分かりにくい放課後児童クラブ(学童保育所)の「分類」について。いろいろな観点で整理できるはず。
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
放課後児童クラブのことを取り上げている記事が珍しくなくなった時代になりました。わたくし萩原がこの業界に関わりだした2010年前後には、不祥事以外の報道は実に少なかったのです。たまに職員の低賃金の哀話が掲載されるぐらいでした。その時代を知っているだけに時代の移り変わりと、社会が児童クラブに興味関心を向けてきているんだということを感じます。ところで児童クラブそのものが、なかなか厄介な業界でして、ややもすると読者に誤解を与えかねない表現や内容の記事を見かけます。書いている記者やライターさんも実のところ取材や執筆のために勉強したものの全容まで理解するに至っていないというところでしょう。ということで、非常に上から目線に偉そうにわたくしが児童クラブの「分類」から紹介します。もちろんわたくし萩原の独断と偏見で考えているものですからその点はご承知おきください。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<まず前提>
放課後児童クラブとは、児童福祉法にある「放課後児童健全育成事業」を実施している施設であり、また放課後児童健全育成事業そのものを指し示す言葉として使われる場合もあります。この放課後児童健全育成事業は1997年から法律上の事業として存在しています。それ以前は、国の法令としては存在していませんでした。
学童保育所とは、小学生のこどもを放課後や夏休みなどに受け入れる場所及びその仕組みとして、1950年代以降、日本各地に増えてきた施設を指す一般的な名称として広く普及してきました。1997年にこの仕組みが放課後児童健全育成事業として法定化された後も、わかりやすい表記でもあることで今も一般的に使われています。また地方自治体のレベルで、条例や要綱において放課後児童健全育成事業による放課後児童クラブのことを学童保育所と定義していることも珍しくありません。
一般的な理解では「放課後児童クラブ=学童保育所」となりますが、厳密に考えれば両者はまったく同一ではないことを理解して、記事を書くことが重要です。というのは、放課後児童クラブであれば放課後児童健全育成事業を行っている施設であるといえますが、学童保育所のすべてが放課後児童健全育成事業を行っている施設ではないからです。例えば「英語で過ごす学童保育」というキャッチコピーで知られる全国展開の事業がありますが、その施設は放課後児童クラブではありません。
ただしややこしいのは、放課後児童健全育成事業そのものは「地域の実情に応じて」実施することができます。公の事業ですがそもそも民間だって営める事業です。そして上記に紹介した英語で過ごす学童保育の施設も地域によっては放課後児童健全育成事業として認められているからです。これが「地域の実情に応じて」の実態です。
<「放課後児童クラブ」は「学童保育所」とも呼ばれていて、ほぼほぼ同一といえるが完全に同じではない。放課後児童クラブではない学童保育所もある。放課後児童健全育成事業を行っていない放課後児童クラブは存在しないが、放課後児童健全育成事業を行っていない学童保育所は存在する。>
児童クラブについて取材したり記事を書かれたりする方は、まず「この施設は、放課後児童健全育成事業であるかどうかの確認」を出発点にするとよいでしょう。ちなみに放課後児童健全育成事業は届出制です。市町村に届出をして受理されれば、その施設は放課後児童健全育成事業です。もちろん届出をしないで実質的に放課後児童健全育成事業を行っている施設や事業者もあります。届出の有無で差が出るのは「国からの交付金をもらえる立場になれるかどうか」にあります。ただし届出をして受理されても必ず国の交付金つまり補助金をもらえるのではありません。補助金を出す出さないは市町村の判断次第です。
つまりこういう施設もありえるのです。<厚生労働省令や地域の条例、要綱が定める基準に従って放課後児童健全育成事業を行っているが、市町村に届出はしていない。従って補助金は1円たりとも受け取っていない。名乗っている名称は「〇〇〇〇学童保育所」である。>
この場合、市町村に放課後児童健全育成事業の届出を行っていないので公的には放課後児童クラブではありませんが放課後児童健全育成事業を行っているので実質的には放課後児童クラブといえます。ただし名乗っている名称は~学童保育所、ということです。
