こども性暴力防止法で求められる、「容易に相談ができる」放課後児童クラブ(学童保育所)になるには?
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」は、第4回が2026年6月30日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらすこどもの被害申告に適切に対応できるか」をテーマに関して丁寧に説明しています。 まずは動画をぜひご覧ください。わたくしの著書「知られざる<学童保育>の世界」も紹介されていますよ。
https://youtube.com/live/9q8xzkgs7wo?si=dr06eChxK1Jgov5T
そして今回のブログでも、放課後児童クラブにおける、こどもからの被害申告について考えます。クラブ内で、こどもが性暴力の被害に遭わない状態にあることを目指すことが最上位となるのですが、万が一、不幸にもこどもがクラブ内で性暴力や、こども性暴力防止法による「不適切な行為」「重大な不適切な行為」に見舞われた場合、被害に遭ったこどもが施設内にいる他の大人(職員)に相談、打ち明けができるような環境を目指すにはどのような施策が児童クラブ運営において必要か、わたくし萩原の考えを紹介します。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<ガイドラインより>
「こども性暴力防止法」ガイドラインから、今回のブログのテーマに関する部分を抜粋します。
ガイドラインの135ページになります。とても長いですが、それだけ重要で難しいということです。
(以下、抜粋)
(2)児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするための措置
〇児童対象性暴力等は、児童等から被害を訴えることが難しいものであるが、複数の相談ルート
を設定し、児童等が児童対象性暴力等の被害や、それにつながり得る「不適切な行為」を訴えやす
い仕組みを整えることが重要である(詳細は横断指針 p.35~38 参照)。
〇このため、対象事業者においては、児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うこと
ができるようにするため、法第5条第2項等に基づき、次の①及び②に掲げる措置を実施しなけ
ればならない(規則第9条)。
① 事業者内における相談員の選任又は相談窓口の設置・周知
② 児童対象性暴力等に係る外部相談窓口の周知
〇なお、児童対象性暴力等や「不適切な行為」の疑いがある場合、児童等やその保護者は、①及び
②に掲げる措置により設置・周知される事業者内外の相談窓口のほか、警察への通報・相談、所管
行政庁等の行政機関への通告などを行うことが考えられる。
ア 相談を容易にする工夫
○ 対象事業者においては、児童等の年齢や特性を踏まえ、児童等が相談しやすくなるよう、次の(ア)から(エ)までに掲げるような工夫を行うことが重要である。
(ア)複数の相談先から選択できるようにすること。
【例】
・ 性別に配慮して複数の相談員を置く
・ 対象事業者内の異なる部門(管理部門など)に窓口を設けたり、必要に応じて外部に委託して相談窓口を設けたりするなど、相談窓口の第三者性を確保する
・ 面識がない相談相手の方がかえって話しやすい児童等のために、外部の相談窓口を複数周知する
・ 相談を受ける体制(複数名、カウンセラー等の同席、一対一等)について、可能な限り児童等の意向を踏まえて判断する 等
(イ)「手紙やメール・SNS 等で相談できる」、「匿名で相談できる」、「性暴力以外のことも相談できる」、「相談は悪いことではなく、積極的に行ってよい」等を周知などの際に明示すること。
(ウ)相談後の対応の流れを児童等に示すこと。その際、児童等ができるだけ相談を躊躇することのないよう、情報の共有範囲や「相談者や相談内容等の情報は厳格に取り扱われること」「加害を行った者への確認等は組織としての慎重な検討を経て適切になされること」「相談を行った児童等が不利益な取扱いを受けないこと」等を伝えること((1)③参照)。
(エ)相談を受ける者は、「話をしっかりと受け止め、話を聞くことを主眼とする」「共感して寄り添う」「責めたり、否定したり、言いたくないことを無理に聞いたりしない」等に留意すること(詳細は横断指針 p.48~53 参照)。
○ 保護者に対しても、相談する際の心理的ハードルを下げるため、同様の工夫を行うことが望ましい。
イ 外部相談窓口の一覧の作成・周知
○ 対象業務従事者による児童対象性暴力等が行われた疑いがある場合には、当該対象事業者が設置した相談窓口に対して相談することを児童等やその保護者が躊躇する場合も考えられ、児童等やその保護者が、公的な外部の相談窓口に直接相談できることが重要である。
