放課後児童クラブは今年4月から「安全計画」が義務になります。対応が不十分では、いずれ運営から外されます

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の世界は年々、各種の規定や決まりが強化され、整っています。子どもの権利や安全を守るための仕組みを整えたり、組織運営を強化したりするためのルールが、徐々にですが、しかし確実に整っているということです。それ自体はとても素晴らしいことです。例えば今一番の注目は日本版DBSです。その制度設計には種々の問題点があると指摘されていますが、過去に性犯罪の前歴がある人物の就業を食い止める機能はこれまで存在しなかったものであり、こういう制度が導入されようとするのも、規定や決まりの強化の一環です。

 この4月、つまり令和6年度(2024年度)からは、安全計画の策定が義務づけられます。すでに2023年度は努力義務になっていたので、取り組みを始めていた放課後児童クラブの運営事業者も多かったでしょうか。もしまだであったなら、大至急、取り組む必要があります。

 安全計画は、いわゆる基準省令(放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」の第6条の2に規定されています。この条項はもともとなかったもので、令和4年11月30日に追加されたものです。条文、やや長いですが引用します。
(安全計画の策定等)
第六条の二 放課後児童健全育成事業者は、利用者の安全の確保を図るため、放課後児童健全育成事業所ごとに、当該放課後児童健全育成事業所の設備の安全点検、職員、利用者等に対する事業所外での活動、取組等を含めた放課後児童健全育成事業所での生活その他の日常生活における安全に関する指導、職員の研修及び訓練その他放課後児童健全育成事業所における安全に関する事項についての計画(以下この条において「安全計画」という。)を策定し、当該安全計画に従い必要な措置を講じなければならない。
2 放課後児童健全育成事業者は、職員に対し、安全計画について周知するとともに、前項の研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
3 放課後児童健全育成事業者は、利用者の安全の確保に関して保護者との連携が図られるよう、保護者に対し、安全計画に基づく取組の内容等について周知しなければならない。
4 放課後児童健全育成事業者は、定期的に安全計画の見直しを行い、必要に応じて安全計画の変更を行うものとする。(令四厚労令一五九・追加) ※太字は筆者。引用おわり

 ごく簡単にまとめると、「事故、事件などトラブルを起こさないで、無事に学童事業を行うために必要な事項をいつ、どのように実施するかの計画を立ててください。その計画に従って研修や訓練を行ってください。内容については保護者にも理解を求めてください」というものです。「放課後児童クラブ等における安全計画の策定に関する留意事項等について」(令和4年12月21日に厚生労働省子ども家庭局子育て支援課が発出)には、例示として次のようなことが示されています。なお、全文は、こども家庭庁のホームページ、放課後児童クラブ等における安全計画の策定に関する留意事項等について(令和4年12月21日) (cfa.go.jp) にあります。

・放課後児童クラブ等の設備等(備品、遊具等や防火設備、避難経路等)は定期的1に安全点検を行うとともに、点検結果について文書として記録した上で、改善すべき点があれば速やかに改善すること。特に、児童の日常の遊びや生活に使用される設備等については、毎日点検し、必要な補修等を行うこと。

・緊急的な対応が必要な場面(災害、不審者の侵入、火事・ケガ(119 番通報)等)を想定した役割分担の整理と掲示、保護者等への連絡手段の構築、地域や関係機関との協力体制の構築などを行うこと

・児童の年齢、発達や能力に応じた方法で、児童自身が安全や危険を認識し、災害や事故発生時の約束事や行動の仕方について学習し、習得できるよう援助すること

 これらのことをマニュアルにして可視化し、すべての役職員、保護者にしっかりと理解させること、理解してもらうことが、この4月から必要となります。すべてのクラブにおいて、それぞれマニュアルを策定することが必要です。例えば30のクラブがある事業者なら、30のクラブ1つ1つに安全計画を策定し、備え付けておくことになります。

 とても大変な作業になります。ゼロから作るのはとても骨が折れますが、以前から、いわゆる安全マニュアルや各種のトラブル防止マニュアルを独自に策定していた事業者であれば、半年もあれば整った安全計画を策定することができるでしょう。問題は、そうした取り組みを軽視してきたか、あるいは必要性にまったく気づかないで過ごしてきた事業者ほど、安全計画策定に取り組むハードルが高すぎるということです。そのような場合は、多くの放課後児童クラブが利用していると思われる傷害保険を提供している「公益財団法人スポーツ安全協会」では、その策定支援パッケージを提供しているようですから、そういうものを利用することも良いでしょう。先進的な市区町村ではすでに取り組みを終えて策定した安全計画を公表している場合もありますから、それらを参考にして、自分たちのクラブに適合するように変化させていくこともよいでしょう。

 大事なことは、この4月から「義務」ですから「必ず」備え付けておかねばならない、ということです。決まりですから、守りましょう。

 学童の世界は、いろいろな面で、このような決まり、ルールというものがあまり存在せず、どこか全体的に「もわっ」としたイメージの中で、「なんとなくみんな無事に」運営をしてきたという世界であったと、私は感じてきました。古き良き時代といえばそうなのでしょうか。いや、決して「良き」ではなかったのです。「たまたま」大きな事故や事件が襲ってこなかっただけの話です。多くの子ども、そして職員の命が1つの場所にあつまっている事業、ビジネスですから、1人1人の命、身の安全、権利を守るために必要な各種の決まり事、計画というものが、やはり必要なのです。そういう意味で、安全計画策定は必至のなりゆきだったわけです。

 問題は、こういう決まり事を整えることは、保護者由来の学童保育の世界とは相性があまりよくないということです。安全計画策定など決まりやルールをしっかり整えてその決まりに従って事業を実施することは、放課後児童クラブを営む組織が企業や会社であれば、そもそもいろいろな計画や決まりに則って機能的に企業や会社が動いていることから親和性がありますが、毎年のように運営責任者が変わる保護者運営や、保護者出身の事業経営にさほど知識や経験がない保護者由来の非営利法人にとっては、「決まり事やルールで判断するより人間同士の意思疎通によるその場その場の判断で物事を決めていくことが多い」性格上、どうしても荷が重いのです。しかし当然、これからの放課後児童クラブ運営には、このような安全計画や事業継続計画、今後は日本版DBSなどの重要な計画や決まり事、ルールを整えて放課後児童クラブを運営していくことが求められます。つまり、安全計画等の策定と実施が可能であるかどうかを、これからの時代において市区町村が、放課後児童クラブの運営を任せるに足る運営事業者であるかどうかの判断の基準としていく可能性がとても高いのではなかろうか、というのが私の予想です。

 「質の高い育成支援(保育)を行っているから大丈夫」とか「保護者の支援、支持がたくさんあるから大丈夫」では、ありません。人の命が集まる事業を営む以上、その命を大事に守るための仕組みが整っているかどうか、仕組みを整えることを重要視しているかどうかが、これからの時代、放課後児童クラブの運営を任せてもよいかどうかを判断する重要な基準になっていくのである、ということです。ビジネスとしての「形」をしっかり整えることができるように、特に、育成支援を大事にしてきた運営事業者は、いままでの実績に安心することなく、これからは念入りに、安全計画策定や来るべき日本版DBSへの対応をしっかりと行うようにしましょう。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。

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