市区町村のHPによる放課後児童クラブの情報提供で見えてきたことパート1。こんなトンデモ内容もあるとは!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 運営支援ブログでは全国の市区町村がどのように放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)を設置運営しているのか、市区町村のホームページによる情報提供によって確認する「全国放課後児童クラブデータベース」の作成に取り組んでいます。昨日(3月27日)時点で63の市区町村をチェックしました。全体で1741の市区町村(市が792、町が743、村が183、特別区23)ですからまだまだ先が長いですね。

 ほんの序の口ですが、それでも見えてきたことがあります。今回は驚きの内容を紹介します。

 静岡県熱海市の放課後児童クラブに関することです。熱海市は市のHPでは6つのクラブ(県の資料では8クラブです)があり、公設民営が5、民設民営が1クラブのようです。ただ、検索すると民設クラブが今年度いっぱいで閉鎖されるようです。また市のHPを探ると、閉鎖されるクラブの地域を引き継ぐ形で1クラブと別の1クラブを合わせて、業界大手の株式会社明日葉社が2クラブを令和6年度から運営するようです。そのあたりのことは児童クラブのページでは紹介されていません。その点、丁寧な情報提供がほしいところです。

 で、何が驚いたかといえば、入所申込みの資料に記載されている内容です。「放課後児童クラブ入会申込書 (児童台帳)」という書式がPDFで公開されています。そこに、「保護者の承諾」として、「私達は、保護者として、学童保育の趣旨に賛同し、子供の健全育成、指導のために次の事を進んで協力致します。」とあります。
 さらに6項目の承諾事項があり、それにすべて賛同する場合は署名捺印するような書式となっています。
承諾事項の1は「子供を激励し、当会の活動に参加するよう努めます。」とあります。
2は「子供の帰宅後は、子供とのふれあいを更に保つよう努めます。」
3は「保護者として、当会事業に積極的に協力します。」
4は「私達は、当会の学童保育中及び行事中に生じた事故等については、法律的な一切の権利を主張いたしません。」
5は「保護者として、当会への子供の入所に対する利用料を遅滞なく納めます。」
6は「当申込事項に変更のあった場合にはすみやかに報告いたします。」

 この中で、4の内容は私は問題があると考えます。この4の内容は、児童クラブで子どもが過ごしているとき、あるいは児童クラブの職員の管理下にある時間内において、児童クラブで過ごす又はクラブ職員管理下にある子どもに何らかの権利が侵害される事態が起こった場合でも、児童本人と保護者は、損害賠償を求めたり謝罪を求めたりという被害回復や賠償の求めなどを行う権利を放棄する、という内容です。つまり、児童クラブ側の無制限の免責事項を制定しているということです。
 私にはうまく説明できませんが、とにかくこれはまずい。意味がありません。民法の債務不履行の規定や、民法第709条の不法行為の規定によって損害賠償を求めることができるのに、児童クラブの保護者向けに設定された内部規範で、法令によって守られている国民の基本的な権利を制限することは不可能です。児童クラブ側の意図的、故意による不法行為や重大な過失によって、子どもに何らかの被害、権利侵害が起きたときにでも、児童クラブは免責事項で守られるか?そんなことは絶対にありません。これは、法律家の方であればきっと上手に説明できるでしょう。

 実はこのような免責事項、児童クラブの世界においてはよく見かけませんか? 行事で施設の外に出かけるとき、代表例がキャンプやバーベキュー、プール遊びですが、その際の説明書に、「保護者会(父母会)や引率の保護者の方は、一切の責任を負うことはありません」という趣旨の内容が記載されていること、ありませんか?
 これは、児童クラブの活動に保護者の参加を求めて、引率や準備に当たる大人の作業量を軽減したい、でも「事故があったら責任を追及されたくない」という保護者側の意をくんで、「大丈夫ですよ、何かあっても、親には責任を問いませんよ」と、保護者を安心させたいがゆえに盛り込まれている内容の事がほとんどです。「絶対に責任を問わないから、行事に参加して子どもたちの面倒をみてほしい」という児童クラブ側の意向ですね。

