聞きたくても聞けない「学童のこと」。「保護者会って、なんであるの?」など、「保護者と学童保育」編です。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。学童保育、放課後児童クラブについて、「人に聞きたくても、恥ずかしくて聞けない」「実は、何が分からないかが分からないほど学童のことがよく分からない」という超ビギナーさん向けに、随時、基礎的な知識を掲載します。今回は「保護者会」「父母会」です。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<保護者会とは>
 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の利用をはじめるにあたって、人によって「あまり歓迎したくないもの」のひとつが、保護者会(父母会と呼ぶ地域も多いです)かもしれません(逆に、大好きな人もたまにいます)。「夜に開かれて絶対に出席しないとならない」「沈黙の時間が多くて我慢が必要」など、もしかするといろいろな「厳しいうわさ」を耳にしたことのある新人学童保護者さんがいるかもしれません。今の時代、保護者会の存在が「小1の壁」を構成する1つの要素とみなされることもあります。
 一方で、保護者会が無い児童クラブもあります。
 そうです、保護者会と児童クラブの関係は、結構ややこしいのです。すべての児童クラブに保護者会は必須の存在ではないですが、その仕組みによっては保護者会が必ず存在し、必ず入会しなければならない仕組みとなっている場合の児童クラブが設置されている地域もあります。

 なお、きょうのブログで取り上げる「保護者会」とは、「児童クラブに子どもが入所している世帯の保護者が加入し、継続的に、何らかの活動をしている組織のこと」を指します。単に、年に数回、保護者が集まって、クラブの職員やクラブ運営事業者から情報の提供を受ける、あるいは状況の説明を聞くという「集会、会合」のことも保護者会と呼ぶ場合もありますが、そのような集会や会合の「保護者会」のことではありません。

 保護者が加入し、継続的に活動をしている組織である保護者会ですが、本来は、存在する理由がちゃんとあって誕生し、存在理由を実現することを目的として、活動をしているはずです。では、どういう理由や目的が考えらえるのでしょう。

<保護者会はなんであるの?何が目的なの?>
おおむね次のような目的や機能がある、求められているからですね。
・放課後児童クラブの「事業運営」そのものを担っている場合。この場合、保護者会の存在は必然となり、保護者の加入は強制となります。事業運営を行うのは保護者会、事業運営の責任を担うのも保護者会となります。
(注:事業運営とは、サービスを提供するにあたって対価を得る活動を継続して行っているということです。児童クラブでいえば、施設があってそこで子どもたちが過ごしている、職員はその子どもたちを支援している、そのことが連日行われていて、そのことを行うために保護者から利用料を得たり行政から補助金をもらったりしているということ。それが、児童クラブの運営事業です。)

・放課後児童クラブの「事業運営」の一部を担っている場合。例えば、費用の一部徴収、おやつ購入、行事やイベントの企画や実施。この場合も、存在は必然で加入は強制となります。まだ、保護者会は、何かをやるために存在している状態にあると言えます。

・放課後児童クラブで行われている育成支援(子どもの育ちを職員が支えること。児童クラブの事業の中核)について、定期的に保護者が集まって職員から状況の説明を受け、今後の方向を共に考えること。又は、子どものために実施する行事やイベントをクラブ側(運営事業者)が行うにあたって、その協力をするために存在する場合。このような場合でも、おおむね、保護者会の加入は強制なことが多いでしょう。
 なお実質的に、児童クラブ側が主催して呼び掛けて集まった会合そのもの、つまり保護者が集まる「会」を、「保護者会」と呼んでいるだけの場合もあります。学習塾の保護者会のようなものですね。

・過去十数年、何十年も保護者会があって、毎年、決まったような行事をやってはいるものの、前年の例をそのままなぞっているだけ。この場合、すでに「保護者会が存在し続けることが目的」となっています。もちろん、保護者が単に集まった状況を「保護者会」と呼んでいるだけです。

 ご自身が通っているクラブに保護者会があるとしたら、上記のどのパターンに近いでしょうか。

<「なんとか入れた学童に保護者会があって、そこに入らなきゃダメだって言われた。最悪。辞めていいよね?」>
 放課後児童クラブと保護者会の関係は、案外とややこしいです。よく、学校とPTAのような関係と例えられますが、決定的に違うことがあります。PTAは純然たる任意団体で会員にならなくても小学校で(本来なら)不利益を被ることは(建前では)ありません。児童クラブの保護者会も任意団体で、その点はPTAと同じです。

