おやつ、昼食、場合によっては夕食も。放課後児童クラブ(学童保育所)での食事提供と食物アレルギー対応は?
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
東京都杉並区の放課後児童クラブ(なお杉並区では学童クラブ、と表記)で、食物アレルギーのあるこどもにアレルゲンを含むおやつを提供していたという事故があったことが、杉並区のホームページで公表されました。かつて児童クラブの運営者として、食物アレルギー対応に非常に苦慮した経験もふまえ、この件を取り上げます。結論を先に申せば、「児童クラブにおける多くの現場は人的資源の観点からアレルギー対応は薄氷を踏む対応が続いているであろう。ここが改善されない限り、事業者側は、こどもの命を守るために、家庭からのおやつ持参などを選択せざるを得ない状況がある」ということです。
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(※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)
<杉並区の発表>
杉並区のHPに「区の学童クラブにおけるおやつ提供事故について(2026年3月3日)」とあります。まず、アレルギー事故について公表した行政の姿勢を高く評価します。事故を起こしたことや管理監督責任はまた別に厳しく問われるべきですが、利用者の生命身体に関わる重大な事故を隠さず公表することは、他の地域、他の児童クラブ事業者にとって警鐘となります。
(区の学童クラブにおけるおやつ提供事故について(2026年3月3日)|杉並区公式ホームページ)
以下、発表内容を抜粋しながら紹介します。
1 事案の概要
「令和8(2026)年2月27日(金曜日)午後3時過ぎ、区の学童クラブにおいて、食物アレルギーのある児童に対し、誤ってアレルゲンを含むおやつを提供する事故が発生」
「当該児童は、おやつ提供後に体のかゆみ等の症状が見られましたが、速やかに保護者と連絡を取り、必要な対応を行いました。その後、症状は落ち着きましたが、引き続き、健康観察を行っている」
2 発生の原因
「当該学童クラブには、おやつを持参して食べている児童が当該児童以外に1名在籍」
「提供時の確認が不十分であったことにより、本来提供すべきおやつを取り違え、当該児童に別の児童のおやつを誤って提供したことが原因」
「誤提供は、自らに提供されたおやつが持参したものと異なることに、食べる前に気づいた別の児童からの申出により発覚」
3 再発防止策
「当該施設の確認手順を点検するとともに、区内すべての学童クラブへ注意喚起と運用状況の再点検を指示」
「アレルギーを持つ児童への対応については、従来の当日に準備・提供する方式を改め、あらかじめ、児童名を記載した小袋におやつを小分けし、当日は、その小袋を提供する方式といたします。」
「現行の運用やマニュアルについて、内部点検にとどまらず、杉並保健所等への相談を行い、助言を受けるとともに、アレルギー研修を充実」
「3月中を目途に児童福祉・保育分野の有識者から意見を聴取し、その助言を踏まえ、おやつの選定や購入方法等を含む提供体制全般の見直しも視野に、より実効性の高い再発防止策に取り組んでまいります。」
まずもって、被害児童の症状が重篤ではなかったことは命拾いというか、最悪の事態にならなかったことは、ほっとしました。食物アレルギーのアレルゲン誤提供は生命にかかわります。きわめて危険な事態に容易につながるということは、児童クラブにおける業務や児童クラブ運営に関わる者であれば当然に理解しているはずです。ですので、より強く「命が無事でよかった」と感じるでしょう。
<運営支援が気になる点>
なぜ、誤提供が起きたのか、この報告では明らかになっていません。「提供時の確認が不十分であったことにより、本来提供すべきおやつを取り違え、当該児童に別の児童のおやつを誤って提供したことが原因」とありますが、その「提供すべきおやつを取り違え」た行動がなぜ起きたのかが、今回の事故の核心です。そこに言及がないのがわたくし萩原には大変に気がかりです。ここを明らかにしないと、「どうしてそんなことが!」の「どうして」の部分が不明瞭です。「どうしてそんなことが!」の「どうして」が現実に実行されてしまった結果が「本来提供すべきおやつを取り違え」なのです。そしてそれが「別の児童のおやつを誤って提供してしまった」結果となり、その結果が事故を起こしたのです。