〇 次に掲げる表のとおり、公的機関等が様々な相談窓口を設置しており、各対象事業者において、この表も必要に応じて参考にしながら、外部相談窓口の一覧を作成し、児童等や保護者に周知することが必要である。
(引用ここまで)
<相談を容易にする工夫>
まず理解を徹底しなければならないのは、ガイドラインには「児童対象性暴力等は、児童等から被害を訴えることが難しいものである」と記載されているように、「こどもが、自分がひどい目、つらい目に遭っていることを打ち明けることは、なかなかできないものだ」という理解を、児童クラブの運営責任者や従事者が確実に理解することが必要です。そこがまず出発点です。小学生でなくても中学生高校生はもちろん大人であっても性暴力の被害を訴える、誰かに救いを求めるということがどれだけ困難なことかについても、理解を確実にしておく必要があります。「ウチの児童クラブのこどもは、職員を信頼しているから多くの場合はきっと相談してくれる、教えてくれる」と勝手に信じ込まないことです。むしろ「こどもたちはきっと職員たちに相談しづらいだろう。心に抱えて悩むだろう」という前提で、「相談を容易にする工夫」を講じることが必要だ、ということを肝に銘じておきましょう。
わたくし萩原の印象ですが、ガイドラインで示されている「相談を容易にする工夫」は、学校や学習塾、スポーツクラブといった「立場が上の者、指導的な地位にある者がいて、こどもは常にその立場の者から指示や働きかけを受けている関係性の場」を想定しているもの、と感じられます。児童クラブにももちろん、職員とこどもとの関係がそのような状況にある場はあるでしょう。入所児童があまりにも多い大規模状態ですと、こどもと関われる職員数が足りないのでどうしても一方通行の関係になりがちなのはやむを得ないところもあります。そのような明確に「大人(職員)は上の立場、こどもは下の立場」の位置づけであればガイドラインに挙げられているものはなるほど効果も期待できましょう。わたくしが不安を覚えるのは「職員とこどもは、対等の立場で関わるべし。職員同士も、こどもへの育成支援を行う立場として同等」という意識を掲げて運営している、育成支援重視の児童クラブです。うわべだけの平衡は、こと、こども性暴力防止法による、こどもからの被害申告に応じた体制を作るには大きな障害となりえると、わたくしは考えるのです。
そこを踏まえてわたくしの考えを紹介していきます。ガイドラインに挙げられていることと、それに関する萩原の見解を紹介します。→に続く文章は萩原の見解です。
・複数の相談先から選択できるようにすること
→いくつか紹介されていますが「面識がない相談相手の方がかえって話しやすい児童等のために、外部の相談窓口を複数周知する」というのはぜひ取り入れておきたい。
・「手紙やメール・SNS 等で相談できる」、「匿名で相談できる」、「性暴力以外のことも相談できる」、「相談は悪いことではなく、積極的に行ってよい」等を周知などの際に明示すること
→当然に絶対的に徹底したいことです。のちに触れますが「相談していいんだよ」ということを何度でも何度でもこどもたちに伝えることです。
・相談後の対応の流れを児童等に示すこと。その際、児童等ができるだけ相談を躊躇することのないよう、情報の共有範囲や「相談者や相談内容等の情報は厳格に取り扱われること」「加害を行った者への確認等は組織としての慎重な検討を経て適切になされること」「相談を行った児童等が不利益な取扱いを受けないこと」等を伝えること
→こどもに安心してもらうことです。相談した結果、さらにひどい仕打ちに遭うことを徹底的に避けることが必要です。
・相談を受ける者は、「話をしっかりと受け止め、話を聞くことを主眼とする」「共感して寄り添う」「責めたり、否定したり、言いたくないことを無理に聞いたりしない」等に留意すること
→この部分、児童クラブの世界はどうでしょう? わたくしはとても不安があります。のちにも触れますが、児童クラブにおいて一般的に今なお使われている「(学童)指導員」という名称があります。この名称から受けるイメージで「こどもを指導する立場の者」ということを、意識しているのか無意識なのか、「児童クラブでこどもを指導することが仕事」と理解している児童クラブ職員が実に多いとわたくしは目撃してきました。このことは「指導員たる職員はこどもを指導する」権力勾配の上位にあるという位置づけを自分自身にしてしまいがちであって、こどもからの相談に「それはどうのこうの」と返して、結果としてこどもに対して指示したり導こうとしたりする職員がいるきらいがあるのです。ガイドラインには明確に「共感して寄り添う」とあるのですが、共感より判定、判断、評価付けをしてしまいがちなのが、児童クラブの職員にややもするとある傾向です。そのあたり、伝統的な児童クラブの職員にありがちな世界観については拙著「がくどう、 序」をお読みいただけると、リアルに体感できるかと存じます。ぜひ、アマゾンでお買い求めください。
