国が示した「放課後児童対策パッケージ」に注目。学童保育のあり方が変えられていく気配が濃厚です

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 国(こども家庭庁)は12月25日、令和5年5月時点の放課後児童クラブ運営状況と併せて、「放課後児童対策パッケージ」(以下、「パッケージ」と表記。)を公表しました。前者は、毎年恒例の調査結果です。その内容について今後取り上げていきますが、本日はまず、「放課後児童対策パッケージ」を取り上げます。

 パッケージは、こども家庭庁と文部科学省の2省庁から発出されています。書面には、「放課後児童対策の一層の強化を図るため、令和5~6年度に予算・運用等の両面から集中的に取り組むべき対策として、「放課後児童対策パッケージ」を別紙のとおりとりまとめました。」とあります。平成31年度から5年間続けられてきた「新・放課後子ども総合プラン」で学童保育の待機児童解消を目指してきた取り組みが挫折したことで、とりあえず、パッケージに記載した方策をもって、地方自治体は学童の待機児童を無くしてね、という趣旨で発出されたようです。

 そのパッケージに関する報道で私が気になったのは、TBSの次の報道でした。12月25日12時4分にインターネット上で公開された記事を一部引用します。
「政府は共働き家庭の子どもなどを対象とした放課後児童対策について、夏休みに限定した“サマー学童”を導入する方針や施設側への補助金支給の条件を見直すことなどを打ち出しました。」
「夏を過ぎるとニーズが減るなど実態と乖離していることから、政府は対策パッケージの中でサマー学童の導入とあわせて補助金支給の条件の見直しに向けた検討を始めることを盛り込みました。」

 また、毎日新聞が同日12時にインターネットにて公開した記事も、一部引用します。
「国は今年、初めて10月時点の実態を調査し、待機児童は約8000人で、5月に比べ半減していたことが分かった。こども家庭庁の担当者は「(家庭にとって)夏休みまでの年度前半をどう過ごすかが重要になっている」と指摘する。夏季限定の学童保育について調査し、25年度に向けて支援策を検討する。」

 夏休み期間中の学童保育の必要性は言わずもがな、よく知られていることです。夏休みに学童を利用したいがために、4月入所をしている世帯は、私の体感では5割近くはいると思います。夏休みに開所する学童、それがTBSがいうところの「サマー学童」なのでしょうが、それ自体はいわゆる「夏休みの壁」対策にも通じることです。しかも、サマー学童の整備は結果的に、「小1の壁」対策にもなります。夏休みが必要だから4月に学童入所をしている世帯が夏休みだけの受け入れができた場合、通年で学童保育が必要な世帯が4月入所であぶれる可能性が減るからです。小1の壁を低くしたり、打ち壊しやすくすることができます。

 国が公表したパッケージの資料には、この夏休み部分については実はそっけない扱いで、「1 放課後児童対策の具体的な内容について」のうち、「(1)放課後児童クラブの受け皿整備等の推進」のうち「その他」の部分にて「更なる待機児童対策(夏季休業の支援等)に係る調査・検討」と、書かれているだけです。さりげなく、そっけなく書かれているのですが、それは私の勝手な解釈では、「大事なことほどそっけなく」、「木を隠すなら森の中」であって、国が示した放課後児童クラブ運営指針の内容にそぐわないですし、伝統的な学童保育の世界(有力業界団体が支持する様式)からの反発も当然、予想されるからでしょう。

 放課後児童健全育成事業の本質である、「子どもの遊び及び生活の場」を、「子どもの短期預かり場」と転換することを求めている内容だからです。

 もちろん、1か月程度の受け入れだからといって、遊び及び生活の場にならない、ということは私はないと思っています。もとより、子育て世帯のニーズがある、つまり社会のニーズがある以上、夏休み等短期受入れにも学童保育の世界は対応するべきだというのが、私の考えです。つまり、世の中すべての留守家庭児童が放課後児童クラブを利用する必要は当然なく、子ども自身の性格や発達の程度、保護者の就労等の条件、家庭環境などによって、単なる預かり場であってもその子なりに有益な時間となる子どもだっているでしょう。最終的に、子どもをどのように過ごさせたいのかは、子ども自身と、その保護者が決めるべきことです。

 むろん、子どもや保護者が「うちは預かりでいいわ」という意向であっても、学童側からすると、いろいろと子育て環境に不安なところがあるのであれば、短期預かりのサマー学童であったとしても、二学期以降の学童利用を促す努力はしてもいいと思いますし、するべきだと思います。要は、短期の預かりサマー学童であっても、その期間内でしっかりとできる限りの育成支援を提供することで、「もしかしたら、学童の利用を続けることは、子どもの育ちにとっていいのかも」と保護者や子ども自身に納得させることを、目指すべきです。

 いずれにせよ、短期受入れ学童のニーズはかなり高いのは間違いないです。これは、国が、学童保育の今までのあり方を大きく変えていくことの最初の一歩にしているのだろうと私は思います。子ども家庭庁の中で、こどもの居場所の部門に、放課後児童クラブが位置付けられていることとも整合性が取れています。国は、これからますます、放課後児童クラブには、安全安心な子どもの居場所としての機能性を追究していくのだろうと、私は思っています。育成支援の場というよりも、預かりの場としての役割をさらに広げていく、ということですね。当然、そこから波及するのは、資格制度の更なる緩和です。もっとも、とにかく待機児童をゼロにしたいだけかも、しれませんが。

 今回のパッケージを伝える毎日新聞の記事が伝えているように、秋の10月時点での待機児童が半減しているということは、やっぱり学童利用希望者のうち5割のニーズは短期受入れなのです。ニーズがある以上、それに対応するのは公費を受けて運営している事業であれば当然です。「いやいや、学童保育はそういうものではない」と言い張るのであれば、公費を受けずに独自財源で運営するべきです。要は、子どもの育ちを支え、援助する育成支援の専門性と、社会のニーズによって実施を迫られる事業内容を、どう融合させていくか現実的な手法を考えるべきである、ということです。その上で、育成支援に価値があると信じているなら、その短期的なニーズの中でも、育成支援の価値をユーザーに、社会に、気づかせればいいだけの話です。子どもの育ちの専門職である放課後児童支援員なら、それぐらいはできるでしょう。

 伝統的な学童保育業界は、サマー学童への対応を大至急検討し、短期受入れにどうやって育成支援の良さを及ぼせるのか、考える必要があります。なお、短期開所学童は場合によっては営利企業の大規模展開に対する歯止めになる可能性があると私は予想します。つまり、年度当初は1単位、夏休みや冬、春休みは2単位という事業規模の柔軟な変化が可能になると、柔軟な変化ができず年度当初から2単位で運営するよりも、事業者の対応は難しくなります。最初から2単位でしたら補助金ビジネスとしてはありがたいのですが、基本1単位、年度の特定の時期だけ単位増であるだけなら、補助金ビジネスのうまみは半減します。そこに、非営利による運営の可能性が広がることを私は想像しています。

 このパッケージには処遇面への言及など、他にも注目点があります。次回以降に改めて取り上げていきましょう。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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