<運営支援ブログミニ39>野球用語で使われる「殺」などの字が見直される? そんなことより指導員だぜ
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブ(学童保育所)運営支援アドバイザーであり、放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。(ぜひグーグルのAIで「萩原和也 放課後児童クラブ」と検索してみてください!)
今回はミニ版。宮城県の高野連(高等学校野球連盟)が、野球用語にするには不適切な文字が含まれるとして見直しを検討する、という不思議なニュースを目にしました。あえていおう、実にくだらない。だったらストライクを「よし」、ボールを「だめ」と戻してみたらどう? さてこの「文字がイメージする問題」、放課後児童クラブにこそ真剣に考えてほしいと、わたくし萩原は何度でも強く訴えます。
(※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)
<報道から>
ヤフーニュースに2026年7月9日19時04分に配信された、共同通信の「「殺」「刺」など見直しへ 宮城県高野連、検討委設置」の記事を一部引用します。
「「殺」「刺」など過激な表現を含む野球用語の使用を見直すため、宮城県高野連が今秋にも検討委員会を設置することが9日、明らかになった。代替の言葉を検討し、来春に各校の指導者へ結果を伝える予定。検討対象となる主な用語は「殺」「刺」「死」「盗」「犠」などの文字が含まれるもの。高校生への指導現場でこれらの言葉が使用されなくなることを目指す。」(引用ここまで)
なんですかいったいこれは。盗塁、補殺、一死一、三塁などの「死」、デッドボールの「死球」も、宮城県高野連は「過激な表現でふさわしくない」という認識でいるのでしょうか。 盗塁は「窃盗」の「盗」があるからふさわしくない、ということですか。野球は勝ち負けの決着がつくスポーツで、攻める側が守る側の「塁」を、スキを「盗んで」、奪い取るのが盗塁です。盗むんですよ。攻めるランナーを好返球でアウトにするのが補殺ですよ。ランナーを排除するんですからね。メディアの世界では死球と四球を「死にだま」「よつだま」と言い換えることがあります。萩原家は夫婦で新聞記者でしたから(奥方はまだ現役の記者ですが)、野球中継で「あー先頭によつだまかぁ」「あの死にだまは痛いね」とごく普通に会話で使っています。
わたくしは新聞記者として二十年以上、文章を書くことで生計を立ててきました。文章や文字による表現には並々ならぬ関心を持っています。それゆえ、単に意を表す表意文字の漢字が示す効果を人間側が勝手に解釈し、曲げて理解することの不可解さ、恐ろしさにもまた敏感です。野球の用語は野球の世界で使われる言葉であって、かつ、野球以外の部分で使われる頻度も機会も極端に少ない用語です。「死球」は通常の日常生活ではあまり使いませんし、死球という熟語から多くの人が受けるイメージは「投手が投げたボールがバッターにぶつかる」こと以外には、なかなかありえないとわたくし萩原は考えます。むしろ、宮城県高野連のように、「あまりよろしくない意味を持つ漢字を使っているから、イメージがよろしくない」と勝手に解釈する方が危険です。この問題、わたくしも法学部の学生だったときに教わった「拡大解釈」と「類推解釈」の問題で整理がつくように考えるのですが、どうでしょうね。死球や盗塁や一死、二死という文字が第三者の感情を害することがある「おそれ」について、いわばそれら野球用語を見た人がハラスメントを受けるかどうかについて、国語学者、心理学者、法律家の見解をぜひともお伺いしたいです。
<文字から受けるイメージ>
この「文字」から受けるイメージとして「障害者」の「害」の字は相当以前から問題というか話題というか、「どうしたらいいのか」という協議の対象となってきました。「害」という文字が持つそもそもの意味から、障がいのある人が受ける不快感、悲しい感情をおもんぱかると、害の文字は使わない方がよいだろうという主張です。周知の事実として「障碍」の「碍」の字が常用漢字ではないので一般的に使えないので表記替えとして障害になったという経緯があります。
