<運営支援ブログミニ45>保育施設の重大事故の件数集計が公表されました。放課後児童クラブは?
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。(ぜひグーグルのAIで「萩原和也 放課後児童クラブ」と検索してみてください!)
こども家庭庁は2026年7月29日に、「「令和7年教育・保育施設等における事故報告集計」の公表について」として令和7年度の重大な事故についての集計結果を公表しました。放課後児童クラブは死亡事故1件を含む777件の事故という結果となっています。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<児童クラブは件数は増加>
公表された資料によると、放課後児童健全育成事業等(等、となっているのは「児童育成支援拠点事業」が含まれているため)における重大事故は、事故が776件、死亡事故が1件、合計で777件でした。
施設数は、放課後児童健全育成事業が25,928か所、児童育成支援拠点事業が106か所です。児童育成支援拠点事業は2024年度にスタートした事業で、要綱によると「養育環境等に課題を抱える、家庭や学校に居場所のない児童等に対して、当該児童の居場所となる場を開設し、児童とその家庭が抱える多様な課題に応じて、生活習慣の形成や学習のサポート、進路等の相談支援、食事の提供等を行うとともに、児童及び家庭の状況をアセスメントし、関係機関へのつなぎを行う等の個々の児童の状況に応じた支援を包括的に提供することにより、虐待を防止し、児童の最善の利益の保障と健全な育成を図ることを目的とする。」という施設です。
利用者数は、放課後児童健全育成事業が1,570,645人、児童育成支援拠点事業は2,592人です。
以下、児童クラブと表記しますが、前年度(令和6年度)と比べると、事故件数が15件増え、死亡事故が1件増えました(つまり令和6年度の死亡事故は0件)。なお、事故全体では15件増えたわけですが、そのうち、意識不明と骨折と火傷以外となる「その他」が22件減ったものの、骨折が35件増え、火傷も2件増えました。
ちなみに、「認定こども園・幼稚園・認可保育所等(※1)」では、事故件数が2,353件、死亡事故は0件です。前年度と比べると事故件数74件減少し、死亡事故は3件減少しました。
<起こしてはならないもの>
こども家庭庁が毎年公表している重大事故の件数ですが、これは「死亡事故、意識不明事故(どんな刺激にも反応しない状態に陥ったもの)及び治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故」です。若干、定義は年ごとに変化があるようですが、こどもが亡くなった事故と、意識不明になった事故及び治療に30日以上かかる重い負傷の件数を集計して報告しているものです。
(なお、わたくしが児童クラブ運営に関わりだしたのは2011年度からですが、当初は30日以上の治療を要する事故負傷について国への報告義務は課せられていませんでした。だいぶ後になって、2016年だか17年ぐらいに報告書式ができて実施するようになったと記憶しています。つまり児童クラブについてはいろいろな集計や報告は、五月雨式に実施されるようになってきた、徐々に整ってきた、ということですね)
いわずもがな、こどもが死亡してしまう事故は「絶対に」起こさぬように児童クラブ運営に取り組まねばなりません。意識不明になる重大事故も同様。意識不明になってしまうと、たとえ意識を取り戻しても重篤な後遺症にこどもと家族が苦しめられる可能性が高いからです。
死亡事故、意識不明になる事故、さらに加えると、治療に要する日数はいろいろであっても「後遺症」が生じる事故、けがは、絶対に起こさないという強い意識は必要です。世の中に「絶対」というのはありえないので、それら起こしてはならない死亡事故、重篤な後遺症をもたらす事故の発生を防ぐ、発生に直ちに気づく仕組みを、児童クラブに整えねばなりません。予防及び早期それも発生直後に職員らが発見できる仕組みです。単に意気込み、気合だけで防げるものではありませんから。
その点でいえば、今回の公表で計上された児童クラブの死亡事故は極めて残念でした。今回の公表資料には「プール活動・水遊び」の項目で計上されています。2025年7月に起きた東京都内の民設民営児童クラブにおける事故でしょう。この事故については死亡事故から1年後の2026年7月28日に、児童クラブの元支配人ら4人が業務上過失致死容疑で書類送検されたと報道があったばかりです。
<一方で、なんとか理解してほしいことも>
