放課後児童クラブ(学童保育所)の待機児童を考えよう。なぜ待機児童が生まれるのか。解消法は?その2

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。(ぜひグーグルのAIで「萩原和也 放課後児童クラブ」と検索してみてください!)
 放課後児童クラブの待機児童を考える内容の続きです。児童クラブの待機児童数は14,713人(前年比 1,617 減)と、ずっと高止まりした状態です。(児童クラブの待機児童数は、こども家庭庁による「令和8年度 放課後児童クラブの実施状況(速報値)」によります。)。前日のブログでは、施設が足りないという要因についてわたくし萩原なりの見解を紹介しました。今回は「人」「仕組み」に注目して待機児童が生じる要因について、わたくしの見解を紹介します。

(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
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<待機児童とは>※この項のみ再掲載。何度でも伝えたいのです。
 待機児童とはそもそもどういう定義でしょう。こども家庭庁の資料(令和8年速報値)の表紙部分に「利用できなかった児童数(待機児童数)」とあり、「調査日時点において、放課後児童クラブの対象児童で、利用申し込みをしたが利用(登録)できなかった児童の数」と説明があります。その人数がこの令和8年速報値においては14,713 で、前年比 1,617人減となっています。つまり前年(令和7年)よりは減ったものの、依然として1万5000人に近い待機児童を数える状態で、「児童クラブの待機児童数はずっと高止まりした状態にある」ことは間違いないといえます。

 ここで注意してほしいのは、こども家庭庁の「利用申し込みをしたが利用(登録)できなかった児童」という表記です。このことは、「児童クラブに入りたいけれど、低学年優先だからということを言われたので利用継続の申し込みをしなかった」こどもは含まれない、ということです。保育所への入所入園では第一希望から第十希望ぐらいまで入所希望の施設数を書いて、第一希望以外に入所が決まったところ、「遠いからやっぱり通えない」として入所希望を取り下げることがありますが、そういう場合は待機児童としてカウントされないことになります。こういう「隠れ待機児童」が存在することを常に留意するべきです。
 児童クラブの待機児童数は小学4年生が一番多いのです。令和7年の実施状況では小学4年生の待機児童数が5,589人で最多でした。ちなみに小学1年生は1,966人。全体では6,330人で、これは前年比1,356人の減(令和6年は17,686人)でした。小学4年生の待機児童数が一番多いのは、低学年入所を優先した結果、入所申し込みをしても児童クラブに入所できなかった人数と考えられますが、この5,589人以上のこどもがいわば「隠れ待機児童」として存在していると考えておくべきですね。
 なお、児童クラブの入所については、入所の申請時期が秋から初冬に設定されている地域がほとんどです。中には、入所申請書類の提出期間が1週間ちょっとの長さしかない地域もあります。これは運営支援としては呆れてしまうのですが、自治体によっては「入所申請期間に入所を申請しなかった場合は5月以降の入所」としている地域があります。保護者の就労状況や家庭環境によって、児童クラブの入所申請時期では「家で留守番させる時間が短そうだから、児童クラブに入らなくても大丈夫」と思っていたものが年を越して2月、3月になって「やっぱり児童クラブを利用しないと無理!」となっても「4月入所はダメ。今なら最短で6月入所ですが、4月入所でもう児童クラブは満員ですから入所できるかどうか分かりませんよ」と、運営主体等から言われてしまうことも、大いにあるでしょう。こういう場合も待機児童数にはカウントされません。
 保育所でもそうでしたが児童クラブの待機児童数は、公表されている以上の「隠れ待機児童数」があるはずだと考えておくべきです。それは、今回の速報値で全国の市区町村の待機児童数の状況が公表されたーこのことはとても良いことと高く評価しますーのですが、待機児童数が0人だからといってその自治体は児童クラブの入所において困っている世帯のこどもは存在しない、ということを決して意味してはいない、ということです。待機児童数が0人の自治体にも隠れ待機児童がいても不思議ではないよ、ということです。

