学童保育にもよくある「現場と運営本部のすれ違い」。組織の基本原理を理解すれば、解消するはずですよ。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 学童保育の世界に限った話ではありませんが、「現場」と「本部」のすれ違い、あるいは対立構造というのは、よくあることです。ちょっとした愚痴で済むレベルが多いのでしょうが、深刻な対立にまで発展してしまうケースも耳にします。この問題、ややもすると、「現場は一生懸命に頑張っているのに、現場の苦労を知らない本部、本社が勝手にあれこれ決めてしまって、もう耐えられない」という状況が容易に想像できることもあって、現場側の境遇に肩入れしてしまいやすい側面がありますね。ドラマや映画にもよく取り入れられている構図で、(私のドラマ知識が20年前でストップしているので例示が古く申し訳ありませんが)「踊る大捜査線」が典型的でしょう。また、昨今のマイナンバーカードをめぐるトラブルも、区市町村と政府との関係が、まさに現場と本部のすれ違いと、いえるでしょう。

 学童保育の場合で具体例としては、すでに多くの児童が在所しているクラブに、さらに児童を入所させるケースがあります。現場クラブとしては、もうこれ以上、児童の人数を増やしたくないのに、本部が次々に入所させる。いったいどういうことだ!本部は現場がどうなってもいいのか!と、現場側が憤るというケースです。

 確かに、本当に、まったく現場の状況を知らずに何も考えずに、どんどん児童を入所させるような本部もあるでしょう。そういう場合は「論外」です。本日取り上げたいのは、運営本部もある程度の現場の状況を理解しているはずなのにどうして?という状況です。現場も本部も、学童保育に懸命に取り組んでいる。子どものため、保護者のために貢献したいと思っている。なのに、どうして現場と本部で意見の相違が生まれてしまうのか、という状況です。

 実はそんなに難しい話ではありません。当たり前ですが、現場の立場と、運営本部の立場では、「具体的に、何を行うことが(自分の立場から俯瞰して把握できる範囲において)組織の維持と発展に結びつくのか」という思考で考えて導かれる結論が異なるから、なのです。現場は、クラブに在所している子どもたちとその保護者の支援を最重点に考える。だから人数が多すぎるクラブは十分な育成支援が実施できない。子ども同士のトラブルも増える。職員数も十分にそろっていないのでなおさらだ。つまり現場は「育成支援」というその専門的な業務の遂行に絶対的な優先度を置くのが通常でしょう。

 方や運営本部側は、組織の全体を対象に、それは組織の安定かつ継続的な存在と組織の発展を念頭に、職員に関すること、子どもと保護者のこと、さらには行政や地域社会との関係など、多種多様な要素を考えているのが通常でしょう。現場と本部が見ている、見えている世界が、当然違っている以上、例えば児童入所に際してどう考え、判断するかの結論が違っていることは、普通に起こりえることです。

 現場はもうこれ以上の児童数増加は望まないとしても、運営本部が入所を決めた理由として、「この家庭は学童保育というシステムを関係させることで、親子関係が安定する可能性がある」と、関係各位との水面下の協議で決めたかもしれない、あるいは雇用している職員に十分な賃金を支払うための財務的な基盤を強化するために収入増が必要であって、それで入所を断らないのかもしれない。

 それぞれの立場で、ベストを目指して考え、行動した結果、導かれる結論が異なることこそ、現場と本部のすれ違い、といえるでしょう。

 このような状況に陥ることを防ぐには、これもまた当たり前ですが、それぞれの立場に即して物事を考えられるようにすることです。それはつまり、情報の共有を密にして、お互いの状況や課題をしっかり把握できるような状態を維持しておくことであり、そのために「現場と本部が頻繁に会議体の場で情報共有と課題への取り組みを協議する」こと、いわゆる労使協議制を積極的に実施することが望ましいのです。そう言われると、当たり前すぎますと指摘を受けそうですが、現場と本部のすれ違いが起こっているようなら、その当たり前すぎることが機能していないということなのです。

