学童保育事業も、労働生産性の向上に取り組もう。その2
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。
学童保育所の世界は、「低賃金」「長時間労働」「重労働」であり、それらは「働き手不足」の原因であり結果であるという、構造的に非常に困難な状態です。その厳しい状況は、学童保育に対する社会的評価の向上とそれに伴う補助金等の増額で、長期的に見て解消されることを私は期待しています。
しかし、それとは別に、今この時点で、学童保育の業界が取り組まねばならないことがあります。それが、質の高い学童保育事業の実施であり、そのために必要なのが「労働生産性の向上」なのです。なぜなら、労働生産性の向上は、結果として質の高い職場環境の実現を同時にもたらすものであり、個々の労働者にとって納得のできる雇用労働環境を実現できる可能性が高いから、なのです。
まず「労働生産性とは何か」ということです。労働生産性については実に多くの書籍やインターネットでも紹介のページがありますから、それを見ていただければ一目瞭然ですが、定義としては「成果(Output)÷投入量(Input入量)」で示されます。この定義は、労働者(働く人、職員)1人について考えることが通常ですが、1単位ごとで計算する学童保育の世界の場合は、1単位(=そこで働いている職員数や、そこに在籍している児童数に基づく収入)で考えでも良いでしょう。
ここでいう成果とは、多くの場合、「付加価値の額」や「生産量」を示します。
また、投入量とは、多くの場合、「労働の投入量」すなわち働く人の人数や、働く人の人数×労働時間、で示されます。
学童保育の世界では、1単位につき、「一定の期間において得られる収入」÷「1単位で働く人の労働時間又は賃金」で考えると分かりやすいでしょう。
なお、労働生産性には「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の2区分があります。学童保育の場合は、何かを生産して販売するという事業ではないので単純に付加価値を算出することはできません。商品販売の場合なら優れた商品なら売れ、売上額から経費を差し引けば付加価値の額が算出できます。学童保育の場合は、「質の高い事業を実施することで、その学童保育を利用し続けたいという考えになって在籍を続ける=在籍数が減らない、あるいは増える」ということを想定すると良いでしょう。
労働生産性の向上についてここから先は、2つの考え方を展開します。1つは、「質の高い事業の実施」のために必要なこと、すなわち「業務の質的向上」です。
もう1つは、職員1人当たりの収益、すなわち「利益水準の向上」です。
前者は分かりやすいでしょうが、後者については学童保育の世界(この場合、放課後児童クラブのこと。収益のすべてを在籍者の毎月の月謝等で得ている、いわゆる民間学童保育所は、通常の営利企業によるサービス提供と同じですから、利益水準の向上は極めて重要とされているはずです)では、「福祉事業である」という志向性から、まったく考慮されたことがないといえるでしょう。よって拒否反応も強いでしょうが、「放課後児童クラブは国や地方公共団体から補助金が投入されている。それは税金に由来する公金である。また毎月の保護者負担金は、学童保育と言うシステムが必要なのでやむなくそのシステム利用に対して支払わざるを得ない料金であり、保護者にとっては学童保育利用税と呼ぶに等しいものである」ことを考えると、補助金や毎月の保護者負担金を1円たりとも無駄に使用してはならない、ということがお分かりいただけるはずです。
この後者については後日、改めて説明します。
前者の「質の高い事業の実施」が、なぜ労働生産性の向上に結び付くのか。それは単純なことで、「質の高い育成支援を実施している学童保育所」であるなら、そこに在籍している子どもたち、そして利用している保護者の双方ともに、その学童保育所に満足しているなら、不満を持って学童保育所を退所する人が減ることになり、学童保育所の在籍者数の減少ペースがゆるやかになります。それはつまり、在籍人数によって決められる補助金の額や保護者負担金の収入が減らないことを意味するからです。
もちろん、学童保育所の退所には、「積極的な理由」(例えば、「子ども自身に他にやりたいことを見出した」「保護者不在の時間が短くなった」等)、すなわち子どもたちの主体性や社会性が育まれたことによるものがあり、それは質の高い育成支援事業の実施の結果、であると考えられます。
(実はさらに重要なことがあります。質の高い事業の実施は、学童保育所を利用する保護者を通じ、その高い評価が社会に広がっていきます。それは学童保育所への社会的評価の向上に直結します。それが最終的に、学童保育所で働く人への好待遇を社会が容認する根拠となるのです。よって、質の高い事業の実施は学童保育所において最重点に取り組まねばならないこと、でもあります)
逆に、「消極的な理由」、すなわち不満を持って退所する場合は、学童保育所がつまらない、トラブルに巻き込まれて丁寧な解決をしてくれなかった、居心地が悪い等、種々の残念な理由での退所があります。質の高い育成支援を継続的に実施できているなら、こういう消極的な理由による退所者を減らすことが、当然可能なはずなのです。
質の高い事業の実施においては「業務の改善」が極めて重要です。
次回以降は、この業務の改善についてお伝えしていきます。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の業務構造の質的改善について、積極的に発信をしていきます。また、育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供できます。学童保育業界が抱える種々の問題や課題について、具体的な提案を行っています。学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)