死亡事故や後遺症をもたらすけが、事故を児童クラブでは起こしてはなりません。一方で、児童クラブでは、こどもが遊びを通じて成長していくことを保証する事業という性質から、遊びに伴ってこどもがけがをすることは、避けられません。わたくし萩原は、「児童クラブでの事故やけがは、どうしても起こる。こどもがけがをすることをゼロにすることは、まともな児童倶楽部であれば不可能」と言い切ります。もちろん、その「事故やけが」には、死亡事故や意識不明になる、あるいは後遺症が出てしまう事故やけがは、含みません。起こしてはならないからです。
しかし、治療に数か月かかってしまうような重傷であっても、「こどもが普通に遊んでいた結果、起きてしまう」ことは、ありえます。つまり、児童クラブはこどもが遊んですごす、種々の活動を行うことで、事故やけがが起きてしまう要素をもともと含んでいる。その起きてしまう事故やけがの中で、死亡事故や意識不明になる事故、後遺症が生じる事故やケガは絶対に起こさない心構えで、システムとしてそのような重大重篤な事故やけがを起こさない仕組み、起きそうになっても回避する仕組み、不幸にも起きてしまったならその直後に発見して迅速に被害回復治療に取り組み影響を極限まで軽減する仕組みを、取り入れることが必要だということを、運営支援は主張しています。
だからといって「こどもも、保護者さんも、児童クラブはそういう場所なんです。運が悪かったですね」とは言えません。けがが起きるリスクと、けがによって生じた影響に対する補償はまた別の分野として取り扱うべきです。たとえ1か月で治るけがでもそのけがのため大事な行事に参加できなくなったということが起きれば、児童クラブは真摯に保護者に謝罪し、事後について相談しなければなりません。
あくまでも児童クラブの特質上、「事故やけが」は、起きるのが避けられない事業であるのが、放課後児童健全育成事業であるということです。こんなことは国やお役所は言えませんし、運営主体も「そんな責任逃れのようなことを、よくぬけぬけと」と批判を受けるのは嫌なので言いませんので、代わりにわたくしが言っているのです。
遊びにはリスクがつきものです。リスクとは、失敗すると痛みを受けることだったり、がっかりして悲しい気分になったりする、つまり失敗に伴う被害です。そのリスクをギリギリで避けることで得られる成功体験こそ、こどもが大人に向かって成長するためのエネルギー源です。リスクが無い遊び、つまりハラハラドキドキが無いあそびは、つまんないものです。そういう遊びは大人になってからやってください。
この点については、児童クラブ関係者は当然目を通しているのですが、保護者さんや行政パーソン、メディアの方はぜひ、「放課後児童クラブ運営指針解説書」の50、51ページを読んでみてください。こと、あそび行動に関するリスクとハザードの考え方は児童クラブ運営において理解が必須です。
「遊びの場面では、こどもの好奇心や意欲も大切にしながら、危険なことについてこども自身が考え、判断できるよう援助していくことが求められます。そのため、想定される危険の内容によっては、安全を確保するための行動のあり方についてこども自身が学ぶ機会を設けることも望まれます。」とあります。
この援助を行うのが放課後児童クラブの職員です。とても難しいです。よく世間一般には「学童の仕事ってこどもと一緒に遊ぶだけだよね」とか「こどもの遊びに付き合っているだけで給料がもらえるなんて、うらやましいね(=うらやましいというのは、そんな簡単な業務に給与が出ることへの皮肉、嫌味ですね)」と言われています。
放課後児童クラブ運営指針に記載されていることを業務として行うには、育成支援に関する深い理解がなけば到底不可能です。いま紹介した、遊びに関することだって、「どういうことが危険なのかこども自身が知る、理解できるように関わっていくことって、どうすればいいのか?」ということを、「学童の仕事は楽でいいね」と軽々にいう人たちがしっかり説明できると、わたくしは信じません。無理でしょう。その無理なことがつまり専門性なのです。
<児童クラブ側が心すること>
・遊びに関する保護者や行政への理解度の向上。つまり、「遊びにはリスクがあること。リスクが無い遊びはもはや遊びではないこと。児童クラブはこどもが適切な遊びをして過ごす場である以上、リスクをしっかりとコントロールした上で、こどもに遊んでもらうことが大事。その過程で、足をくじいたり、突き指をしたり、場合によっては骨折もしてしまうことがある。もちろん、そのような重いけがが起きないような環境設定は行うし、遊具の点検なども行うが、それでもこどもがけがをすることがある。それは当然にやむを得ないこと」ということを、折に触れて何度でも説明することです。理解を求めることです。
死に至ること、重大な後遺症や障がいが残るけがを起こさないことは事業者として当然、意識して事業運営に取り組むことは、言わずもがな。そのうえで、「サッカーをしていてボールを蹴ろうとしたら足をくじいて骨折した」ということは、それはどうしようもないということを保護者や行政側も、理解していただきたい。