<児童クラブで、本当に必要な「相談を容易にする工夫」運営支援流>
1 こどもは「職員同士の力関係、関係性」を冷静に見ていることを前提に、こどもが目の当たりにする職員同士のコミュニケーションが円滑になっているようにすること。
→「子は親の鏡」といいますが、生活の場である児童クラブにおいては、こどもたちは職員の様子を見ています。職員同士が業務上でもそれ以外のことでもやりとりをしている場面、局面を、ちゃんと見ています。こどもたちの前では親密そうに見せていながら実はお互いに嫌っているA職員とB職員との、うわべだけの関係すら見抜けるこどもは確実にいると考えましょう。すごく大雑把ですが男子より女子に見透かされることが多いのではとわたくしは実感してきました。
また明らかに「人間としての力関係」の上下関係は、それが与えられた職位に基づくものは問題ないとして、職務上必要な上下関係を超えた「上下の力関係の行使」についても、こどもは結構みています。施設長のC職員が新人D職員にあれこれ教えたり指示したりするのは、こどもだって「そりゃ当然だ。あいつ若造だもんな」と思いますが、その教えや指示が明らかに通常の範囲を超えていると、こどもは不信を覚えます。「あんなにひどく当たることないのに」と。
いびつでゆがんだ関係性が職員同士にあるクラブでは、それがこどもに見抜かれていると考えましょう。そうしたクラブで、こどもは職員に打ち明けようとするでしょうか? わたくしの考えるところ、期待薄です。分別が本来備わっているはずの大人の職員同士で、いびつでゆがんだ関係にあるならば、「だれが本当に真摯に向き合ってくれるだろうか」とこどもは不安になりますよ。
なかなか難しいのは承知ですが、それでも、職員同士のやりとり、コミュニケーションは、互いの立場を尊重し、まして人格を否定することが無いような関係、言葉のやり取り、顔の表情を示すことで、クラブのこどもたちに「先生たちはお互いに信頼しあっているんだな」と理解できるようにしましょう。
・一方的な指示を投げつけるばかりではだめ。
・頼んだことをすぐに取り掛かってくれないことだってあります。そんなとき、「あーあ。何やってんだか。優先順位すらわからないのか、あいつは」などと蔑むような表情や捨て台詞は絶対にしない。
・職位が上位の者は当然、下位の者も、「相手は今、何を考えて、何を期待して、あのような言動をしているのだろう。なぜ自分にこれを頼んだのだろう」と、<相手の立場>になって考える思考回路を持つこと。お互いがその思考回路を持っていれば、頼み事や指示を受けた事について理解が広がりますし、断らざるを得ない状況にあってもその理由をつかむことが容易になります。
2 とりわけ「いびつな職員同士の関係」を作らないこと。
→これはわたくし萩原が事実として直面してしまったことでもあります。職位が最上位の職員が好き勝手にふるまうということは言語道断、言うに及ばずですが、クラブ内で「事実上の権力者」となってふるまう職員を生み出してはなりません。わたくしが直面したのは、最初は働き者として重宝され頼りにされていた職員が、周りの職員との関係性において次第に優越的な立場に変位していき、やがて「〇〇先生のやりたいように、望むようにやらなきゃ」と、周囲の職員が行動態様を変えてしまったことでした。クラブ運営を差配する権力者が生まれ、他の職員も、ひいてはこどもたちも、その権力者に就いた職員の機嫌を損ねることがないようにすることが、活動や行動の基準となってしまったのです。そのような権力者的な地位に就いた職員が結果的に性暴力を行っていたのですが、こうなると、被害に遭ったこどもは、そのクラブでは決して被害を打ち明けることができませんでした。
ボスとして好き勝手にふるまう職員を、児童クラブに存在させてはなりません。リーダーならいいんです。異なる意見も、指示と異なる見解を示してきた他の職員の言い分をしっかりと受け止めて、再判断ができるリーダーならいいのです。ガイドラインには、こどもの意見に「話をしっかりと受け止め、話を聞くことを主眼とする」「共感して寄り添う」「責めたり、否定したり、言いたくないことを無理に聞いたりしない」と挙げられていましたね。これが職員同士でもできていなければ、そのクラブのこどもは、職員に相談したり、クラブで用意した相談システムを利用しようとはなかなか思わないでしょう。「こどもにやってもらいたければ、まずは職員がやろう。大人がやろう」です。