取り違え。ここは完全に業務上のミス。しかもかなりの可能性でヒューマンエラーでしょう。なぜなら、「このこどもには、このおやつを渡す」ことをクラブ職員が判断して実施しているからです。仮に、おそらくは今回の事故を起こしたクラブでも、また他の児童クラブにおいても採用されていないでしょうが、「おやつをテーブル等の上に並べて置いておき、こども自身が、自分で食べるおやつを選んで手に取っている」という方式を採用していたとしたならば、まごうことなくその方法自体にアレルゲン誤提供リスクを高める要素を含んでいます。
なぜ取り違えたのでしょう。ここが誤提供の核心であり、取り違えに至った原因を退治しなければ、杉並区のHPにある再発防止策は意味を成しません。
<再発防止策が意味をなさないと運営支援が考える理由>
「アレルギーを持つ児童への対応については、従来の当日に準備・提供する方式を改め、あらかじめ、児童名を記載した小袋におやつを小分けし、当日は、その小袋を提供する」というのが再発防止策です。これで万全かと言えば、そうとは言えません。
運営支援の立場から申せば、「取り違え」が起きたのが職員の判断行動に起因するものであれば、職員の判断行動に関して根本的な改善がなされない限り、いくらおやつを事前に小分けして小袋を提供するとしても、「小分けした小袋にいれたおやつが、誤提供されたアレルゲンを含むおやつになっている可能性が依然として残る」と考えられます。
結局のところ、児童クラブ職員が「こどもそれぞれに、渡すべきおやつの中身を間違えない」ことが重要なのです。取り違えは、渡すべきおやつの中身を間違ったから起きるのですが、では「どんなことが理由で、間違ったのか」を考えてそこに手を打たねば、おやつ、また最近急激に増えている昼食も、また民設民営放課後児童クラブや民間学童保育所においてオプションサービスで行われることが増えている夕食の提供においても、取り違えによるアレルゲン誤提供の事故のリスク、可能性を含んだままで、おやつや食事の提供が行われてしまう、ということになります。
<取り違えに至りやすい要因>
・事前の確認が不十分=確認、チェックの意識が希薄化
→食物アレルギーのあるこどもにアレルゲンを誤提供するとどのような結果になるのか、およそ一般の職員であれば認識している「はず」ですし、誤提供を防ぐための業務手順は事前に定められている「はず」です。(この「はず」があいまいであるとしたら、論外です。それは事業者の職員に対するアレルギー対応研修や教育の不徹底であって事業者側の失態です。)しかしながら、「この子はアレルギーがあるから、アレルゲンが含まれるこのおやつを渡してはならない」という意識をもって、クラブに存在するおやつのアレルゲンを1つ1つ確認する行動を職員が実施しなければ、業務手順やマニュアルは効果を発揮しません。
確認やチェックの意識が希薄化する状態に至るには、わたくしの考えではいくつかあります。「業務量に対する職員数の不足、つまり児童クラブで働いている職員が足りなくて個々の職員に業務過多の状態があり、本来はアレルゲン確認の重要性の認識が職員には十分にあったとしても、実際のアレルゲン確認においては業務過多による散漫な意識や、確認手順の勝手な省略、および形だけの確認(ぱっと見ているだけで、確認までいたっていない状態)によって、アレルゲン確認が不完全に行われてしまう」ことがあります。
また、「職員数は十分であってアレルゲン確認を余裕をもって行える職員配置体制であったとしても、アレルゲン確認を行う職員がその確認業務のルーティン化、つまり今まで何も事故が無いから大丈夫という油断、慣れの意識が、アレルゲン確認の重要性の意識を上回ってしまう」ということもあります。
・複雑な提供手順=いろいろな過程を経なければ提供に至らない
→おやつ(食事もですが)の提供に至るまでに行われる過程が多ければ多いほど、また複雑であればあるほど、結果的に事故を起こすリスクが高まると考えます。1つ1つのそれぞれの過程においてミスが起きる可能性があれば、その過程が多く成ればそれだけリスクが高まるのです。
仮に「食物アレルギーのあるこどもの保護者が、家庭から安全なおやつを児童クラブに提供する」という方式でクラブにおいてこどもにおやつを提供するのであれば、「家庭から持ってきてもらう」「もってきたおやつを提供日が来るまで保管する」「提供日には保管されていたおやつを取り出す」「おやつを渡すべきこどもに確実に渡す」という流れになります。保管時にほかのおやつとごちゃ混ぜになってしまう可能性がありますよね。また今回の事故のように他にも食物アレルギーのあるこどもが登録されているためにその家庭からもおやつ提供を受けていると、そのおやつとの区別が付かなくなってしまう可能性も当然あって、それこそまさに今回の事故を引き起こしたのです。
ただこれもですね、最終的には「職員がおやつの提供手順およびおやつ管理を、明確な意識をもって遂行しているか」が重要となります。
・職員自身の業務遂行能力の問題=マルチタスク能力を欠く