・児童クラブの側は「こどもが遊びでけがをするのは不可避なこと」として責任逃れをしないこと。まして、「遊具の点検」や「遊びの環境の点検」を怠らないこと。こどもたちが遊びを自分たちで決めるにあたって、それがだれであれ特定のこども個人や、特定の属性のこどもたちに不利益となるあそびを許容しないこと、そのような不適切なあそびが行われようとすることに未然と気づくことは、児童クラブ職員の当然の仕事です。
「こどもが遊んでけがをするのは当然」として、けがをしたこどもや、そのけがが起きた局面に関わったこどもたちへのケア、対応を怠るような職員は、失格です。そのような、こどもの心に寄り添えない職員は、人間の健全育成という事業に従事するには不適格です。別の仕事に従事してください。
児童クラブでのけが、事故への取り組みは当然にリスクマネジメントであり、実際に事故やけがが起きた時の対応はクライシスコントロールです。その2つの重大な取り組みを軽視するような児童クラブであってはなりませんし、この2つに興味関心を持てない児童クラブ職員であってもなりませんよ。
保護者さんは、こどものけがや事故に対する児童クラブ側の対応を見れば、その児童クラブがどれだけ真剣に、真摯に、こどもの健全育成事業に向き合っているか、測定することができますよ。けがや事故について一切報告しないクラブ事業者は大失格。行政に直ちに苦情申し立てをしましょう。
ただ単に「痛い思いをさせてごめんなさい」だけしか言わず、状況の説明を求めても「もう二度と起こしませんから」というようなことしか言わないクラブ事業者も問題があります。「保護者トラブルは面倒くさい」と思っている可能性があるからです。
けがについて報告謝罪し、そのけががどういう場面で起きていたのか職員がしっかりその原因を含めて把握していることが説明から確認できること、そしてそのけがや事故が起きたときに行っていた行動、行為の意味を児童クラブ側がしっかりと説明できているようなら、そのクラブや職員には信頼を向けて、まずは大丈夫でしょう。
終わりに、くれぐれもこの夏、水遊びやプール活動でも、屋外における活動でも、プールや川、沼、海で溺れる事故、あるいは落雷による事故、登山道や建物の構造物の上部から転落滑落するような事故、高いところに登れる遊具から落下するような事故、スズメバチなどの群れに襲われる事故、熱中症、重量物に押しつぶされるような事故、工作や調理活動で使う刃物類での事故、そして食中毒は、児童クラブで起こさないように、職員のみなさんと運営主体の方々の奮闘を求めます。大変ですが、職業として選んだ以上は、専門職のプライドを誇りに頑張ってください。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」。第4回が2026年6月30日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらすこどもの被害申告に適切に対応できるか」をテーマに関して丁寧に説明しています。 まずは動画をぜひご覧ください。わたくしの著書「知られざる<学童保育>の世界」も紹介されています。
https://youtube.com/live/9q8xzkgs7wo?si=dr06eChxK1Jgov5T
第5回は7月19日(日曜日)15時から、すでに施行されている「児童生徒性暴力防止法」における調査の解説です。話し手:飛田桂弁護士、聴き手:嶋崎量弁護士、鈴木愛子弁護士、野田隼人弁護士、三輪記子弁護士。
第3回(2026年6月11日)は、鈴木愛子弁護士がメインスピーカーとして「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s
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わたくし萩原が寄稿した記事が「ウェッジオンライン」で2026年7月29日に公開されました。「子どもの「体験格差」が気になる夏休み…その“差”を埋めるのは難しいのか?子どもにとって貴重な体験に目を向けろ」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。(子どもの「体験格差」が気になる夏休み…その“差”を埋めるのは難しいのか?子どもにとって貴重な体験に目を向けろ Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン))
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こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、講演会、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
