学童保育所の運営組織は、職員を守るために必要な安全管理体制を整えなければなりません。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 育成支援系の学童保育所(=放課後児童クラブ)での仕事は、子どもの命、安全を守るという絶対的な使命のもと、子どもの育ちを支える「育成支援」という、とても専門性の高い難しい業務です。しかも、大人数の子ども、保護者と上手にコミュニケーションを取っての仕事が必要であり、かつ、少人数の職員同士での濃密なコミュニケーションが必要で、肉体的疲労と心理的疲労の双方のストレスを受ける、大変な仕事です。現場クラブだけでなく、運営組織本部の勤務においても、経営・運営責任という重い責任があり、同じようにストレスが大変多い仕事です。

 つまり、学童保育で働くということは、とても大変なのです。「厳しく、過酷な仕事」の1つです。

 その上で、民営学童保育所については、広範囲で事業展開をしている株式会社運営の学童保育所を除き、ほとんどが、非営利団体や任意団体(保護者会など)による運営という特色があります。そのことから、本来は必要であるべき制度が実施されていないこと、実施したくても着手できていないことも、相当あります。

 当然ながら法令で求められていることは速やかに実施しなければなりません。その中でも、特に優先するべきなのは、働いている人たちを守ることに直結する制度の実施です。

 労働安全衛生法には、労働者を守るための仕組み=安全衛生管理体制としていくつかの制度が規定されています。その中で、学童保育所運営組織であれば当然、取り組んでいただきたいことを列記します。

 その前に、労働安全衛生法による安全衛生管理体制について確認しましょう。安全衛生管理体制は「事業場」単位で実施することとされています。この「事業場」について、学童保育の運営組織の中には「クラブ1つ1つが事業場だから」という解釈をすることがほとんどのようです。しかし、この考えはいけません。ありえません。
 なぜなら、まず「法が求める安全衛生管理体制は、労働者を守るための制度であり、本来であれば積極的に取り入れることが必要である。それを、1クラブの人数が少ないから不要、と決めつけることは、すなわち、クラブで働いている職員、ひいては組織に属する職員の安全衛生管理体制を軽視していると同義だから」です。もし、運営責任者が「1クラブの人数が少ないから、安全衛生管理体制は不要」と思っているなら、どれほど職員のことを軽視しているかということであり、そのような順法意識に欠けるものは、そもそも子どもの命を守る事業に携わることが不適切です。即刻、お辞めいただきたい。
 また、東京労働局のウェブサイトにこのように解説されています。
 「労働安全衛生法は、事業場を単位として、その業種・規模等に応じて適用することとしており、事業場の適用範囲は、労働基準法における考え方と同一です。つまり、一つの事業場であるか否かは主として場所的観念(同一の場所か離れた場所かということ)によって決定すべきであり、同一の場所にあるものは原則として一つの事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とされています。例外としては、場所的に分散しているものであっても規模が著しく小さく、組織的な関連や事務能力等を勘案して一つの事業場という程度の独立性が無いものは、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱うとされています。」(太字は筆者による)

 1つ1つのクラブでは育成支援が行われていますが、そのクラブは組織運営の点からは独立していないことがほとんどです。経費の精算や人事面について運営本部の指示を仰ぐことが当然ですから、1つ1つのクラブは直近上位の機構、すなわち運営本部と一括することが当然です。
 つまり、1つ1つのクラブにおける職員数は少なくとも、運営組織全体では数十人単位になる運営組織もかなりあるはずで、結果として、労働安全衛生法が求める安全衛生管理体制の実施をすべき事業場となる、ということになります。

 さて、早急に整えるべき安全衛生管理体制ですが、以下をすぐにでも取り入れましょう。
「産業医」(全業種で常時50人以上の事業場で選任が必要)
「衛生管理者」(全業種で常時50人以上の事業場で選任が必要。免許や資格が必要)
「衛生推進者」(常時10人以上50人未満の事業場で選任が必要。講習受講だけでOK)
「衛生委員会」(常時50人以上の事業場で設置が必要)
 (これらの詳細は後日、ブログで説明します)

 また「健康診断」(一般健康診断)は、「常時使用する労働者を雇い入れるとき」に必ず必要です。「定期健康診断」として常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回、定期に行うことが必要です。健康診断は、短時間労働者(パートタイム労働者)も対象で、原則は常勤職員と比較して週の所定労働時間が4分の3以上の労働者に実施する義務がありますが、先の東京労働局のウェブサイトには「1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施するのが望ましいとされています。」とあり、週15時間以上働くことが契約で決まっているパート職員にも、健康診断を実施するべきです。
 当然ながら、健康診断の費用は運営組織が負担します。また、健康診断における時間の賃金は労使で協議して決めることとなっていますが、厚生労働省のウェブサイトには「円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう」となっています。よって運営組織は、健康診断にかかった時間の時給も支払うべきでしょう。

 同じく「ストレスチェック」という制度も規定されています。こちらは、常時使用する労働者が50人以上の事業者に義務付けられていますが、50人未満の事業者には努力義務となっています。絶対に実施しなければならないというものではないですが、これも当然ながら、50人未満の事業者であっても、職員のメンタルヘルスの管理にしっかり取り組んでいるということを職員に理解してもらい、職員の安心感につなげるために、50人未満の事業者であっても実施をするべきです。

 これらのことは、当然、コストがかかります。お金がかかりますし、手間暇もかかります。なので、あえて実施しない事業者もいるでしょう。

 しかし、何度も言いますが、子どもの命を守る仕事に取り組んでいる職員を守れない、守ろうとしない組織に、存在価値はありません。むしろ有害です。積極的に、快適な職場環境の形成に取り組み、職員の健康を守る取り組みをするべきです。
 同時に、職員も、積極的に、安全衛生管理体制についてそれを求める声を出さねばなりません。

 職員を守ることが、持続的かつ質の高い、学童保育事業を実施することの一丁目一番地。その取り組みについて、丁寧にフォロー、サポートすることができるのが、「学童保育運営支援」の事業なのです。
 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育組織運営に豊富な経験を持つ代表が、学童保育の運営組織における事業の質の向上に取り組みます。職員、保護者、そして組織全体のモチベーションアップを実現させるために、具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 学童保育の運営者の方、そして行政の学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る学童保育所の発展のために、一緒に考えていきましょう。職員育成はもちろん、どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく学童保育です。学童保育の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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