→なかなか表ざたにならないことですが、児童クラブの現場で働いている人には、特定の能力において不十分である人もいます。その中でも、「同時に複数の情報を処理できない」「いま行っている業務、次に行う予定の業務は非常に重要だと認識していても、その次の瞬間に別の新たな事態が発生してその事態に向き合うことになったら、先ほどまで認識していたはずの重要な業務について、すっかり意識や認識から消えてしまう」という特質を有する方が、児童クラブで働いている場合に、種々の事案が起きやすいのです。
「そのような人が、多数のこどもの命を預かる現場で働いてもらっては困る」と誰しも思うでしょう。それはその通りですが現実的に採用した人が現場で働きだして初めて「そのような人」ということが分かることが多いのです。そして「そのような人」であることが分かっても、とにかく人手不足であり、さらに従事する職員数によって交付金の交付要件を満たすことができるため、苦労して採用できた人ゆえに「戦力」として業務に従事してもらわねば困るというのが、かなりの多くの児童クラブの現場で起きていると言わざるを得ません。本来は、そうしたマルチタスク能力や、同時に複数の情報を意識内で管理する能力において苦手な人は、児童クラブの業務の中でも、そのような状況であっても特段に児童クラブ全体の運営に影響が及びにくい業務に就けることが良いのですが、人手が足らないと「おやつの配膳」に従事させてしまうこともあります。もちろんその場合は管理職や他の職員がフォローすることになりますが、そこがおろそかになってしまうと、アレルゲン誤提供のリスクが一気に高まります。
児童クラブは、突発的に、予想外のトラブルや問題が起きる現場です。なにせ多数のこどもたちがその場で過ごしているのですからね。こどもどうしでいざこざが起きたり、取っ組み合いのけんかになったり、好き勝手な行動をしていたり、ガラス窓を割ったり、とにかくもう、いろいろなことが起きる現場です。「こどもみんながいつ何時も、職員の号令が下されるのをじっと待っている」ということはありません。おやつ提供前ぐらいは職員が指示をしてこどもたちを静かにさせて待たせていることはあるとしても、それが常にうまくいくことはないのは、よほど管理的な運営を常に実施している児童クラブ(そして得てしてそのような児童クラブこそ、職員の眼が自分たちに向いていないとこどもたちが気づいた瞬間、抑圧されていた発散の行動が一気に爆発しがちですね)でない限り、なかなか難しいものです。
<アレルゲン誤提供をより高い精度で防ぐには>
1 従事する職員数を増やす。
言うは易く行うは難し。ですが、根本的にはこれです。これができない限り、アレルゲン誤提供を防ぐために何らかの制約を児童クラブ側は行わざるを得ません。食物アレルギーのあるこどもの家庭からおやつを持ってきてもらうのも、その1つです。職員数が十分で、すべてにおいて児童クラブの業務を職員1人1人が余裕をもって遂行できるのであれば、アレルギーのあるこども向けのおやつをクラブ側で用意することも可能性として出てくるでしょう。これは結局のところ「カネ」つまり予算、人件費の問題です。おやつの準備として保管場所から数十人分のおやつを持ってくる、アレルギーのあるこども向けに家庭から提供を受けたおやつも保管場所から持ってくる、それをテーブルの上などに置く、こどもたちを並ばせたり呼んだりしてこどもにおやつを手渡しする、あるいはテーブルの上に置かれたおやつをこどもたちが間違って持っていかないように監督する、ということを1人の職員で実施していたとしたら、それはいつか事故が起こます。アレルゲン誤提供だけではなく賞味期限切れのおやつ、食品提供が起きるのも全く同じです。
2 アレルゲン誤提供を起こさないという意識を常に高いレベルで持つ。
特にルーティン化を防ぐことが重要です。緊張感が張り詰めた業務でも何十回、何百回、何百日も繰り返してその間に何も事故が起きなければいつの間にか緊張感が緩み、当たり前の業務と化してしまいます。それが事故を招きます。思い出してください。鉄道の現場では指差し呼称をしていますね。手指を動かして声を出すことが、常に意識に「これはミスが許されない重要な任務なのだ」ということを呼び掛けるのです。
おやつなど提供時には、職員が声を出すこと、アレルギーのあるこどもには自分の耳に聞こえる程度でいいので「アレルゲン確認、よし」と声を出していただきたい。
おやつ袋に大きくこどもの名前を書くことも効果的です。
3 複数職員が複数の業務手順の段階で関与する。