 PTAと違うのは、児童クラブの保護者会の場合、「実際に事業を営んでいる」ケースがあるということです。PTAの場合は仮にその活動を全部取りやめたところで、子どもが学校で義務教育を受けられなくなることはありません。ですが、児童クラブを運営する保護者会がその活動を全部取りやめると、その児童クラブは閉所に追い込まれます。つまり、保護者会運営の児童クラブの場合は、保護者会が「事業者」になっています。
 このような、保護者会運営の児童クラブは、まだまだ全国各地に残っています。また、事業運営の全部ではなくても一部を運営していることは珍しくないことです。全部であろうが一部であろうが、事業を営む側に保護者も入っている、という場合、保護者は、クラブを利用する立場ですから利用者、ユーザー、もっといえば「客」ですが、もう一方の面においては、クラブで行っている事業を運営する「経営者の一員」となるのです。その場合は、「保護者会に入りません!」と拒否できないことが通常です。この場合は、最悪だろうがなんだろうが、そのような仕組みである以上、保護者会に入るしかありません。
 (なお、保護者会運営の保護者会であっても、現状ではクラブの運営を行うのは保護者会役員とし、それ以外の保護者会メンバーは運営業務を担わないということが通常です。とはいえ、保護者会全体としてクラブ運営の事業者であるのですから、保護者会に入らないという選択肢は持てません。なお、保護者会が自ら定める規約や規程で、「保護者会会員でないものの児童クラブ利用を妨げてはならない」と決めているのであれば、状況は変わりうるでしょう)

 保護者会が手掛ける事業運営の範囲は様々です。保護者から毎月の利用料を徴収し、補助金の申請書類を作成して市区町村に提出し、毎月支払う職員の給料、社会保険料を計算して給料振込の手続きをし、経費を支払い、おやつ代や延長利用料も徴収し、と、経理会計や労務までありとあらゆることをやっている保護者会がありますし、保護者会が担当するのはおやつ代の徴収や延長利用料だけ、と限定された運営業務のみ手掛ける保護者会があります。
 いずれにせよ、運営業務の全部又は一部を担っている保護者会があるクラブに入所した場合、保護者会に入らないということは受け入れられないでしょう。

 以前からの学童保育の世界では、こうした保護者運営のクラブをとても重要視していました。(もともと、このような保護者が運営する形で学童保育は自然に発生した、いわば本来の形でもあります)そしてそれは今になってますます絶対視されるほどになっています。いわく「保護者が運営に関わるから、子どもにとって理想的なクラブが実現できる」という理由です。
 私は違う考え方に立っています。詳細は避けますが、保護者が運営にまつわる責任(管理責任、善管注意義務、使用者責任)を負うことは好ましくないという考えを取っているからです。ですので、ゆくゆくは、保護者が運営に関わる児童クラブは解消していくべきだという主張をしています。(なぜなら、万が一の事故や事件で被害が発生した場合、運営者でもある保護者が民事上の責任を負わねばならない可能性を排除できないからです。また、運営責任が不明瞭になり結果として雇用されている職員に影響を及ぼす可能性があるからです)
 ぜひ行政に掛け合って、違う運営の形式を採用するよう働きかけていくべきだと私は考えています。時間はたいそうかかるでしょうが、必要な作業です。

 一方で、保護者は子育てに当然、関わらねばならない立場です。児童クラブで子どもが育っていくことについても、保護者は子育ての責任を果たすべきであると私は考えます。つまりそれは、児童クラブの職員が行っている子育て支援(=育成支援)について、子どもたちと子どもたちに対して行われる育成支援がどのような状況にあるのか、どのような方針で、どのような支援が行われているのか、将来に向かってどのような支援を行っていくべきかということを、保護者は児童クラブ職員と、情報と認識を共有し、意見を交わし、一緒に考えて決めていくことは、私は大事な事だと考えます。そのための会合や集まりを「保護者会は嫌」と忌避することは、どうしてもやむをえない事情があるのならいざ知らず、単に「面倒くさい」というだけで参加しないということは、あってはならないと私は考えます。
 もちろん、児童クラブの職員の側は、保護者との情報共有や意見交換の場を、単に情報の一方通行で終わらせず、多くの人が発言できるような雰囲気作りを業務として実施しなければなりません。

<保護者会の運営や取り組みで、絶対に心がけるべきこと>
 まず、絶対に保護者会に加入しなければならないかどうかを、クラブを利用する保護者全員で改めて確認しましょう。上記のように、保護者会運営では絶対的に加入は必要です。この場合は、保護者会運営そのものの見直しを行なわない限り、保護者会強制加入問題は解決しません。

 保護者会運営ではなく運営事業者が別に存在する場合においては、保護者会の設置が絶対的に欠かせないことなのかどうかを確認しましょう。先に述べたように、市区町村や事業者から、事業運営の一部でも引き受けているのかどうか。事業運営以外の理由で、保護者会が何らかの役割を担っているために強制的に加入しているということは普通にあることです。例えば、「子どもの育ちを職員(支援員、補助員)と一緒に考えて実行する形式」(共同保育、と呼ばれます)の場合が相当します。また、年に数回行っている行事やイベントの計画や運営に関わっていることが保護者会設置の理由であることもあります。

 つまり、「いま保護者会で行っていることは、保護者会という組織である必然性があるのか」ということを全員で検討するべきです。会長がいて、副会長がいて、お金を集めるなら会計がいて、というように役職者がそろっているのが団体のあるべき形ですが、そういう役職者をそろえた組織と言う形で存在しなければ、「今ある保護者会がやっていること」を本当に実行、実現できないものかを改めて点検しましょう。場合によっては、その都度、担当者を保護者から募る、事前に指名する、あるいは実行委員会を組織して対応するなどして、恒常的に設置する保護者会という組織までは必要ない、ということになるかもしれません。