 もちろん、そんなことは一切ありえません。大人として社会人として、最低限度の注意力ををもって、こどもたちの安全に配慮する心がけをしていれば、裁判所の判断によって、責任をどれだけ負うことになるか決まるでしょうが、「絶対に責任を問われない」ことを事前に保障することはできません。責任があった、責任はなかったと決められるのは裁判所だけです。しっかり注意、管理、監視していてもなお防げなかった事故で子どもが命を落とした場合なら、結果的に責任を問われないことは当然あるでしょう。しかし、他人とおしゃべりに夢中で子どもの様子をろくに見ることもなく、子どもが道路に飛び出して車にはねられて亡くなった場合、引率の大人に過失責任があったと裁判所が判断する可能性は十分あります。職員も同様です。いい加減な服務態度で子どもの様子を把握もせずに漫然と業務にあたっていた結果、子どもが何らかの事故で後遺症を負う重大なけがを負った、あるいは死亡したというとき、そこに法律上の主張を保護者が行う権利は当然にあります。

 熱海市の児童クラブの「法律的な権利は一切主張しません」という文言は、誤解を招きますので、早急に削除したほうがよいでしょうね。保護者にも、そこで働く職員にも、双方に誤解を招きます。

 なぜそのような文言が組み込まれたのか、その背景を私が想像するに、熱海においてかつてはおそらく保護者運営の児童クラブだったのではないかと思います。公設公営であったとしても実質的な運営は保護者会、父母会が行っている形態です。すると、クラブの事業運営を管理監督するのも、クラブを利用するのも同じ保護者。保護者同士でトラブルが起きて深刻な対立に陥ると、「あんなもめごとがあるクラブは嫌だ」と利用する世帯も減ります。民設民営なら、それは収入が減ることになり職員の雇用が脅かされますし、公設民営であってもクラブ運営に参加する保護者がいなければ行事や普段からの細かい運営維持作業が行えず、こちらもクラブ運営が不可能となります。
 保護者同士で深刻な対立が起きないよう、「安全を醸し出す魔法の呪文」のような意味合いで、盛り込まれたのではないでしょうか。しかし、当然ですが、法律的な行為を、法律でもない民間組織の単なる自主的な内部ルールで制限することはできませんから、変な誤解を生じさせないためにも、直ちに撤廃するべきでしょう。

 ついでに申せば、承諾事項2の「子供の帰宅後は、子供とのふれあいを更に保つよう努めます。」も、私には違和感があります。この事項の求めるところは、「子どもを学童に通わせていると、その分、親子で過ごす時間が短いから、子どもにとって不幸だ。だから親は学童から子どもを連れ帰ったら、しっかりとコミュニケーションを行うんだよ。こうしていれば、学童っ子だって、親子の触れ合いはしっかりできているからかわいそうではないんだよ」ということでしょうか。私にしてみれば、通常のふれあいを行っていれば十分で、「更に保つ」ということが具体的にどのようなことを目指すべきと想定している内容が思いつきません。
 学童っ子は、親子で過ごす時間が短いから不幸ですか?そんなことは全くありません。完全な育児放棄、ネグレクトならいざ知らず、児童クラブで子どもが過ごしていた時間分を「埋め合わせる」ため、ことさらにふれあいの時間を濃密にしなければならないとは、私はまったく思いません。もっともこの文言のウラに「しっかりと子どもの宿題の面倒を見る時間を確保してくださいね」という気持ちが込められているとすれば、苦笑いするだけです。
 この「親子で過ごす時間の長さの問題」は、朝7時から子どもを受け入れることを決めた児童クラブに対するネット上の反応にも若干、関わっていると私は思います。この件は明日以降に考えます。

 最後に。私は熱海市にも、熱海市の放課後児童クラブそのものに何ら異議や、問題があると思うことはありません。2年でしたが沼津市民だったこともあり、そもそも静岡県は大好きですし、熱海市には何度も訪れたことがあり、とても素晴らしいところです。温泉はもちろんのこと、熱海梅園にも観光に訪れたことがあります。おいしい超有名な老舗洋食店で舌鼓を打ったこともあります。自治体そのものについて何か思うことはまったくありません。あくまで、児童クラブに関するごく一部の事項について感じたことを取り上げただけのことですから。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。

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