「いびつな関係」ではとりわけ、そのクラブでの勤務歴が長い職員の言うこと、考えることが優先されてしまう関係が出来上がってしまう、ということがありがちです。正規常勤職員は退職もあり異動がある組織では定期的な人事異動がありで、長くても10年前後のそのクラブでの勤務経験ですが、非常勤職員には十数年も、20年以上も、そのクラブでずっと勤めている人がいることがあります。よく言えば「クラブの顔」なのですが、悪い面に作用すると「クラブの主(ヌシ)」となって、正規常勤職員の指示に対しても「あーうちのクラブは昔からこうするのよね。まあ先生がどうしてもって言うならするけど、本当にいいの?」などと、小ばかにするような立ち振る舞いをするヌシ的な非常勤職員です。そういう方がいると、こどもたちは、ヌシの顔色をうかがってあれこれ言ってくる他の職員のことをなかなか信じられません。ましてそんなヌシに相談しようとはしません。一般的な傾向ですが、そういう超ベテランは育成支援の理論や考え方に自分の行動をあてはめることはせず、自分の判断ですべて行おうとします。それこそ「あんたが我慢すればいいんだよ」「気にしすぎなんじゃないの」とすら、相談をしてきたこどもに対して言ってしまいがちです。
いびつな職員同士の関係性は、こどもにまったく安心感をもたらさない児童クラブになります。
3 こどもの言うことを真正面から受け止める意識を持つこと。こどもの疑問やアイデアに対して常に正論をぶつけてつぶそうとしないこと。
→まず、管理型の児童クラブでは職員数が足りないことからどうしても「それは、こういうことなの。だからこうして」とか「こういう決まりだからこうして」などと、こどもの思索の広がりよりも、その場の秩序の維持、管理の徹底を優先しがちです。もちろん運営支援はそのような状況は改善が必要と考えますが、どうしてもそのような状況のクラブはあって、その改善に必要な行政の努力が得られないことも現実的です。そんな職員数不足での現場で、育成支援を大事にしたいと考える職員は、申し訳ないと思いつつこどもの気持ちに丁寧に向き合えません。それが辛いのですね。そういう状況下では、丁寧に職員の「都合」を説明して理解してもらう気持ちが必要です。
まして、大規模でもない、育成支援を大事に「こどもを真ん中に、保護者と職員が手を取り合って」と理念を掲げている児童クラブ、保護者運営系に多いですが、そのような児童クラブにおいては、こどもの思索の広がりを「それは違うから」とか「正解はこういうことだから」と職員がこどもをとりなすことばかりで、こどもの試行錯誤の経験値を増やそうとしないような対応をしている児童クラブはあるはずがない、と言いたいのですが決してそんなことはありません。(これもぜひ「がくどう、 序」をお読みください)
常に、こどもからの声や疑問や意見を、「ああそれはね、こういうことだから」「それは違うから」といって即座に退けたり、職員の意見や見解を一方的に押し付けてそれを受け入れさせようとするような職員たちが運営する児童クラブでは、こどもは大事なこと、大切に思っていることを職員に打ち明けようとはしなくなります。そりゃそうです。自分の大切な考えを、職員に話したら即座に評価判断されてしまったら、全く面白くありません。(そのくせ、宿題をするときにはすぐに答えを教えてほしいとこどもが願っても職員は「こういうことをまず考えてみよう」などという。その正反対のふるまいにも、こどもたちは頭にくるのですね。もちろん、すぐに答えを教えるようでは時と場合によりますが、好ましくはないのは確かでしょう)
できうる限り、児童クラブの職員がこどもたちの気持ち、思いに寄り添っているかとは、こういうところに現れるのです。話しかけられたそのときは時間がなくて、他のことで手いっぱいであっても、落ち着いたところで職員から「なになに、さっきはゴメンね。いま時間ができたからたっぷり聞かせて」とでも話しかけることがあれば、「もういいよ」とこどもから退けられても、決して悪い印象だけがこどもに残ることはありませんから。また次のチャンスをこどもは活かそうとしますから。共感や寄り添いは、常日頃の、こどもとのかかわりや会話から醸成されていくものだという、考えれば当たり前のことを、忙しすぎる児童クラブではつい忘れがちです。それもよく分かりますが、それでも、こどもたちの声に、ことばに、寄り添っていくことを児童クラブ職員は忘れてはいけません。(それ違っているけれど、この子が自分で気づくことが大切だよね)という思いを忘れない職員ばかりの児童クラブでは、もし万が一のことがあっても職員に相談してくれるこどもがいるでしょう。もっとも、そういう思いばかりの児童クラブであれば性暴力事案もなかなか起きようがないでしょうが、こればかりはね、人間って心の奥底、第三者には見えないところで、卑劣な欲望を秘めていることだってありますからね。
4 こどもとの約束を裏切らないこと。