この場合の施設を分類するとすれば、「民間学童保育」というジャンルになるとわたくしは考えます。民間学童保育とは、放課後児童健全育成事業ではない事業であってこどもを受け入れて過ごさせる施設です。国の補助金は得られませんので利用者からの月謝、利用料または運営事業者が属する企業法人グループ内で資金を融通してもらって運営費用に充てます。事業実施内容は法令の縛りは一切ありませんから事業者が自由にサービス内容を決定、提供できます。
<事業による分類>
前提を踏まえて各種視点による児童クラブの分類をしていきましょう。
まずは前提に即した分類、つまり事業に着目しての分類です。
「放課後児童健全育成事業であるかどうか」
・放課後児童健全育成事業であり、市町村に届出をしている場合=放課後児童クラブ(学童保育所と名乗る場合もある)
・放課後児童健全育成事業であるが市町村に届出をしていない場合=民間学童保育施設(学童保育所と名乗る場合もある)
・放課後児童健全育成事業ではない場合=民間学童保育施設(学童保育所と名乗る場合もある)
この視点での分類は重要です。児童クラブをうたっていながら種々のサービスを提供している「学童保育所」が存在するからです。学力増進のための勉強や英会話、計算、漢字、プログラム、ダンス、サッカー、いろいろあります。これらは放課後児童健全育成事業に含まれていないサービスです。
さらにややこしいのは、放課後児童健全育成事業を行いつつ、放課後児童健全育成事業に含まれないサービスを別途行う事業者がごく普通にあることです。基本的な料金を支払う世帯は放課後児童健全育成事業の範囲内のサービスを受けてオプションで別途料金を払って習い事のようなサービスを受ける、という形態があれば、基本料金が周囲の児童クラブより割高だけれども放課後児童健全育成事業の範囲を超えたサービスの提供を受けるという形態もあります。その場合、入所は小学校の学区を超えて保護者が任意で入所を選択できるようになっています。
もっとややこしいのは、放課後児童健全育成事業そのものが地域の実情に応じて実施できるので、ある地域ではとても放課後児童健全育成事業ではないとみなされる事業内容が、別の地域では「うちではその事業内容も放課後児童健全育成事業として取り扱いますよ。補助金も交付しますよ」となる場合があることです。とりわけ、児童クラブに入りたくても入れないこどもがいる待機児童が存在する地域や、待機児童を出さない代わりに入所希望のこどもをとにかく入所させるのでギュウギュウ詰めー児童クラブの業界では「大規模児童クラブ」と呼びますーの児童クラブがある地域では、放課後児童健全育成事業の範囲を広く考えて、つまり緩めて考えている地域があるように、わたくしには見受けられます。
ですので、英会話や学力増進の時間を確保してそれをアピールしている民間の施設があった時、場合によってはそれは「放課後児童健全育成事業にプラスして行われているサービス」のこともありえて、その場合は民間学童保育ではなくて、放課後児童健全育成事業による放課後児童クラブの施設(提供されるサービスは放課後児童健全育成事業ではない)であることも、ありえるのです。
また送迎については、民間学童保育によくあるサービスですが、放課後児童健全育成事業であるごく一般的な児童クラブも複数の小学校区のこどもを受け入れることが増えており送迎サービス(こどもを学校に迎えに行くという局面)を行う事業者が増えています。
なお国は、放課後児童健全育成事業ではない事業を主たる事業とする場合は放課後児童健全育成事業と認めないとしつつ従たる事業で行う分には構わない、としています。
<設置者による分類>
児童クラブは当然、「場所」「施設」がなければ実施できません。こどもが自宅で過ごす状態でオンラインで他者とのコミュニケーションが可能であっても、そういう状態で過ごすこどもは児童クラブに在籍しているとは呼べません。そういうコミュニケーションが児童クラブではありません。よって児童クラブの場所を確保し、施設を設置する者が当然に存在します。つまり設置者によって児童クラブの分類が可能です。
・設置者が地方公共団体である放課後児童健全育成事業=公設または公立の放課後児童クラブ。地方公共団体には法人である組合(消防やごみ処理でよくある形態です。一部事務組合又は広域連合と呼ばれます。小学校にも組合立があるのです)も含まれ、数はとても少ないですが組合立児童クラブも存在しています。公設と呼ぶか公立と呼ぶのか、それは様々です。国は公立と表記する例が多いようにわたくしには見受けられます。