 古典的な組織論として「組織の3要素」という考え方があります。米国の経営学者であるバーナードが提唱した考え方です。組織は3つの要素でなっている。まず「目的」。社会において実現したいこと、目指すべき到達点です。学童保育の世界で言えば、子どもの成長を支えて子どもの安全安心を守り、豊かな放課後の時間を実現させ、そして保護者の生活を支える、ということでしょうか。
 ついで「意欲」です。目的を実現するために果たすべき貢献を実施しようという気持ちであり、モチベーションです。同じ目的を抱いた人が、その目的を実現しようと、夢と希望をメラメラと燃やしている様子、を想像してみてください。
 そして「コミュニケーション」です。志を同じくした人たちが連携するために、今、そして将来、誰が、どのような役割をもってどのような行動をするべきなのか、意思の疎通を綿密に調整を重ねて実行していく。集まった人たちがそれぞれの分野で活動することで、全体として目的実現のために活動をしていく。それこそが、組織として機能すること、なのです。

 現場と本部のすれ違いは、組織の根本的な原理であるコミュニケーションを欠いている状態であって、しかも、それぞれの立場が直近の課題解消として取り組むべき目標を把握できていない状況にある、ということなのです。そのような状態こそ「風通しの悪い組織」に陥っているのです。

 現場と本部との交流手段はいくらでもありますね。規模がそれほど大きくない、数十人単位でしたらそれこそ全体集会を頻繁に開催することで足りる場合もあります。100人を超える場合は、現場側の代表(雇用労働面であれば労働組合がその役割を兼ねることで足りるでしょう)と本部との定期的な協議会合の場を規則をもって設置することが良いでしょう。規則化することで、労使協議はガバナンスに取り込まれることになります。定期的に、まとまった単位での対話集会を持つこともいいでしょう。互いの情報を出し合えることが「風通しの良い」組織に変えていくことになるのです。
 また、スーパーバイザーやエリアマネジャーといった、本部と現場との間で管理監督、あるいは調整に取り組む役職が整備されているなら、そのような中間管理職を活用することで、現場と本部とのずれを常時、最小化する取り組みを行うことも可能でしょう。もちろんこの場合、スーパーバイザーやエリアマネジャーといった立場の人物は、基本的に本部運営側に立つことになる前提をもとに、過度にどちらかに肩入れるようなことがないようにするべきです。

 なお、現場側の人が口にすることが多い「本部は現場を見ていない。見にも来ない」というフレーズですが、私は、それは大した問題ではないと考えます。実際に経営責任者がその目で現実を見ることは、それなりにあってもよいとはおもいますが、部下やクラブから上がってくる情報が正確であれば、現状把握に問題がないはずだからです。(現場の人数と本部経営側の人数は絶対的に現場の人数が多いですから、共感も支持も現場側に集まります。同じような立場を経験している人が多いゆえに共鳴しやすいからですね。だからこそ、ドラマや映画でも、人気のテーマになるのです)

 公設公営や株式会社運営の場合は、本部が公の組織、遠く離れた地に本社があるなどで、意思疎通が困難な状況設定になっています。それでも、現場との懇談を常に求めることや、職員によるまとまり(組合だろうが過半数組織だろうが)で、情報共有の場の設置を求めていく行動をすることが重要です。

 学童保育の世界は、「子どもの支援」だけにすべての目がとらわれがち。あまりにも子どもの支援を重要視することで、子どもの支援のためならば、たいていのことは我慢するという風潮すらあります。違います。子どもの支援という目的を果たすために、組織が健全に機能することが重要なのです。現場と本部のすれ違いは、組織が健全に機能していない、人間で例えれば「病気」になっていること。必要な手当てをすぐに施しましょう。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育における組織上の課題、問題について、その解消について具体的な提案ができます。学童保育業界が抱える種々の問題や課題について、具体的な提案を行っています。また、学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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