 また、任意の加入制度を検討することもよいでしょう。任意の希望者で構成する団体として立て直し、必要な活動を厳選して少数精鋭で活動するという方法は効果的だと私は考えています。この場合、参加しない人に対して差別的な行為がないことを心がけてください。自発的に参加する人のことをボランティアといいます。本来、ボランティアは志願者のことです。志願して、責任を負って活動する人の事です。自らの希望で活動を行うと決めて参加した人は本来のボランティアよろしく、参加していない人のことも全部含めて面倒を見る、権利の実現に助力する、という考えで無ければなりません。絶対に「参加している自分たちが偉くて、参加していない保護者たちはずるい」と思ってはダメです。そもそもそういう考えは任意による活動にそぐわないのです。

 すでにある保護者会が強制加入の場合で、しかも何らかの活動を係や担当を設けて行っている場合において、保護者会の運営において心がけなければならないのは、「できる人が、できることをやる。できない人に、おしつけない。これは、誰かが得をする、誰かが不公平になるということとは全く違う」という考え方を、入会している人たちの共通理解とすることです。
 児童クラブにはいろいろな境遇の人が集まります。家庭環境も、仕事との両立の環境も、個々の人の性格や得意分野もまったく違う人たちが集まるのが、児童クラブの親たちです。それぞれに得手不得手があり、それぞれに家庭性格以外に確保できる時間に差があります。車を自在に扱える家庭があれば、自転車で保育所と児童クラブを並行して利用していて家とクラブの往復もままならないという人がいます。計算が得意な人がいれば、他者と関わるのが苦手な人がいます。
 苦手な人、余裕がない人に、機械的に役職を押し付ける、任務を押し付けることは、ムダです。非合理的です。得意な人、やれる人、苦にならない人が、やればいいだけの話です。やりたい人がいないのであれば、「皆が望んでいない」のですから、廃止しましょう。設置が事実上の義務となっている保護者会で、役員や係になりたくない人ばかりというのであれば、事実上、そのやり方はもう無理なのです。違う運営の手法を取るべきなのです。
 でも、どうしても役員を置かねばならない。保護者会運営だから会長がいなければならない。でもやってくれる人がいない。だれも立候補しない。そういう状況なら、その役を引き受けて負うことになる責任感、負担感を帳消しにするだけの利益を与えることにするべきです。私なら、利用料は任期中無料が良いと考えます。運営業務を担う重要な責任ある仕事をするわけですから、クラブや事業者の運営に関する規程を変えて、会長なら任期のすべての間は無料、副会長なら任期期間中は5割減とするなど、責任に見合う報酬、メリットを考えるべきです。
 そして、やれない人、できない人には、「これならできるはず」という任務をやってもらうのです。どんなに小さなことでも言い。例えば、数か月に1回集まる保護者会、父母会で、一番最後の時間の例えば質問タイムがあったとして、その部分の仕切りをお願いするなど、なにかしらは、担ってもらう。あるいは資料を配布する担当など、なんでもいいのです。無理なことは、おしつけない。やれる人が、やれることをやる。頑張ってやってくれる人には、恩恵を与えよう。どんなにちいさな、簡単そうなことでも、やれることができる人にやってもらいましょう。

<一度、無くしてしまっていいんじゃないかな>
 保護者会運営ではなく、市区町村からも特に業務を依頼されているわけではない場合、保護者会は外的な要因で存在を求められている訳ではありません。つまり、保護者会を置くか置かないか、それは事業者の判断です。事業者ももしかしたら、本当に保護者会が必要なのかどうかを検討したことがないかもしれませんし、クラブの保護者に設置の有無を委ねているかもしれません。

 改めて考えてみましょう。「本当に必要なのか、どうか」を。先に述べたように、行事やイベントのための存在であれば、都度、希望者を募って組織したチームで担えばいい。定期的に集まって職員から子どもたちの様子を聞く会合の仕切りは、別に保護者会でなくてもいい。だれか司会役の者を保護者みんなで選んでおけばいいし、その都度、だれかに任せてもいいし、職員が担ってもいいのです。
 この任務が、この役職が存在しないと、児童クラブの運営が絶対的に不可能になるかどうか、の観点で、改めて存在意義、存在理由を確認していけばいいのです。その上で、「保護者会が無くてもやっていけそう」であるなら、無くしてしまっても問題ないはずです。そうしてやっていって、あれを決めたい、これを決めたい、相談したい、やっぱり定期的に興味関心がある人が集まって相談していけば事がすんなり進むというのであればその時点で改めて「会」として立ち上げればいいだけです。それも、任意の参加者を募って。
 私はこれからの時代、クラブ職員が率先して保護者のつながり、保護者連携組織を上手に形作っていくことが理想だと考えています。クラブ職員の支援を受けた保護者が自ら立ち上げて運営を行う組織が誕生すれば、その後はきっと充実した保護者とクラブとの連携が果たせる組織になるでしょうから、賛成です。

 今回は以上です。また近いうちに、学童ビギナーの方々にありがちな素朴な疑問について触れてみようと考えています。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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