・設置者が地方公共団体ではない放課後児童健全育成事業=民設または民立の放課後児童クラブ。
この設置者の違いですが、要は児童クラブの建物の管理者が地方公共団体であるかどうかの話になります。大雑把に言えば児童クラブの建物が公有財産であるかどうかですが、市区町村が借りている施設の場合もあるでしょう。児童クラブにおいて、誰が設置しているかについて「設置主体はだれか」という表現をします。設置主体が地方公共団体であれば公設(または公立)であり、地方公共団体以外であれば民設(または民立)、という理解で問題ありません。
なお放課後児童健全育成事業は児童福祉法による公の事業ですから、この事業を行わない民間学童保育の施設を公設または公立で用意することは、考えにくいというのがわたくし萩原の見解です。たぶんですが、そういう公設公立の民間学童保育は存在していないのではないでしょうか。
この設置主体においては、「児童クラブの施設や場所を用意する経費をだれが負担しているか」が大事なところです。地代や施設の代金(建築費や賃貸料)は児童クラブ運営事業にかなりの負担となりますから。
<運営者による分類>
放課後児童健全育成事業は「事業」ですから、営む誰かが存在しています。だれが放課後児童健全育成事業として施設を運営しているかの分類です。
・運営者が地方公共団体である=公営
・運営者が地方公共団体以外である=民営
この部分が「民間学童保育」と混同されて記事になりがちです。民営の施設であっても児童クラブはあります。つまり「公設民営」の児童クラブがあるのです。公の児童クラブ事業は通常、公の施設で営まれるので民設公営の児童クラブは当ブログ執筆時点でわたくしは存在を確認していません。
何が勘違いになるか。実のところ、民間の運営する児童クラブはすべて利用料が高額とか、児童受入時間が長い(夜8時や9時も)とか、夕食のサービスや送迎のサービスをしているとか、「民営だからサービスが手厚い。その分、利用料が高い」という切り口の記事をとても多くみかけるのです。ここまでこのややこしいブログにお付き合いしてきてくださった読者様ならすぐお判りでしょうが、公設民営の児童クラブの利用料は必ず高額になるとはいえないのです。
なおここでいう民間ですが、地方公共団体でなければすべて民間です。児童クラブに関する記事や報道で、社会福祉協議会や福祉事業団が運営する児童クラブのことを公営と扱っていたものを見かけたことがありますが、民営です。確かに市町村の外郭団体やそれに準じた組織はその運営実態は公営のようなものですが区分としては民営です。こういう場合、組織としては民間なのに考え方や事業の展開スピードがお役所並みなので困ることが多いーそもそもこういう団体の役員には自治体からの出向者や定年退職した人、首長が入っていることも珍しくないーとわたくし萩原は勝手に思っていますが。
また保護者会や地域運営委員会のような任意団体、個人運営のクラブも当然、民営です。児童クラブを運営する民間の事業者にはざっと以下のような組織や団体、個人があります。
・法人
営利法人=株式会社、合同会社など
非営利法人=社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO)、一般社団法人、一般財団法人、学校法人、宗教法人、各種の医療法人。社会福祉法人には社会福祉協議会や福祉事業団なども含まれます。
・任意団体
保護者会、父母会
(地域)運営委員会
地域コミュニティ
・個人(個人事業主)
この中では株式会社が運営する児童クラブがものすごい勢いで増えています。一昔前(十数年前)までは、任意団体が法人成りー補助金の交付や指定管理者選定において法人格であることが望ましいと行政から言われて法人になった任意団体児童クラブが多かったーにおいて必要とされるする場合にNPO法人が選ばれやすかったのですが、株式会社も一般社団法人も設置設立の要件が緩和されたことで、比較的に手続きが面倒なNPO法人の人気は落ち着いています。
なお、基本的にはここまでの3つの視点での分類で、およそすべての児童クラブや学童保育所の分類はとりあえず可能です。ちょっとパターンを考えてみましょう。
・放課後児童健全育成事業であって、公設公営の児童クラブ
・放課後児童健全育成事業であって、公設民営の児童クラブ