→遊びや日常の会話の中で「先生にだけは教えてあげる」という、たわいのないことを話すこどもはいますね。もちろん、それが実はこどもにとって不利益をもたらされている状況であるといった、客観的にみてどうしたって非違行為、犯罪行為になっているかそのおそれが濃厚である場合は、児童クラブ職員は直ちに必要な行動に移らねばなりません。そういう例外はあるとして、「先生だけには」という前置きで伝えられたことを、他の職員がその子に向かって「聞いたわよ~」などと口にしてしまうと、こどもはもう「先生の嘘つき」として信頼をしなくなります。その1回だけで完全に信頼をなくすことはなくても繰り返されれば完全にその子は、その子にとって大切なことを打ち明けようとしなくなりでしょう。別段、職員同士で情報を共有することは否定しません。「約束を破った」という状況をこどもに知られることが無いよう、配慮していけばいいだけの話です。
最悪なのは、性暴力やハラスメントに関する相談を、他の職員ましてこどもが「あの先生から、ひどいことをされている」と話してもらったその職員に伝えてしまうことです。確か、鹿児島県内のシルバー人材センター運営のクラブであった盗撮事案で、そのような事態の展開があったと報じられた記憶があります。こどもが職員に相談したのに、まともにとりあってもらえず、こともあろうに盗撮をしたとおぼしき職員に、こどもからの相談内容を伝えていたというものです。これはもう言語道断。わたくしはなぜその後もその事業者に児童クラブ運営を行政がまかせていたのか、疑問しかありません。そういう理解できない職員がいるクラブはそもそも職員の倫理、法令順守の研修をろくに実施していないのではないでしょうか。そんな運営事業者は願い下げです。
5 ささいな相談にも全力で対応する。
→こどもから意見を受ける仕組みとして「意見箱」「目安箱」を取り入れている児童クラブ運営事業者もあるでしょう。そうした場合、こどもから相談内容としては「こういうおやつを出してほしい」とか「ボール遊びの時間をもっと増やしてほしい」とか「〇〇君が意地悪です。乱暴です。やめてほしいです」というものが多いのではないでしょうか。時には「〇〇先生に怒鳴られた。こわかった」といった重大な相談や知らせも交じりますが。
大事なことは、職員や運営事業者が「こどものたわごとか」と受け取ってしてその対応をおざなりにする、無視する、放置することを絶対にしないことです。たとえ、「おやつに、ねるねるねるねを出してほしい」という要望であっても「そんなん無理だから、いつもダメだって言ってるから」で済ませるのではなくて、きちんとこどもたちに事前に説明した手段手法で、回答することです。どんなことでもです。その繰り返しが「クラブの先生たちは、どんな相談にもちゃんと答えを出してくれる」という信頼感を生むのです。これもまた、こどもとの約束ですよ。相談にはきちんと答える。結局のところ、「クラブに、学童に相談しよう」とこどもが思うのは、信頼があってこそです。いかにして、普段から、こどもとの信頼関係を醸成していくのかが、児童クラブ運営では重要です。
(それを考えると、こどもの保護者が自宅など児童クラブ以外で、クラブや、クラブ職員への悪口や中傷を繰り返すのは、こどもとクラブとの信頼関係構築に重大な影響を及ぼしますから、この点への対処もまた児童クラブに必要です。なんといっても、親が、クラブの〇〇先生って本当にダメね、バカね、ということをこどもが聞こえる状態で口にするのは、百害あって一利なしです。保護者に向けても、クラブへの異議や苦情や意見はこどもに聞かせずに所定の方法で連絡、通知、提出してくださいと徹底して求める必要が当然にありますよ)
以上のような、まずは児童クラブの「土壌」「雰囲気」を、まずは作り上げることから始めなければ、こどもから容易に相談を受けられる施設とはなり難いというのが、わたくし萩原の考えです。となるとやはり、職員の資質、それも実は「社会人」であり「良識ある大人」としての立ち振る舞いができるかどうかが、実はそもそもの大前提である、ということに過ぎないのです。
それら大前提が整ってこそ、はじめて、ガイドラインにあるような「性別に配慮して複数の相談員を置く」「対象事業者内の異なる部門(管理部門など)に窓口を設けたり、必要に応じて外部に
委託して相談窓口を設けたりする」「外部の相談窓口を複数周知」「手紙やメール・SNS 等で相談できる」「匿名で相談できる」「性暴力以外のことも相談できる」「相談は悪いことではなく、積極的に行ってよい」等を周知」ということが、こどもにとって信頼できる相談の手段になりえるのです。
当たり前ですよ。信頼できる大人たちがいない、少ない児童クラブにいるこどもたちが、そんな児童クラブが用意したシステムを利用すると考えますか?_ 信頼できない大人たちばかりのクラブが「信頼性のために外部の窓口を用意したから」といって、「どうせそこから聞き出すんでしょう」「筒抜けなんでしょ」と、こどもは疑問に思ってしまって利用を忌避することだって大いに考えられるでしょう。外部の窓口を利用するかどうか、自分のクラブと比較して判断するようになるのはそれなりの学年に達した児童でしょうが、それは同時に「うちのクラブの先生が信頼できるか否か」を冷徹に判断できるほどの成長をしているということでもありますからね。
