快挙です。北本市議会での放課後児童クラブをめぐる請願の採択。自分たちが望む運営を実現するには行動が必要だ

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 「学童保育室を運営する団体は引き続きNPO法人を随意指定すること」を求める請願が、埼玉県北本市の議会(令和6年第1回北本市議会定例会)において採択されました。10対9という薄氷の結果でしたが、採択は採択です。この件、メディアの報道はまったくされていませんが、放課後児童クラブの世界にとっては快挙と言っていい素晴らしいことです。この件については、請願の紹介議員である桜井卓(さくらい・すぐる)議員が旧ツイッター(X)で投稿されています。北本市内の学童保育所を運営する団体であるNPO法人うさぎっ子クラブの理事長もnoteで「議会報告:請願の行方」と題した記事で報告されています。まずはぜひご覧ください。

 なお、北本市は、もともと保護者由来の学童保育からスタートし、現在はNPO法人が児童クラブ(北本市においては、学童保育室)を運営しています。指定管理者制度が導入されており、これまでは随意指定(非公募)で、指定管理者に選ばれているという経緯があります。いわゆる公設民営地域です。(経緯については、請願書に記載されています。https://www.city.kitamoto.lg.jp/material/files/group/19/seigann202401.pdf)

 今回採択された請願は、1,046人の市民(多くは、学童の保護者さんでしょう)によるもので、内容は3点。
1 公設学童保育室の指定管理者の選定に当たっては、引き続き特定非営利活動法人北本学童保育の会うさぎっ子クラブを随意指定すること
2 全ての学童保育室において、北本市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例に定めた基準を満たすよう、学童保育室を整備すること。また、老朽化している施設の建替えや修繕を進めること
3 良質な学童保育事業の実施に向け、利用児童にも意見を聴き、反映させること

 さて何が快挙で、何が素晴らしいことなのでしょうか。
「公募による指定が当然とされている指定管理者制度において、議会は、次に放課後児童クラブの運営事業者を選ぶ際は現在のNPO法人を随意指定することを、僅差であっても明確な意志として示したこと」
 つまりこういうことだと私は感じたのです。
・放課後児童クラブの事業運営には、事業者が継続して運営を行うことが重要であるということを、二元代表制を構成する議会が認めたということ。
・ややもすれば、行政執行部が議会を相手にすることが無くどんどんと話を進めてしまいがちである放課後児童クラブの事業運営者の指定に際し、議会が「待った」をかけたと等しいこと。
 さらにいえば、本会議の前段である委員会審議(3月1日、健康福祉常任委員会)で、上記請願の3点のうち、2と3のみが採択される、一部採択という結果になっていました。3の、こどもの意見反映も重要ですがこの請願の最も重要なことは、公募による放課後児童クラブの事業者指定を避ける「1」の項目です。ここの部分が採択されなかったことは実質的に請願の本来の目的を失わせることとなります。
 それを本会議で、いわば逆転で賛成多数で採択に至らせたことは、快挙以外のなにものでもありません。

 この点において桜井議員は旧ツイッターで「学童に関する請願は委員会では一部採択すべきものとされましたが本会議では1票差で原案採択となりました。どちらの請願も請願人が熱心に議員を説得してくれたことで採択につながりました。」(3月22日午後9時44分)と投稿しています。

 指定管理者制度による放課後児童クラブへの影響は、数年ごとにやってくる指定管理者の選定のために必ずしもそれまで事業を運営していた事業者が選ばれるわけではなく、その結果として必然的に児童クラブで勤務する職員の雇用の継続性、安定性が損なわれることによる、育成支援の質の低下をもたらしかねない懸念にあります。指定管理者制度そのものの是非はともかく、制度の運用に際して半ば当たり前に行われている「公募」という点に問題があります。なお、公募が絶対的に悪いとは私は申しません。市民保護者にとって納得がいかない、もしくは満足できない児童クラブ運営をしている事業者が「保護者参加の組織だから」という理由で非公募で指定され続ける、もしくは事業委託において随意契約で運営を続けるということも、問題です。良質な事業者(ここでいう良質とは、職員の雇用労働条件に配慮し、かつ、放課後児童クラブ運営指針を尊重した育成支援を実施するという意味)が選定されるのであれば当然、公募にも競争による契約にも意味があります。

 現状の公募、競争においては、「育成支援の内容、充実の具合」が評価の軸になっていないことが圧倒的に多く、事業規模が大きければ有利なる項目に審査基準、選定基準の配点が多くなっています。育成支援そのものの質に高い配点がされておらず、事業運営そのものの安定性に配点が偏っています。その結果として、事業規模が大きな組織が「事業運営において安定性が高い」と評価されて、選ばれやすい状況にあることが問題です。
 では事業規模が大きい、営利の広域展開事業者が当然のように質の高い育成支援を行っているかと言えば、残念ながらそうではありません。この運営支援ブログで問題視した、車いすの新1年生の入所を不当な差別で断った事案も営利の広域展開事業者です。あちこちで最低賃金とほぼ同等の賃金で職員を雇い、欠員が出てもなかなか補充せず、職員は育成支援の理解と実践にとても資質があるとは思えない者でもどんどん雇用、採用して現場に配置しているのも、営利の広域展開事業者によくある特徴です。

