放課後児童対策パッケージに盛り込まれた重大な視点。放課後児童クラブ運営指針の改定が予想されます!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 国(こども家庭庁)は12月25日、令和5年5月時点の放課後児童クラブ運営状況(以下、「運営状況」と表記。)と、「放課後児童対策パッケージ」(以下、「パッケージ」と表記。)を公表しました。なお、パッケージは文部科学省も連名で発出元となっています。パッケージに記載されている内容から、26日は夏休み対策について、28日は早朝の受け入れ、29日は「一体型」の名前が消えたことについてブログで取り上げました。

 本日はこのパッケージの中で今後、重大な意味を持つ点について取り上げます。
その前にまず、このパッケージについて改めて説明します。国が発出した書面には、このように説明されています。「放課後児童対策の一層の強化を図るため、令和5~6年度に予算・運用等の両面から集中的に取り組むべき対策として、「放課後児童対策パッケージ」をとりまとめましたので通知します。」
 放課後児童対策の一層の強化を図る、とあります。その対策とは何か。国の書面には、こうあります。
「登録児童数は過去最高となったものの、新プランで掲げた 152 万人の受け皿整備の目標を達成することは困難な状況にあり、放課後児童クラブの待機児童数は依然として1.6 万人存在していることから、全てのこどもが放課後を安全・安心に過ごし、多様な体験・活動を行うことができる場所の拡充は、喫緊の課題」

 一層の強化として掲げられた施策は、次のとおりです。
1.放課後児童対策の具体的な内容について
・放課後児童クラブの受け皿整備等の推進(注:ここに、「放課後児童クラブにおける常勤職員配置の改善」が盛り込まれています。この点、改めて次回以降に取り上げます)
・全てのこどもが放課後を安全・安心に過ごすための強化策
2.放課後児童対策の推進体制について
・市町村、都道府県における役割・推進体制
・国における役割・推進体制
3.その他留意事項について
・放課後児童対策に係る取組のフォローアップについて
・子ども・子育て支援事業計画との連動について
こども・子育て当事者の意見反映について

 上記の最後の部分だけ太字にしました。さりげなく盛り込まれた「こども・子育て当事者の意見反映について」を取り上げたいからです。この部分について、国の書面には、こうあります。
「こども基本法に規定されているとおり、他のこども施策同様に放課後児童対策に関しても、自治体において、利用するこどもや子育て当事者の意見を聴取し、反映するよう検討していくことが求められる。これにあわせて、「放課後児童クラブ運営指針」及び「地域学校協働活動の推進に向けたガイドライン」の改訂を検討する。」

 これは極めて重要です。こどもの意見表明権と、こども施策に対するこども等の意見の反映を、学童保育の運営にも保障するという観点です。さらに、放課後児童クラブの「全国的な標準仕様」と厚生労働省が位置付けている放課後児童クラブ運営指針の改定を検討すると、あります。指針には法的拘束力はないですが、クラブの運営に重大な影響を及ぼすもので、それはすなわち、市町村の放課後児童健全育成事業の取り組みもまた、左右することになります。
 こども基本法について、内閣官房のホームページは、こう説明しています。
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku_suishin/ikenhanei/index.html)
「令和4年6月に成立したこども基本法においては、第3条第3号、同条第4号で、年齢や発達の程度に応じたこども(心身の発達の過程にある者をいい、若者を含む。)の意見表明機会の確保・こどもの意見の尊重が基本理念として掲げられるとともに、第11条で、こども施策の策定等に当たってこどもの意見の反映に係る措置を講ずることを国や地方公共団体に対し義務付ける規定が設けられております。」
(同法第3条第3号 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。
 第4号 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。)
(同法第11条 国及び地方公共団体は、こども施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども又はこどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。)

 学童保育の施策の展開は、設置の拡大、設備の向上、基準の向上など、すべて関係する者の熱意と尽力で、歩みはゆっくりながらも着実に進歩してきました。学童保育に関わる人たちの努力のたまものです。関わってきた人はそれぞれに子どもの気持ちを思い、代弁し、子どもにとって過ごしやすい学童保育を実現できるように、努力してきたのは事実です。

 しかし近年は、学童保育が「カネの成る木」になり、多くの民間企業がこぞって参入する中で、どうやって学童保育事業を展開して利益を確保するかが多くの人の関心を集めるようになっています。学童保育の事業実施について責任を持つ市区町村も、見た目は優れて整った広域展開の企業がアピールする学童保育事業の利点を単純に信じることで、市区町村が責任を持つべき子育て支援の責任を果たしたこととしている例が、増えています。

 このパッケージは、このような風潮に対し、こどもの意見表明とこどもの意見反映保障を盛り込むことによって、地域の子どもと、子どもの意見を代弁する保護者の声を、市区町村の学童保育事業に対して関与させることを可能とする見込みをもたらすものと、なるでしょう。例えば、愛知県津島市で進行した、多くの子どもや保護者が希望していることと反した方向に行政が一方的に変更を加えたようなことは、明確に好ましくない事態、と判断される余地を大きく広げるものと、なるでしょう。

 できることなら、指針というレベルだけではなく、基準条例にも反映させてほしいですし、そもそも指針そのものをもっと法的に強い位置付けにしてほしいのですが、それもまた今後に期待しましょう。

 政府が本気で、こどもまんなか社会を目指すのなら、まずはこういった、法令面や制度の構造面において、土台となるものですから、しっかりと制度設計をすることです。こども家庭庁には、さらなる強いリーダーシップを期待します。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)