(これ、気象用語の「巻雲(けんうん)」にも同じ経緯があります。巻雲の「巻」に「けん」という読みがないので国は「絹雲」という表記にするとしました。なお、もともとの語源に近い「巻」の字の方が状態を表すのにぴったりだったようで、結局、今では巻雲との表記になっています。わたくしがこどもの時に読んだ気象の本では「絹雲(巻雲)」となっていましたね。)
かといって、障碍者の障碍を障害とも書いていた例もずっと以前からあるようです。とにもかくにも、障がい問題は当事者、その文字で示される側の意思や気持ちを重要視して、「不快に思われるようなら使うのは止めよう」という流れが今や主流となったような感があります。よって「障がい」とひらがなまじりの表記が少なくとも行政関係では一般的になりました。もともと障碍という表記があったのだったら巻雲と同じように障碍の表記にしたらいいのに、とわたくしは考えます。表音文字のひらがな交じりでは、やっぱり変です。
なおわたくしが仕事を共にしてきた一部の障害福祉関係者は「害の字になにも罪はない。それに偏見を持つ社会や個人の側の問題だ」と強くいきまいていました。わたくしもその通りだと考えます。
さあ、ここでかねてのわたくの持論、「指導員」という表記について、もうこれは絶対に取りやめるべきだといういつもの主張でミニブログもおわりにします。
<まず役所から。指導員という文字を使う条例や要綱などは、支援員に替えよう>
放課後児童クラブでは、放課後児童支援員という資格を有する人の配置が必要です。国レベルでは義務ではないですが多くの自治体が条例などで放課後児童支援員資格を有する職員の配置を義務付けています。
放課後児童支援員です。学童指導員、ではありません。支援員です。指導員では、決してありません。
「放課後児童クラブ運営指針解説書」のウェブ版で「指導員」という表記を検索してください。2か所しかありません。それも平成 25年12 月に全国児童厚生員研究協議会が発表した「児童厚生員・放課後児童指導員の倫理綱領」というタイトルを紹介するためだけです。ちなみに支援員は「放課後児童支援員」として266か所も使われています。
なぜ「指導員」という文字が使われないのか。それは放課後児童クラブで従事する職員は、こどもの育成支援がその職務です。こどもの育ちを援助支援するのが仕事だからです。「指導」というのは、援助支援する上で必要があればこどもに指示して行わせることや、誤ったことを正常に戻すときに行われるものだと、わたくしは理解します。つまり全般的なことではなく、必要においてその場面、その局面ごとに職員が為す行為だというのがわたくしの理解です。先の運営指針では、児童クラブに従事する者全般を指す点について「放課後児童健全育成事業に携わる人全体を表す場合は「職員」とし、」とあります。ここで指導員という表記を使わなかったことに留意が必要です。それは指導員という表記では何かしら十分に完全ではなかった、ということを示しているということと等しいと、わたくしは理解しています。
決して、児童クラブで過ごすこどもたちの全般において、職員が「こどもを指導」するのではありません。運営指針にはこうあります。
「放課後児童支援員等が行う「こどもの健全な育成と遊び及び生活の支援」を総称して「育成支
援」と表現しています。また、実際の場面では、<見守る><手助けする><教える><一緒に行動する(遊ぶ)>等多様な側面が考えられますが、それらを示す言葉としては「援助」を用いています。なお、育成支援を含めた放課後児童健全育成事業の役割を表す言葉としては、「支援」を用いています。」
ほら、「指導」なんてでてきませんよ。でも、伝統的な児童クラブの世界、とりわけ連絡協議会のような以前から存在する業界団体はとにかく「指導員」表記が大好き。それにつられてメディアも指導員表記を使います。業界団体が堂々と指導員表記を使えばメディアだって行政だって、そりゃ使いますよ。決して全国の児童クラブの考え方や情勢を反映していないにも関わらず全国ナントカと名乗っている団体が堂々と指導員という表記を使い続ければ、世間もまた指導員こそ、児童クラブの職員の正式名称なんだと誤解します。
こどもを指導することが児童クラブの仕事ですか? 育成支援はどこにいったのですか? そんなにこどもを「指導」する立場の優越性が大好きなのですか? 結局、指導員という表記に固執するのは、こどもの主体性なんかよりも、こどもを教え導く立場の児童クラブ従事者の優越性、権力で上位にいることの心地よさを堪能しているだけなんじゃありませんか?