わたくしが直面したこどもの性暴力事案は、まさにいびつな職員同士の関係があって(それは事案が発覚するまで、いびつとは認識できなかった! ここがまさに実は重大な問題点なのです!)、結果的に第三者に相談することで事案の発覚および事件化となりました。
こと、他のこども関係の施設よりも、はるかに職員とこどもとの「距離感」が近い、あるいはほぼ近接している関係にある児童クラブにおいては、こども性暴力防止法が求める種々の措置は、額面通りに準備したとしても、それが実質的に機能するかどうかは、わたくしは別問題ととらえたほうがよい、と考えます。もちろん、法が求める種々の措置はカタログ通りに備えるべきです。形式すら存在しないなら認定事業者にそもそもなれませんから。
現実的に、弁護士や行政書士といった外部の専門家に、認定事業者になるために必要なルールづくりや措置の講じ方を指南してもらいつつ、児童クラブはこども性暴力防止法時代を迎えることになります。わたくしの希望と期待としては、認定事業者を目指す児童クラブは、単に法制度に詳しいから、手続きに詳しいから、という専門家に丸投げしないでいただきたい。実際の、その事業者ごとに微妙にことなる運営の風土、風潮、体質、慣習もろもろのことを反映させつつ、「実質的に機能するかどうか」の観点で、「容易に相談できる工夫」の措置を講じてほしいということです。外部の専門家のほとんどは児童クラブの、他のこども関係の事業産業とは違う風土、慣行までくわしくありませんから、運営事業者側から丁寧にしっかりと運営の実態、職員たちの意識の実態を伝えることです。それをまともに聞こうとせずに、「こういう風に整えればよいと国は示していますから」としてスペックを整えようとすることに夢中の外部専門家に、それなりの費用を払って作業を頼むのは、やめた方がよい。それは断言します。
まあ、あれですよ、職員もそれなりに困ったこと、嫌なことを抱えながら働いているものです。そういうことを組織内で相談できない組織は、ましてこどもから相談を受けることなんて期待してはダメ、ということですね。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
New!☆
こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」。第4回は上記に紹介しております。
第5回は7月19日(日曜日)15時から、すでに施行されている「児童生徒性暴力防止法」における調査の解説です。話し手:飛田桂弁護士、聴き手:嶋崎量弁護士、鈴木愛子弁護士、野田隼人弁護士、三輪記子弁護士。
第3回(2026年6月11日)は、鈴木愛子弁護士がメインスピーカーとして「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s
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※こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+
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放課後児童クラブ事業を考えている民間企業の方へ朗報! 児童クラブ参入の手引きとなる「埼玉県 放課後児童クラブ新規参入スタートブック」が公開されました。全40ページ。フルカラー。冊子は2部に分けて埼玉県福祉部こども支援課のページで公開されています。なお本スタートブックは弊会が作成受託しました。
(前編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook01.pdf
(後編)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/166938/r0803_houkago-jidou-club-startbook02.pdf
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わたくし萩原が寄稿した記事が 「Wedge ONLINE(ウェッジオンライン)」で2026年5月29日に公開されました。「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665
2026年4月13日、「「こどもが学童に入れたから仕事も安泰!」なのか?小1、行き渋り、夏休み…いくつも存在する“学童保育の壁”とその対処法」という記事も公開、配信されました。(https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40473)。こちらもぜひ読んでいただけるとうれしいです。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
