4月から放課後児童クラブにお子さんを通わせる保護者さん。心配、不安を少しでも解消できるコツをお伝えします(支援員こそ必読)
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。
まもなく新年度。小学校の新1年生になって、放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)を利用することになるご家庭も多いでしょう。なにせ、新1年生のおよそ半数が、児童クラブを利用する時代です。新1年生の2人に1人が、何らかの形で児童クラブを利用しています。初めて児童クラブに関わる保護者さんも多いでしょう。「児童クラブってどんなところ?何かいろいろ、心配な話を見聞きするんですが」と不安にかられている方も多いでしょう。今回の運営支援ブログは、少しでもその不安や心配、疑問を解消できるような情報をご紹介します。
<子どもがクラブになじめるかしら?>
この不安、心配はおそらくほとんどの保護者さん、学童デビューの保護者さんが抱くものでしょう。結論からいえば、「まっとうに運営している児童クラブなら、それほど心配しないで大丈夫」です。
多くの子どもは、自然に友達を作れるチカラを持っています。公園で見ず知らずの子どもといつの間にか仲良くなって遊んでいる、ということはよくある風景です。まず、子ども自身の、友達を自然に作れるチカラを信頼しましょう。児童クラブはさらに、子ども同士が仲良くなれるように配慮し、工夫ができるプロの職員、「放課後児童支援員」が基本的に必ず配属されています。子どもの育ちを支えるプロの専門職です。支援員に期待してください。
「いや、それでもウチの子は臆病で、人見知りで、なかなか他の子どもと打ち解けない」「引っ越してきたばかりで誰も知り合いがいない」と不安の保護者さんも当然いらっしゃいます。そんなときは、その不安を包み隠さず、児童クラブ職員に伝えてください。「ウチの子、外遊びが苦手です」ということも遠慮なく伝えてください。支援員が、子どもの育つ力を支える「育成支援」という専門分野のプロの職員として、徐々に、子どもがクラブの雰囲気になじめるように配慮し、子どもに関わっていきます。
<いじめ、嫌がらせがあったら嫌だな>
当然の心配ごとですね。保護者さんは、子どもに「きょうのクラブ、楽しかった?嫌なことがなかった?」と、必ず毎日、尋ねてください。決して「学童に行ってくれないと困るんだから、頑張って行くんだよ」と無理強いしないでください。クラブに行くことを強制される言い方をされた子どもは、親の事を心配して「自分がクラブで嫌なことがあったら親に心配させてしまう」と思ってクラブであった嫌な事、つらいことを親に打ち明けなくなります。「嫌なことがあったらどんどん教えて。パパとママがしっかりクラブの先生と相談するから大丈夫だよ」と、子どもを安心させてください。
現実的に、子ども同士の中で、こっそりと行われる嫌がらせやいじめ行為は、なかなか支援員、クラブ職員にも発見が難しいのです。やっぱり一番早く確実に、いじめや嫌がらせ行為を知ることができるのは、子どもからの情報です。子どもの表情や気分を察知して、子どもが打ちあけられるように優しく子どもに接しましょう。そして万が一、いじめや嫌がらせ行為で自分の子どもが困っている、辛い目にあっている、あるいはそうなりそうだという不安を持ったら直ちにクラブ職員に相談してください。時間がたてばたつほど、解決が難しくなります。早期に手を打つことが大事です。
<集団生活になじめるかしら?>
これもかなりの不安事ですね。特に、周りの子の行動のペースになかなか合わせられないお子さんの場合、保護者は心配になります。児童クラブは、入所している児童数にもよりますが、基本的に、「わいわい、がやがや、とても賑やか。というか、騒々しい」世界です。おとなしい性格の子どもは、圧倒されてしまって「学童って怖い」という印象を持ってしまうこともあります。
なかなか大人数と交われない性格のお子さんの場合は、そのことを遠慮なく、児童クラブ職員に伝えてください。これも職員はプロの専門職として、子どもがどうやってクラブにおける集団での過ごし方になじめるかどうか、配慮します。ただ、春休みの間は、「登所している児童数が多い」こと、「クラブで過ごす時間が長い」こと、「職員数がなかなか足りていない。まして人事異動などでそのクラブで勤務を始めて間もない職員がいる場合がある」ことから、現実的に、子ども1人1人に丁寧に関われる機会が少ないことも、事実です。だからこそ、保護者さんは、「うちの子には、こういう心配があるので、しっかりと見てほしい」と伝えてください。遠慮は不要です。依頼を受けた職員は必ず配慮してその子の様子をとらえるようにします。