<待機児童はなぜ生じる>
 前回は「施設が足りないから」という視点でわたくし萩原の見解を述べました。施設が足りなければ、児童クラブを利用したいという人数>施設で受入ができる人数、となるので待機児童が生じるからです。今回は、さらに待機児童が生じる要因を「人」「仕組み」のことも含めて広く考えます。施設を増やすこと、整備することだけで待機児童の発生を防げるわけではない、ということです。

2 児童クラブの利用を希望するこどもの人数について
 まず押さえておきたいのは、「自治体の人口が多いほど児童クラブの待機児童数は多い」ということは、全く見当違いであるということです。
 こども家庭庁の令和8年実施状況速報値は全国の自治体の待機児童の状況を掲載していてグッジョブなのですが、それを眺めると一目瞭然です。
 例えば人口375万人の横浜市ですが、こども家庭庁の資料では児童クラブの登録児童数は46,444人で待機児童数は0人、となっています。(隠れ待機児童がいるかもしれないのは先に記した通りですが)。人口95万人の東京都世田谷区では、児童クラブの登録児童数9,531人で待機児童数は0人となっています。大阪市は人口280万人で児童クラブ登録児童数6,107人、待機児童数は0人です。

 このことが児童クラブの待機児童問題が国民的な関心事、盛り上がりにならない要因にもなっているだろうとわたくしは想像します。「保育園落ちた日本しね」は保育所の待機児童が全国の子育て世帯に身近な問題だったがゆえに流行語大賞でも話題となりました。国民的な盛り上がりとなりました。一方で児童クラブの場合は、とりわけ大都市で待機児童が生じていないという現実があるので、「児童クラブの待機児童はとても大変だ」という国民的な関心事にはなかなかなっていないのではないでしょうか。国は平成中期に放課後子どもプランを掲げて児童クラブの待機児童解消に取り組んでいましたが、人口が多い大きな自治体では待機児童がそもそも生じていないですからメディアも社会全体も、この児童クラブ待機児童問題には切迫性や緊急性、また待機児童がもたらす子育て世帯への深刻な家庭環境激変の問題に、あまり注目をしてこなかったのではないか、というのが私の実感です。

 この現実ですが「仕組みによって待機児童の発生を抑止できる」ということでもあります。それはのちに触れます。

2A=児童クラブを利用したい子育て世帯は急に増えたり減ったりする。年度ごとの変動が大きい。
 つまり、1つの小学校の児童のうち何人がその校区にある児童クラブに入所登録しているか、いわゆる利用率の変動が極めて大きい、流動的であるということです。
 これを考えるには、「児童数が減少傾向にある」という地域(それが大多数でしょうが)で考えることが大切です。何らかの明確な理由、例えば大規模な宅地開発が行われているとか、巨大企業進出で雇用が旺盛な地域、東京の都心部など、人口が局部的に増えている地域がありますが、そういう地域では「児童クラブを利用したい人数は現状より増えるだろう」として対応対策を考えるのが自然です。そうではなくて、「人口減が続いている地域」においてなぜ待機児童が生じるのだろうか、ということを考える必要がある、とわたくしは訴えたいのです。
 もったいぶって言っていますが中身はとても簡単で、「こどもの人数は減っても、それを上回る児童クラブ利用希望者がいるから」ということです。難しいのは「児童クラブを利用したいという子育て世帯が増えるのはどうしてなのか。どういう状況であるから児童クラブ利用希望世帯が増えるのか」です。

 まず、こどもの人数が減っても児童クラブ利用者が増えるということを考えます。拙著「知られざる学童保育の世界」でも触れていることですが、つまり以下のような状態が起こっているということです。
 少子化による人口減少が進む某自治体。A小学校の児童数は500人。うち1年生は80人。6年生が100人でした。次年度、新1年生は60人になります。このA小学校のこどもが入所する児童クラブは50人の登録があります。学校全体で1割の利用率ですね。1年生は20人の登録がありますから1年生に限ると4分の1、つまり25パーセントの利用率ですね。なお6年生の登録は0人です。
 次年度になりました。A小学校は500人から100人が卒業して60人が新入学するので460人の児童がいることになります。児童クラブは2年生に進級した20人のうち5人が退所退会して15人となり、新2年生以上だけで45人の登録となりました。さて新1年生60人のうち24人が児童クラブへの登録を済ませました。新1年生の利用率は40パーセントです。児童クラブ全体の登録児童数は45人プラス24人なので69人となる見込みのところ、弾力的措置を講じても60人を超える児童は受け入れられないので9人のこどもが待機となってしまいました。
 小学校の全体の児童数も、新1年生の児童数も減っているのに、「児童クラブを利用したいと考える子育て世帯」が増えるので児童クラブに入りたいこどもの人数が多くなり、結果として待機児童が生じてしまった。

