SNSでは今年も「学童落ちた」。放課後児童クラブの待機児童は人災だ。予算を投じなければ待機は出る!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 3月になり、ちらほらと旧ツイッター(X)に「学童落ちた」の投稿を見かけるようになりました。ただ昨年より少ない?あるいは「トレンド入り」していないので目立っていないと感じます。それでも、投稿した人はそれぞれに切実な問題です。私が引用リツイートした投稿は本日になって閲覧が制限されてしまったので、細かい内容を紹介することはできませんが、数十人が待機児童になった、入れなかった子どもは別の放課後児童クラブに入所する、という趣旨の内容が投稿されていたと記憶しています。

 新1年生が放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)に入所できない状況を小1の壁と言いますが、今年も結局、小1の壁は無くならなかった。無くなるとは到底思えません。児童クラブに入所させたい世帯はどんどん増えていますが、児童クラブの整備に投じる予算は急激に増えているとは思えず、入所が可能となる児童数が増加しているとは思えないためです。

 児童クラブの入所予測は難問です。小学生全体の人数は市区町村が必ず調べているので分かります。その人数のうち、およそどのくらいの小学生が児童クラブを利用するかを予測するのですが、過去からの入所率のトレンドを分析したり、入所申請書類の利用状況、あるいは就学時健康診断のときに意向調査を行えるのであれば(例えば、学童利用を考えている人は挙手をお願いします、という簡単な調査)その際のデータなど、いくつかの要素を踏まえて予想します。その精度は非常におおざっぱですが、それでも、入所予測数を踏まえて施設整備をどうするか、入所人数をどうしたら増やせるかを、事業者は市区町村と常に協議して対応に取り組まねばなりません。

 しかし、なかなか市区町村は腰が重いようです。いずれ少子化で学童需要は消えるからと根底では思っているからでしょう。しかしそれでは今、学童に入れずに仕事をどうしようと頭を抱える子育て世帯は救えません。残念ながら、今を一生懸命生きている子育て世帯をどうやって支えていこうかと真剣に取り組む市区町村は、さほど多くないのだなと思うのです。そうでなければ、毎年のように「学童落ちた」の投稿を見かけることはないはずです。市区町村の動きが鈍いのは、間違いなく予算不足です。予算がなければどうしようもありません。私は何度も主張していますが、国は本当に学童待機児童を0人にしたいのなら、期限を区切ってであっても、例えばこの10年間だけでいいので、予算を何倍も用意して、児童クラブの整備に投じればいい。プレハブなら半年もあれば施設は完成します。校庭のすみっこに、公有地にプレハブの児童クラブを造ればいい。(もちろんそう簡単でないことは承知していますよ。水回りだって外構工事だって必要ですが、それらを「やらない、やれない」ための言い訳にしてほしくはないのですよ)。

 施設を作るのが難しければ民間団体に補助金を投じて居場所を確保すればいいのです。お役所より民間の子育て支援団体のほうが、よっぽど小回りが利いて対応ができます。この場合は、「子どもの居場所」として児童クラブに限定することはしないほうがよいでしょう。子どもの居場所は放課後児童クラブだけではありません。どのような過ごし方であれ、子どもが安全安心に、丁寧に子どもと関わりたい大人がいるのであれば、形式、形態にこだわる必要なんかありません。

 せっかく放課後児童対策パッケージをぶちあげても、従来とさほど変化のない予算措置では、その効果はたかがしれています。政府の推し進める次元の異なる少子化対策は子育て世帯の労働力を確保することが狙いだというのは見透かされていますが、それにしたって子どもの安全な居場所が確保できなければ子育て世帯の労働力も安心して仕事に向き合えません。この国の経済活動を停滞させたくないのなら、予算を惜しまず、どんどん子どもの居場所を作るべきです。(なお、こうした考え方には特に児童クラブの現場にいる方々から「子どもが朝から晩まで預けられてかわいそう、親と一緒に過ごす時間が短くてかわいそう」といった意見がよく出てきます。なんでもかんでも子どもがかわいそうという画一的な情緒的な意見や見方は、私は大嫌いです。個別にいろいろなパターンがあるのに、皆が好き好んで長い時間、子どもを預けているわけでもない。そういう個々の事情を顧みず子どもの味方のふりをする言い方は思慮が浅すぎます)

 さてSNSでは、学童落ちたの投稿に対して「学童って落ちるんだ?」という投稿も少ないですが見ることができました。全児童対策事業実施地域では子どもが学童に入れないということがないので、実感がしづらいのでしょう。民間学童保育所を利用できる世帯もあるわけで、これもまた何度も指摘していますが、学童保育をめぐる問題はあまりにも地域によってその問題の実態の差がありすぎるので、なかなか、1つの大きな問題としてひとくくりにして考えるということが、難しいのですね。小1の壁で困っている地域の保護者と、全児童対策でだれでも子どもの居場所が利用できる地域に住む保護者とでは、子どもの居場所について会話がかみ合わないのは当然です。こうした「子どもの居場所に関する地域間格差」についても、真剣に論じられていくべきではないでしょうか。

 この春、小1の壁によって待機児童になってしまった方は、なんとかして夏休みが終わるまでの間、どう過ごすのか考えなければなりませんね。夏休みが終われば児童クラブも退所者が出るのでその時点で途中入所ができる可能性が高まります。なんとかそこまで頑張りましょう。そして、国や市区町村の「不作為」で子育て世帯が生きにくい時代に追い込まれる不条理さは、早く解消されてほしいものです。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。

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