上記の1に関わりますがどんなに職員数が少なくても、こと、ミスをしたら命に係わる業務、任務については複数の職員が関わるような業務執行体制を構築するべきです。複数の職員が確認する。おやつを保管場所から持ってきた職員(当然、持ってくる段階で内容を確認する)と、おやつを配る職員、そしてその様子を管理監督する職員それぞれが、おやつのアレルゲンをチェックすることです。
そしてとりわけ大事なことととして、おやつ提供時にはその他の業務を一切行わないこと、出勤している全職員が常におやつ配膳に意識を集中することです。実際、わたくしの実務時代、ここを怠ったことで重大事態に陥った事案がありました。
4 マルチタスク能力、複数情報の管理が苦手な職員はその職員に見合ったおやつ業務とする。
探せばあるものです。騒いでいるこどもに声掛けをするとか、おやつをもらっていないこどもがいるかどうかを確認するとか。
5 こどもが登所する前に必ず毎日、直前ミーティングを行ってアレルゲンを確認する。
これは運営支援はぜひとも勧めます。クラブ側で用意したおやつも、家庭から提供を受けたおやつも、すべてテーブルの上に出して、その日に従事する職員でミーティング時に出勤している職員を全員集めて、その日に業務を統括する立場の職員(主任や施設長など。休みの場合は副職)が主催して、当日に提供するおやつのアレルゲン確認と、アレルギーのあるこどもに渡すおやつの確認を行うべきです。
杉並区の再発防止策には「アレルギー研修を充実」とあります。食物アレルギーのあるこどもにアレルゲンを提供したらどうなるかをより丁寧に知る、学ぶことは当たり前です。よってアレルギー研修の充実も必要ですが、もっと重要なことは「アレルゲンの誤提供を起こさないための業務執行のチェックと改善そして実施」です。アレルギー事故は重篤な結果をもたらすことは当然に知っているとして、「どうしたら誤提供を起こさないか、その仕組みを構築する」という業務改善こそが、必要な再発防止策です。その1つが直前ミーティングです。
6 アレルゲンの持ち込みを防ぐ。
児童クラブのおやつでは特に提供しなくてよいだろう、という食材を含む食品、おやつはもうそもそも児童クラブに持ち込まないことです。おそらく「そば」はそのような対応をしているクラブは多いのではないでしょうか。ピーナッツも。おやつの発注段階から食い止めることですが、これもヒューマンエラーが起こりえます。おやつを発注してもそれを1人だけに任せるのではなく、複数のチェックの段階を経るような業務手順にするべきでしょう。
7 パート、アルバイトを含め全職員がアレルゲン情報を共有する。
当然ながらこどもの目につかない場所に、こどもそれぞれのアレルゲンを記した張り紙がクラブにあるでしょう。あるいは個々の職員が所持しているタブレット等の機器に、アレルゲン確認の情報がすぐ閲覧できるようになっているでしょう。誰がどういうアレルギーがあるのか、全職員が常に情報を持っていることが必要です。夏休みなどに数日しか勤務しないアルバイトであっても同様です。
<児童クラブで食物アレルギー対応の提供ができるか?>
できないことを並べ立てるよりもできるようになることを考える。これが運営支援のモットーです。ですが、「人手不足」が常態化している児童クラブでは、「絶対的に最優先されるべきはこどもの生命身体の安全保持」である以上、その絶対的最優先業務を脅かすことは採用できません。人手不足ゆえに、食物アレルギーのある、それも複数が在籍していた場合に、それぞれのこどもに適したアレルゲン除去のおやつを提供するのに無理のある業務を行わなければならないのであれば、それは採用してはなりません。
ですのでまずは職員不足が解消されてから検討されるべきでしょう。ただし職員不足はおやつだけではなくて育成支援そのものに重大な影響を及ぼすので、職員不足という状況を国と自治体は速やかに解消する努力をしなければなりません。つまり、この国と自治体の児童クラブの職員配置における軽視こそ問題です。おやつにも、育成支援で最重要の遊びにおける関わりにおいても職員数が不十分です。最低でもクラブ責任者以外に、登所しているこども10人に1人の職員が必要です。こどもが35人いるなら管理職的な正規常勤職員1人に加えて職員4人、計5人の従事が必要です。それでもわたくしは足りないと考えます。
おやつを自施設調理で提供したいと考える職員や事業者、また手作りおやつの提供を望む保護者もいます。現状の児童クラブでは、アレルギー除去食を調理提供できるだけの調理設備を備えている施設は珍しいでしょう。そもそも児童クラブにおける調理施設に関して法令の規制はありません。保育所と決定的に異なる点です。それは児童クラブは家庭の延長という位置づけであり、一般的な家庭の程度の調理設備を想定されています。それすら及ばないミニキッチン仕様や、そもそも調理設備がない児童クラブも、とりわけ小学校の普通教室転用のクラブ室には珍しくありません。学校の給食調理センターや専用の調理室があるわけではなく、医療従事者も栄養面の専門家も従事しているわけではない児童クラブで、アレルギー除去対応のおやつや食事を提供するには非常に厳しい条件です。逆に言えばその点を整えてしまって完全に保健所等の管理下に置かれるとこんどは児童クラブ側の経営資源、人的資源が対応できず基準未達となって事業運営ができないという事態すら懸念されます。ここもまた結局は「予算不足」の結末ではあります。