 こういうことが、待機児童が生じている地域では起こっていると想像できます。また待機児童が生じていない地域では、上記の例を使えば「69人か。ウチは待機は出したくないから全員、登録を認めよう。なあに、ギュウギュウ詰めでもこどもだから我慢してもらえばいい。それが嫌で入所申請を取り下げるなら、それはそれで本当に児童クラブが必要だという切迫性が薄かったということさ」となっているのではないでしょうか。

 この「児童クラブにこどもを入所させたいと考える子育て世帯の増加」については、それぞれ個々の世帯の事情があるので「これだから」と理由を決めつけることは難しいですね。ただ一般論で言えることは次のようなことがあるとわたくしは考えています。
「空き地や農地の宅地転用で戸建て住宅が建ち並び、それを購入した子育て世帯が児童クラブを利用する」→相続や生産緑地、特定生産緑地などからの宅地化でミニ戸建て団地ができる地域があります。また、駅前の再開発で大規模マンションが建つこともあります。それら住宅を購入したのが子育て世帯であれば、まあたいていは長期ローンを組みますから保護者は働きます。フルタイム勤務で少しでも収入を増やして早くローンを返済したいと考えるものでしょう。当然、放課後や長期休業期間中は自宅が留守になるので、児童クラブが必要と保護者は考えます。よほど家計に余裕があれば比較的高額な学習塾やスポーツクラブの併用もあるでしょうが、それらと比べて月々の負担額が低い児童クラブの利用が選択肢として上位にくることは自然な流れでしょう。
 これは局所的に起こる事象です。自治体全体として人口が減っているとしても、ある学区に急に人口が増えることはよくあります。児童クラブはおおむね、ほぼ定員ギリギリまで受け入れていることも多いので、新しい住宅を買った子育て世帯が学区内に15世帯つまり児童クラブを必要とするこどもが15人、新規に増えるとしても、児童クラブは「水があふれそうなコップ」ですから、その15人の新規登録希望者で、水があふれる=待機児童が生じる、ということになりえるのです。児童クラブの待機児童を考えるのはどうしても自治体ごとに考えてしまいますが、本質的には小学校ごと、学区ごとの小学校の児童数を考えて対策を講じる必要がある、ということです。

 宅地開発は数年単位の話なのにどうして対応が難しいのだ、という意見をよく聞きます。わたくしも保護者さんから「このままでは待機になってしまいますよ」と何度も何度も問い詰められました。問題は児童クラブの設置運営もまたそれなりの期間が必要であることと、設置主体である自治体の即応性にあります。2025年にマンション計画が判明して2027年にマンションに人が住み始めても、児童クラブの数をどうするか、増やすとしてもどこにどのように増やすのかは、なかなか解決策が見つからないのです。児童クラブを増やすには準備が必要です。補助金も新たな支援の単位の分を増額する必要があります。それらの対応に時間がかかる、ということです。場所、施設がなかなか見つからないのは前日のブログに記したとおりですし、自治体が児童クラブの予算を増やすには自治体内部の調整が必要です。児童クラブ担当課は当然に予算を増やして新規クラブ開設に備えたいとしても、限りある予算をいかに分捕るか他の部課もあの手この手で自治体の財政部局に向かっているのです。残念ながら放課後児童クラブの重要性がしっかりと理解されているとは言えないこの日本社会においては、特別にトップダウンで児童クラブ整備を掲げている首長の自治体以外では、他の事業分野に後れを取るのです。法定事業であっても任意事業であることの立場の弱さがここで足を引っ張るのです。