ここで冒頭の宮城県高野連のことをわたくしは思い浮かべます。「殺」とか「盗」という文字が示すイメージを懸念して、なんとか別の言い回しを考えようとしている宮城の高野連と、「指導員」という表記について懸念しているわたくし萩原は、同じ立場に属するのでしょうか。
わたくしが懸念しているのは、決して児童クラブの職員は常にこどもを指導するわけではない(指導する場面は当然にありますが)のに、「指導員」という文字を見た一般の人が、「児童クラブの仕事はこどもを指導するんだね」という解釈を導きやすいから、ということです。こどもを「指導」することと「育成支援」することは、その難易度、専門性は、わたくしははるかに育成支援の方が上位にあると考えます。むしろ指導員という表記は世間一般に「未熟でまだよく物事を知らないこどもに、あれこれ指示して必要なことをさせる仕事なんだろう。こどもにあれこれ命令、指導する立場なんて気楽でよさそう、誰でもできそうだ」という誤った理解を広めるおそれがあると、わたくしは心配なのです。
野球の盗塁やけん制死や死球は、野球というスポーツだけに限定される用語です。
指導員は、広く職業の1つとしての職種名について、その正しい職務内容を誤認させる表記です。この点、野球における用語の見直しとはまったく違う性質があるとわたくしは考えます。野球用語の死や盗は変える必要がないが、児童クラブにおける指導員表記は変える必要がある、というのがわたくしの結論です。
児童クラブは、こどもが主体的育っていく場所ですよ。運営指針による育成支援について、改めて引用します。
「放課後児童クラブにおける育成支援は、こどもが安心して過ごせる生活の場としてふさわしい環境を整え、安全面に配慮しながらこどもが自ら危険を回避できるようにしていくとともに、こどもの発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能となるように、自主性、社会性及び創造性の向上、基本的な生活習慣の確立等により、こどもの健全な育成を図ることを目的とする。」
さあ、全国の都道府県と市区町村さんへ運営支援からお願いです。各自で制定されている条例や規則、要綱などの「指導員」という表記を見直してみてはいかがですか? もちろん、設置運営したり委託や指定管理として代行させたり事業に補助金を出している児童クラブ運営事業者の話も聞きつつ、「放課後児童クラブ運営指針の内容を考慮して、育成支援に従事する者を放課後児童支援員等もしくは支援員と表記します」として、最終的にルールの改正に取り組んでいただきたい。少なくとも指導員表記は、決して望ましくありません。こどもへの育成支援を正確に表示する職種名ではありません。「放課後児童支援員」という資格者と、しかくをもたない補助員、その2職種をまとめて表記するのに「指導員」が便利、という論理は、そもそも業務内容を軽視した暴論です。その観点でいえば、児童クラブ運営指針のように「職員」と表記すればいいのです。
さあ全国の自治体さん、条例や規則や要綱などから「指導員」表記を取りやめましょう。児童クラブの職員はこどもの指導が仕事ではないんですよ。指導なんてごく一部ですよ。育成支援、が児童クラブの職務内容であり、他には保護者の子育て支援も仕事です。正しい職務内容を示す用語があるんですから、一部業界団体の姿勢にとらわれず、より正確な表記を目指しましょう。もし運営主体側が「指導が仕事です」と訴えるなら、そんな運営主体は別の事業者に替えていいですからね。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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こども性暴力防止法に関する諸課題を5人の弁護士が各々の専門分野に関して紹介、説明するYouTubeチャンネル「こどもを守る弁護士チャンネル」。第4回が2026年6月30日に配信されました。放課後児童クラブの運営に関わってきた鈴木愛子弁護士が「こども性暴力防止法がもたらすこどもの被害申告に適切に対応できるか」をテーマに関して丁寧に説明しています。 まずは動画をぜひご覧ください。わたくしの著書「知られざる<学童保育>の世界」も紹介されています。
https://youtube.com/live/9q8xzkgs7wo?si=dr06eChxK1Jgov5T
第5回は7月19日(日曜日)15時から、すでに施行されている「児童生徒性暴力防止法」における調査の解説です。話し手:飛田桂弁護士、聴き手:嶋崎量弁護士、鈴木愛子弁護士、野田隼人弁護士、三輪記子弁護士。
第3回(2026年6月11日)は、鈴木愛子弁護士がメインスピーカーとして「こども性暴力防止法がもたらす「人手不足の加速」とその構造的リスク」とのタイトルで、人材確保に関する懸念を取り上げています。内容は放課後児童クラブ限定ではなくて法制度全般にわたるものですが、とりわけ放課後児童クラブで働く人、運営する人そして管理する行政パーソンには必見必聴の内容です。https://www.youtube.com/watch?v=ZVafKTKe204 を、ぜひクリックしましょう。
第2回(2026年5月30日)が、こども性暴力防止法の「Q&A」を読み解くとして、【弁護士が読む❗️こども性暴力防止法Q &A】のタイトルで配信されています。メインスピーカーは三輪記子弁護士、聞き手は嶋﨑量弁護士です。
https://www.youtube.com/watch?v=XtTCNTDBLLo
第1回(2026年5月16日)は「こども性暴力防止法を考える」です。
https://www.youtube.com/watch?v=uUlx8XaKMso&t=4324s
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わたくし萩原が寄稿した記事が「ウェッジオンライン」で2026年5月29日に公開されました。「“産業化”の大波に飲み込まれる学童保育…企業はどう収益を上げているのか?事業構造から見える放課後育成の実情」という記事です。ヤフーニュースにも配信されています。URLは以下の通りです。https://wedge.ismedia.jp/articles/-/40665
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こども性暴力防止法がもたらす、構造上の課題問題について、法律家がとても分かりやすく解説する記事が「アエラキッズプラス(AERAKidsPlus)に掲載されました! 解説はもちろん、鈴木愛子弁護士です。こどもを性暴力から守るための重要な法制度だからこそ、実は逆説的にこどもや運営事業者が追い込まれてしまう可能性を分かりやすく説明されています。ぜひぜひ、記事を読んでください! 実に分かりやすいですよ!
「本当に性犯罪を防げる?」学校や学童保育、放課後子供教室も対象になる「日本版DBS」に、現場から懸念の声…【弁護士が解説】 | AERA with Kids+
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
