格上げすること、を要望します。

 地震動については建築基準法による耐震基準があり、よもや1981年5月以前の「旧耐震基準」である学童保育所はないでしょうね、と決めつけたいところですが、私の知っている限り、旧耐震基準の建物を使っている学童保育所は存在しています。全国にもまだそれなりに残っているはずです。これらは、早急に、放課後児童クラブとしては使用を禁止するべきです。
 それだけではなく、学童保育所のように、多くの子どもが過ごす施設に関しては、別途、新たな基準を設けて、耐震の程度を測定し、一定の水準以上にある施設のみ、使用可能とするべきです。基準は建物そのものの耐震構造だけではなく、液状化が起こりやすいかどうか、適切な避難場所が近くに確保されているかどうか、また衛生面で被災時に問題なく使えるトイレや手洗い場が確保されているかどうか等、子どもの生命安全を確保するために、より厳しい規制をかけるべきです。それこそが、こどもの安全を守ることであり、次元の異なる少子化対策にもつながります。

 放課後児童クラブは多くの地域において特殊建築物とされていると「思われます」。かぎかっこを付けたのは、地域ごとの判断に任されているからです。建築基準法での特殊建築物としては、保育所はこども園は児童福祉施設ですので含まれており、児童館は児童厚生施設として含まれています。しかし、放課後児童クラブは、放課後児童健全育成「事業」ですから、その事業を行う場所である放課後児童クラブは、特殊建築物になるとは明示されていません。よって、「同じようなものだから」と、自治体が任意の判断、つまり裁量で、特殊建築物扱いにしているのが実情で、していない地域もあるでしょう。学童保育は、児童福祉施設のような扱いで特殊建築物として扱われているだけの存在です。

 それでは、不十分です。保育所と同じ「児童福祉施設」とするべきです。
 そうすることで、2点目の、火災の備えに対しても、より安全が担保されることになります。現在の学童保育所は、一般的な消防関係の法令に基づく基準をクリアするだけです。それが、保育所と同じ児童福祉施設となると、避難経路の2方向確保や内装材の不燃化など、より厳しい設備運営基準省令に基づく規制が行われるため、安心度が増します。学童保育所も、建物や内装にも厳しい耐火の基準を設定する設備運営基準省令の適用範囲内とするべきです。子どもの生命安全を確保するために、何を躊躇する理由があるのでしょうか。

 これらはいずれも費用がかかります。既存の施設にも適用となると、全国では数百億円を超える費用が発生するでしょう。しかし、能登半島地震は、日本が改めて大地震と常に向き合っているという教訓を突き付けたのです。地震動とその後の火災で、人命が失われる事態を避けるため、子どもの命を守るため、費用を惜しんではなりません。
 まあ、これはどうかと思いますが、こうして規制を厳しくすれば、その規制に対応する技術や工法を持つ業界にとっては活況となります。それはそれで、経済的には、お金が循環するので、そのお金の出どころは当然、公費となりますが、経済活性化としてもいくらかは効果があるでしょう。当然、新規の施設はすべて、耐震にしろ、耐火にしろ、子ども(当然、そこで働く職員も)をしっかり守る施設であるべきです。

 納税者たる国民も、もっと国や行政に、声をあげるべきですよ。「子どもが学童保育所にいるとき、こどもの命を守るために、地震と火事への備えをもっと厳格にするべきだ」と。それは国民として正当な要望です。まして、こどもまんなか社会です。こどもの命を守ろうとしないで、何かこどもまんなかなのですか。
 ここらで、政府、こども家庭庁の、本気度を見たい。知りたいです。現状の学童保育所は、あまりにも地震と火災への備えが中途半端な状態です。一刻も早く、この危険な状態を是正することが必要です。(もちろん、事業者側は、常に防災、減災の意識を忘れず、実践的な避難訓練を重ねて、どのような状況でも対応できる態勢を維持しておくことは、言うまでもありません)

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その策定のお手伝いをすることが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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