学童保育業界の進化発展に必要なことは「学童保育の常識は世間の非常識」を徹底的に追放すること。その2
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。
学童保育の世界は、その重大な使命と任務に対する社会の評価と理解がまったく追い付いていません。そのため、学童保育で働く人たちの給料が安く、いつまでたっても人員不足であり人材不足であり、それがさらに質の向上を妨げる悪循環に陥っています。
そんな学童保育業界でよく言われる戯言(ざれごと)が、「学童保育の常識は、世間の非常識」。なんとも自虐的ですが、実は全くその通り。だからこそ、「学童保育の常識」を徹底的に打破しなければなりません。今週の弊会ブログは、そんな「学童保育の常識」を徹底的に批判し、学童保育の進化発展を願うものとします。
2日目の今回は、学童保育業界(だけではないのでしょうが)で働く人を苦しめる、悪しき労働慣行を取り上げます。SNSの投稿でもよく見かけますが、こういうこと、ありませんか?
・休憩がありません。出勤してから夜、退勤するまで、7時間勤務ですが休憩時間がありません。
・シフトでは休みがありますが、同僚が病気で相次いで休むので休日返上で出勤が続いています。
・クラブでは、子どもと保護者との関りだけで時間を全部使ってしまい、事務仕事は家で持ち帰ってやっています。
・有給休暇を申請すると運営本部から何か言われそうで、それが嫌なのでほとんど使わない。
(これらは、ごく一部の問題です。もっともっとたくさんの悪しき労働慣行が存在しています)
まず確認します。労働基準法で、休日は毎週少なくとも1回となっています。日曜日が休日であるならクリアできているでしょう。休憩は「途中付与」「一斉付与」「自由利用」の3原則のもとに付与されることになっています。この中では、労働時間の途中で付与という原則があまり守られていないのではないでしょうか(いわゆる休憩の前付け、後付け)。年次有給休暇は、法律上当然に生ずる権利です。
そして各事業者が、それら働く上でのルールを決めているのが「就業規則」です。
ここで、ひとつのエピソードを紹介します。もう7、8年ほど前になるでしょうか。とある学童保育関係の会合に出席しました。その場で、あるクラブの放課後児童支援員(施設長クラス)から報告がありました。いわく、自分のクラブは長らく欠員状態であること、1カ月以上休みがないこと(日曜日も自宅で持ち帰り仕事)、毎日の仕事で休憩もほぼ取れないことが伝えられ、会場はシーンとなりましたが、その後に、「子どもたちのために頑張って続けています」と報告があると、会場から拍手が送られました。ただ、私には、拍手をする気持ちは起こりませんでした。
非常に劣悪な雇用労働条件に置かれて大変なことは理解しますが、本来なら、そのような労働基準法違反状態を運営側は継続する状態においてはならないのであって、施設長クラスである現場職員も協調して取り組まねばならない。美談でも何でもない。そんな劣悪な労働条件の業界に、誰が就職しようというのか。そういう状況が起こることを徹底的に防ぐ努力にこそ、拍手が送られるべきだろう、と。
確かに学童保育業界は、構造的な要因によって人件費に充てられる予算が少なく、慢性的に人手不足であり人材不足です。だからといって、休憩が無い、休日が無いという状況を放置することは許されません。そのような状況で懸命に頑張っている放課後児童支援員の誠意を傷つける気持ちはありませんが、大事なことは、そのような状況をどう解決するのかに心血を注ぐことです。
もちろん、その責任は、組織を運営する側が主に負うことは言うまでもありません。労働基準法で課せられる多くの法律上の義務は、使用者(雇用者)側が行うものがほとんどであり、雇用側の責任が最も重大です。ただ、現場で働く職員であっても「どうせ言っても無駄だから」とか「子どものために頑張るのは当然だから」といった、ゆがんだ意識を持っていることは、ありませんか?ダメなものは、ダメと声を出さなければならないのです。
夏休み期間などの一日開所では、子どもとお昼を食べる時は、決して「休憩時間」ではありません。その時間をシフト上の休憩時間に充てている運営組織は失格です。
7時間勤務で必要な45分間の休憩ですが、途中付与の原則を逸脱して出勤時刻や退勤時刻に付け、結果的に6時間15分や6時間という勤務でシフトを組む、ということもダメです。もし6時間勤務にするというなら、就業規則で職員の所定労働時間を6時間とすることです。6時間以下の所定労働時間であれば休憩付与は不要ですから、この場合は堂々と6時間シフトが可能です。
年次有給休暇は、10日以上の職員に対しては年5日の時季指定付与義務が使用者(運営側)にあります。最低5日は年次有給休暇を取得させないと罰則もあります。
そもそも残業(時間外労働)において、「36協定」を労使で締結していますか?時間外労働は予算を効率的に人件費に費やすために極力、抑制することが必要で、変形労働時間制やフレックスタイム制の導入が学童保育事業にこそ必要でしょう(これは後日、取り上げます)。
妊産婦(妊娠している女性と、産後1年を経過しない女性)が請求すれば、時間外勤務や休日労働をさせることができません。これはほとんど守られていないでしょう。また、生理休暇は、日数の限定はできませんし、診断書の提出を求めてもいけません。
勤務時間とされている前後に、掃除や整理整頓を「しなければならない」状況にありませんか?その時間帯は、労働時間であり賃金が発生します。その時間も含めて、給料が計算されることが必要です。着替えの時間や移動時間が労働時間に含まれるとした、かの有名な「三菱重工長崎造船所事件」の最高裁判決を知らない運営者は、失格レベルの、ダメダメな運営者です。
労基法や各種判例をそのまま順守すれば、ブラック企業、ブラック労働にはなりません。求人応募者を増やしたいなら、事業所がしっかりと法令順守を実施することです。「そんなこと言っても、人がいない」という意見には、「なら、予算を増やすよう行政に何度も交渉すればいい。行政を動かすため議員に相談すればいい。保護者に訴えればいい。一時的ワークシェアリングで賃金を減らしても人を増やし、休日や休憩を確実に確保する策を選択すればいい」と、私は答えます。やらないで文句ばかりを言う学童保育の運営者は結構いますが、それも業界の非常識ですね。雇用している職員を守り抜く意思がないなら、運営者の資格は皆無です。
運営側は職員の権利を必ず守る組織にしましょう。職員は協力して、みんなが働きやすい職場環境の構築に尽くしましょう。その上で、新しく加わった仲間を温かく歓迎しましょう。
「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所をめぐる構造的な問題について、その発信と問題解決に対する種々の提言を行っています。また、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。
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