聞きたくても聞けない「学童のこと」。超ビギナーさんに放課後児童クラブ、学童保育について超基礎知識を紹介

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。学童保育、放課後児童クラブについて、「人に聞きたくても、恥ずかしくて聞けない」「実は、何が分からないかが分からないほど学童のことがよく分からない」という超ビギナーさん向けに、これから随時、基礎的な知識を掲載していきます。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<学童、学童保育、放課後児童クラブ、学童クラブ、いろいろ呼び方があるけれど、どういうこと?>
 呼び方がいろいろあるのは、実は「決まり」が無いからです。幼稚園や小学校などの学校と比べてみます。幼稚園、小学校などは教育施設である「学校」ですが、学校ではない施設が幼稚園や小学校と名乗ることは法律で禁止されています(「一条校」と呼ばれています)。よって、普通の学習塾が「~小学校」という名称で営業すると、学校教育法違反で摘発されます。
 ところが、「学童」「児童クラブ」と呼ばれる施設には、そういう決まり、規定、ルールは全くありません。つまり、「どういう名称にするか、名付ける側の自由」なのです。普通の学習塾が「~児童クラブ」と看板に書いて営業しても、法律違反でもなんでもありません。
 よって、保護者が働いていたり学校に通ったりしている間、小学生が放課後など(「など」というのは、春・夏・冬休みや、開校記念日などで小学校がお休み=休業日を含むから)に過ごす場所のことをどう呼ぶか、それは全国各地でまったく異なっています。もっといえば、隣の市区町村と違っている場合も普通にあります。
 しかし呼び方は違っても基本的に「どれも同じ」と思って対応して困ることはないです。例えば、ご飯をにぎったもの、本来は三角形なのか俵型なのかで呼び名が違ったようですが、いまは気にせず「おにぎり」「おむすび」と言います。おにぎり、おむすびの呼び方で困ることはありませんよね。それと同じようなもの。でも、おにぎり・おむすびと同じように「本来はこれだから」という部分はあります。が、それは、マニアックな話ですから保護者さんなら気にしないでいいです。児童クラブで働く人は、おいおい、勉強しなければなりませんが。子どもが家で留守番をしない代わりに、放課後などに過ごす場所のことは、とにかく、いろいろな呼び方があるということです。

<学童は、誰がやってるの?うちの地域は役所がやっているんだけど>
 学童保育所、児童クラブ、つまりいわゆる「学童」をやっているのは、どういう組織、どういう団体なのでしょう。ここで「やっている」というのは、2つに分けて考えたほうがいいのです。
・施設を「設置」しているのは、だれか?
・設置された施設を「運営」しているのは、だれか?
 つまり、「設置」と「運営」ですね。小学校であれば、その小学校がある「市区町村」が設置して、その「市区町村」が、運営しています。
 ではいわゆる学童はどうでしょう。学童保育所にしろ児童クラブにしろ、「だれでも設置」できますし、「誰でも運営」できます。児童福祉法という法律で、いわゆる学童は、市区町村が「設置することができる」「民間が運営してもいい」となっています。学童保育所を開設するのに「許可」は不要です。「届出」をすればいいのです(ただその届出を、市役所や役場が受理するかどうかは、また別問題)。
 よって市区町村が設置している学童施設は結構ありますし、民間の企業やNPO、社会福祉法人が設置している学童もたくさんあります。ただ、特に都市部に多いですが、企業が設置する学童が急増しています。誰でも学童を設置、運営できますから、企業が設置しても、まったく問題ありません。学習塾の企業、アウトソーシング企業(児童館や図書館、企業の食堂などの運営事業)、物流会社、マスコミ、ありとあらゆる企業が学童運営をしています。もちろん、保育所やこども園、障がい者や高齢者の福祉施設を展開する企業も、こぞって学童の運営にも乗り出しています。

 さて、学童に限らず、プールや図書館、運動公園などの施設について、市区町村が施設を設置していることを「公立」といったり「公設」といったります。民間(株式会社やNPO法人、社会福祉法人、保護者会、個人も含め、お役所以外ぜんぶ)が設置していることを「民立」といったり「民設」といったりします。

 そして、その施設の運営をしている人たちが、お役所の人(公務員)であれば、「公の人たちが運営」しているので「公営」といいます。民間の人(公務員ではない人)であれば、「民間の人たちが運営」しているので「民営」となります。

 「公立or公設」「民立or民設」と、「公営」「民営」を組み合わせると、こうなります。
(ややこしいので、公設と民設を使います)
「公設公営」=地元の市区町村が施設を設置し、運営も市区町村が行っている場合
「公設民営」=地元の市区町村が施設を設置して、運営は民間に任せる場合
「民設民営」=民間が施設を設置して、運営も民間が行う場合
(なお「民設公営」という組み合わせも形ではありますが、現実的に存在がまずありえないので、無視します)

 お近くの学童、児童クラブは、その3つのパターンのどれかにあてはまっています。絶対ではありませんが、入所資料の提出先が市長や町長、村長であれば「公設公営」の可能性が高いですね。