おやつを外部購入する方が機会としては圧倒的に多いでしょう。これも発注時の取り違えが合ったら致命的です。なにせ「川上で大丈夫であれば川下でも大丈夫と誤認する」のが人間のクセです。「まさか間違って発注してはいまい」と勝手に思い込むとアレルゲン誤提供を引き起こします。常に複数のチェック段階を設けることが必要です。確認をしたら書面やファイルに確認のサインを書き込む、入力することです。面倒ですよね、でも人間の命がかかっています。児童クラブは人の命を守る場所です。人の命は、そう簡単に守れません。
なお、「こどもたちに同じおやつを食べてもらいたい」と口にする児童クラブ関係者は案外います。「はて?」(「虎と翼」より)です。同じじゃないとこどもがかわいそうという職員がたまにいます。「ほえ?」です。人間は誰しも同一人物でありません。どの食材がアレルゲンなのかは人によって違います。人によって違いがあること、その人の生命を守るにあたってその人に必要な条件や環境は異なるということ、つまり人には誰しも違いがあることを、こどものうちに理解に至ることを児童クラブでは行ってほしいですね。人としての権利はだれしも同じですが、その権利を守り抜くために必要な環境や手法は人によって異なることがある。権利と、環境や条件の違いを混同している職員は結構います。人は死んだら転生なんてできませんよ。
わたくしはいずれ、児童クラブでおやつ提供業務を完結できるようになってほしいと希望します。保護者に毎週、アレルゲン誤提供を防ぐためのおやつ提供を(たとえおやつ代は免除としても)要請してクラブに持ってこさせることは、こどもの迎えのついでに持ってくればいいだけだという声があるのは承知の上で、やっぱりいずれは解消の方向にもっていきたいと考えます。ですが現状でそれをやるにはリスクの方が高いクラブが多いのではなかろうかと想像します。正直、こどもの命を守るためにはやむを得ないでしょう。
結局のところ、児童クラブ充実への国及び自治体の理解と予算の不足の1つのしわよせが、こういうおやつ準備の場面にも影響していると考えるものです。
そして最後に絶対に強く訴えたいのは、「そうか、こどもへのおやつ提供はアレルゲン誤提供を招くリスクがあるのか。なら、おやつそのものを取りやめよう」という考えは運営支援として絶対に反対、ということです。児童クラブにおけるおやつは、こどもにとって極めて重要です。短絡的におやつを取りやめよう、では困ります。あるいはいまおやつ提供を行っていない自治体や事業者は、考えを変える努力をしましょう。大人におやつや休憩の時間は必要ですよね、こどもだって同じ。まして育ちざかりですよこどもは。栄養が必要です。家庭で満足に食事をとれないこどもだっているかもしれない、その場合におやつはこどもの成長を支える福祉の施策として重要なのです。放課後児童クラブ運営指針を確認してください。
児童クラブにおけるおやつは正義です。最後の最後に1つお読みください。
「プルルルル(電話の着信音)。(電話に出る)もしもし、〇〇児童クラブ担当だ!」
「・・・わたしだ」
「こっ、これは偉大なる埼玉県上尾市瓦葺の住宅街にて燦然と輝く児童クラブ運営支援アドバイザーにして社労士のハギワラ様」
「あいさつはいい。児童クラブでおやつをいつ出せる? 出来ませんでは良心がない。」
「はい必ずや、必ずあすには・・・」
「また電話します。努力しなさい。(プツン)」
「ううううっ・・・・」
(以上)
まったくもってこう言ってみたいものです。なお上記のやりとり出典について『第2次朝鮮戦争 ユギオII』に感謝です。
(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
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「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。
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(ここまで、このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば引用は自由になさってください。)
