学童保育所(放課後児童クラブ)においても、最低限の学習時間確保の配慮が必要な時代と考えましょう。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育運営を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 育成支援を行う学童保育所(放課後児童クラブ)において、一定限度の時間を確保して、登所した子どもたちの「学習時間」を確保することを柔軟に検討、対応することが必要ではないか、というのが本日の趣旨です。伝統的な育成支援系の学童保育所に従事する人たちからは疑問の声が上がる内容と思いますが、学習時間の確保が必要な理由として「保護者ニーズへの対応」と「家庭環境によって家庭での学習時間が確保できない(学習機会の喪失)子どもたちへのフォロー」という、大きく2つの理由を考えねばならないからです。

 そもそも学童保育所(本日のブログにおいては、放課後児童クラブを指します。放課後児童健全育成事業のこと)は、保護者が昼間、家庭にいない子どもを対象に、適切な遊び及び生活の場を与え、子どもの状況や発達段階を踏まえながら、その健全な育成を図る事業とされています(放課後児童クラブ運営指針第1章2の(1))。遊びは子どもの成長に必要不可欠な行動であって、学童保育所では遊びの時間を確保して、子どもたちが満足に遊べるようにスケジュールを組み立てています。

 学校から課される宿題の時間を確保している学童保育所が圧倒的多数と思いますが、宿題も最終的に「やる、やらない」は子どもたちの判断によることとしてる学童保育所が多いでしょう。もちろん、保護者と事前に相談をしていることと思います。

 今回の提案は、そうした宿題の時間以外にも、学童保育所の本質的な事業=遊びの時間の確保、を阻害しない範囲において、子どもたちに学習機会の提供を可能とすることを訴えたいものです。

 学童保育所に通う子どもたちの保護者は、学習面での不安を持っていることが多いと、私の過去の事業運営経験から感じています。もちろん、学童保育所は学習塾ではありませんので、職員が勉強を教えるということは事業目的外となることから基本的にしませんし、できません。そうであっても、保護者の多くは「もっと勉強の時間があればいいのに」と思っています。

 学童保育所は留守家庭における子どもたちの生活の場であることから、一定限度の学習時間を確保することは、放課後児童健全育成事業の趣旨に反するものではありません。むしろ、「第二の家庭」として学童保育所を位置付けるのであればこそ、一定限度の学習時間確保を行ってしかるべきではないでしょうか。一定限度の学習時間というのはそれぞれの学童保育所の考え方に拠ると思いますが、私としてはおおむね30分前後(宿題の時間とは別)という考えです。夏休み期間中など、朝から子どもたちが登所している期間は、1時間前後確保することも良いと思いますし、登所時刻が遅い高学年においては適宜、設定することで十分(必要が無ければ設定しない)だと考えます。小学校での学習内容のハードルが上がると言われる小学3年生、4年生におけるそれなりの学習時間確保は、保護者はもちろん、子ども自身の学校生活における下支えとなり、子どもの利益につながります。

 また、特に重要視しなければならないのは、家庭における学習機会が十分に確保できない世帯の増加です。「こども食堂」が相次いで各地に設置されていることから分かるように、現在、「なんとか暮らすだけで精一杯」という世帯は実に多いのです。そのような世帯では通常、保護者が就労していることから、その世帯の子どもが学童保育所に多く通っています。保護者と一緒に帰宅しても、心理的な余裕の少なさもあいまって、なかなか学習の時間が取れないのです。いわゆる貧困世帯における学習機会の喪失は大きな社会問題にもなっています。

 児童福祉の世界に含まれる学童保育所として、子どもたちの最善の利益を確保するためにも、一定限度の学習時間を確保することで、学習機会喪失のリスクが高い世帯の子どもたちに、適切なフォローが可能となるのです。
 同時に、学童保育所は「社会が必要としているから」存在できていることを、忘れてはなりません。社会、つまり保護者の皆さんが、「あの学童保育所は、ウチには合わない」と忌避するようになっては、事業としての学童保育所の運営が成り立ちません。社会のニーズに適切に対応すること、事業を社会のニーズに合わせてアップデートすることも、事業運営としても必要なのです。くれぐれも「私たちは子どもたちに正しいことをしているから、子どもたちは学童保育所を利用するのが当然」と思ってはいけないのです。その考え方は、単なる独善です。

 学童保育所で一定限度の学習時間を確保するとして、その費用は一定の割合で受益者負担(保護者負担)にせざるを得ないでしょう。ただし、低所得者世帯については運営側が補助をするなどの配慮は必要です。よって、比較的、低額の学習支援システムが望ましいと言えるでしょう。

 例えば、学童保育所における学習支援システムとしては、弊会と業務上において相互支援している神戸市の「Edumuse株式会社」(岡村有希子代表)が提供している「ホームラーニング パプリカ」があります。ネット会議システムを発展させたホームラーニング形態で、個人または少人数の集団においての、リアルタイムでの学習支援(つまり、お勉強の時間)が可能です。希望する世帯のお子さんだけの利用も可能とのことです。

 こうした学習支援システムを取り入れることで、学童保育所は、保護者ニーズ(すなわち社会のニーズ)に対してある程度の反映が可能となり、さらに子どもたちにとっても利益のある結果を導くことが可能です。

 「いやいや、学童は遊びの場。勉強は、おうちでやって。それが保護者の務めでしょう」という考え方は、はっきりいって、今はもう、時代遅れです。学童保育所も、時代に合わせてアップデートしていかなければなりません。
 もっと言えば、学習支援系の民間学童保育所が、逆に「育成支援の重要さ」を取り入れ、子どもたちを多く集めることができるようになった場合、当然、子ども1人当たりの単価(月謝)を下げることができるようになり、それが拡大の循環として機能していく可能性は大いにあります。そうなったとき、「うちの学童は勉強させません。それはおうちでやらせてください」と旧態依然とした運営に固執している学童保育所は、入所希望の児童数が減り、運営が危機的な状況となります。それは、そこで働いている人たちの雇用が確保できないという事態を招きます。
 そういう可能性は、私は大いにあると考えています。

 事業であればなんでもそうですが、時代の先を見据えて先手先手の事業展開が必要です。福祉の世界だからそんなことは必要ない、ではないのです。福祉の世界であっても事業は事業。収益が上がらない事業は、社会から淘汰されるだけです。

 子どもたちの育ちに存在が必要な「はず」の学童保育所だからこそ、持続的に運営が可能な事業形態を展開することを当然とし、社会のニーズに反映し、子どもの利益を幅広く考えることは当然のことです。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所が社会にとって必要なシステムであることを前提に、社会のニーズにいかにして適合していくことができるか、学童保育所の事業運営方法について種々の提言が可能です。自治体にとっても、学童保育所への評価と信頼が高まることによる地域の魅力アップ=子育て施策への高評価=人口増ということが期待できるような種々の提言が可能です。そのほか、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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