 ではその3つのパターンで、何か差があるのですか?と言われると、答えは難しくなります。「建前としては、全くない。利用する立場であれば、特に意識しないでもいいです。でも実はあちこちに、かなり差がある」が私の答えです。ただ、その内容はとても難しいことなので、後日にしましょう。

<学童の入所説明書には「宿題の時間がありますが、それ以上の学習はしません」「家庭で学習させてください」とあるけれど、どうして?>
 これは「法律」が影響しています。いわゆる学童は実にユルユルの世界で、あれこれと、こうしなければだめ、こうしなさいという法律の決まりが本当に少ないのですが、その数少ない決まりの中において、学童については「学習をする場、学習させる場」とは、書いていないのですね。「遊び及び生活の場」と、書いてあるのです。覚えておくと便利な単語で「育成支援」という言葉があります。いわゆる学童はこの育成支援を実施する場と言い換えることができます。その育成支援に、学力増進のためのお勉強は目的に含まれていないのですね。
 また、学童保育所や児童クラブを運営すると、国から補助金がもらえる場合が多いのですが、その補助金を出す国が示す条件として「学習塾やスポーツクラブのような事業形態ではダメ」となっています。お役所は、そのしきたりで、決まりに書いていないことは、やりませんから。

 よって、いわゆる学童、学童保育所や児童クラブでは、学習塾のように学習時間をたくさん確保して勉強させるということは、しないのです。してしまうと、法律の趣旨にそぐわないことになりますし、なんといっても補助金がもらえなくなってしまうから。

 保護者さんの中には「学童にいる時間でもっと勉強させてくれればいいのに。時間がもったいない」と思っている人は実にたくさんいます。まあ、そういう気持ちは分かります。私個人の考え方でいえば、「いわゆる学童に、もうちょっと学習時間はあってもいい。宿題プラス30分ぐらいあってもいい」と思います。
 同時に「学力アップのためには、こども自身が勉強に自主的に取り組んで、分からない問題があっても何度もチャレンジして、勉強そのものが楽しい、取り組みたいと思うような気持ちを子どもが持つようになることが大事。学童で、大勢の子どもと一緒になって、もみくちゃになって育っていく間に、自主性や主体的、チャレンジ精神(へこたれない精神。自分は頑張ればできる!と思える気持ち。自己肯定感のこと)も実は育っていくので、学童にいる時代こそ将来、花が咲くための土台作りの大事な時間だから、安心して」と、学童デビューしたパパママに、お伝えしたいです。例えるなら、学童で過ごす時間は、「畑にたっぷり、すごい栄養抜群の肥料をたくさん施している時代」。それが将来、小学校高学年や中学、高校になって勉学にがっつり取り組まねばならない時代に、その勉強の頑張りを支える土台になる、ということです。(もちろん、小学1年生のうちから、あれをやりたい、これをやりたいという子どもの気持ちは大いに尊重するべきだとも思っていますよ)

 なお、学童はユルユルの世界ですから、それなりに勉強の時間を確保している学童保育所、児童クラブもあります。サッカーやダンスのレッスン時間が圧倒的に長い児童クラブもあります。ユルユルの世界ですから、その施設がある市区町村の市役所、役場が「それでOK」といえば、OKなんです。
(私個人的には、学童の場で勉強時間を確保することは、福祉的な観点からも大事なことだと考えています。いわゆる貧困問題は、学習や勉強時間を確保できないことが圧倒的に多いのです。貧困が急速に広がっているこの時代、しっかり学習、勉強時間を確保できる場所としての学童保育所、児童クラブの存在意義は増しているというのが、私の考えです)

