学童保育を構成する要素を点検する。その1:学童保育に関わる人や組織(利用者も、ですが)の意識に問題がある

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 学童保育を構成する各要素を、わたくしなりの視点で思うところを指摘していきます。初回は、学童保育で働く人たちの意識を問うてみたいと思います。学童保育所に関わる人や組織(利用者も一部含みます)が持っている意識、考え方についてです。

 まず、改めて指摘しますが、学童保育はまぎれもない事業活動です。「いや、それは違う。児童福祉だ」という人がいるでしょうが、人を雇用し、利用を希望する人にサービス(役務)を提供してその対価として金銭を得る(行政から受け取る補助金もそれに含む)ことを継続して行っていることは、まぎれもない事業活動です。つまり、ビジネスのルールが適用されますし、事業に関わる人(つまり運営者、経営者、職員など組織を構成する者すべて)は、ビジネス上のしきたり、流儀を身につけることが必要です。

 その点、私は常々、疑問に感じることがあります。SNSでもよく見かける意見ですが、「保護者の要求をずるする受け入れることはよくない」「少しでも利用条件を緩めれば、そこに保護者はどんどんつけ込んでくる。職員の労働条件が悪化する」という趣旨の意見を目にします。その意見は、例えば、朝の学童保育所開所時間において、朝8時に開所のところ、職員がその10分前に出勤していたら、保護者は職員がいるのをこれ幸いとして子どもを置いていってしまう、結果的に7時50分開所になってしまう現象を防げぎたい、という気持ちが根底にあるものと私は推測します。

 ここで私の考え方を2点述べます。
・事業、それも人のためになる事業である限り、利用者側のニーズに最大限寄り添うことが事業者側の務め
・利用に際しては、事業者側も、利用者側も、ルールを守る、守らせる

 最初の点。ニーズに寄り添うことは、当たり前です。ビジネスで利用者のニーズをくみとって、利用者の満足度を上昇させることに努めることは当然です。市場競争で他社との競争に直面している事業者は当たり前ですがこのことを怠るとシェアを伸ばせずその市場から撤退することになるでしょう。むしろ問題は、他者との競争がない立場や期間においての事業者の行動です。学童保育で言えば、ひとつの事業者が市区町村内で独占して学童保育所を運営している状態がそうですし、事業運営が公募で決まったとしても、公募を終えて次の公募までの期間の間の状態が、それにあたります。

 事業を営む限り、利用者の要望や希望を常に感じ取って、その要望や希望にできうる限り応えていくことが必要です。逆に言えば、不満やクレームは、それが理不尽、根拠のないものでない限り、事業運営の改善に反映させるべきなのです。そうやって、利用者側の満足度を向上させる努力が必要なのです。仮に、午前8時開所の学童保育所で、多くの保護者が8時前に子どもを連れてきて、子どもだけを置いて出勤してしまうとか、始業準備のために出勤している職員に子どもを無理やり託して出勤してしまうというような状態であれば、「午前8時開所が多くの保護者のニーズを満たしていない」ということです。よって、学童保育所側は、開所時間を15分なり、30分早めることが、事業者として当然、選択するべき行動です。

 学童保育所、ことに放課後児童クラブは、税金からなる補助金と、利用者たる保護者から徴収する利用料(これも子育て税のようなもの)で運営されますが、公のお金をいただいていることであり、働きながら子育てをするためにやむを得ず支払う利用料もまた税金のようなものなので、公のお金をいただいて運営しているんだ、と意識することが必要です。1円たりともムダにしてはいけません。

 利用者に好感をもって受け入れられるということは、社会全体から受け入れられることと同義です。社会から好感されない、受け入れられないということは、事業として成り立たないということです。あるいは、保護者達が「嫌でも利用しなくては生活できないので、いやいや利用しているだけ」であって、事業者に何かピンチがあったとき、利用者たる保護者からの支援は得られないでしょう。