・放課後児童健全育成事業の届出をしていて、補助金(子ども子育て支援交付金等)を受けている民設民営の児童クラブ
(民設民営でも公の事業である放課後児童健全育成事業を営むことに問題ありません。その場合、市区町村は児童クラブを設置運営する事業者に放課後児童健全育成事業の業務委託をするか、事業者が行う放課後児童健全育成事業に対して補助をする、ということになります。)
・放課後児童健全育成事業の届出はしているが補助金を受けていない民設民営の児童クラブ
・放課後児童健全育成事業の届出はしていないが事業として放課後児童健全育成事業を行っている民間学童保育(実質的には放課後児童クラブである)。
・放課後児童健全育成事業ではない民間学童保育
民間学童保育は放課後児童健全育成事業ではないので、「民設民営」とわざわざ呼びません。学習塾やスポーツクラブと同じと思ってください。学習塾を民設民営の学習塾と呼びませんよね。同じことです。
<事業展開地域による分類>
これは当運営支援ブログだけが提唱している分類です。児童クラブは1997年の法定化で誕生した概念ですが、それ以前のいわゆる学童保育時代、つまりアウトローの時代ですが、そもそもこどもの安全安心な居場所を求める保護者の希望から生まれた仕組みが、学童保育として発展してきました。それを地域の自治体が引き取って公設公営で展開した地域も多くあります。全国各地で各々、発展したので名称もバラバラです。学童保育所と名乗っている施設が多い地域は法定化以前からこどもを受け入れる仕組みが存在していた地域である可能性は高いですね。また、留守家庭育成室など地域ごとに独特の名称があります。
つまり児童クラブは地域ごとに生まれ、事業を営んできた、ある意味で地産地消というか、地域に根差した事業運営です。もともと保護者や自治体が運営しているのですから、地域が限定されるのは当然です。
また、保育所や幼稚園など、卒所卒園したこどもの放課後の居場所を求める保護者の声から、保育所や幼稚園を運営する法人が、小学生になった卒所卒園生の居場所を学童保育所として提供することもありました。これもまた地域に立脚した事業展開です。
ところが児童クラブがいわゆる少子化問題への国の対策の1つとして位置づけられるようになってから、国が児童クラブに交付する補助金の種類や単価額が徐々に充実、増えてきました。2015年以降の「子ども・子育て支援新制度」-今ではすっかり聞かなくなった言葉ですがー以降は顕著です。この、補助金の拡充充実によって、「児童クラブ事業はやりようによっては儲かる」という視点が実業界に生まれ、児童クラブ運営を「収益事業」として展開する事業者が登場してきました。2010年代にもすでにあったのですが、2015年以降は急激に増えています。この場合、児童クラブ運営事業を収益事業として考える事業者は地域にとらわれず「運営を任せてくれるクラブがある場所」で事業展開することになります。
この視点は地味ですが重要です。
・組織や団体が存在する地域に限定して児童クラブを運営(=公設民営)または設置運営(=民設民営)する場合=地域に根差した児童クラブ(運営団体)
・広範囲にわたって児童クラブを運営する場合=広域展開事業者による児童クラブ
広域展開事業者は株式会社だけにとどまらず非営利法人もあります。むしろ株式会社の広域展開事業者は「児童クラブで儲けようとしているね」とわかりやすいのですが、非営利法人による広域展開事業者はその運営母体が非営利を掲げているだけに「児童クラブを善意で運営展開しているのだろう」と「誤解」されがちです。当たり前ですがあちこちで児童クラブを運営する組織の動機は「利益を確保」することと考えてまず間違いありません。残念なことに有力な非営利法人の広域展開事業者が東京都内で補助金の不正受給事案を引き起こしましたが、その原因を報告する調査委員会の報告には、運営予算として与えられたうちの27パーセント「天引き」して事業者の利益計上に充てていた実態が明らかにされました。非営利法人だから儲けようとはしていないとみるのは、あまりにも早計です。むしろ非営利法人であれば実際の収益、収支状況をすべて公開して明らかにし、補助金による過度の利益計上がされていないことを如実に示す必要が営利法人以上にあるでしょう。非営利法人が税制面で優遇されていることには理由があります。
<事業への「捉え方」による分類>
これも運営支援独自の分類です。これはなかなか表立って見えない部分ですが、児童クラブの運営世界に身を置いてきたわたくしにはビンビンと実感できることです。
