なんと「一体型」が消えた!待機児童解消にイメージ作戦か。学童保育の今後をパッケージの内容から考察する。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 国(こども家庭庁)は12月25日、令和5年5月時点の放課後児童クラブ運営状況(以下、「運営状況」と表記。)と、「放課後児童対策パッケージ」(以下、「パッケージ」と表記。)を公表しました。なお、パッケージは文部科学省も連名で発出元となっています。パッケージに記載されている内容から、26日は夏休み対策について、28日は早朝の受け入れについてブログで取り上げました。本日は放課後子供教室との関係について考えます。
(放課後子供教室とは、文部科学省が行う事業です。学校の施設を使い、放課後の午後5時まで、学校が休みの日は朝8~9時から午後5時まで、参加希望の子どもが、地域の方との交流、工作や体験活動、遊び、学習などを行って過ごすものです。おおむね無料です。なお、平日でも毎日、実施していない地域もあります。子どもの居場所の1つとして機能しています。世間的には、見た目が似ているので、学童保育の1種類であると理解されています)

 今回のパッケージに関しする書面に、注記があります。その内容が重要です。転記します。
「放課後児童クラブ及び放課後子供教室が連携して、共働き家庭等の児童を含めた全ての児童が放課後子供教室の活動プログラムに参加し、交流できるものを「連携型」と呼ぶこととする。また、「連携型」のうち、同一小学校内等で両事業を実施しているものを、新プランにおいては「一体型」として推進してきたが、これを「校内交流型」と呼ぶこととする。同一小学校区内で両事業を実施する場合は、全ての放課後児童クラブと放課後子供教室が「校内交流型」又は「連携型」として連携が進められるようにする。」

 つまり、これまでの新プラン(「新・放課後子ども総合プラン」のこと。平成30 年9月策定)において、国が熱心に導入を勧めていた放課後子供教室と放課後児童クラブの「一体型」の表記が消え、「校内交流型」と表記を変えたのです。

 一体型は、伝統的な学童保育業界から非常に嫌われていました。ほとんど同じ場所で、児童の健全育成を目的としない放課後子供教室と、放課後児童クラブが同時に行われることで、育成支援の質の低下を招くと危険視されていたからです。事前の利用登録は必要であっても基本的に人数制限を設けないため児童数が相当数多い放課後子供教室と一体となって放課後児童クラブの子どもたちも過ごすことで、充分な育成支援が実施できないという危惧です。いずれ、双方の事業が一つになってしまうことを警戒しているからです。実際、全児童対策事業という形式でそれは実際に行われており、しかも各地で大々的に実施されるようになっています。

 この一体型への強い警戒心から、小学校内における子どもの居場所づくりは、学校側の本音(教室を放課後児童クラブに提供したくない)とあいまって、なかなか進展しなかったのです。伝統的な学童保育側は「一体型ではなく、連携型の推進にしてほしい」と訴えていました。なお、連携型とは、放課後児童クラブは放課後児童教室とは異なる場所、拠点にあって、クラブに在籍している子どものうち、希望する子どもだけが放課後子供教室の子どもと過ごす時間を持つ、という仕組みです。

 今回のパッケージは、そもそも、新プランの達成が不可能となったことを受け、待機児童対策のために新たに当面取り組むべき施策として国が打ち出したものですが、伝統的な学童保育業界から根強い反発があった一体型は「表向き」消し去って、あくまでも双方の事業の子どもたちが一緒に過ごすことを「交流」と定義して、校内交流型というソフトな表現として、その推進を目指すことにしたのでしょう。いわば、看板を付け替えただけ、羊頭狗肉というものでしょう。よって引き続き、校内交流型の推進には補助金が手厚く設定されていることは変わりありません。

 ただ、そうであっても、新プランと比較すると、パッケージでは、連携型の推進をこれまでより少し押し気味に打ち出しています。例えば、「放課後児童対策における喫緊の課題は、放課後児童クラブの待機児童の解消である。」として、「放課後児童クラブの量的拡充を図るため、学校敷地内外のプレハブリース料への補助を継続する。また、民家・アパート等を使用する際の賃借料補助水準を引き上げ、受け皿整備の推進を図る。」として、こども家庭庁が令和6年度予算案に盛り込んでいます。

 一体型は、名前を変えて引き続き推進はしますが、待機児童解消に向けてできることはとにかくやろう、敷地外に施設を作ってもいいから、ということです。その点では、これまでの、とにかく一体型で(コスト最優先で)進めてきた国の姿勢が、若干ですが変わったといえるのではないでしょうか。

 しかし、本当は待機児童解消のために、国はもっと変えるべきことがあります。それはまた、明日以降に。

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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