 次の点は、これも当たり前ですが、事業活動においては、運営する立場も利用する立場も、ルールに従うということです。特に利用者側にこの点の意識の周知が低いことが多いですね。それは、事業者側が繰り返し徹底して理解させることが必要です。一般的に、利用に関してのルールが設定されているはずです。そのルールを双方ともに守ることが重要です。

 学童保育所と保護者との法律関係は、それについて特に詳しく研究されたことがあるかどうか、恥ずかしながら私には分かりません。公営学童保育所ですと、入所を認める、認めないは行政による処分になるでしょうし、民営学童の場合は事業者と保護者との間に継続的サービス(役務)提供契約が締結されている、と考えることが自然だと私は思っています。特に民営の場合、私法上の契約であれば、契約を締結した双方に義務がありますから、対等な関係で、その契約を守って義務を履行することが求められます。事業者は、相手側が求めるサービス(役務)を提供することですし、利用者は提供されたサービスの対価を支払うこと。事業者は必要な安全配慮を行ってサービスを提供する義務を負いますし、利用者はサービスの提供を妨げるような行為をしてはならない、ということです。

 仮に、朝8時の開所前に、ごく少数の保護者が子どもを置いて出勤してしまうということが、何度も何度も注意して改善をお願いしたのにいっこうに改善される状況にない場合は、「そういうことが可能であると、利用に関してのルール、約款等に記載があり、その記載内容を入所の際に了承をしたという確約があるという前提のもと」、契約を一向に守らないことで契約を打ち切る、つまり退所させるということが、私は可能であると考えています。

 むろん、子どもの安全な居場所を無くする行為ですから、極めて慎重に行われるべきであって、よほどの状況でないと実施できないのは当然です。いきなり退所というよりも、違約金を請求するという条項を設定しておいて、違約金の支払いを求めるなど、段階を踏んだ対応が必要なのは言うまでもありません。

 慎重な手続きが必要だとしても、最終的には、保護者の一方的なふるまいがすべて受け入れらるわけではないことは、入所時にしっかりと説明しておくべきですし、そもそも、利用に関するルールを守ることを条件に入所を認めればよいのです。当然、事業者側もルールを守った事業運営が必要です。職員が寝坊した、あるいは道路渋滞で到着が遅れたからといって朝の開所時間の出勤に間に合わなかった、ということは論外です。あってはなりません。そのような行為を数度繰り返せば、当然ながら懲戒処分とするべきです。

 なお、「仲良くやろうね」という仲間意識が強い非営利法人運営団体は、職員のミス、不祥事に関して対応が手ぬるいですね。ミスを犯して実際に影響が出た(上記の遅刻による開所遅れはその典型)場合、処分を課すことに「厳しくするとかわいそう、辞めちゃうかもしれない」といって口頭による「次は、気を付けてね」で済まそうとすることがありがちではないですか?それは愚の骨頂です。事業は正確に厳密に行わねばなりません。信賞必罰は当然です。まして、事業の運営を司る会議体、例えば理事会で、そのような仲良し意識(私に言わせれば、甘ちゃんのなれ合い組織)のもとに、正当な過程を経ずに重要事項を勝手に変更して虚偽の報告を行政や保護者に行うなんてことがあるとしたら、その組織は見た目は立派でもその内部は腐っており、社会にとって害悪にしかなりませんね。非営利の法人こそ、ミスやルール違反に厳正に対応せねばならないことを心がけるべきです。

 利用者のニーズをくみとる。ルールに従った対応を取る、対応を求める。これら、ビジネスに当然の意識が、学童保育の世界には欠けていると私は思います。このことをしっかり踏まえた運営をしましょう。学童保育は存在して当たり前、学童保育で働く人や組織は何をしても社会から許される、ということではありませんよ。保護者の方も、何でも希望することが通用すると思わないでくださいね。あなたの都合だけで学童保育所の運営を変更させることは不可能ですよ。あなたは単なる1人の契約上の利用者ですからね。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所の運営の継続について、「あい和学童クラブ運営法人」がお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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