 年度ごとの変動が大きいのは、局部的ですが大地震などの災害や、こどもが被害者となった卑劣な犯罪によっても生じます。2011年のいわゆる東日本大震災では「地震が不安」という理由で新規入所を考えた世帯に直面しました。下校中のこどもが襲われた地域の学区では次年度の新1年生の入所希望者が増えたこともありました。これはなかなか事前の予測が難しい。

 「これは入所希望者が増えるね」と確実に予想できるのは、施設の整備が進んで学校内または学校敷地内に新しい専用施設ができたときです。それまで小学校から徒歩10分程度、歩いて向かっていた児童クラブが何らかの要因で小学校内に移ると、「学校内なら安心。それにオンボロ学童ではない」からと新規入所希望者は確実に増えます。「児童クラブを整備するとニーズを掘り起こしてますます待機児童が増える」という皮肉な現象がありますが、まさにこういうことです。

 そしてこれはうれしいことでもあるのですが、「良い評判」がある児童クラブは入所希望児童が増えます。こどもにとっても、保護者にとっても「楽しく過ごせる居場所、自分がここにいることが自然と思える居場所」となっている児童クラブは、入所希望者が増えるものです。これもわたくしのたった1例ですが、こどもが入所した地元の児童クラブは入所時の全体児童数が40人に届かない程度の学童保育所でした。小学校敷地内にある専用施設で、木造の味のある、言い換えればけっこうベテランの施設でした。そこにはとても優れた大ベテラン職員も異動してきたばかりでした。さらにこどもが2年生になったときに、とても資質のある新人職員が配属されました。萩原夫婦が保護者会会長としていろいろ改革を行ったのも影響した(はず)のでしょう、以前は「あの学童はやばいよ。いじめが横行しているよ」という噂が流れていたのが「学童でいつも楽しいことをしているよ」という評判になり、こどもが6年生になったときにはついに70人を超えてしまいました。40人でちょうどいい程度の広さなのに70人のこどもが入所することになったのですね。児童数が増えるのは新規入所希望者が増えることだけではなく継続入所、つまり高学年のこどもの退所退会希望が減るのです。「家にいるより学童で過ごす方が楽しい」となれば高学年も児童クラブを選ぶのです。
 「児童クラブの評判で、入所する児童数が増えたり減ったりする」のは真理です。このことは、人口がそれなりにあって低学年の入所児童数が多い児童クラブにおいて(高学年世帯に対する退所への無言の圧力が無いとして)高学年の入所登録児童数が少ない児童クラブは「高学年児童の居場所になっていない、なりきれていない」何らかの要素があるとわたくしは考えます。いまわたくしが非常勤理事として運営に関わっている愛知県津島市の児童クラブはどこもギュウギュウ詰めですが高学年の退所退会が本当に少ない。それは高学年児童の居場所に児童クラブがなっていることの証左です。
 国はこのたび高学年児童対象の預かりモデル事業を始めます。それは児童クラブが高学年の居場所と必ずしもなっていないので行き場のない高学年を受け入れて小学4年生以上の待機児童数を減らしたい、という目論見があるのでしょう。以前にも記しましたが高学年ともなれば興味関心が広く広がるので児童クラブ以外の場所で過ごしたいと思うことも当然ですから、児童クラブだけに高学年を押し込める必然性はありません。よって運営支援はそのモデル事業には賛成ですが、「児童クラブ本体が放課後児童クラブ運営指針にのっとって運営されているなら、高学年だって児童クラブを居場所としてくれるのではなかろうか」とも考えます。児童クラブという本丸の質の強化拡充を放置してモデル事業だけに注力するのは、わき道にそれた放課後児童福祉行政であるとわたくしは残念に感じます。

2B=児童クラブで働く職員が足りないから児童クラブを増やせず待機が生じる。
 前日のブログでも触れましたが、この職員不足は深刻です。児童クラブの施設がある、あるいは施設に転用できる場所がある。でも、施設を新たに増やしたとてその新規クラブで働いてくれる人が見つかりそうにない、ということです。
 本当に悲しいことです。なぜなら「人件費を増やす=児童クラブの運営主体に十分なカネが届く、又は運営主体が適切に予算を使う」ことができれば、少なからず問題を緩和できるのが分かっているのに、政治も行政も運営主体も真摯に取り組まないからです。

