「こんな放課後児童クラブ(学童保育所)は嫌だ!」(クラブ職員の立場編)~GW特別版です~
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。ゴールデンウイーク(大型連休)です。運営支援ブログもGW特別版として「こんな放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)は嫌!だ!」シリーズ最終第3弾をお送りします。もちろん、筆者萩原の独断と偏見です。気楽にご覧くださいね。
※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。
・こんな放課後児童クラブは嫌だ!~いいことが全く無い大規模クラブ!突発性難聴の恐怖!
→児童クラブは、都市部も、そうでない地域も、いわゆる大規模クラブがあちこちに存在していますね。人口が数千人の地域のクラブでも、小学校が集約されクラブも1か所になった結果、定員が80人や100人のクラブがあります。それを「単位(クラス)分け」しなければ、大規模クラブになります。大規模クラブは都市部だけの問題ではないことをぜひメディアに伝えてほしい。(なお大規模は、私の考えでは、児童1人あたり1.65平方メートルが確保できてない状況を軸に、約50人以上の子どもが1か所に留まっていると定義することが望ましいとします)
さてさて大規模クラブは困ることだらけ。子どもたちのストレスは極めてひどい状態ですが、働く側も同じです。まあ、子どもたちに関われない。クラブの室内は子どもたちの声が反響しあって耳をふさぎたくなるほど。もちろん耳をふさいだら仕事になりません。大きな音に負けじと誰しも大声を出すのでさらに室内の音量が増します。
結果どうなるか。クラブ職員を襲うのが「突発性難聴」です。もはや労働災害、労災です。労災申請したらいいと思いますよ。私がもし、再度クラブを経営するようになったら労災申請しますよ。
むろん、職員個人の困りごとは深刻ですが、クラブ職員が心を痛めるのは、大規模クラブで過ごさざるを得ない子どもたちの様子です。保護者にはぜひ、お子さんが通うクラブが大規模状態だったら、市区町村に「実名で」苦情を届けてくださいね。
・こんな放課後児童クラブは嫌だ!~残業代が出ない!研修費も出ない!有給休暇も取りにくい!
→これ、多くのクラブで実際にありますよね?固定残業代だからって、どんなに時間外勤務が必要となっても「残業代は出ているから」と、びた一文、残業代が出ない会社。「研修は自分自身を高めることだから自分でカネを出すのが当然」という馬鹿げた理由で研修費用を出さない会社。そもそも、会社が研修の機会すら設けない。年次有給休暇の申請にしても「有給取るの?何に使うの?」と会社があれこれ探りを入れてきてすんなりと年休を取得させない会社。
こういうことって、入社、採用される前はなかなか見抜けないんですよね。入って働き出して気が付く、直面することが多いのです。児童クラブの仕事で、保護者と話し合いをする時間が必要な場合は夜間になることが多いのですが、その夜間の時間外勤務を「会議手当」「保護者会手当」などとして、たった数時間程度の手当で時間外勤務の割増賃金に代えようとするのは、児童クラブの経営が補助金も少なく大変厳しい時代の遺物です。直ちに撤廃しなければなりませんね。つまり、「コンプライアンス」が確立している会社、事業者でなければダメだ、ってことです。
・こんな放課後児童クラブは嫌だ!~保護者も、行政も、学校も、「学童なんて子どもを預かってくれさえすればいいんだ!余計なことはしないでいい!」と口をそろえて言われてしまう!
→未だに、というか今だって、放課後児童クラブの本当の役割が、世間に理解されているとは私には思えません。わたしはいま、全国の市区町村のHPから児童クラブの情報を抽出していますが、それなりの数の市区町村で、児童クラブの説明において「児童の生活指導」と記載しているのですね。無難に、児童福祉法の条文をそのまま転記していることが多いのですが、それとて、実のところよく分かっていないから条文をそのまま掲載しているのではと勘繰ってしまいます。
保護者に「今日、お子さんにはこういうことがあって、成長したことがとてもよく分かりますよ」と伝えたくても「こっちは忙しいんで。話は別にいいです」と遮られてしまう。行政に、「大規模で子どもの育ちにとって適切な環境ではありません」と訴えても「まあ、けがが起きなければいいですから」といなされてしまう。学校からは「放課後の校庭は使わないでください。授業が終われば学校の子どもではないですから」などと軽んじられる。下校後、児童クラブに行くはずの子どもが下校班で帰宅してしまったことも「子どもが自分で下校班に入ったから、クラブは行かないものだと思いました」と、連絡帳を確認せず勝手に判断する教員がいる。しかも同じようにそんな失敗を繰り返しても平然とする学校があります。
子どもが、自分の力で、泣いたり笑ったり、けんかしたり、失敗したりしながら育っていくことを大事に考えたい児童クラブ側と、「子どもを預かってくれればいいんだ」という世間の見方。もちろん、ただ預かってくれればいいというニーズがあるならそのニーズを満たす事業があってもいいでしょう。ただそれは「放課後児童健全育成事業」ではない、たったそれだけのことです。
・こんな放課後児童クラブは嫌だ!~ベテラン支援員が自分のやり方を決して曲げず育成支援の研修で学ぶこともせず、ただ子どもや保護者のご機嫌取りに夢中のクラブ!
