放課後児童クラブが大ピンチ!認定資格研修の免除や基礎資格緩和が提案中。絶対にダメ!提案理由全部ダメダメ!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等をご検討ください。

 今回は、放課後児童クラブの育成支援の質が、さらに崩壊する危機について訴えます。認定資格研修の骨抜きの危機です。

 「日本の学童ほいく」2023年10月号の「協議会だより」をごらんください。74ページ目に、「緊急申入書を提出、懇談を行いました」というタイトルの記事が掲載されています。

 これは、国の「令和5年の地方からの提案」に、放課後児童支援員について、「認定資格研修の免除の拡大」と「基礎資格のさらなる緩和」が提案されていることに関連するものです。
 ちなみに「地方からの提案」というのは、内閣府地方分権改革推進室が、地方自治体から募集する、地方分権改革に関する提案のことです。

 この提案で、「関係府省における予算編成過程での検討を求める提案」として、こども家庭庁に対して出されている提案の中に、上記の放課後児童支援員に関する提案が出されているのです。
 提案の内容をもう少し詳しく紹介します。提案者は「中津市」で、タイトルは「子ども・子育て支援交付金における放課後児童健全育成事業の交付要件の見直し」。追加の提案者や事例提出者として「札幌市、仙台市、千葉市、府中市、相模原市、横須賀市、長野県、大阪府、兵庫県、広島市、今治市、熊本市、鹿児島市」が名を連ねています。この中では、学童保育に理解があると業界で思われている自治体の名前もあり、私は落胆しています。

 さて具体的な中身です。「放課後児童支援員及び補助員の要件を緩和(保育士や幼稚園教諭、小学校教員等の資格保持者に対する研修の免除及び資格等を保有しないが学校等において実務経験を有する短時間勤務教員等の追加)するとともに、長期休暇期間に限定して運営する放課後児童クラブ(年間開所日数 200 日未満)も交付金の対象に加えること」

 問題は前半の部分です。ここに提案が2つ盛り込まれています。まず1つが、保育士や教員免許を持っている場合は、放課後児童支援員認定資格研修を「免除」することを認めてほしい、ということ。
 そしてもう1つが、資格等を保有しない(=無資格、ということ)が学校等で実務経験がある短時間勤務教員等も基礎資格に加えてほしい、つまり基礎資格(保育士や教員、社会福祉士、実務経験)の「緩和」ということです。
 (後段の長期休暇限定開設クラブを交付金対象に加えることは、それはそれで良いと私は思います。)

 前段のうち、「免除」は、絶対に認められてはならないと私は考えています。「緩和」については、実務経験と同程度の経験(2年間以上かつ2000時間以上)を課せば私は構わないと考えます。

 ただし免除だけは、いけません。そもそも現時点で基礎資格によって認定資格研修は一部科目が免除できます。それすら撤廃するべきです。

 理由は単純です。放課後児童支援員は、保育士として学ぶこと(座学および実務)と、教員として学ぶこと(同じく座学および実務)の双方の知識が必要とされるからです。就学前の子どもと、小学生以上の子ども、そのどちらかの知識だけでは不十分です。当然、資格を以前に取得した者は知識の更新が必要です。

 よって、認定資格研修の免除は、絶対にありえません。現状の認定資格研修ですら、放課後児童支援員の専門性を高め、深めるには絶対的に受講時間が足りません。もっと言えば研修内容も平易すぎますし、内容が理解できたか判定する試験すらありません。しっかりと試験制度を設け、選別するような資格にするよう強化が必要なところをさらに緩和するとは、まったくもって提案に名を連ねた自治体は恥を知りなさい、とあえて申し上げます。

 提案には、「制度改正による効果」として、次の内容が記されています。
「交付要件の見直しにより、支援員や補助員となりうる人材の総数が増える」
「支障事例」(つまり、現状で、こういう困難なことが起こっていますよ、というアピール)の紹介は次の通りです。
「支援員不足は慢性的に生じており、特に支援員は資格を有する必要があることから、支援員の確保に苦慮しているところである。島嶼部においては、支援員不足により、児童クラブの開設自体が危ぶまれている状況もある」
「学童クラブでは人員不足が喫緊の課題であり指導員の配置体制には日々苦慮しており、やむを得ず職員の配置が困難であった開所日は、その日に勤務する職員の超勤対応や他学童クラブからヘルプとして職員を派遣する等し対応している。資格保持者に対する研修の免除等により放課後児童支援員及び補助員の要件が緩和されれば、現場側の負
担も軽減することができる」

 意訳すると、「放課後児童支援員として働いてくれる人がいない。足りない。それは、放課後児童支援員になってくれる人が足りないからだ。資格を緩和して、(簡単に)放課後児童支援員になれれば、現場の人手不足が解消され、負担が緩和されるのだ。」ということですね。

 なんという意味不明の根拠でしょうか。人員不足の原因は、放課後児童支援員に「なってくれる人が少ない」からではありません。「低賃金の長時間労働による厳しい職場環境」ゆえ、敬遠されているのです。さらに「放課後児童支援員の専門性がなかなか向上しないから、専門職としての魅力が足りない=賃金も低い」から、放課後児童支援員として働いてくれる人が、現れないのです。

 つまり現場が苦しんでいる人手不足の解消は、「賃金のアップと配置人数増員を可能とする補助金の増額」であり、「放課後児童支援員の専門性を高め、資格としてより高度で魅力あるものとする」ことなのです。今回の地方からの提案は、正しい方策である「賃金アップ+人数増+資格のレベルアップ」とはまったく正反対の内容です。さらに現場クラブの人手不足を推し進めるだけです。逆効果です。

 まったく、あきれてものが言えません、で済ませてはならないので、私ははっきりと言います。賃金増加と配置人数増員を可能とする補助金の増額+放課後児童支援員資格のさらなる強化。受講科目免除は直ちに撤廃。あまりに出来の悪い者は不可とする最低限の試験選抜制度の導入。試験を行わないなら数年おきに再度の受講を義務化。

 これぐらいのこと、簡単にできるはずです。こども家庭庁の会議室で決められますから。

 全国の地方自治体も、放課後児童クラブの運営の実態について、もっと学んでください。知ってください。私がいくらでもレクチャーします。ぜひ連絡してください。
(なお、今回の提案には他に「放課後子ども教室について処遇改善臨時特例事業の対象とすること」が加わっています。大阪市からです。これは良い提案だと私は思います。放課後子供教室に従事するスタッフを処遇改善の対象とするべきだ、そのためにスタッフには謝金ではなく賃金を支払うようにするべきだ、ということです。謝金を受け取るということはそもそもスタッフは労働者扱いではないのです。この改善を求めている提案で、これはぜひとも認められるべきですね)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の現状を改善するための種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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