<うちの学童は毎月1万円以上もして高すぎ。3千円で入れる地域もあるのに、差別じゃないの?>
 まず、その料金の差は基本的に「そこで働いている職員たちの給料に反映している」と、思ってください。絶対そうであるとは言えませんが、傾向としてはそうなります。人件費、つまり職員に支払うお金は、たいていの企業、事業者において、予算全体の7割超を占めます。学童保育所、児童クラブは、職員が子どもと保護者を支援するという形態の仕事ですが、つまり職員がいなければどうにもならない種類の仕事です(これを「労働集約型産業」といいます)。そういう業種は人件費が経費の圧倒的多くを占めます。
 保護者さんから得られる利用料は貴重な収入源ですが、利用料が多ければそれだけ職員に支払う人件費が確保でき、学童で働く職員のお給料を増やすこともできるのです。
 ただ、東京二十三区のような超絶大都市では事情が変わります。二十三区や大都市(いわゆる政令指定都市と呼ばれる大都会)の学童は、「誰でも利用できる。待機児童はゼロ」という形態の学童を営んでいます。「全児童対策事業」といって、いわゆる学童の変化形です。そういう地域はまた、自治体の予算がそれなりに豊富ですから、保護者さんから得る利用料をなるべく低く(最高でも1万円前後)にして、国からの補助金ももらって、さらに足りない部分は自治体が自前で予算として確保して、学童で働く職員に給料を支払っています。でも、話を聞く限り、ものすごく良い待遇とまではいきませんね。
 利用料が3千円や5千円の学童は、以前に紹介した「公設公営(公立公営)」のクラブであるか、「公設民営(公立民営)」であっても足りない運営予算を市区町村が別途出している仕組みの学童です。民営クラブで利用料が安いところは、数年前かせいぜい十数年前に、「公営クラブだったけれど、民営化した」という経緯があるところがほとんどだと私は思います。
 逆に言えば、最初から民間で始まったクラブ(何十年も前に、子どもの安全な居場所が欲しいとして集まった保護者達がお金を出し合ってスタートしたクラブのこと)は、だいたい、毎月の利用料は公営のクラブと比べると、相対的に高くなっています。おおむね1万数千円台です。それはどうしてかといえば、子どもたちと関わる職員に支払う給料のお金を確保するために、保護者がお金を出し合っていた歴史があって、人が働いてくれるだけの給料を出すには、それなりのお金を出さざるを得なかった、からです。補助金がもらえるようになっても、実は補助金はそれほど多くないので、やっぱりお金は必要なのです。
 もっと言えば、1万数千円を支払っているクラブの職員は、週40時間近い労働時間があって、雇用期間も無期限雇用のケースがありますが、数千円台のクラブの職員(とくに公営のクラブ)になると、週30時間程度の労働時間であって、働く時間が短いためにもらえる月給も低い、ということです。
 集めたお金をどこに使っているか、という視点で考えてくださいね。最終的に働いてくれる職員に届くか、届かないかということです。差別ではなくて、成り立ち、歴史から生じた「違い」と受け止めてくださいね。

<なんで子どもだけで帰宅できないの?>
 実は子どもだけで学童から帰宅できる制度をとっている地域もあります。でも少ないですね。理由としては、「学童は、子どもが安全安心に過ごす場所。(安全とは、子どもを狙った犯罪に巻き込まれない、という意味でおおむねOK)せっかく安全に過ごしたのに、帰宅の道で、交通事故にあったり、変質者に襲われたり犯罪被害に遭ったら、学童で子どもを守った意味がなくなる」からです。冬場になると午後6時を過ぎれば真っ暗ですし、夏は夏で、犯罪の危険性がまた高いころです。
 ですので、保護者の方にお迎えをお願いしているケースが圧倒的に多いですね。ただ、明るい時間であれば子どもたちだけでの学童から自宅への帰宅を認めている場合もあります。また、今後はクラブ側による送迎も増えるでしょう。小学校がどんどん、統合化されて学区が広くなっています。そうなると、保護者の送迎も困難になります。クラブ側の送迎にかんする補助金もあるので、今後は送迎を採用するクラブ事業者が増えるでしょう。

<学童で働く人は、先生なの?何なの?>
 「せんせい」というと、保育所の保育士さんたちは先生と呼ばれることが多いでしょうか。小学校や幼稚園からの連想もあって、複数の、大勢の子どもたちを相手にする少数の大人たちは、学校の先生のように「先生」と、呼ばれることが多いですね。ただ、いわゆる学童、学童保育所や児童クラブには「教員」はいません。学童で働くためには、資格は絶対的な条件ではないのですね。ただ「放課後児童支援員」という資格(都道府県知事が認定する公的な資格)を持つ人が正規職員で働くことを条件とする市区町村は多いですし、放課後児童支援員の資格者が正規職員で働いていないと補助金の額が減ります。よって、事実上、「放課後児童支援員」という資格者を配置することが求められています。が、この放課後児童支援員は、教員ではありませんし、教師でもありません。
 いわゆる学童、学童保育所や児童クラブでは、そこで働く放課後児童支援員を含めて職員を、子どもたちに何と呼ばせるか、決めているところもあります。これまた「なんでもあり」です。先生と呼ばせるクラブ、あだ名で呼ばせるクラブ、名前に「さん付け」のクラブ、いろいろです。
 私が思うのは、社会通念上、最低限の儀礼、マナーは子どもたちであっても守ってほしいし、守ることが必要だと学童生活において子どもたちに理解してもらうこと考えると、例えば、呼び捨てはしない、悪意のある呼び方をしない(例えば「ハゲ」「デブ」というもの)ということは必要だと思います。それを踏まえていれば、コミュニケーションとしてその集団において最適な呼び方があればそれを使えばよいというのが、私の考えです。あだ名でも、先生でも。さん付けでも。
 問の答えとしては、学童で働く人たちは「先生」では、ありません。でも、子どもたちに、社会で過ごすにあたって必要なことをいろいろと身に着けさせていく役割もある人たちです。それを「(子どもたちへの)支援、援助」と呼んでいます。支援員という呼び方をすることがあるのも、そのためですね。なお、学童の歴史では長らく「指導員」と呼んでいました。児童指導員という職種があります。どちらも間違いではないのですが、私は「(放課後児童)支援員」と呼ぶようにしています。

 今回は以上です。また近いうちに「どうして保護者会があるの」や「なぜ保護者が運営しているの」など、学童ビギナーの方々にありがちな素朴な疑問について触れてみようと考えています。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。

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