→困ったことに、いるんです。キャリアだけは長い。20年、30年と児童クラブで勤めながら、自分の経験「だけ」を頼りに、子どもや親と接する職員が。お気に入りの「言うことを聞く」子どもには甘く、やんちゃで自己主張が強い、実は子どもらしい子どもが嫌いで、ぞんざいに扱う職員が。子どもっていうのは「AKB」なんだと以前、私がいた組織で説明していました。子どもは「A=アホ(なことが好き)」、「K=キタナイ(ことが大好き)」、「B=バカ(みたいなことが好き)」なんです。そりゃ宿題をする時間は必要。掃除の時間も必要。でも遊びの時間、自由時間のこどもはAKBでいい。職員に、悪たれをたれたっていい。それが許せないベテラン職員が児童クラブを「単なる預かり場」としてしまうんですね。
しかも年齢給(勤続年数が長いほど給料が上がる)がほとんどの児童クラブは、そういった困ったベテラン支援員ほど給料が高い。しかも自分がやりやすいように毎日仕事をしているからストレスがたまるはずがない。「学童は天職だわ!」と抜け抜けと話すのです。そして、そんなベテラン支援員のやり方に呆れた、育成支援を真面目に考えている若手職員は「転職」を考えるのですね。まあこれは、事業者(会社)の問題です。そんなベテラン職員がぬくぬくと働ける職場にしている事業者、経営者の失態です。
・こんな放課後児童クラブは嫌だ!~上も下も、「その時の気分、感情」だけで物事を決めて動いている。ルールはあっても有名無実。時代が激変しつつあるのに従来からのやり方に固執している経営陣。この先どうなるか不安いっぱい!
→児童クラブは、昔からの保護者運営が源流の場合はとりわけ、「人と人とのつながり」で組織を運営することが多い。一方、全国あちこちでクラブを運営する広域展開事業者は、企業としては大きく一見してしっかりしていそうでも、実のところ、地域の拠点(よく「事業本部」と名乗っています)に任せっぱなし。このどちらも、実のところ、ルール、規則規程に従って物事を考え、判断し、決めていくという、コンプライアンスに則ったガバナンスを重要視していないんですね。結局は、仲良し同士の理事がお互いにやりやすいように物事を決める、事業本部の管理職がやりやすいように事業を指揮する、ということに陥りがちです。
いま、児童クラブをめぐって大きな時代の変化が訪れています。いわゆる日本版DBS法案に象徴されるように、あれもこれもと課せられる制度や仕組みがどんどん増えています。児童クラブが果たす社会インフラの役割はますます重大となる。にもかかわらず、事業を営んでいる=ビジネスを行っているという認識を持たずに、ビジネスの作法に疎いままで、のん気に以前のままで事業を営んでいるようでは、まるで白亜紀の恐竜です。子どもが入所できれば満足という児童クラブの時代はやがて終わります。嫌でも「子どもの育ちにどのような効果があったのか可視化してくれ。数値化してくれ。伸び率が一定以下であれば補助金はカットする。打ち切る」という時代がやってきます。その時代も困ることなく乗り切れるだけの合理的な事業経営手段を身に付けねばなりません。果たしてそのことを認識している児童クラブの経営者、理事、監事たちはどれだけいるのやら。
<おわりに>
3回にわたってお送りしたゴールデンウイーク特別版。ケチ、難癖をつけてばかりでしたが、それらの「嫌な点」を1つ1つ、着実に解消していくことが大事です。「私たちって素晴らしい!」「私たちこんなに頑張っています!」と自画自賛だけしていたら、何も進歩しません。残念ながら児童クラブの世界には、そんな自画自賛が目立ちます。セールストークにしてもひどすぎます。かの孫子(そんし)は、こういっていますよね。「彼れを知りて己を知れば、百戦して殆[あや]うからず。彼れを知らずして己を知れば、一勝一負す。彼れを知らず己を知らざれば、戦う毎[ごと]に必らず殆うし。」。自らの状況を知らなければ、ピンチに陥るのです。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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