放課後児童クラブ(学童保育)の実施状況を見る。待機児童、やっぱり増えています。しかし、夏を過ぎると急減。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 国(こども家庭庁)は12月25日、令和5年5月時点の放課後児童クラブ運営状況(以下、「運営状況」と表記。)と、「放課後児童対策パッケージ」(以下、「パッケージ」と表記。)を公表しました。26日はパッケージに記載されている夏休み対策についてブログで取り上げました。本日は運営状況について、待機児童数を中心にブログで取り上げます。なお、パッケージには、「朝のこどもの居場所のづくり」「クラブと放課後子供教室の連携型の推進」など気になる施策が記載されていますので、今後順次、ブログに取り上げていきます。

 さて、運営状況は毎年、5月1日時点の調査結果を12月に公表しています。今まで厚生労働省扱いでしたが今年度から、こども家庭庁扱いとなりました。調査項目は変わっていないようですね。運営主体の変化など注目ポイントはたくさんありますが、今回は待機児童についてまず取り上げます。

 令和5年のクラブ登録児童数は、145万7384人で、前年より6万5226人増えました。もちろん過去最高です。(令和4年は139万2158人)。クラブの支援の単位数も過去最高で、3万7034単位、これは825単位増えました。(令和4年は3万6209単位)

 待機児童数は全体で1万6276人。これは前年より1096人増えました。なお、令和4年の待機児童数は1万5180人でした。都道府県別では、東京都(3,524 人)、埼玉県(1,881 人)、千葉県(1,227 人)で全体の約4割を占めています。
学年別内訳は以下の通り。
小学1年生: 2,411 人【前年比 294 人増】
小学2年生: 2,112 人【前年比 181 人増】
小学3年生: 3,508 人【前年比 16 人増】
小学4年生: 5,044 人【前年比 488 人増】
小学5年生: 2,332 人【前年比 85 人増】
小学6年生: 869 人【前年比 32 人増】
 待機児童数を学年別で見ると、小学校低学年(小学1年生から小学3年生)は491 人、小学校高学年(小学4年生から小学6年生)は 605人増加しました。また、今回から新たに10月1日時点の調査をしています。速報値になりますが、それによると、待機児童数は8,487人で、同年5月1日と比べて7,789人も減っています。これは「夏休みの学童利用ニーズ」が極めて高いことを意味しています。

 では、待機児童数が多い市区町村です。待機児童が50人以上いる市区町村が公表されていますが、そのうち上位20市区町村だけ転載します。多い順です。なお、50人以上の待機児童がいる市区町村は99あります。
千葉県船橋市:338人ー放課後児童クラブ(放課後ルーム)と放課後子供教室の併用。放課後ルームは月額1万円
埼玉県所沢市:337人ー「生活クラブ」が市内にある児童館の中に11ヶ所、「児童クラブ」が市内に42ヶ所
 さいたま市:329人ー公設クラブと民設クラブが並存。2024年度からいわゆる全児童対策がスタート
埼玉県越谷市:328人
東京都葛飾区:328人
東京都練馬区:292人
東京都足立区:263人
東京都中央区:257人
東京都杉並区:257人
   山口市:220人
東京都立川市:212人
兵庫県尼崎市:205人
   岡山市:193人
神奈川県茅ヶ崎市:192人
大阪府吹田市:192人(小学6年生まで受け入れていない)
  和歌山市:191人
静岡県浜松市:190人
千葉県市川市:183人
埼玉県熊谷市:181人
東京都台東区:179人

 大都市や、大都市近郊の市区町村が多いですが、埼玉県蓮田市(63人)、沖縄県読谷村(64人)といった地域も待機児童が50人を超えています。

 待機児童が発生するのは、当たり前ですが、入所希望児童数>入所可能児童数、です。親が子どもを入所させたいという数が、クラブに入れる人数を上回ることですが、さらに考えます。
 入所させたい人が多くなる要因は「子育て世帯の人口が多い、又は増えている」こと、つまり若い世代に人気の街だったり、戸建て住宅やマンションが手ごろな値段で買える地域ですね。
 問題は、入所可能児童数、つまり入れる人数の方です。こちらが、なかなか増えないために、待機児童が生じます。なぜ増えないか。原因は次のようだと考えます。
・「市区町村が、施設の整備をしても、追い付かない」、この場合は子育て世帯の増加が著しい場合です。
・「市区町村が、いずれ少子化で人口が減るからと、施設整備に力を入れない」、このケースはかなり多そうです。
・「市区町村が、基準条例の、おおむね40人を、良くも悪くも遵守する」、クラブの生活環境維持には好ましいことですが、待期が出ます。
・「市区町村はクラブに入所させたいが、運営主体の主に民間事業者が、育成支援に質にこだわって入所数を増やさない」、この場合もかなりあるでしょう。

 これらの原因を解消するにはやはり施設数を増やす、施設数を増やすには市区町村の財政負担を減らすことが必要で、整備に係る補助金の補助率かさ上げの継続や、学校施設をより使いやすくするための方策など、国も頑張っています。ですが、市区町村は本当に予算がないところが多いので、もっと補助金を出すべきでしょう。
 また、学校施設の活用にはあまり期待しない方が良いのです。学校側は、やはり「別のシマ」である学童に施設を分け与えることを良しとしません。学校とは別の施設を、比較的安いプレハブ工法などでさくっと作った方が、若干の費用増にはなりますが、待機解消に効果的です。

 そして問題は運営主体側の意識です。あえていいます。私ももちろん大規模学童がどれほどひどいことか、分かります。分かりますが、小1の壁で保護者が仕事をあきらめざるを得ない状況によってその子どもの家庭の状況は悪化することを避ける方を優先します。よって、「市区町村が、急いで居場所の整備を進める」ことを条件に、半年や1年弱は、おおむね40人を超えて、児童1人あたり1.65平方メートルを割り込んだとしても、待機児童を出さないことを絶対的な最優先とするべきです。
 それによって、クラブにおける子どもの生活環境は確実に悪化しますが、少しでもカバーするために、市区町村は補助金をさらに上積み、あるいは徹底活用して、子どもに関われる職員数を増やすこと、小学校の余裕教室や特別教室の一時利用など関係機関との連携を進めて、クラブ開所時間帯内における子どもの居場所の分散を図ることなど、出来る限り多くの児童受け入れを行うとする考え方に、民間の、特に育成支援にこだわる事業者は、意識を変えねばなりません。
 社会のニーズより、自分たちの主義主張にこだわって、社会のニーズを満たそうとしない事業者は、いずれ、社会から不要と思われます。社会のニーズを代弁できるのは有権者が選挙で選ぶ議員がいる議会であり、市民から多くの意見を受け止める行政執行部です。放課後児童クラブは、あくまで「社会からのニーズがあってこそ、存在できるシステム」であることを、忘れてはなりません。社会のニーズがあるからこそ、税金が投入されているのですよ。放課後児童クラブというシステムが先にあって、それを社会が利用させてもらっている、のではありません。勘違いは、命とりです。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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