ただ1点、これは保護者さんに絶対にお願いしたいことがあります。集団生活になじめないことが、性格的な観点からではなく、何らかの「特性」によることも、実は今の時代、当たり前のように増えています。発達障害と専門家から判定されていなくても、発達障害に近い特性を持っている子どもは珍しくありません。そのような場合は、受け入れる児童クラブ側も、さらに一段と配慮と工夫が必要です。ですので、保育所やこども園、幼稚園の段階で、すでに特性に関して何らかの話が合ったときは、包み隠さず、児童クラブ職員にも伝えてください。児童クラブ職員もプロですから、1日、子どもと一緒に過ごせば、「この子には、何らかの特性がありそうだ」とすぐに気付きます。隠しても見抜かれます。この点、保護者の中には、子どものそのような特性に無関心だったり、あるいは心理的なプレッシャーなどから意図的に無視する方がそれなりにいますが、あえていいます。「子どもの特性に早くから向き合ったほうが、その後の小学校高学年、中学生、高校や社会に出てから、子どもが苦労しない」のです。保護者の関りの有無が、子どもの将来の過ごし方に大きく影響します。今の時代、特性があるということは本当に珍しくありません。
保護者のみなさんには、まず、自分の子どもの過ごし方、他者との関わり方に、もっと興味と関心を持ってくださいね。それが子供の将来を左右します。
<クラブにいる間、勉強時間があまりない。うちの子、学力が伸びないかも>
そうですね、多くの児童クラブは法令やルールに従って児童クラブにおける子どもの過ごし方を組み立てています。そこには、学習塾のような学力増進のための時間は設定されていません。そういう意味で保護者が不安を抱くのは無理もありません。
ただ理解しておくと安心なことは、児童クラブで行われている、「子どもの遊びの時間」や「友達と仲良く過ごす時間」というのは、人間が社会で生きていくうえで必要不可欠な「人間の社会力の基礎、土台」を作っているということです。それを「非認知能力」といいます。学習やトレーニングで得られる知識、技能は「認知能力」です。認知能力を効率的に得られたり存分に発揮できたりするためには、非認知能力がしっかりと育っていることが必要です。非認知能力を伸ばすことで得られるチカラは、コミュニケーション能力だったり、自己肯定感の高さだったり、主体性だったりと、それらがしっかりと根付いていれば、勉強にも自分から進んで取り組めるし、分からない点は先生や講師に質問ができるようになるし、失敗をしてもあきらめずにチャレンジする気概を養うことができます。児童クラブでは、多くの子どもが低学年の時代を過ごします。(本当は、6年生が終わるまで在所してほしいのですが)児童クラブで過ごす低学年のうちだけでも、児童クラブの「育成支援」によって育まれる非認知能力に期待してください。それはきっと、高学年になったり中学生になったりしたとき、おそらく学習塾や様々なトレーニングでがっつりと勉学に励むことになりますが、その時に役立ちますから。スポーツの世界、ピアノなど芸術の世界でも同じです。
むしろ、低学年のうちに、あれもこれも習い事をたくさん浴びせかけるように子どもに強制させるほうが、私は心配です。1週間7日のうち、まったく休みなく習い事をさせているご家庭のお子さんが、児童クラブで、手の付けられないほど暴れまくって他者に危害すら加える、という事例も私は見てきました。それは子どもなりのSOSです。子ども自身が「私は、これをやりたい」と言い出すまで待ってみてもいいと思いますよ。その「私はこれをやりたい」という自主性もまた、非認知能力です。(もちろん、小学1年生で、あれをやりたい、これもやりたいという子どもだって普通にいます。それは個人差です。そういうお子さんは遠慮なくたくさんやりたいことをやっていけばいいだけの話です)
<クラブにおっかない先生がいると聞いたけど?>
それは大問題です。職員の資質に関わるようなことはもちろん、クラブの運営に疑問や理解ができないところがあったなら、まずは遠慮なく、クラブ職員に相談してください。そして対応の行方を職員と情報を共有しながら見ていきましょう。ただし、明確にひどい人権侵害が行われている、例えば暴力や暴言が浴びせられているというときは、すぐに事業所の運営本部や市区町村の担当部署、あるいは警察でも構いません、しかるべきところに遠慮なく通報、通知してください。仮に、子どもたちに常に乱暴な、暴力的なふるまいをしている職員がいるということは、以前からその状態があるわけで、その状態を是正しようと運営組織が取り組んでいない、ということです。自浄能力がない、ということですから、遠慮なく通報してください。
<保護者の負担が多いのが嫌だ>