 児童クラブは典型的な労働集約型産業です。人が為す行為が業務遂行そのものです。よって人に投資=すぐれた職員を確保するのに必要な、職務職責に見合った賃金の設定=することで質の高い安定した事業が継続できます。一部の運営主体はそうしているでしょうが、多くの児童クラブは公営クラブも含めて最低賃金並みの賃金、管理職ですらもその数万円程度の上乗せでお茶を濁しているので、なかなか就労希望者は増えません。これもまた「人」の問題です。もっといえば「児童クラブがどれだけ社会インフラとしてこの国の社会経済活動を下支えしているか、その評価を正しく持てない人が多すぎる」という「人」の問題です。
 これについては運営支援は何度もブログに記しています。まずは運営主体が実際に行っている、あるいは行うことができることに対する補助金を必ず交付することです。体制強化事業や送迎に関する補助金など、本来は補助金でカバーできるのに自治体が首を縦に振らないから運営主体が持ち出している部分があるものです。義務的に交付するようにしなければなりません。
 出す部分を改善するのと同時に使う側の使い方もしっかりと把握、監視できるようにする必要があります。無駄遣いされていないかどうかを厳しくチェックするのは公金由来の補助金には当然です。2000万円の補助金が事前に200万円ほど先に事業主本体の運営経費名目で現場に使われずにごっそり中抜きされて、現場では1800万円での事業運営をするというのでは、ダメなのです。2000万円で児童クラブ運営をしてもらって年度の決算で100万円の剰余金が出た、というのであればそれを運営事業者の利益計上とすることは、わたくしは良いと考えます。もちろん、職員には職務に見合った適正な賃金を設定していることは大前提ですよ。こどもが使う折り紙や教材、おもちゃも必要なだけ買いそろえていることが前提ですよ。育成支援において必要十分に予算を効率的に使った結果として剰余金が生じたらそれは企業努力、組織努力としてどうぞ金庫に納めください、で良いとわたくしは考えます。この点、「剰余金は必ず返還せよ。補助金とはそういうものだ」という自治体も普通にありますが、それでは「効率的に運営する」という動機を抑圧します。そういう姿勢でいたいなら公営クラブとすれば良い。民間に任せるなら民間事業者が喜ぶこともしなければなりません。どうもこの点、保護者運営由来の非営利法人には自治体はおしなべて厳しい面があるように、わたくしには見受けられます。

 この「職員不足」は、来たる「こども性暴力防止法」時代は間違いなくより深刻になります。児童クラブは波動的な労働力に頼らざるを得ない事業運営です。夏休みなど長期休業期間中が典型です。また、離職がとても多い業界です。良くも悪くも雇用の流動性が極めて高い業界です。ところが、こども性暴力防止法による認定事業者に児童クラブ運営主体がなった場合、あるいは目指す場合には、新たに雇用する職員は自分自身で犯罪事実確認の手続きを行うことになります。その手続きが非常に煩雑であり、費用もかかります。この負担は全く軽視できません。「そんな面倒な手順が必要なら、コンビニでバイトするわ」という人が増えることは容易に想像できます。つまり、児童クラブの人手不足は今後ますます深刻化するというのが、わたくし萩原の予想です。その対応をいまのうちから講じなければ、人手不足による事業停止という最悪の事態に直面することになりかねません。認定事業者になるならないは、運営主体だけで判断できる問題ではないのです。補助金の交付対象となるには認定事業者になること、という要件を自治体が課すかもしれませんし、そう想定して準備をしておくべきです。国からお金をもらうためには、国が定めた法制度に従うことはある意味当然です。嫌でも、どんなにひどい仕組みでもその制度が改善改良されるまでは歯を食いしばって対応するしかありません。そうしなければ、すべての財源を自主的に確保する自主運営学童となるか、財政力にモノを言わせる大手の広域展開事業者運営クラブに転換するしか道がありません。全国の、とりわけ地域に根差した小規模、零細規模の児童クラブ運営事業者は「自分たちで何とかしなければならない」との意識をすでに持ってください。行政やどこかの機関や業界団体が肩代わりして認定事業者として求められる手続きや業務を行ってくれる、なんてことは、ありません。そもそも不可能な制度です。