それは「児童クラブを営むことは、事業であるのか否か」の考え方による違いです。保護者が運営に携わる、あるいは保護者と職員が一緒になって運営する形態の、いわゆる「保護者運営系の児童クラブ」(任意団体による保護者運営や、保護者会などが法人化して運営している形態)には、「児童クラブは福祉の世界の話。児童クラブで収益を上げようとか、儲けようとか、一切考えるべきではない」という強い観念が基礎にあるようにわたくしには感じられます。それはまったく間違っていないのですが、問題は、「児童クラブは福祉であって、事業ではない。ビジネスではない」という意識にまで広がっていることが往々にしてあることです。
事業とはまぎれもなくビジネスですが、児童クラブの運営においてかつて主流であり今も一定の勢力を成している保護者運営系児童クラブの世界と、その世界を支える業界団体には、「児童クラブは事業ではない」という認識が相当根強いものがあります。この場合の事業とは「ビジネス」という単語に包括して含まれがちな意識ー収益を得ることーを意識したものであるといえます。
しかし現実には児童クラブは、予算を得て人を雇用してサービスを提供する、ということを繰り返しています。それこそ事業を営む、ということですが、これはれっきとした事業でありビジネスです。単に「収益を上げることを重視するか、収益を上げることにはこだわらないか」であるだけです。このことは、児童クラブを運営するNPO法人へのよくある誤解がわかりやすいのです。児童クラブに関わる保護者や職員には「NPO法人なんだから収益を上げてはだめでしょう。稼いではダメでしょう。」と思っている人が結構います。「非営利活動」という文言がどうも誤解を招きやすい。NPOが行わないのは事業で得た収益を役員で報酬として分配することです。事業で収益を上げてその収益をまた事業に投下することこそむしろ必要なのです。このあたり、今なおNPOは稼いではならないという残念な誤解はなかなか無くなりませんね。むしろ児童クラブの世界では、本来のNPOや非営利法人が目指す「事業収益を事業に投資する」ことが、児童クラブ運営事業の充実と発展にふさわしいものと、わたくしは考えます。つまり「事業への投資のために収益拡大を志す事業者が広域展開する」ことが、これからの児童クラブの世界に必要であると、わたくしは強く感じるところです。
さてこのことは、児童クラブに対する事業の認識の違いとしても浮き彫りとなります。児童クラブはれっきとした事業であると当たり前に考える世界、例えば行政は、事業としての確実性を重視します。事業である以上、一定の事業内容を維持しつつ安定して継続的に実施されることこそ、まして放課後児童健全育成事業は「公の事業」である以上、この継続した安定性こそ、事業において最も優先される要素となります。
一方、利用者や職員など児童クラブの事業運営に直設タッチしない立場にいる人は、「児童クラブはれっきとした事業である」という認識が薄いか、持ち得ていないので、「児童クラブを株式会社が運営するなんて許せない」となりがちです。株式会社=事業で利益を得る=児童クラブは事業ではない、児童クラブは福祉だから儲けてはならない=という図式がどうもあるようです。公共の事業で利益を得てはならないのでしたら、道路もダムもトンネルも造る事業者はいなくなりますよ。ごみ収集をしてくれる事業者はいなくなりますよ。
この、児童クラブの事業性についても意識して分類をしていかないと、児童クラブをめぐる社会的な問題への考察がぶれてしまうとわたくしは考えます。
・児童クラブを収益事業として位置付けている事業者が運営する児童クラブ。広域展開事業者が運営する児童クラブはもれなく該当します。なお「設置」については、経費が増大するためすでに自前で施設を確保している事業者でなければ、自治体がすでに用意している施設を運営する公設民営の形態が主流となります。
・児童クラブを収益事業として位置付けていない事業者が運営する児童クラブ。地域に根差した事業者が運営する場合がほとんど。運営するクラブ数もさほど多くはなく、例外的に自治体の規模が大きいために運営するクラブ数が増える例があるぐらい。さいたま市内や上尾市内の非営利法人が該当します。
<以上をまとめると様々な児童クラブ、児童クラブ運営事業者が存在する>
(1)放課後児童健全育成事業を行う公設公営の児童クラブ
(2)放課後児童健全育成事業を行う公設民営の児童クラブ
