学童保育運営組織は、働く人の健康管理に全力を注ごう。産業医、選任していますか?

(代表萩原のブログ・オピニオン)学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」萩原和也です。「学童で働いた、こどもをあきらめた」の悲劇が起きないように全力で訴え続けます。学童保育で働く人を守るうえで必要なこと、それは、働く人たちの健康をしっかり守ることです。それがすなわち、安定した学童保育運営を実現することに直結するからです。

 学童保育の運営者になって苦労することの1つは、働く人(以下、職員)の健康管理です。子どもと遊ぶという大事な仕事ゆえに起きやすい「けが」はもちろん、高度に専門化されたコミュニケーション労働という特質に、現場のクラブでは少人数職場ということがあり、その中で生じる濃厚な人間関係の結果、心理面に重い負荷がかかり、メンタルヘルスを痛めてしまうケースも、本当に多いです。その結果、職員が休職したり退職したりということになります。これは実によくあることです。でも、よくあることだからで済ませてはならないのもまた当然です。

 労働安全衛生法第13条では、常時50人以上の労働者がいる事業場ごとに1人以上の産業医を選任することを義務付けています。学童保育の世界で考えると、10単位前後のクラブを運営する団体ならおよそ50人以上を雇用していることになるでしょうから、産業医選任を考えなければなりません。
 ここで1つ指摘しておきたいのは、「1つの単位が1事業場だから、50人には程遠い。だから産業医は不要」と考えている組織、団体が多いようにわたくしには見受けられます。その考え方はやめましょう。運営組織全体で1つの事業場として考えるべきです。(もし1単位1事業場とするなら、1事業場に10人いないなら就業規則が不要となりますが、就業規則を設けていない運営組織はまずないでしょう。就業規則はあるので全員従いなさい、でも産業医は1単位ごとだから不要、というのは、あまりにも都合の良すぎる解釈ではないでしょうか)
 産業医を選任する財政負担を考えてしまうと、二の足を踏むことがあるのでしょう。しかし、職員の健康管理に努め、職員の日々の仕事が円満に運ぶようにすることは組織運営者の当然の義務です。産業医を選任すると毎月5万円の契約でも年間60万円。確かに費用はかかりますが、職員の健康管理や職員の安心を育むことを考えたとき、その60万円は高すぎますか?その60万円で、職員が安心して働けるとなったら、それでも高いのでしょうか?
 そもそも、職員に行う健康診断やストレスチェックについて産業医の所見が必要です。そうです、そのストレスチェックも、しっかり行ってください。

 1つから数単位のクラブ運営を行う組織では全体でも職員数が50人に達しないでしょうから、確かに産業医の選任義務はありません。しかし、努力規定として、医師や保健師に健康管理のすべてまたは一部を委ねるように定められています。無料で相談対応してくれる機関もありますので、それを利用するとよいでしょう。しかし一番は、なかなか難しいのですが、できることなら近隣の同じ規模の学童保育運営組織と一緒になり、全体で50人以上の職員を雇用する規模の運営組織になることです。スケールメリットを生かすことです。設置主体の市町村の意向もあるでしょうが、そこはぜひ、合併等による組織の拡大を市町村に相談してみてはいかがでしょうか。

 産業医についてはぜひとも、心療内科や精神科など、メンタルヘルスに詳しい医師を選任するほうがよいでしょう。学童保育業界は本当にメンタルヘルスに過重の負担がかかる業界です。人間関係の真っただ中で仕事をするわけですから、それは当然です。しかも、少人数職場ということもあって、あっという間に症状が悪化しやすい。顔を合わせたくないと思った相手がずっとそばにいるのですから、仕方がないことです。ですので、候補者探しはちょっと難しいのですが、こころの専門医の方に産業医になっていただきましょう。そうすることで、組織全体の大きな支えができます。職員にも安心を与えられます。

 もちろん、産業医から受ける助言指導としては、メンタルヘルスだけではなく、新型コロナウイルスやインフルエンザといった感染症への対策、熱中症への対策、けが防止の対策、高齢職員への対応など、たくさんあります。医師ならではの専門的な指導を受けられるという優れたメリットを活用しない手はありません。

 組織運営者の方は、学童保育で働く人の生活、もっといえば、人生をも守るんだ、という気概を欠いてはいけません。法令順守の観点からも当然ですが、職員の健康管理のために産業医選任を真剣に考えるべきです。なお、産業医の費用は福利厚生費または人件費で計上できます。

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