社会に知ってほしい学童保育の現場の悲鳴。インクルーシブ保育の理想は大規模、少人数職員で破たんしている

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性、学童保育のあらゆる問題の解決を訴えています。

 昨日(9月22日)、私は福島県浅川町の「あさまる児童くらぶ」主催による「支援者のためのスキルアップセミナー」でお話しさせていただきました。その後の質疑応答や閉会後のフリートークで、やはり今の学童保育の課題はこれだ、と再認識したことがあります。

 日々、子どもたちの支援に向き合っている方々は、「子どもと丁寧に関わっていきたい」と切実に思っています。しかしながら、実態として、「以前と比べて入所する発達障害の子が増えている。特に、グレーゾーン(発達障害の傾向が明らかにみられる)の子が本当に多い。その子たちにも個別に対応することが必要なので、他の子どもに関われることができなくなってしまう」ということが常態化していて、「子どもへの支援が思うようにできない」、という訴えでした。

 その厳しい状態は、根底として、「入所している子どもの人数が多い。職員の人数も足りない」こともあります。

 学童保育所(放課後児童クラブ)は、健常児、定型発達のお子さんと一緒に障害のあるお子さん(特別支援児)を受け入れて、同じ生活の場、遊びの場で過ごすことによる成長を重視するとしています。
 放課後児童クラブ運営指針には、こうあります。
「地域社会で生活する平等の権利の享受と、包容・参加(インクルージョン)の考え方に立ち、子ども同士が生活を通して共に成長できるよう、障害のある子どもも放課後児童クラブを利用する機会が確保されるための適切な配慮及び環境整備を行い、可能な限り受入れに努める」(第3章2の(1))

 ところが現実は、上記の指針のうち「適切な配慮及び環境整備」が不十分であり、「可能な限り受入れに努める」だけが着実に実行されているといえます。その結果、現場の支援員は、個別対応が必要、あるいはそれに近い子どもの対応に忙殺され、それ以外の子どもに関われる時間も余裕ができません。すると、支援員と関りが少なくなった子どもたちが反発したり問題行動を起こしたりする、という結果に陥るのです。

 おそらく日本中、多くの学童保育所の現場で、同じような現実に直面していることと私は思います。はっきりと言いましょう。今の学童保育所は、発達障害や、発達障害に近い特性のある子どもを無理やり押し込んでいる「強制収容所」とほぼ同じです。その悲劇をもたらしているのは、真剣に学童保育の現状に取り組まない国の無責任さにあって、学童保育の現場には責任はないと、私は訴えます。

 学童保育所におけるインクルーシブ保育の現実は、運営指針にうたわれる理念とはまったく別に、「適切な発達支援が必要であるはずの子どもを学童保育所に入所させることでゴール到達」としている制度の実態が私には感じられます。学童保育所に障害のある子どもが入所すれば、もうそれでインクルージョンが実現したとばかり、国は具体的にインクルーシブ保育を実施するために必要な環境整備について、積極的に取り組んでいるとは私には思えません。障害児受入強化事業だけではまったく不十分です。

 ギュウギュウ詰めの学童保育所の空間では、障がいがあろうがなかろうが、どの子どもも極度のストレスで過ごさざるを得ない。しかも人件費が十分確保できないための人手不足(低賃金ゆえ就職希望者が少ない)では、子どもにとって過ごしやすい時間と空間を学童保育所に作り出すことはできません。

 そして、現場の職員(運営もですが)は疲弊し、消耗し、離職を余儀なくされるのです。

 最後にもう一度。インクルーシブ保育の理念を看板だけにして、現状には無関心である国の姿勢が大問題です。いま、学童保育所を苦しめている「表面上だけのインクルーシブ保育」の実態を国が早急に改善しないと、「異次元の子育て支援」を担う学童保育所は崩壊します。それは国、つまり政治と行政の不誠実な態度が原因です。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の現状を改善するための種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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