 つまり、子どもの最善の利益を実現するに必要な質の高い育成支援の事業展開において、残念ながらその実が伴っていない事業者が、単に事業規模が大きいということで選ばれてしまうのが、現在の放課後児童クラブにおける公募、競争です。それは、残念なことに、児童クラブを運営している地域に根差した事業者は、どれだけ児童クラブの子どもや保護者に高い評価を得ていても、指定管理者の公募による選定や事業委託における公募プロポーザルにおいて、事業規模の大小による配点の偏りの影響によって、「児童クラブの運営事業者としては、ふさわしくない」という結果に追い込まれる構造的な問題の前に、敗北を重ねることが必至なのです。

 それを食い止めるには、公募や競争に持ち込ませないということが何より重要です。その上で、地方自治においては、民意そのものである議会が明確な意思表示をすることは、大いに意味があります。議員が納得し、理解するためには、有権者たる市民、有権者たる保護者が、議員に対して、明確な意思表示をしなければなりません。現在は、ともすれば、児童クラブに対して多くの保護者は「負担感」を口にして、事業の在り方や運営方針についても関わることを避ける風潮があります。私も児童クラブ利用者が運営責任を負うような形式での関わり方は排除するべきだと考えていますが、保護者も、自分たちが望む児童クラブ運営を実現し続けるには、どうしたって「行動」することが必要です。「私たちは、こういう児童クラブであり続けてほしいと願っている」ということを、保護者が自分自身の時間を費やして議員に伝える、説得する、あるいは署名を呼び掛けて動くという、時間的なコストを費やす必要があります。「学童のために自分の時間を使うのは嫌だ、そんな負担は嫌だ。でもクラブは今のままでずっといい」というのは、虫の良い要求です。自分たちが望む環境を維持し、持続するためには、「動かなければならない局面がある」ということです。実際、愛知県津島市で起きた事例は、多くの保護者が自分の時間を多く費やして動いた結果であるのです。

 保護者だけではなく、職員にも同じことが言えます。自分たちが望む職場環境を維持したいなら職員が率先して動かなければなりません。もうだいぶ前ですが、以前、私が上尾の団体の長でいたときに北本の学童職員さんから相談を受けたことがあります。北本の児童クラブの職員のみなさんは、普段から活動をしていたのです。ただでさえ忙しいのに、給与もまったく高くはないのに、それでも自分たちの望む育成支援ができるからと、当地の学童職員さんはことのほか熱心でした。これが大事です。いま、多くの地域で営利の広域展開事業者が運営する児童クラブで働いている職員さんは、職場環境や雇用労働条件に不満や改善点を感じているとしても、それを声に出して訴えているでしょうか。何か活動をして改善を求めているのでしょうか。私には、そのような動きはまったく見えてきません。(もしかすると、そのような気骨のある職員は全滅しているのかもしれません。適当に働き適当に賃金を得ていればいいという程度の質の職員しか勤務していないのかもしれませんが)

 北本の理事長はこのようにnoteにつづっています。「指定管理制度は行政が民間に管理を委託する制度です。基本的には公募というかたちをとり、選定の公平性を。つまり、業者との癒着とかそういう問題が発生しないようにしないといけないわけです。それに対して、随意契約は行政が任意の団体と契約を結ぶかたちとなります。公募しないので決定がスピーディーな反面、外部から見た時に「癒着なのでは?」という話になりかねません。(中略)今回の議決で、約半数が「随意契約までは・・・」という意見であったということは、まだまだ活動内容のアピールが足りないと言うことだと思います。理事長として、このあたりを改善していかないといけないと感じました。」

 とても謙虚で、かつ、優れた見識だと私は思います。今回の採択でも、行政執行部が直ちに次の指定管理者選定において非公募にするという確約はまったくありません。しかし、理事長のこの意識がある限り、非公募を求める運動、活動は北本市において続くでしょう。この種の問題では、「運動の持続」が難問です。最初は盛り上がっても尻すぼみ、ということが良くあります。おそらくあと数か月もすれば、行政執行部が令和7年度からの指定管理者選定についてどのように選ぶのか、態度を表明するでしょう。ぜひ残りの数か月、学童の関係者の方々には、その活動のボルテージを上げて、質の高い北本市の児童クラブの育成支援を引き続き、うさぎっ子クラブに任されるような結果が得られるように頑張ってほしいと期待しています。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。

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