(2a)放課後児童健全育成事業を行う公設民営の児童クラブで、広域展開事業者による収益事業として位置付けられて運営されている児童クラブー株式会社、NPO法人、社会福祉法人、労働者協同組合などー
(2b)放課後児童健全育成事業を行う公設民営の児童クラブで、地域に根差した事業者による収益を目的としないで運営されている児童クラブー非営利法人、任意団体、個人などー
(2c)放課後児童健全育成事業を行う公設民営の児童クラブで、収益を事業に投資することを目的とした広域展開事業者が運営する児童クラブー運営支援が推奨する形態ー
(2d)放課後児童健全育成事業を行う公設民営の児童クラブで、放課後児童健全育成事業を超えたサービスを提供する児童クラブー運営支援はこの形態も推奨しますー
(3)放課後児童健全育成事業を行う届出済の民設民営の児童クラブ
(3a)放課後児童健全育成事業を行う届出済の民設民営の児童クラブで、広域展開事業者による収益事業として位置付けられて運営されている児童クラブ(※数は少ないですがあります。おそらく、以後の公設クラブの運営権を競うための実績づくりのため費用を先行投下して民設のクラブを運営し、地域における児童クラブ運営実績を作り上げる目的と考えられます)
(3b)放課後児童健全育成事業を行う届出済の民設民営の児童クラブで、地域に根差した事業者が運営する児童クラブ(保護者や事業者が資金を出して設置した施設を利用する場合が典型例。また公設民営クラブを運営していて利用者増に伴って運営事業者が自力で施設を借りて運営する場合も、この例に該当)
(3c)放課後児童健全育成事業を行う民設民営の児童クラブで、収益を事業に投資することを目的とした広域展開事業者が運営する児童クラブ
(3d)放課後児童健全育成事業を行う届出済の民設民営の児童クラブで、放課後児童健全育成事業を超えたサービスを提供する児童クラブ
(4)放課後児童健全育成事業を行うが届出をしない民設民営の児童クラブ
(5)放課後児童健全育成事業ではない事業を行う民間学童保育施設
(5a)こどもへの学力増進や各種サービスなど比較的高額の利用料を求める事業を行う民間学童保育施設(※典型的な「民間学童保育」)
(5b)こどもへの学力増進や各種サービスなど提供することがなく料金が低額な民間学童保育施設(※どちらかといえば、こどもの居場所事業に近い。空き家を開放してこどもの居場所とすることなど)
(5c)地域によっては放課後児童健全育成事業ではないとされるが、ある地域では放課後児童健全育成事業とみなされている事業を行っている民設民営の児童クラブ(※さほど多くはない)
児童クラブを取り上げる記事の際は、とりわけ「その児童クラブは収益事業として事業者が運営するかどうか」を注意して取材、執筆すると、児童クラブを取り巻く事象がすっきり晴れてくることがあります。ぜひ留意してみてください。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
☆New!
こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネルが開設されました。このほど、第1回の動画が公開されました。放課後児童クラブの関係者さん、とりわけ運営や就業で関わっている方には必見です。児童クラブに運営者としても関わってこられた鈴木愛子先生ももちろん参加されています。チャンネル名は「こどもを守る弁護士チャンネル」です。2026年5月16日に「こども性暴力防止法を考える」が配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s
☆
放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf
(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf
☆
「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」にて2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事が公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。わたくし萩原が編集部の依頼に応じて寄稿しました。ぜひご高覧ください。
☆
「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)



