子どもへの不適切な行為は許されないこと。現状に責任を転嫁することは、自らの専門性を貶めることです。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 先週末からSNSでは「不適切保育」に関する投稿が相次いでいます。5月12日に、こども家庭庁が、全国の自治体と施設を対象に、不適切な保育について初めて実態調査を行った結果を公表したことがきっかけです。調査結果は、どのような内容だったのでしょうか。5月13日付の毎日新聞朝刊を引用します。

 「昨年4~12月の間に、市区町村が通報などを受けて確認した保育所での不適切保育は914件で、たたくなどの虐待と確認されたのは90件に上った」(引用ここまで)

 調査は全国1741自治体を対象とし、うち1530自治体が回答、全国の2万2720の保育所を調査したとのこと、回答しない200あまりの自治体は、大変残念ですね。

 不適切保育の内容としては、子どもの人格を尊重しないかかわりが最多、次いで、物事を強要する関りや脅迫的な言葉がけ、罰を与える・乱暴な関り、育ちや家庭環境への配慮を欠いた関り、と続いています。詳細は毎日新聞記事をご確認ください。

 多くのメディアで報道されたことで、SNSでも多く言及されました。私の見た限りですが、保育士や保育関係者からの投稿として目立ったのは、「何が不適切保育にされるのか分からない」「あれも不適切、これも不適切なら、やっていられない」「保護者だって熱がある子どもを連れてきて平然としている」「保育士の人数が足りない、給料も安い、仕事ばかり増える。現場の実態を無視して保育士ばかり責められている」というような内容のものでした。率直な感想で、同情する点もありますが、私としては「それを言ってはいけない」と、指摘せざるを得ません。

 不適切保育は学童保育所の世界でも実は珍しくありません。保育所だけの問題ではなく児童福祉の世界全体の問題として考えていく必要があります。
 そして当たり前ですが、不適切な保育は絶対にしてはならない。ましてそれが児童虐待と判断されるようなことは断じてあってはならない。そのことは間違いなく、すべての保育関係者は理解をしています。つまり、「不適切な保育は絶対にダメ。それは分かっている」としつつ、「不適切な保育を生み出している保育現場の実態を改善せず放置しているのは、国(行政)じゃないですか!」ということ。つまり、責任転嫁の論理がみられるということです。

 保育士は国家資格。学童保育所の資格は「放課後児童支援員」で、これは都道府県知事の認定資格。いずれにせよ、公の資格です。公の資格を持つ者や、児童福祉法で定められた施設や事業の運営者が、自らの業界で発生している不法行為に対し、「それは制度が悪い、国が悪い、行政が悪い」と言ってしまっては、己の公の資格を傷つけることになります。保育や育成支援の専門性に対して資格が与えられるわけですが、その専門性を自ら貶めることになります。まして、被害に遭われた子どもやその保護者、ご家族にとっては、とても受け入れられる弁明にはなりません。被害に遭われた方の立場を考えたら、制度が悪い、国が悪いなどとは、決して言えないことだと私は思います。

 残念ですが、そのような意識があまり持てていない方がSNS上では、一定数いるようです。本当に寂しく思います。

 もちろん、不適切な保育の温床となっているものがあれば、それは正されねばなりません。実際、毎日新聞には、調査結果の概要を伝える記事だけでなく解説記事も別ページに掲載されており、その見出しは「園児守れぬ過酷現場」とあります。記事の中にも「不適切保育が起きる背景には、保育士の低賃金や過酷な労働環境も影響している可能性がある」と言及されています。

 児童福祉の世界に従事する者への劣悪な処遇は、早急に改善されねばなりません。不適切保育を招こうが招かまいが、それはそれで重要な問題です。処遇の悪さはそこで働く者のメンタルヘルスを悪化させ、正常な判断能力を阻害する可能性があり、よって不適切保育を呼び起こす1つの要因だと私も思いますが、それを理由に不適切保育の弁明をしては、ならないのです。造反有理、ではないのですから。

 処遇に対する改善は国や行政の制度改善が必要ですが、児童福祉の施設を設置運営しているのが民間の事業者であれば、その事業者の経営姿勢も問われなければなりません。この点、民間の企業経営の分野になるので公的な規制はまず期待できず、事業者の経営者の良識にゆだねざるを得ないのですが、正直に申し上げてそれは無理です。児童福祉の事業に交付される補助金の弾力的運用がかなりの範囲で認められているため、事業所で働く職員よりも運営側に多く資金が流れることが事実上、可能となっています。そのことに一定程度の規制をかけないと、児童福祉の現場で働く者の処遇はずっと改善されないままです。このことは、強く指摘しておきます。

 不適切保育は起こしてはならず、不適切保育の言い訳はしてはならない。ダメなものは、ダメなのです。その上で、職員の置かれている過酷な現状が不適切保育の1つの要因となっているかどうかをしっかりと調査をした上で、職場環境や雇用労働条件の改善は必ず行うことです。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所で絶対に起こしてはならない不適切な子どもとの関りについて、その防止と改善の指導について、運営事業者に助言が可能です。事業の継続を脅かす事態を未然に防ぐリスクマネジメントや、不祥事が起きた際に速やかに解消するためのクライシスコントロールについて、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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