2C=「あって当然の児童クラブ」という意識が広まった
 「保育園落ちた日本しね」で、保育所の待機児童はぐっと減りました。直近は少し増えたようですが。保育所や認定こども園を利用する子育て世帯は、こどもが小学生になってもそのままこどもの受け入れる施設を当然に利用したいと考えるでしょう。保育所等の利用のすそ野が広がれば、当然に児童クラブの利用希望世帯も増えます。ですから国は学校施設を活用して受け皿拡大を目指していたのですが、国が想定する以上の児童クラブ利用希望者がいたので、地域によって待機児童が増えてしまったということです。
 ちなみに、児童クラブはもともと子育て中の保護者の自主的な活動によって誕生した一面を持っています。最初から法定事業として誕生してはいません。必要に応じて保護者が運動し、児童クラブ(当時は学童保育所、の呼び方ですね)を作っていく中で、地方自治体がその動きをくみ取るなどして、公設の学童も増えていった経緯があります。児童クラブをつくる活動は「(学童)つくり運動」と呼ばれた市民(住民)活動でした。まだまだ児童クラブに対する自治体の理解が広まらない中で、児童クラブを必要とその設置と制度の拡充を求めていた「運動体」の人たちは、「あって当たり前の学童保育」を合言葉に施設の整備に尽力してきました。裏返せば「あって当たり前でない学童保育」だったのです。それおを「存在して当然の児童福祉施設」とするべく、保護者と職員たちが活動してきたことにわたくしは敬意を表しますし、その活動はしっかりと記録されて後世に伝えられるべきでしょう。
 それはともかく、保育所認定こども園を経て「放課後に過ごす場所があって当然。そうでないと働けず、働けないと食べていけない」という子育て世帯が増えている中で、児童クラブも「あって当然」という意識に、もう完全に切り替わったといえるでしょう。全国の自治体は「こども計画」や「子ども・子育て支援事業計画」を策定して、多くの自治体がそれを公表していますが、その中で、放課後のこどもの過ごす場の理想として放課後児童クラブを挙げる子育て世帯はだいたい7割、8割を超す地域もあります。それだけ、子育て世帯には「児童クラブで過ごすことが当然」という意識が広まっているのです。
 そりゃ、児童クラブの整備が遅ければ、入れないこどもは増えますよ。

3として「待機児童を生じさせない仕組み=放課後全児童対策事業」について見解を示したいのですが、長くなりましたので次回以降とします。大都市で待機児童数が生じないのはこの仕組みを利用しているからです。制度の功罪を考えます。

 (お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
New!☆
こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」。「第6回子ども性暴力防止法緊急LIVE」は2026年8月12日21時半から、「災害時のこども支援とこども性暴力防止法」です。話し手は 鈴木愛子弁護士、聴き手は野田隼人弁護士です。
 第4回が2026年6月30日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらすこどもの被害申告に適切に対応できるか」をテーマに関して丁寧に説明しています。 まずは動画をぜひご覧ください。わたくしの著書「知られざる<学童保育>の世界」も紹介されています。
https://youtube.com/live/9q8xzkgs7wo?si=dr06eChxK1Jgov5T
 第5回は7月19日(日曜日)15時から、すでに施行されている「児童生徒性暴力防止法」における調査の解説です。話し手:飛田桂弁護士、聴き手:嶋崎量弁護士、鈴木愛子弁護士、野田隼人弁護士、三輪記子弁護士。
 第3回(2026年6月11日)は、鈴木愛子弁護士がメインスピーカーとして「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
 第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
 第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s

※こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
 「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+

放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf
(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf

 わたくし萩原が寄稿した記事が「ウェッジオンライン」で2026年7月29日に公開されました。「子どもの「体験格差」が気になる夏休み…その“差”を埋めるのは難しいのか?子どもにとって貴重な体験に目を向けろ」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。(子どもの「体験格差」が気になる夏休み…その“差”を埋めるのは難しいのか?子どもにとって貴重な体験に目を向けろ  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)
 2026年5月29日には「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事が公開配信中です。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665
 2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事も公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。こちらもぜひ読んでいただけるとうれしいです。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)

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