これは難しいですね。何が負担なのかは保護者1人1人によって異なります。多いのは「父母会」「保護者会」の係や役員でしょうか。児童クラブの中には、そういった父母会や保護者会が、クラブ運営を行っている、つまり児童クラブを利用する保護者は児童福祉サービスの提供を受けている利用者でありながらそのサービスの提供を行う運営側、つまり経営側でもあるという形式が、今も多くの地域で残っています。私自身はそのような形態にはもう限界が来ていると考えている立場の者ですが、現実にそのようなスタイルでの運営が行われている児童クラブにしか入所ができない場合、どうしたって関わらざるを得ません。そのような場合は、大変ですが、「関わって、中から変えていく」ことが大事です。同時に、運営事業者や市区町村にも意見を出して、運営形態の見直しの機会を設定することができるようにしていくことも必要でしょう。
ただ、児童クラブにおいて、子どもがどのように過ごしているかを知ることは保護者としての務めです。責任といってもいいでしょう。親は子どもの育ちに無関係ではいられません。児童クラブにおける子どもの育ちも同じことです。職員に全部丸投げ、では子どもの育ちについて保護者としてかかわりを持っているとは言えません。クラブにて、子どもがどのように感じて過ごして、どのような希望を持っているのか、どのような不満や辛いことを抱えているのかを知ることは保護者にとって「絶対に必要な事」と考えてください。その絶対に必要なことを知るための時間は、児童クラブを利用する上で欠かせない必要な時間だと、そこだけは理解してください。
長期休業時(春休みや夏休み、あるいは土曜日も)に、子どもの弁当を作るのが大変負担だ、という世帯は今も昔も多いです。これについては急激に状況が変わりつつあります。いまは弁当を持参するようになっている地域も、数年のうちに、宅配弁当や給食に切り替わる可能性が出てきました。この点の負担は、今の時点ではすぐに解消されなくても、そう遠くない将来に負担が解消されるでしょう。
新1年生の学童保護者さんが直面する最大の難問は「行き渋り」です。それは上記にあるような、いじめや嫌がらせがある、集団生活になじめない、ということがほとんどです。せっかく入所したのに行き渋りで児童クラブを利用したくないと子どもが抵抗すれば、保護者の仕事にも影響が出ます。よって行き渋りの発生を避けるためにも、保護者はクラブ職員と綿密に情報の共有を行ってください。児童クラブの職員には「子どもが進んでクラブに通うための援助をする」ということが、国の示した児童クラブの理念(これを「放課後児童クラブ運営指針」と呼びます)に明記されています。行き渋りを出さないようにクラブの職員は業務として取り組むことになっていますから、あとは、保護者としても、子どもの本音をしっかりと早いうちにキャッチして、クラブ職員と連携して、楽しくクラブに子どもが通えるようにしていくことが大事です。
最後にもう1つ。初めの部分で私は「まっとうに運営している児童クラブ」と記しました。残念ながら、まっとうに運営されていない児童クラブも存在します。事業者が単なるビジネス(補助金をチューチュー吸い上げる「補助金ビジネス」)として児童クラブを運営していて、職員にはろくに研修も施さず、およそ子どもの育ちに興味関心や責任感すらない人物を採用して、毎日、クラブに置いて子どもを「管理」し、「ガッチガチに決められたスケジュール、時間割通りに子どもを動かして、子どものやりたいこと、希望などは一切無視」している児童クラブも、存在しています。そのようなクラブにしか入所ができない悲惨な状況も、表ざたにならないだけで、たくさんあります。いわゆる「学童ガチャ」です。もし、自分の子どもが入所したクラブが、そのような、いい加減に運営しているクラブだった場合は、保護者が「ノー」を突き付けることでしか、悪徳な事業者を退治できません。保護者は利用者ですが、その地域に住む有権者であり納税者です。税金や子育て拠出金として給料から徴収されたお金が児童クラブ運営につぎ込まれていますし、さらに児童クラブの利用料も支払っています。だから、「文句を言う」「正常な運営を求める」ことができる立場です。おかしい運営だと感じたら、堂々と市区町村に異議を申し立てましょう。保護者同士で連携して改善を求めましょう。困ったらもちろん、私にも相談していただいて大丈夫です。
大事な大事な小学1年生のスタート。それを児童クラブのせいで、残念な時代になってほしくありません。そのためにも保護者のみなさんが、児童クラブにもっと関心を持って、あれこれ意見を出していくことがとても大事です。分からないことは遠慮なく声に出していきましょう。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。
(このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)